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久遠の神話

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第四十八話 会食その十一

「自衛隊はアメリカ軍とは比べ物になりません」
「そんなに違うんですか!?」
 高橋、常に工藤と共にいる彼もこの言葉には驚いた。
「確かにアメリカ軍は圧倒的ですけれど」
「そうだ。それでもだ」
「自衛隊の料理ってアメリカ軍と比べると」
「大きく劣る。普通にそうした安さでバイキング、それもかなり多彩なメニューを用意できるまでのものはない」
 これが自衛隊の現実だった。
「アメリカ軍が凄過ぎるのではなく」
「ひょっとして他の軍隊もですか」
「フランス軍だったか。何時でも自由にジュースが飲める様に艦内に様々なジュースが入ったポットが幾つも置かれていた」
「それも凄いですね」
「イタリア軍の食事は豪華だ」
 今では日本よりも国力では下とされているこの国々でもだというのだ、
「パスタにオードブル、メインディッシュ、ジェラートにワインもつく」
「量は」
「勿論かなりのものだ」
 それも自衛隊とは比較にならないというのだ。
「本当にな」
「自衛隊の料理ってよくないんですか」
「否定できない」
 難しい顔での言葉だった。
「どうも自衛隊はそうしたところには予算も考えも回らないのだ」
「普通に外の世界の方がよくないですか?」
「所謂娑婆だな」
「はい、こうした外の世界の方が」
「自衛官の生活は質素だ」
 武士ではないがそうなっているというのだ。
「ましてや士官室のモニターでアイスクリームを食べながら映画を観ることなぞない」
「それ何処の軍隊ですか?」
「これもアメリカ軍だ」
 海軍の話である。
「凄いと思うな」
「そうですね。この地連とかだと考えられないです」
「地連の中はどう思う」
「質素ですね」
 高橋は思ったことをそのまま話す。
「お役所の中でもとりわけ」
「そう思うな。質素ではなく金が回っていないのか知れない」
「兵器に回るんですか?」
「六割が人件費だ」 
 自衛隊の予算はそれだけの規模がそれに回されているのだ。
「そして兵器や設備に予算を回すが」
「防衛賞の予算ってただでさえ少ないですよね」
 そもそもここがアメリカ軍と違う。アメリカ軍は世界の警察としてアメリカ政府がかなりの予算を回しているのだ。
 それに対して自衛隊はというと。
「少ないですよね」
「一応世界規模だとな」
「多い方ですか」
「国防費では世界三位だ」
 アメリカ、ロシアに次いでだ。最近では中国も入るだろうか。
「ひょっとしたら四位だ」
「絶対に多い方ですよね」
「しかし兵器も高く」
 工藤の顔はこの上なく苦いものになった。
「人件費も馬鹿にならない」
「じゃあやっぱり」
「自衛隊はその数も少ないが」
 一億二千万の人口で二十五万程度しかいない。人口の割合から考えれば相当な少なさであることは否定できない。
「もっともこれは日本軍もだったが」
「えっ、昔の日本軍もですか」
「数はかなり少なかった」
「徴兵制だったから数は揃えられたんじゃ」
「戦争中はともかく平時は数が少なかった」
 そうだったというのだ。 
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