万華鏡
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第三十五話 厳島神社その十一
舞台の前に来た、舞を舞う場所だ。
それを見てだ、景子は四人に言った。
「ここで神様に捧げる舞を舞うけれど」
「ここでなのね」
「舞うのね」
「そう、ここでなの」
海の中に浮かぶ様なそこでだというのだ、景子は神社の中央にあるその舞台を観ながら四人に話すのである。
「絵になるでしょ、想像しただけで」
「あのさ、普通の神社じゃねえだろもう」
美優は景子の話を聞いて舞台、やはり赤と白の一段高くなっている高舞台だ。そこからは平舞台も見える。
その二つの舞台と海を観ながらだ、美優は言うのだ。
「ここで舞うのかよ」
「そうなの」
「もう完全に神様の世界だよ」
それならというのだ。
「有り得ない位綺麗なんだろうな」
「踊るのは巫女さんよ」
「だったら余計にな」
「凄いでしょ」
「想像したらな、特にな」
美優は今度は周りも観る、今は昼だ。だが、だった。
「夜に。灯りの中で舞ったらな」
「もう余計にでしょ」
「神様の世界だよな」
真の神秘、それが生じるというのだ。
「それ聞いたらどうしてもな」
「観てみたくなるわよね」
「あそこだってな」
美優は平舞台も観た、広く白いその場所もだった。
「海の中に浮かんでるからな」
「幻想的よね」
「神秘的っていうかな」
美優が表現したのはこちらの言葉だった。
「そんな感じだよな」
「神秘的なのね」
「ああ、景子ちゃんはどう思う?」
「私はどっちかっていうと幻想的だけれど」
「神秘的じゃないか」
「多分。私は神社にいるから」
そして実際に巫女をしている。神と身近にいる立場だからだというのだ。
「そこで暮らしてるしね」
「しかも巫女さんだしな」
「神社が生活の場だからね」
「だから神秘的って感じはしないのか」
「そうなの、けれどね」
それでもだとだ、景子は自分が感じたものを話した。
「この世にはないってイメージだから」
「幻想的なんだ」
「ええ、そっちなの」
景子が思うにはというのだ。
「そう思うわ」
「そうなんだな」
「そう。それと」
「それと?」
「舞うだけじゃないから」
それに加えてだというのだ。
「楽器もあるから」
「和楽器か」
「そう、雅楽ね」
楽器といってもこれだ、日本古来のそれだというのだ。
「雅楽なのよ」
「そういえば今回の合宿にも雅楽部来てたな」
美優は雅楽と聞いてこのことを思い出した、八条学園には雅楽部もあって活発な活動が行われているのだ。
「じゃあ雅楽部にとっては」
「観て」
景子は自分達のすぐ左手に顔をやった、見ればそこには雅楽部の面々がいた、その彼等は今どうしているかというと。
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