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ハイスクールG×D 黄金に導かれし龍

作者:ユキアン
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第16話



木場が学園を休むと言った翌日、イッセーが鋼鉄聖衣を調整して欲しいというので一緒にイッセーの家に向かう。

「おや?」

「なんだ、これは!?」

「まさか、光の?」

イッセーの家が見える位の距離に近づいた時、イッセーの家から光の力の波動を感じた。そして、その光の力の近くから懐かしい小宇宙を感じる。そうか、君はやはりその道を歩いているのだな。

「イッセー、分かっていると思うが」

「分かってる。敵意は感じない。まだ話し合いで何とかなるんだな」

「そうだ。ここは私に任せておきなさい」

「頼む」

イッセーの家に上がり、リビングに向かう。そこにはおばさんと、緑色のメッシュを髪に入れている目つきの悪い女性と、昔の印象を残しながらも見違える様に綺麗になった幼なじみが座っていた。

「あら、今日は双葉君も来たのね。懐かしいでしょう?」

「ええ、そうですね。久しぶりですね、イリナ」

「覚えててくれたんだ、双葉兄ぃ」

「イッセーとイリナには手を焼かされましたからね。よく覚えてますよ。イッセーは忘れてますけど」

「イリナ、イリナ?ああ、思い出した。あの写真に写ってた、ってあれ?女だったの!?」

「まあ、あの年代は性別が分かり難いですからね。イリナもやんちゃでしたからね」

「今もあんまり変わらないけどね」

「少しはおしとやかにしてはどうです?昔と違って綺麗になったのですから」

「そんな、綺麗だなんて」

「そうだ、勿体ないぞ。こいつの私生活を見ればそんな言葉出て来ないぞ」

「もう、ゼノヴィアは黙っててよ」

「相変わらずの様で。それにしても急にどうしたのです?今まで手紙の一つも送ってくれなくて心配していたのですよ」

「ごめんなさいね。色々忙しかったし、英語を覚える一貫で英語以外で手紙を書いては駄目って言われてたの。日本に帰ってきたのも用事と言うか仕事で帰ってきたの」

「そうでしたか。この街も色々と変わりましたからね、案内が必要なら連絡を下さい。これ、番号です」

「うん、ありがとう双葉兄ぃ」

携帯の番号を書いたメモを渡す。その後も談笑をするだけでイリナ達は帰っていったが、イッセーとレイナーレのことはバレた様ですね。私もイッセーの鋼鉄聖衣の調整を終えてから帰宅します。それにしてもあれが名高かった聖剣ですか。7つに別れた事でその力を失い、付加能力を付ける事で何とか体裁を保っているだけの駄剣。あの程度なら恐ろしくも何ともない。そんな事を考えながらその日は終わる。
翌日、木場を除くグレモリー眷属全員とイリナとゼノヴィアが部室に集る。私の姿を見てイリナとゼノヴィアが驚いていたが、すぐに元の表情に戻る。イリナ達は教会の任務でこの街を訪れたためそれの事情を説明しにきたようだ。

「先日、カトリック協会本部ヴァチカン及び、プロテスタント側、正教会側に保管・管理されていた聖剣エクスカリバーが奪われました」

「エクスカリバーって一本じゃないんですか?」

イッセーが疑問を口にする。まあ、普通は知りませんからね。イッセーの疑問に部長が答える。

「聖剣エクスカリバーそのものは現存していないわ」

「イッセー君、エクスカリバーはね、大昔の戦争で折れてしまったの」

「大昔の戦争、双葉に心当たりは?」

「生憎だが私に心当たりは無い。まあ現在は破片を利用して聖剣に近い剣を精製していたはずだ」

「その通りだ。今はこのようにな」

そう言ってゼノヴィアが傍らに置いていた布の塊の解き放つ。

「これがエクスカリバー?」

「何故疑問系なのだ?」

「いや、双葉の黄金聖衣に比べると神々しく無いし」

「黄金聖衣?」

「通称パンドラボックスと呼ばれている神器の事ですよ」

「ああ、あのハズレか。あんな物がエクスカリバーより神々しいなど信じられんな」

その言葉に少し頭に来ました。破損していようとも聖衣が生きている限り神々しさは失われないのですから。黄金聖衣を殺す事など並大抵の事では無理です。以前にお会いした魔王様達でも無理ですね。そして実物を見ずにそう決めつけるとは。我々の侮辱と受け取っても良いでしょう。

