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銀河転生伝説 ~新たなる星々~

作者:使徒
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第11話 ティオジアの憂鬱


グリルパルツァー艦隊の敗北とグリルパルツァー大将戦死の報は直ちにアドルフの元へと伝えられた。

「グリルパルツァー艦隊が敗北しただと!?」

「はっ、グリルパルツァー大将はダレダン星域にて反乱軍を撃破後、援軍として駆け付けて来たティオジア連星共同体の艦隊と交戦。戦死された模様です」

「そうか……グリルパルツァーは逝ったか。それにしてもティオジア連星共同体か……小国が寄り集まっただけの烏合の衆だと思っていたが、どうやら認識を改める必要がありそうだな」

「グリルパルツァー提督を破った敵将は連星艦隊の総司令官レオーネ・バドエル元帥とのことです。レオーネ・バドエルは元々、共同体の加盟国の一つであるウェスタディア王国宇宙艦隊の総司令官を務めていた人物で、『シャラーゼアの光の矢(アレオ・アグ・シャラーゼア)』『ウェスタディアの双星(の片割れ)』などの異名や自軍の10倍以上の敵軍を撃退するといった戦歴を持つ『英雄』だそうです。また、あのオリアス皇子に何度も煮え湯を飲ませた人物でもあるとか」

「なるほど、同数の兵力ではグリルパルツァーには荷が重い相手であったようだな。だが、所詮1人の英雄だけであの広大な戦線を支えることなど出来まい。10倍の敵を撃退というのも、地形効果か何かを活用した結果だろうしな。でなければ相手がよほど無能であったか……」

「アルドゥオという広大な小惑星帯に囲まれ電磁嵐の激しい要害宙域に引きずり込み、旗艦を討つことで勝利したとのことですが……」

「如何に名将といえど倍する敵を正面から撃ち破るのは難しいからな。いや、名将であるからこそ正面切って戦わない……とも言えるか」

「その作戦を考案したのは双星のもう片割れであるアルベルト・アルファーニとのことです。彼は現在ウェスタディア王国宰相の地位に付いてますな」

「なるほど、しっかりと役割分担が出来ていたという訳か。だが、今現在アルファーニは王宮にあって、戦場に出張って来るのはバドエルのみ。これは好機と言えるのではないかな?」

「小官もそのように思います。しかし、彼がウェスタディア王国の実質的なNo2にあるということは、戦場でバドエルが十分な手腕を振るえるということでもあるかと」

「ふむ、そこらへんは共同体としてありがちな足の引っ張り合いで行動に枷を嵌めてもらいたいものだが……」

クナップシュタイン大将からの通信が入ったのは、そんな時であった。

『陛下、どうかグリルパルツァーの仇を……私にお与え下さい!!』

クナップシュタインとグリルパルツァーは良き親友であり、ライバルであった。
その片方(グリルパルツァー)が戦死したのである。
残されたクナップシュタインが復讐戦を望むのは、ある意味当然と言えるだろう。

「……いいだろう。クナップシュタイン、今日から卿を上級大将とする。グリルパルツァー艦隊の残存戦力4000隻を麾下に加えグリルパルツァーの無念を晴らせ。だが、今はその時では無い。いずれ機会を与えるからその時を待て。短気は起こすなよ」

『はっ!』

こうして、クナップシュタインは上級大将へと昇進し、12000隻の艦隊を率いることになった。

「よろしかったのですか?」

「予定を多少繰り上げただけのことだ、特に問題あるまい」

「と、申しますと?」

「年末の人事異動でクナップシュタインは昇進予定だったということさ、グリルパルツァーも含めてな。だから………ふむ、この際だ、他も繰り上げるとしよう」

「は?」

「シューマッハ、スプレイン、フィッシャーの三大将を上級大将に昇進させ、それぞれ12000隻の艦隊を指揮させよ。後、オダワラ要塞のアッテンフェルト艦隊もブラウヒッチ艦隊と入れ替えに本国へ戻せ」

「アッテンフェルト? アッテンボローの間違いでは?」

「……ああ、そうだった。似た名前だったから間違えたわ」

「…………」

「それは置いておくとして、年が明けたら(まだ半年近くあるが)、ファーレンハイト、ミュラー、ケンプ、パエッタの艦隊はこちらへ戻し、アフドレアス、オットー、ガーシュインの3個艦隊を代わりに派遣する」

「確かに、将兵たちの疲労や士気の面でもそれが妥当でしょう」

「派遣艦隊には戻る前に一働きしてもらうがな……」

そう、アドルフは意味ありげに呟いた。


* * *


ティオジア連星共同体の本部が置かれているティオジア星系第4惑星ティオジア。
そこで加盟国による首脳会議が開かれ、一つの議題について論議が行われていた。

すなわち、オリアス皇子率いるロアキア統星帝国(の残党)を支援するかどうかである。

ロアキアを上回る国力を持つ銀河帝国と事を構えるべきではないという意見も多かったが、実際のところエルダテミア問題で既に事を構えてしまっている。

エルダテミア共和国を共同体に加えたどころか銀河帝国の1個艦隊を司令官の戦死というオマケ付きで半壊させているのだ。
この代償は生半可なものではないだろう。

なにより、銀河帝国がエルダテミア共和国を認めていない以上、平和裏に事を収めるにはエルダテミア共和国を切り捨てることが前提となる。
しかし、それを一度でも行ってしまえば共同体内で相互不信を発生させることとなり、如いては共同体の崩壊を誘発してしまう危険性を孕んでいる。

故に、『敵の敵は味方』の論理でロアキアへの支援が決定されたのも当然の帰結と言えるだろう。

と、ここでウェスタディア王国の代表として参加しているアルベルト・アルファーニ宰相が声を発した。

「あのロアキア以上の強国である銀河帝国です。我々とオリアス皇子が組んだところで対抗するのは難しいでしょう。ですので、ここは過去の経緯を忘れてルフェールに支援を要請してはどうでしょうか?」

「あのルフェールが、傘下から離脱した我々に手を差し伸べるとは思えないが……」

「それは大丈夫でしょう。辺境が征服されれば次はルフェールです。彼らはより強大になった銀河帝国と戦わなくてはならなく成ります」

「なるほど、支援せざるを得ないというわけか。先ほどロアキアへの支援を決定したように」

「はい、艦隊の派遣までは分かりませんが資金・物資の援助なら十分に得られるかと」

後日、このアルファーニの提案は実行に移され、ルフェール、ティオジア、ロアキア間の協力体制(間接的に)が確立されることとなる。

だが、この時既に銀河帝国は新たな一手を打っていた。


* * *


宇宙暦807年/帝国暦498年 7月18日。
テンボルト要塞から哨戒にでていた戦艦オルコナの艦橋で、レーダーが異常を検知した。

「12時の方向にワープアウトしてくる物体あり、距離300光秒。質量……なっ!?」

「どうしたのだ?」

「質量、約40兆トン! 天体規模です!!」

「何だと!? ……っ! 時空震に巻き込まれる、急速後退!」

直後、発生した時空震がオルコナを揺らす。

「ぐぅ……」

揺れが治まったオルコナのスクリーンに映ったのは、巨大な要塞であった。

「あ、あれは」

「ガイエスブルク要塞……」

「司令部へ直ちに連絡しろ! これは……銀河帝国軍による侵攻だ!」

ワープしてきたガイエスブルク要塞はそのまま移動を開始する。
その先にあるのは、テンボルト要塞であった。
 
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