MASTER GEAR ~転生すると伝説のエースパイロット!?~
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017
空戦用アンダーギア、「ロックバード」は人間の下半身に鳥の胴体をくっつけたような外見をしたアンダーギアだ。展開すれば機体の全長と同じくらいになる翼の下に状況に応じた武装を装備して、速度を活かした一撃離脱の戦いを得意としている。
どのような偶然か今ここにいるゴーレムとアンダーギアは似通った姿をしており、鳥の姿をしたゴーレムの群れと鳥の姿をしたアンダーギアの部隊が空の戦場で戦っていた。
ガガガガガガッ!
合計十六体のロックバード部隊は、翼の下に装備したビームマシンガンを放って今のところ一方的にゴーレムに攻撃を行っていたが、それらの攻撃は全てゴーレムの体に弾かれてダメージを与えられなかった。
『た、隊長! 攻撃が! 攻撃が通用しません!』
「無駄口を叩くな! 攻撃を続けろ!」
『は、はいっ!』
ロックバード部隊の隊長はコックピットに聞こえてきた部下の言葉に叫び返すと、ゴーレムに向けて攻撃の引き金を引く。
(くっ! 部下の言う通り、こちらの攻撃はゴーレムに通用していない。このままではこちらが不利か……っ!?)
バシュン!
ロックバード部隊の隊長が自分達の不利を悟ってこれからどうするか思考を巡らせようとしたその時、遥か後方から一本の光の矢が飛んできて一体のゴーレムを消滅させた。
「……っ! 高出力のビーム攻撃? 援軍か?」
隊長がビームが飛んできた方向を調べると、五十キロ先の空に銃を構えた緑色の機体の姿が確認できた。
「何だあの機体は? あの姿は……あれはまるで伝説の機体のサイクロ……!?」
バシュン! バシュン! バシュン!
隊長の言葉を中断させるかのように緑色の機体はビームライフルを連射し、それによって瞬く間にゴーレムの群れの半数を消滅させていく。
「ゴーレムの半数が消滅だと……!? あの機体一体だけでか!? ……いいや、それよりもお前ら! この機を逃すな! 攻撃を再開しろ!」
『了解っ!』
隊長の言葉にゴーレムの勢いに気圧されていた部下達も勢いを取り戻し、ゴーレムに向けて攻撃を行う。
ガガガガガガッ!
十六体のロックバードの翼から光の雨が放たれてゴーレムの群れを襲うが、先程と同じくゴーレムにダメージを負わせることは叶わなかった。
「ちいぃ! やはり通用しないか! せっかく数が半減したというのに……ん?」
歯噛みしたところで隊長は、自分達がいる空域に例のゴーレムを消滅させた緑色の機体が猛スピードで近づいてきているのに気づいた。
「あの機体は……」
『こちらベット・オレイユ軍特別遊撃隊隊長イレブン・ブレット少将。これから貴官らを援護する』
「なっ、何だと!?」
緑色の機体が外部音声で名乗った名前に、隊長だけでなくロックバード部隊の全員が驚きの声をあげた。
『た、隊長……。今あの機体、イレブン・ブレット少将って……』
「ああ、確かにそう言ったな……』
震えるような声の部下の通信に、ロックバード部隊の隊長が固い口調で答える。
今から遥か昔にゴーレムの大群からこの宇宙を救ったベット・オレイユの英雄、イレブン・ブレット。その名前はもはや一つの「力」であり、ロックバード部隊は敵のゴーレムを前にしながらも戦場に乱入してきた緑色の機体、イレブン・ブレットが乗るサイクロプスに目を離せないでいた。
「……だが! イレブン・ブレットは二百年も前の人間だ! それに特別遊撃隊なんて部隊、聞いたこともないぞ! おい、お前! お前は一体何者なんだ?」
『……はあ、まったく。派手に戦えばいいんですよね? 派手にヤれば……』
隊長が呼びかけるが、サイクロプスは聞こえていないようで外部音声のまま若い男の声で小さく愚痴をこぼす。
「何? 今、何だって?」
『ハルピュイア!』
サイクロプスが隊長の声を無視して叫ぶのと、左右の腰にあるアーマーがゴーレムに向けて発射される。
『アエロー! オーキュペテー! ケライノー! ポダルゲー!』
バキキン!
サイクロプスの声を合図にして左右の腰のアーマーはそれぞれ二つに分かれると、まるで生きている猛禽類のように縦横無尽に空を翔る。そしてゴーレムに接近すると、伝説上の人面鳥の名で呼ばれた腰のアーマーはその先端からビームを放ち、確実に急所を貫いて四体のゴーレムを撃ち落とした。
『……サイクロプス、マルチロックオン完了。ヘラクレス、リミッター解除。ギガースクロー、スタンバイ……』
ビシュン! ビシュン! ビシュン! ビシュン!
四つとなった腰のアーマー、独立可動ビーム兵器「ハルピュイア」がゴーレムを撃ち落としている間に、サイクロプスは片手で右手の銃を構え、左手をゴーレムの群れに向ける。
『………………当たれぇ!』
ガガッ!
ヘラクレスから放たれる閃光がゴーレムの群れを凪ぎ払い、ギガースクローの五指から飛来するビームの刃が打ち砕き、ハルピュイアが撃ち落とす。
サイクロプスは装備している武器を全て使ってゴーレムに攻撃を行う。その時間は僅か十秒。しかしそれでも目の前の敵を殲滅するのには十分すぎる時間といえた。
『これで終わりだ』
そして十秒後。サイクロプスが攻撃を止めると、戦場にはゴーレムの姿は一体も存在していなかった。
「……な、百体以上いたゴーレムが……全滅だと?」
『………』
サイクロプスの圧倒的すぎる戦いに隊長を除くロックバード部隊は誰も声を出せないでいた。
あまりにも呆気ない戦いの終わりだったとロックバード部隊の隊長は思う。自分達が命がけでゴーレムの群れと戦っていたと思ったら、突然過去の英雄の名前を名乗る機体が現れて、十秒程でゴーレムを全滅させたのだ。それもたった一機だけでだ。……まるで訳がわからなかった。
『……戦闘終了。これより帰艦する』
ロックバード部隊が頭の理解が追い付かず固まっている中、ゴーレムの全滅を確認したサイクロプスはロックバード部隊をおいてその空域から離脱すると、母艦であるリンドブルムに帰艦していく。
この戦いの記録はすぐに軍全体に知れ渡り、最終的に民間のメディアにまで伝わるのはそう時間を必要としなかった。
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