「高が駄剣ごときが聖衣より神々しい事のほうが信じられませんね」

「エクスカリバーが駄剣だと!?」

「双葉兄ぃ、さすがに私も怒るよ」

エクスカリバーを駄剣呼ばわりした事で一気にイリナ達の機嫌が悪くなりましたが、退く訳には行きません。

「ならば来るが良い!!担い手も未熟な駄剣など恐ろしくも無い!!」

「貴様は悪魔では無いようだが、そんな事は関係ない!!この場で滅してくれる!!イリナ、良いな!!」

「うん。双葉兄ぃ、覚悟してもらうよ!!」

ゼノヴィアとイリナが聖剣を手に持ち、斬り掛かってくる。私は二人の剣の軌道上に双子座聖衣のパンドラボックスを呼び出し受け止める。

「何!?破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)が受け止められるだと!?」

「ならこれで!!」

イリナの持っている聖剣が形を変えて私を突き刺そうとする。パンドラボックスから双子座聖衣が飛び出し、オブジェ形態のままでそれを受け止める。

「嘘!?」

「甘すぎるぞ!!」

二人が一度距離を取ると同時に聖衣を纏い、小宇宙を燃やして威嚇する。

「そう言えば自己紹介がまだだったな。私は双子座(ジェミニ)の双葉、聖闘士を纏める教皇だ」

「せ、聖闘士だと!?」

「双葉兄ぃが、あの神話の、しかも教皇!?」

「ほぅ、悪魔側よりも情報を持っているようだな。ならば、その恐ろしさも理解しているな」

「くっ、まさかこんな極東にこんな奴が居るとは、だが」

「私達の神の為にも、ここで」

二人が再び飛びかかって来ようとするがその前に勝敗は決まっている。

「ネビュラストリーム。この部屋の大気を全て掌握させてもらった。指一本動かす事はさせんし、イリナの聖剣もその形以上の大きさにさせん」

「う、動けん」

「そんな、こんな所で、負ける訳には」

「いいや、負けたのだよ。貴様達が未熟だったから」

私は右手に蒼い炎を発生させて二人に見せつける。

「この炎は魂をも燃やし尽くす。どれだけ神を信じていようと関係なく、あの世にすら送らない究極の炎と言っても良い。ああ、任務の事は私が引き受けよう。明日にでも聖剣は教会本部に届けておこう。心配する事は無い。安心して死ぬと良い」

