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SAO――とある奇術師は閉ざされた世界にて――

作者:亜流科那
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一章 八話 とある復讐者達の道

 
前書き
えっと、感想で下さった「シリアス一直線」の件ですが、シリアス回とギャグ回を分ける形でしばらく試していきたいと思います。

作品自体がシリアスなのはわかっているんですけど、軽い話が書きたいという気持ちもあるので・・・・ 

 
「ジゼルだよ、よろしく」

頭一つ以上低い俺に手を差し出すために、相当に腰を折り曲げている。
そのお陰で、今まで曖昧にしか見えなかった顔がはっきりとしてくる。
遠目からだと髭に隠れてわからないのだが、どうもそれなりに若いらしい。クラインよりも・・・・若い、か?
その格好といい、おどけた表情といい、危険は無さそうだが・・・・・

こちらも手を差し出すべきか悩む俺に、ジゼルと名乗った青年は、ふっと笑みをこぼし、体勢を戻す。
「ま、それもそうだよね。いきなりレッドギルドの親玉に手を差し出されても、反応に困るよね」
どこまでも柔らかな物腰に、俺のほうが困ってしまう。
「いや・・・むしろギルドのメンバーを四人も殺した奴に平気で握手を求めるほうが考えられないと思うんだが・・・」
正直、広場に入った瞬間のフルボッコも覚悟していた位だ。

笑顔の裏のモノを読み取ろうと、俺はジゼルを正面から見つめる。
「ギルドで決めてあるんだよ。僕らは自分勝手な道を進むんだから、たとえ仲間が、自分が殺されたって文句を言っちゃいけないって。」
相変わらずの笑顔。・・・わからない。
とにかく、表面上はあり得ないくらいに晴れ晴れとした印象。

「道、ねぇ」
このギルドがこれだけ統率の取れているわけ、ジゼルが無駄に明るいわけも、多分そこにある。
だから、俺は聞いた。
初めて、レッドと本当の意味での会話をした。

「何だよ、その道って」

俺の言葉に、落武者はむしろ驚いたように蒼い少女の方を見た。
「あれ、フェイト君、彼に言ってなかったのかい?」
「はい、こういうのは直接聞くべきだと思ったので」
その言葉に、ジゼルは二度うなずいた。
「えーっとね」
言葉を選ぶように一度目を閉じてから、俺の方に向き直った。
ボリボリと頭をかいて、髭を動かす。

「要するに、君と同じだよ。ラーク君」
おどけた表情は変わらないが、目に何かが宿った気がした。

「僕らも、復讐者だ」

案外すんなりと耳に入ってきたその言葉に、俺は少なからず驚く。
目の前のお気楽そうな男の口から復讐者などという言葉が放たれた事に、強烈な違和感を覚えたからだ。
だが逆に、納得もしていた。
ジゼルの無駄な明るさは、過去の暗さを払拭するため。ギルドに女性が多いのも、愛した男性を殺された恨み等があるとすれば納得がいく。

「僕らは、あの男を殺すと決めてる。・・・・・理由は、聞かなくても分かるだろ?」
左隣で、蒼い少女が何故か身を縮めるようにした。
ジゼルの目の奥には、悲痛そうな色。
ああ、分かる。嫌っていう程に。
けど、
だったら、

「じゃあ、何でレッドギルドを名乗ってるんだよ。・・・確かに数人レッドは混じってるみたいだが」
俺の疑問に、落武者は今度は髭をボリボリ。
「うん、まあ、何ていうか・・・殺すって決めてるんだよ。あの男を裁く為なら、どれだけ善良な人でも、そこのフェイト君でも、仲間ですらも、ね」
「・・・!」

予想外だった。こんなにも甘っちょろそうな男が。
何としてでも復讐を成し遂げる。その意思には共感できる所がある。
というかむしろ尊敬する。
だが、

「ねえ、ラーク君、僕らのギルドに入らないか?」
「ムリだな」
それとこれとは話が別だな。
「良いんですか?復讐という目的の為なら、彼らの元へ行ったほうが良いんじゃ・・・」
聞いてきたのは、むしろ蒼い少女だった。
ジゼルはニヤニヤと見ている。
どっちも、俺を試してやがる。

「ダアホ、俺はレッドは殺しても、関係ねー奴らは殺さねーって決めてんだ。・・・一応な」
それを聞いたジゼルは、わはは、と笑った。
つか、笑いすぎだろ、こいつ。
「いやー、即答だったねー。フェイト君の予想通り」
「そうですねー。理由がちょっと予想外でしたけど」
なんだ、予想通りって。
左に立つ少女の幼い顔を見る。
そっぽを向かれた。

「・・・・つか、まさか今のが本題だったとか?」
俺が聞くと、ジゼルはよくぞ聞いてくれましたとばかりに大きく一つ頷いた。
「そうなんだよ、今日の目的はそんなんじゃない。」
奴は、言いつつ、右手を振ってウィンドウを開く。
「ねえ、僕と決闘ーーデュエルしないか?」
「はあ? 何で・・・」
急な話に戸惑う俺に、ジゼルは重ねる。
「拒否権はないよ。君、うちのギルメンを4人殺したろ?復讐のために死ぬのならまだしも、同じ目的を持つ筈の同士に殺されるというのは、彼らも納得がいかないだろう?」

要するに、仇討ちか。
あれ、もしかして蒼い少女はこいつを使って俺を殺そうとしてる?
などという自分の考えに戦慄する俺。
だが、目の前の男はどうもおふざけが過ぎるようだった。
「ま、ウソだよ。フェイト君からの頼み事だしね。流石に命まではとらないさ。”初撃決着”でどうだい?」

「・・・どういうことだ?」
後半はさして問題ではない。気になったのは前半。
まさか本当に蒼い少女主催だったとは。
それにしては目的が読めない。
俺を殺すのが目的なら、”全損決着”のモードを指定してくるはずだ。
俺は再び、隣の少女をまじまじと見つめる。
俺より頭一つぶん位は低い位置にある顔は、ツンとすましていて、何も読み取れない。

「あ、さっきも言ったけど、拒否権はないよ。」
黙りこくる俺に、見かねたジゼルが続けた。
「うちのギルド、目的のために、大人数で少数を潰す戦術に特化してるから、いくら君でも逃げ出すのはムリだろうから」
ジゼルがニコニコと共に言うと同時、俺の背後でズザッという靴音。
一筋の乱れもないそれは、目的を一つにした者達のみの持つ結束と、その目的にかける思いを如実に表している。

だから俺は呟く。
「しゃーねぇ、受けてやるよ」
共感と、むしろ敬意さえ表して。
「けど」
その上で、ねじ伏せる。
「あの男を殺すのは、俺だ。」






どーせ断れないんだから、カッコ良くいかねーと。 
 

 
後書き
作者「前話で、結構お気に入り登録をしてもらったね。感想ももらったし。」
ラーク「ああ、ようやく二桁だろ?」
「うんうん。いやー、うれしいわー」
「浮かれんのもいいけど、結局話長くなってんぞ」
「しっ、しまったぁぁ」

「というわけで、」「ご愛読、ご感想、」「よろしくです!」 
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