僕のお母さんは冥界の女王さまです。
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拝啓お母さん。これが彼女との出会いです
前書き
久しぶりの更新です。
現在僕は困っています。
何を困っているのかと言いますと迷子になっている姉代わりの三人が見つからなくて困っているのです。
僕は目が見えないので周りの風景が見えません。肌と耳で感じるのは車が行き交う空気の流れと音。人々が行き交う足音と声。あと、何かが動く音と動いた後に感じる冷気。、そしてリズムのいい音楽。
困った。姉代わりの三人はどこに行ったのだろう?
そんな事を考えながら空を見上げる。
「・・・暑い」
日差しが容赦無しに降り注ぐ極東の島国日本の首都である東京。
ヨーロッパで生活していた僕にとってはここの暑さはかなり来るものがある。どこかお店に入って休みたい、けど周りの人に手伝ってもらう為に話し掛けようとするが皆、僕には目もくれずに素通りしていくばかり。
それもそうだろう。車椅子に座って障害者用の杖をついている外国人の子供なんてどうコミュニケーションをと取ればいいのか分からないだろう。仕方ないもう少し我慢して姉代わりの三人を探そうとしたところ
「どうされましたか?」
幼い女の声が耳に入ってきた。声を掛けられたのだと思った僕はキョロキョロと首を回して彼女の位置を探す。
「あの、私はここですよ?」
再び耳に入ってきた戸惑いの感情を孕んだ声。それを耳にしてやっと彼女の位置を掴んだ僕は左耳を声の持ち主である彼女へと向けた。
「だからわたしは・・・あ、そうか」
どうやら彼女は僕が目が不自由だと気付いたようだ
「えっと。こういう場合は・・・。め、めあいへるぷゆ~?」
次に紡がれた言葉は僕の耳元から聞こえた。
おほつかない発音での世界共通語である英語。それに苦笑しつつも問いかける。
「Do you speak English?」
「え? えっと、のぅあいどんと。どぅゆうじゃぱにーず?」
「すこしはなせます」
「よ、よかった~」
安堵した彼女の声に僕は笑顔になる。
「それでどうしたんですか?」
「はい、ドリンクをかえるばしょかすずしいばしょにいきたいのですが」
「だったらそこのコンビニエンスストアに入りましょう。私が車椅子を押しますね」
「おねがいします」
女の子に押されて動き出した車椅子。少しした後に何かが動く振動と冷気を肌で感じて、リズムのいい音楽が耳に入った。どうやらここがコンビニエンスストアらしい。
首を回して周囲を伺っていると後ろからクスクスと女の子が笑う声がした。
「ここは初めてですか?」
「はい、いままでびょういんからあまりでていませんでした」
「そうですか。あ、ドリンクはなにが飲みたいですか?」
「こうちゃをおねがいします」
「ハイ」
「あなたもなにかをとってください。おれいです」
「私のことは気にしないでください」
「うけとってくれるとうれしいです」
「う、それじゃお茶を」
飲み物を手に僕達はレジへと向かう。お会計の際に僕が渡した財布の中身を見て彼女と定員さんが何か驚いていたが。気にしないで彼女に会計を任せる。
そして現在。
「きょうはありがとうございます」
「いえいえ、私も楽しかったです」
人気の少ない海浜公園を僕達は歩いていた。
「けど、どうしましょうか? 身内の人がみつかりませんね」
姉代わりの三人が見つからずにただ散歩という形でただぶらついていた。女の子は困ったように言うが僕は彼女を安心させるように云う。
「大丈夫です。もうそこまで来ています」
ホラ。と僕が云うのに逢わせて周囲に降り立つ三つの人影。その背に翼を生やした三人の女性は僕に駆け寄ってきた。
「ご無事ですかルカ!?」
「探したぞ若!!」
「ルカちゃんが無事でよかったよぉ~」
三者三様の反応を見せる彼女達。やがてそのうちの一人が呆然としている女の子を殺さんばかりの眼光と殺気を孕ませ睨みつけた。
「そなたか。冥界の皇子を連れ去った愚か者は・・・」
冷たい口調に彼女は息を飲む。生きた心地が全くしない。まるで人ではない何かを前にしているようだ。
「本来ならば人間ごとき、妾が罰を下すまでもないが」
その人形は女の子に手を翳して。
「今、ここでし「まってネメ」・・・若?」
僕に声を掛けられ動きを止めた。
「彼女は大罪なんて犯してないよ。むしろ僕を助けてくれたんだ」
「この娘がですか?」
「うん、とても助かったんだ」
「・・・娘」
「は、はい」
「この度は若を助けてもらった事を感謝しよう。そして、先程の非礼、我が名を持って謝罪する」
「い、いえ。とんでもございませぬ。貴方様に頭を下げらるなんて」
「ほう、聡明な娘だ。妾の真名を察したか」
「あはは。どうやらこの国の魔女みたいだね。面白い力をもってるね
「ルカ。そろそろ病院に向かいましょう」
「うん」
僕は三人の内一人に車イスを押されて女の子に近付く。手探りで彼女の手を握るとそれに自分の額をくっつけた。
「この度は僕を助けてくださってありがとうございます。我が名はルカ・セフィーネ。冥界の主を母と父に持つ羅刹の王です。申し訳ありませんが此度見た事は貴女の胸の内に留めておき他言しない事を厳命させていただきます。代わりに貴女が助けを求める時は我が力を持って貴女をお守りしましょう。お名前をおうかがいしてもいいですか?」
「万里谷 ひかりです」
「ひかりさん。昼は草花の下で、夕凪時は日の陰で、夜は闇に向かって僕を読んでください。では、僕達はこれで失礼します」
いつの間にか周囲は闇に包まれ、空には星が輝いていた。その闇に溶けていく僕達三人。いつしか海浜公園には万里谷ひかりただ一人となっていた。
盲目で足の不自由な少年ルカ君が闇に溶けて姿を消した後、おぼつかない足取りで自宅まで帰った。
そして気づけばいつの間にか布団に横になっている私。どうやら夕食もお風呂も無意識に済ませていたようだ。
「ルカ君か・・・」
小さく呟く今日出会った羅刹の君の名前。
今日は驚く事ばかりだ。困っていると思って手助けした男の子がスッゴく美形で同い年ぐらいで、お金持ち。それでも驚くのに更には私達の王である羅刹の君。なんでか神様を従えていたがその神様に謝られて頭まで下げられちゃった。おそらく神様に謝られた一般人はこの世で私、只一人かもしれない。
それでもテンションがあがるのに別れ際にルカ君が言ったあの言葉はまるで騎士のようではないか。
「きゃ~~~~~♪」
耳年増な私だがいざ、自分が対象となるとあまりの恥ずかしさに悶えるのだった。
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