「双葉!!止めなさい」

部長が私を止めようとするので、部長達の動きも封じる。

「部長達に迷惑はかけませんよ」

「双葉、お前!!くそっ、ドライグ」

イッセーの左腕に赤龍帝の篭手が現れ、倍化の力を溜めようとする。さすがに今のイッセーに倍加されればネビュラストリームを破られてしまいますね。仕方ありません。

「させるか幻朧魔皇拳!!」

「なっ、くそ!?双葉、また記憶を弄りやがったな!!」

「大人しくしておけイッセー。記憶も後で元に戻してやる。邪魔が入ったが覚悟は良いな。幼なじみの情けだ、痛みを感じる事も無く送ってやろう。遺言はあるか」

「……例え、魂まで燃やし尽くされようとも我らが神は私達をお救いになってくれる」

ゼノヴィアがそう言うが、それは甘すぎるな。

「残念だったな。私達聖闘士は神々をも討つ戦士だ。貴様らを救うというのなら私はその神をも討とう」

「くっ、この化け物が!!」

「化け物で構わないさ。化け物らしい対応をさせて貰うだけだ」

それと同時にゼノヴィアに積尸気鬼蒼焔を放ち、ゼノヴィアは悲鳴をあげる事すら出来ずに魂まで燃やし尽くされる。

「さあ、次はイリナだ。今、謝罪すれば許してやらない事も無いぞ。お前は大切な妹分だからな」

「……糞喰らえだよ。私は我が神を信じる」

「……そうか、残念だよ」

そしてイリナにも積尸気鬼蒼焔を放ち、燃え尽き、世界が割れる。

「「「「「「「え?」」」」」」」

「鳳凰幻魔拳。悪夢(ゆめ)は見れたか?」

「今のが夢?確かに身体が焼かれた感覚があったはずなのに」

全身に冷や汗をかきながらゼノヴィアが手を握ったり開いたりして自分の身体の無事を確かめる。

「本来なら精神を殺す技を殺さないギリギリまで抑えた。しばらく休めば何の問題も無い。先程のは夢だったが、現実でもある。二人とも未熟だ。故に無駄死にする可能性が高い。エクスカリバーを盗んだ者が何を考えているかは分からないが、二人が無駄死にする事で今の休戦状態が変化するのは聖闘士として見逃す事は出来ない。何より、二人共に言えるが精神面が脆すぎる。私はそれが心配だ」

「精神面が脆いだと」

「我が神が救ってくれる。その言葉で死への恐怖を紛らわせていたようだが、その神が既に死んでいると思った事はないのか」

「ふん、そんな事ある訳が「前大戦では悪魔側は四大魔王を、堕天使側は幹部の大半を失っているのだぞ。天使勢に被害が無いと本当に思っているのか?ハッキリ言ってやろう。聖書の神は既に討たれている。二天龍によってな」馬鹿な!?」

「そうだろう、ドライグ」

『ふん、何故貴様がそれを知っているかは知らんが事実だ。これはどの勢力でもトップ陣の間では周知のな』

「「そ、そんな」」

目に見えて二人が気落ち、というには言えない位に落ち込み泣きながら天を仰ぎ始め十字を切ったりする。十字を切るたびに私以外のグレモリー眷属が苦しそうにする。この現状を招いた原因として私が二人を預かる事になってしまったが仕方ない事だろう。というか十字を切ったり、聖句を唱えられるのが結構辛いらしい。それにしてもやはり脆いな。まあ私も人の事は言えませんが。
二人をアナザー・ディメンションで自宅に運び、イッセー達が泊まりに来た時に貸している部屋に通す。夕食を持って行った時と下げに行った時も様子は変わらず、夕食にも手は付けられていなかった。二人の事を気にかけながらも私はこれと言った対応が取れていない。二人には冷却期間が必要だ。これは私自身の経験だ。少し落ち着いて、それから何かの切っ掛けがあれば立ち直る事が出来るのだが。二人が自棄を起こして変な行動をしないかだけを確認しながら時が過ぎるのを待つ。翌日も朝食を持っていったのだが、手をつけた様子は無かったが昼食には少しだが手を付けてくれたようだ。まあ夕食には手を付けていなかったけど。日も沈み闇が支配するリビングで月明かりの中、ワイン(冥界産)を飲んでいるとイリナが部屋から出てきた。

「イリナか、どうした?」

「双葉兄ぃ」

イリナは私に抱きつきながらずっと泣き続ける。昔、転んで泣いていた時の様に抱きしめてその背を撫でてやる。

「神は、神は本当に」

「死んでいる。だが神の作ったシステムは残っている」

「だけど、神は居ない。私が信じてきたものはただの幻想で」

「違うな。間違っているぞイリナ」

「え?」

「信仰とは何処までも純粋な物だ。見返りを求めず、心の拠り所に祈りを捧げる。それの対象が本当に存在している必要などない。教会関係者なら実際に天使達に会う事は出来る。だが、一般人はそうではない。それにも関わらず祈りを捧げる。それは何故か?簡単なことだ、彼らは信じているのだ。自分たちが心の拠り所にしている神を。他人とは違う神かも知れなくとも、自分の信じる神を。イリナ、お前が信じる神とは会った事も無い、既に居なくなった神か?それともお前が祈りを捧げ続けてきた神、どちらだ」

