| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

戦国異伝

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第百三十三話 小豆袋その十三

「しかし織田家の武の者は多いがな」
「あの猿は然程ではあるまい」
「では後詰でもあっさりと潰せるな」
「織田の兵は弱いしのう」
「どうということはないわ」
 羽柴の武については誰もが特に思うことはなかった、それで話すのだった。
「朝倉と浅井の兵だけで潰せるか」
「三千の兵、三万でな」
「優にな」
「しかしじゃ」 
 それでもだというのだった、ここで。
「念には念を入れようぞ」
「そうじゃな、今は千載一遇の機会じゃ」
「ここは一気に仕掛けるか」
「では手勢を出そう」
「我等のな」
 闇の中にいるのは彼等だけではないという、他にもいるというのだ。
 そしてそのことを話してそうしてだった。
 闇の中の中央の者がだ、周りにこう告げた。
「それではじゃ」
「はい、この戦で織田信長を倒し」
「それからは」
「まずは都じゃ」
 そこからだというのだ。
「都を闇の手に落としてな」
「それからじゃな」
「天下を全て闇に覆おうぞ」
 周りも中央に応えて述べるのだった。
「我等が待ちに待った時を実現しようぞ」
「かつてまつろわぬ者達として追われ虐げられていたが」
「それが終わる」
「天下を照らす光を塞ぐ」
「その時が来るのじゃ」
「魔界よ」
 中央の者がまた言う。
「この添加は魔界に変わるのじゃ」
「まつろわぬ者達が往来を歩けますな」
「日輪ではなく闇が覆う世ですな」
「それが遂に来ますな」
「あの者を討った時に」
「織田信長は日輪よ」
 それに他ならないというのだ、彼等が異様なまでに憎む彼は。
「天下を照らすな」
「日輪さえ消せば光はなくなる」
「そうなるからこそ」
 その声はどれも暗い情念に覆われていた、そうして。
 闇の中から無数の者達が出た、中央はその彼等に言ったのである。
「ではよいな」
「はい、これから越前と近江の境に向かいですな」
「そのうえで織田の後詰を討って来ます」
「我等の手で」
「兵の姿になっておれ」
 闇の者達にこうも告げる。
「そして夜の闇に紛れて襲えばな」
「我等の手とはわかりませぬな」
「誰にも」
「だからじゃ、織田だけでなくじゃ」
 彼等だけではなかった、ここで気をつけるべきは。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