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八条学園怪異譚

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第三十六話 美術館にその十四

「ローマ=カトリック教会を怒らせ貴族を怒らせ遂には王権を制限された」
「確かマグナ=カルタですよね」
「イギリス議会はここからはじまると言ってもいい」
「歴史的に重要な王様なんですね」
「あまりよくない意味でな」 
 そうなっているというのだ。
「あの王以降イギリス王家にはジョンという名の王はいない」
 王朝は幾度か代わっているがそれでもなのだ。
「最初にして最後のジョン王だ」
「何かある意味凄いですね」
「イギリス王家では忌まれている名前だ」
 それだけ否定されているというのだ。
「尚ヘンリー八世以降ヘンリーという名の王もいない」
「それも凄いですね」
「どちらも凄い不人気なんですね」
「あまりにもな。ヘンリーは今も王家の名前で使われてはいるが」
 ウィリアム王子の弟であるヘンリー王子が代表であろうか。
「とにかくあの王は人気がない」
「ジョン王、ある意味凄いですね」
「見事ですね」
「ここは英国史を絵画にしたコーナーだな」
 日下部はその王達の姿を見てこのことを察した。
「そしてこの奥がだ」
「何か歌舞伎が見えますけれど」
「派手な服で見栄を切ってる人達が」
「浮世絵のコーナーだな」
 つまり浮世絵から出て来ているというのだ。
「あちらは」
「イギリスの次は日本ですか」
「本当に色々置かれているんですね」
「芸術は一つではない」
 西洋の絵だけではないというのだ。
「だからこの美術館もだ」
「多くの絵があるんですね」
「そうなんですね」
「絵以外にもな」
 三人の横では彫刻達が宴を開こうとしていた、ギリシアの神々の彫刻達が葡萄酒と馳走を出してそれをはじめようとしている。
「こうしてある」
「浮世絵もまた然りで」
「他にもですね」
「これから行く泉の候補地はより凄い」
「シュール=リアリズムですか」
「その世界ですね」
「マグリットやダリの絵もある」
 そのシュール=リアリズムの代表者達の絵がだというのだ。
「それがある」
「それって凄いわよね」
「そうよね」
 二人は日下部の話を聞いて顔を見合わせて話をした。
「マグリットとかダリは中学の美術の授業で習ったけれど」
「その人達の絵まであるなんて」
「浮世絵もだ」
 こちらもだというのだ。
「いいものがある」
「入学の時は何となく聞いててあまり頭に入ってませんでしたけれど」
「あらためて聞くと凄い場所ですね、ここって」
「かなりな、ただしだ」
「ただ?」
「ただっていいますと」
「ここには保育園の子供達も来る」
 八条学園には保育園もある、だから来るのも当然だ。
「だから露出が多いものは置かれていない」
「よくある裸の絵とかはですか」
「そういうのはないんですか」
 二人もその話は納得出来た。
「そういえば今も裸の人はいないですね」
「色々な人はいても」
「裸体も芸術だが流石にあまりにも小さな子供に観せるのはな」
 それはというのだ。
「よくないという判断からだ」
「そういう芸術はないんですね」
「この美術館には」
「面白いものでは退廃芸術がある」
 いわくつきの名前だった、あらゆる意味で。 
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