「私の神?」

「私は常に弟子に教え続けてきた言葉がある。意思は力だ。強固な意志は力に直結する。イリナの信仰(意思)はその程度で折れる物なのか?」

「私の気持ちも分からずに、そんな事言わないで!!」

「……私は信じていた者に直接裏切られてしまった」

「え?」

「聖闘士とはこの世界が産まれる前、そしてその前の世界に存在していた女神アテナを守るための集団だ。私はその前の世界でアテナに仕えていた聖闘士だ」

「何を、言っているの?」

「分かり易く言えば私は前世の記憶を持って産まれた異端者なのだ。そして私は前世において信じていたアテナに裏切られ、全てを失った。己の全てを失ってしまった私は抜け殻だった。そこから救ってくれたのが幼き頃のイッセーだ。そしてイッセーやイリナと暮らしていく内に私は多くの物を取り戻していった。そしてこちら側に関わり、聖衣を取り戻した私は新たな思いを手にした。私を裏切ったアテナが掲げていた『地上の愛と平和の為に』その言葉に間違いは無い。そこだけは聖闘士として誇っても良いと。だからこそ、私は己が許す範囲で手を差し伸べる。私は自信と誇りを持って聖闘士を名乗ろう。どれだけ侮蔑されようと、私は地上の愛と平和の為に戦うと宣言しよう」

それが私の絶対の意思。未完成だった私を完成へと導く根源だ。

「もう一度聞く、イリナ。お前の信じる神とはなんだ」

「私の信じる神、私が信じるのは、私が信じるのは、お父さんが、私が信じ続けてきた神!!」

先程までの弱々しい気配は鳴りを潜め、本来のイリナらしい顔に変わる。

「ふっ、もう大丈夫なようだな」

「うん、やっぱり双葉兄ぃは頼りになるね」

「いくらでも頼ると良い。私は兄貴分ですからね」

「ありがとう。はぁ~、安心したらお腹空いちゃった」

「少し待っていなさい。すぐに食べれる物を用意してあげますから」

「うん、お願いね~」

簡単な食事を作り(ついでに摘みも)、二人でそれを片付けて部屋に戻ろうとした所で外から強大な気配が感じられる。二人でベランダに飛び出すとそこには漆黒の翼を広げた男が宙に浮かんでいた。

「貴様、ここがグレモリー領だと分かっているのか」

「無論だ。そして貴様に用はない。用があるのはそこにある聖剣のみ」

そう言うと壁を破って神父が布に包まれたままの聖剣を二本持って飛び降りていった。ふむ、つまりは。

「私の敵に回るか」

適当に殺気を振りまいてみる。

「ふはははは、心地よいな」

「ただの戦闘狂(変人)か」

「戦闘狂の何が悪い。戦いの中でこそ命は輝く。これが私が見いだした真理だ」

「どうでもいいな。それで貴様は一体誰だ」

「おっと、自己紹介がまだだったな。私はコカビエルだ」

「グレモリー眷属兵士の兵藤一誠の仮の使い魔、神代双葉」

「ほう、ただの人間のくせにアレだけの殺気が出せるか。中々おもしろい。お前も私のパーティーに招待してやろう」

「パーティー?」

「なに、私は戦闘狂だ。だが、今の情勢では小規模な小競り合いは起きても戦争など起こり様が無い。だからこそ教会から聖剣を盗んでみたのだが、送られてきたのは雑魚と未熟な聖剣使いが二人だ。ミカエルは戦争を起こすつもりは無いようでな。そこでグレモリーの根城である駒王学園を中心にこの街で暴れさせてもらおうと思ってな。そうすればサーゼクスも出てくるだろう」

「つまりは、再び大戦を起こす。それが目的なのだな」

「そうだ、楽しめそうだろう。既にグレモリー達には伝えてある。では待っているぞ」

そう言ってコカビエルは去っていった。同時にゼノヴィアを確認しに部屋に向かうと気絶しているゼノヴィアを見つける。

「イリナ、ゼノヴィアの事は任せる。コカビエルの相手をするかどうかはそちらに任せる。私は部長達に合流する」

「分かったわ。気をつけてね」

壊された壁から飛び出し、携帯で木場に連絡を取る。

「木場、お前の復讐の対象となるものが学園に揃ったぞ。時間は残されていない。答えは見つかったか」

 
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