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八条学園怪異譚

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第三十六話 美術館にその十

「絵画だけでも油絵や水彩画にだ」
「あと他にもですよね」
 聖花も日下部にこう問う。
「水墨画や浮世絵も」
「和漢洋とな」
 実に様々な絵があるというのだ。
「他にも彫刻等もある」
「彫刻が動いたりします?」
 愛実は彼女達にとての本題を問うた。
「そうしたことは」
「ある」
「やっぱりそうなんですね」
「彫刻が動き絵から描かれたものも出て来る」
「その絵もですね」
「夜の十二時になればな、そうなる」
「もう少しですね」
 聖花は腕時計を見て二人に言った、見れば時計の針は十一時半をかなり回っている。
「それは」
「そうだな、では美術館に着いて暫くすればだ」
「絵から出て来て彫刻も動いて」
「中々面白い場所になる」
「そうなんですね」
「そしてその絵の中の一枚がだ」
 日下部も話を本題に進める、泉の話に。
「君達が探しているその泉かも知れない」
「その絵ってどんな絵ですか?」
「絵っていっても色々ですよね」
「シュールリアリズムの絵でだ」
 所謂超現実主義、二十世紀にマグリットやダリが描いていたあの絵だというのだ。
「扉が描かれている絵だ」
「ダリみたいな感じですか?」
 聖花は日下部の話を聞いてこの画家の名前を出した、そのマグリットと並び称されているシュールリアリズムの雄である。
「あんな感じで」
「あそこまで不気味ではない」
 ダリの感じではないというのだ。
「むしろマグリットだ」
「そちらですか」
「そうだ、彼の絵の方だ」
 聖花だけでなく愛実にも話す。
「その絵はな」
「そうですか」
「マグリットの感じですか」
「どちらかというとな、ダリとはまた違う配色で描くものだ」
 同じシュールリアリズムといってもダリとマグリットではかなり違う、ダリの方が不気味で人に不安感を与えるだろうか。
「その画家はな」
「そういえば入学した時に一回美術館に行ったけれど」
「それからはね」
 二人も美術館には行ったことがある、入学の時に先生が彼女達をクラス単位で学園内の様々な場所二連れて行ったのだ。
 それで美術館にも入っていた、だがそれでも。
「ちょっと回っただけでね」
「全体的な広さもね」
 それが把握出来る程もなかったというのだ。
「今回が真面目に行く最初?」
「そうなるわね」
「君達はかるた部だったな」
 日下部はその二人にこのことから問うた。
「それなら美術館にも縁がないか」
「図書館にはよく行きますけれど」
「そっちは」
「そうだな、だがこの学園には美術館もありだ」
 そしてだというのだ。 
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