銀色の魔法少女
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第十八話 真相
side フェイト
彼、いや彼女からの衝撃のカミングアウトから一夜明け、私は海上で用意をしていた。
『フェイトー、準備はいい?』
彼女から通信が入る。
『いつでも、そっちは?』
『こっちもアルフも準備よし、いつでも封印できるよ』
『じゃあ、始めるね』
私は、バルディッシュを体の芯に合わせるように垂直に構える。
「アルカス・クルタス・エイギアス、煌きたる天神よ、今導きの元、降り来たれ、バルエル・ザルエル・ブラウゼル……」
心を澄ませて呪文を唱える。
それに呼応するかのように天が荒れ、雷が鳴り響く。
「撃つは雷、響くは轟雷、アルカス・クルタス・エイギアス!」
バルディッシュを振り下ろすと、幾つもの雷撃が、海に落ちていく。
数瞬後、三つの光の柱が海から飛び出してくる。
ジュエルシードが発動した証拠だ。
『さあ、始めようか』
『は、はい』
私は汗をぬぐい、それらを封印するためにそれぞれの目標に向かって飛んでいった。
side エイミー
「あの子なんて無茶を!?」
「いや、あながち無茶じゃないかも」
クロノ君が隣でそう呟く。
「あ、あの子!」
フェイトちゃんの隣に並び立つ黒い子は、この前来てたシグルドとかいう子だった。
「あいつと協力するなら、これくらいはなんとかできるだろう、ほら、もう一つ終わった」
私が画面に目を戻すと彼が一つ目のジュエルシードを封印したところだった。
「じきに全て終わる、その前に彼らを確保するからなのはにもそう伝えて!」
「了解、じゃあクロノ君頑張ってね」
side 遼
『はい、これでシューリョー』
三つ目のジュエルシードを封印してフェイトに渡す。
「あの、今更ですが、本当に全てもらっていいのでしょうか? これではあなたにはなんのメリットもありませんけど」
『いいのいいの、一応見えない形ではあるけど私にも得が、あるかもしれないことだからさ』
途中で考え直したら、少し自身がなくなってきた。
これで全てのジュエルシードの封印は完了。
管理局が十四で、フェイトが七。
ちょうど倍の差があるが、これだけあればあいつの計画を始めるためには十分だろう。
そして、今のを見ていたはずの管理局ももうすぐ到着するはずだ。
結構強引だけど、これでこの場にこの事件に関わった全員?が集まる。
そう、全員が。
「そこまでだ!」「フェイトちゃん! シグルドさん!」
予想よりちょっと遅れてクロノ、なのは、ユーノが現れる。
「ほう、遅かったではないかもう封印は終わってしまったぞ」
「そんなことはどうでもいい! 君たちをロストロギア不法所持の疑いで拘束させてもらう」
「……なるほど、我のことも大まかにだが察しがついていると言うことか」
いつばれたかはわからない。
最初からかもしれないし、今さっきかもしれない。
どちらにしても、私は慎重に行動していた。
その上で彼はそこまでたどり着いた。
まあ、流石に正体まではバレてはいないだろうが、流石は執務官と言うべきか。
「だがの、本当に少し遅かったな、魔力が疲弊している我らでは主らには適わなかっただろう」
「なんだと、君は――」
「ほら、来たぞ」
天を裂き、大地を砕く嵐が、私たちと彼らの間に降り注ぐ。
「何!?」「きゃぁああああ!」
二人はなんとかガードできたようだが、ユーノのいる所まで下がることになり、結果私たちと離れてしまう。
「やはり来たな、小童」
「お前か、今度はなんのつもりだ」
あいつ、確かレイが私に怒気を含んだ目を向けてくる。
まあ仕方がない。骨折させたり、腕を凍らせたりしたらそうなるか。
それに、私もこいつを許せないしね。
「さて、役者が全員揃ったところで、この茶番劇に幕を下ろすとしようか」
side ALL
「茶番だと?」
最初に反応したのはクロノだった。
「そう茶番じゃ、最初から最後まで全てがこやつの思い通りというわけじゃよ」
遼はそう言って、剣をレイに向ける。
「えっと、何?」
なのはは急な展開について行けず、頭が混乱している。
「なんで、私は母さんのために」
混乱していたのはフェイトも同じだった。
彼女はプレシアに頼まれてジュエルシードを集めていた。
それがレイの思惑通りとはどういうことか、理解できなかった。
「何、簡単なことじゃ、おっと今、局員がこやつらのアジトに突入したようじゃぞ」
「何!? 本当かエイミー!」
『ちょ、ちょっと待って! うん、確かにうちの局員が出動した形跡がある! うそ、なんで!』
エイミーが慌ててこの場にその映像を映し出す。
そこには映ってはいけない人物もいた。
「「「「「『え!?』」」」」」
レイと遼を除く全員が目を疑った。
そこにはもう一人のクロノ・ハラオウンの姿があったからだ。
「馬鹿な! 僕はここにいるぞ!」
「え、その、え、え、ふええええええええええええええ!?」
「えっと、双子だったの?」
「まさか、変身魔法? いや、それだけで管理局を黙せるなんて」
各自それぞれ思いのまま呟く。
そうしていると、あちらのクロノが遼に話しかける。
声も仕草も、クロノそのままだ。
ただ、遼に対する態度だけが違っていた。
『命令通り、今回の事件に関する目的と手段、それとフェイト・テスタロッサに関する資料を入手しました』
「え? 私?」
フェイトが驚くが、それを無視して遼は続ける。
「ご苦労、でアレは?」
『はい、今映します』
画面の中の風景が動く。
そこにはフェイトの心を打ち砕くには十分すぎるほどの光景が映し出された。
「う、そ、……なん、で、だって、」
信じられなかった。いや、信じたくなかった。
だって、そこに映っていたのは、
『プレシア・テスタロッサ、事件の首謀者にして、そこにいるフェイト・テスタロッサの生みの親の遺体だ』
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