久遠の神話
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第四十八話 会食その九
「実は」
「高いですよね」
「自分でもそうは思います」
「じゃあ特に」
「いえ、実は」
「実は?」
「これでも気にしているのです」
自分の背をだというのだ。
「もっと欲しいですし」
「一八〇あってもですか」
「一九〇は欲しかったのですが」
大石はかなりのことを言う。
「ですが止まってしまいました」
「あの、一九〇って」
その背丈には上城も唖然となった。
「幾ら何でも」
「高過ぎますか」
「相当高いじゃないですか」
「よく言われます」
この望みを言えばだというのだ。
「流石に、と」
「そうですよ。僕もそう思います」
「ですがそれでもです」
「一九〇は欲しかったのですか」
「野球をしていて背の高いプロ野球選手が多かったので」
スポーツ選手だから体格がいい選手が多いのも当然だ。プロ野球の世界には実際にそこまで大きな選手も多い。
「それでなのです」
「より高くですか」
「なりたかったのです」
「ですか。それでも」
一九〇ともなると。どうしてもこう言う上城だった。
「日本人の背じゃないですよ」
「それはそうですが」
大石はだがそれでもだとあえて言うのである。
「ですがそれもです」
「諦められましたか」
「そうするしかないので」
身体的な成長が止まってしまったというのだ。
「しかしそれでも上城君は」
「まあそこまで大きくならないと思いますよ」
幾ら何でも一九〇はだというのだ。
「本当にそこまで大きいとスポーツ選手ですよ」
「そこまで高いですね」
「バスケでも何でもできますよ」
「ですね。本当に」
二人で笑ってそうした話もした。教会では笑っていられた。
上城と大石は教会を出てそして地連の客室で工藤、高橋とも会った。その二人からもスペンサーの話を聞いたのだった。
工藤は彼についてこう言う。
「紳士だよ」
「そうですか。紳士なんですか」
「日本語も堪能だ」
工藤はこのことも二人に話した。
「普通に遜色なく話せる」
「じゃあ僕達とも」
「一度会ってみるか」
「紹介してくれますか?」
「君と大石さんさえよければな」
工藤は向かい合って座る二人にこう言った。
「紹介させてもらうが」
「それじゃあお願いします」
まずは上城が答えた。
「どんな方か興味があります」
「私もです」
大石もここで答える。
ページ上へ戻る