ゲルググSEED DESTINY
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第八話 オーブ近海の死闘
ミネルバで指示を出し続けるタリアは目の前に現れた敵を見て驚愕の声を上げる。
「あれは!?」
連合の空母から一機の機体が現れる。それは異様な形をしていた。見た目は甲殻類の類に似ているだろうか。その巨体さはMSよりも大きく、見た目の迫力に比例して武器の火力も大きく見えた。
「あんなのに捕り付かれたらミネルバと言えども不味いですよ、艦長!?」
アーサーが喚きたてるが言っている内容に間違いはない。タリアは一つの決断をし命令する。
「タンホイザー照準!あの敵ごと艦隊を薙ぎ払うわよ!!」
「地上で陽電子砲を使うと仰るのですか、艦長!?」
止む得ないことだと言いきり、すぐに放つ用意をさせる。
「タンホイザー、てえェェッ―――!!」
放たれた閃光は直線を進み、敵の機体にぶつかる。そのまま貫き、敵の空母を落とすと。誰もがそう思っていたのだが―――
「ば、馬鹿な―――?」
最初にそう呟いたのはアーサーだった。しかし、タリアや他のクルーも同様のことを思い、アーサーがそう呟かなかったら他の誰かがそう言っていただろう。
陽電子砲の直撃を受けてなお、敵は全くの無傷だったのだ。いや、より正確にいえば反射したのだ。陽電子リフレクターによる防御は三基の起点を必要とし、前傾姿勢をとる必要があるものの恐るべき防御力を発揮していた。
「クッ、取り舵十!ミサイル照準、実弾なら通じる可能性はあるわ!それにあの防御兵器だってずっと出すことは不可能なはずよ!!」
「は、はい!取り舵十!ミサイル一番から四番照準!目標、敵大型兵器!」
最後まで抵抗を続ける。そう思い、各員は気を引き締め直していた。
◇
「ミネルバが危ない!?」
水中にいたレイも大型MAザムザザーが出撃するのを目撃していた。急いで敵の空母を落とさねばこちらの帰る場所がなくなる。そう思い、ゲルググを再度戦艦へ向けて移動させようとした。しかし、突如同じ海中から魚雷が接近し、こちらに向かってくる。
「何だと!?」
速射砲で魚雷を迎撃するが続いて接近してきたものを見、レイは気を引き締めざる得なくなる。ディープフォビドゥン―――今となっては直系機であるフォビドゥンヴォーテクスが後継機として存在するが水中用MSとして優秀な性能を持つ機体である。とはいえ、数も多く生産されていないはずの機体が三機もこちらに対して向かってきていた。
「厄介な相手が来たか!」
レーザーライフルを仕舞い、MMP80マシンガンを構える。MSを相手にするなら撃つのに時間のかかるレーザーライフルは不利なためだ。
一気に接近し、マシンガンを放つ。ディープフォビドンは他のフォビドンシリーズと違い量産化の為にTP装甲を装備していない。その為実弾のマシンガンでも有効打を与えることは可能だった。
『地上用の兵器がこのディープフォビドンに勝てると思うなよ』
見た目だけで判断した一機のパイロットがゲルググF型は地上用だと思い込み、高機動戦で翻弄しようとする。しかし、
「甘く見てもらっては困る!」
F型は水中戦を可能とさせた兵器であり、武装面でも水中で使えるものが殆どだ。マシンガンも当然その一つであり、水中での抵抗を威力を損なわない限界まで下げている。
結果、マシンガンは弾速を落とすことなく(勿論、あくまで水中を基準とした速度であり、地上での速さと比べれは遅々たるものだが)、あっさりとディープフォビドンを捉える。
『な、馬鹿な!?』
『こいつ、水中用MSなのか!?』
TP装甲を持たないディープフォビドンはあっさりと撃たれたところが拉げ、動きを止める。もうこの一機は迂闊に動くことは出来ない。何故なら、水中という戦場では破損した段階で水圧という敵が襲い掛かってくるからだ。実際にはそんなことはなく、ディープフォビドンはゲシュマイディッヒ・パンツァーによって理論上は耐圧を防いでいる。しかし、そうであったとしても人間として当たり前に存在する恐怖の感情で止まってしまうのだ。そしてその結果、止まってしまったが故に彼の運命は決まった。
「止めだ!」
シールドスパイクを構え、一気に接敵し、殴り飛ばす。その機動性はディープフォビドンと比べても遜色ないものと言えた。そして、殴られたディープフォビドンはそのままゲルググの速射砲によってコックピットを撃ちこまれ海の藻屑となっていった。
『く、この野郎ォ!!』
仲間をやられたことに怒り、一機のディープフォビドンがフォノンメーザー砲を放ち、一気に近づいて銛―――ニーズヘグでレイ機を突き刺そうとする。躱すことは可能だろうが迂闊に下がるわけにはいかない。何故なら、もう一機は冷静に状況を判断し、接近戦を仕掛けてきている一機の後ろから狙いを定めているからだ。
「チィッ―――!?」
スパイクシールドで受け止めるものの、シールドを貫き、左手ごと持っていかれそうになるが、ギリギリの所で後ろに下がる。
『貰った!!』
後ろに構えていた一機がフォノンメーザー砲を放つ。右手に持っていたマシンガンが撃ち抜かれ、大きく体勢を崩し、隙を見せる。
『死ねえェェッ―――!!』
再びニーズヘグを構え、今度こそとばかりに貫こうと構えるが、
「まだだ!まだ終わるわけにはいかない!!」
左手を前へと向け、速射砲を撃つ。僅かによろめいた瞬間、崩していた体勢を戻し、右手の速射砲も放ち、両手で一気に撃ち続ける。
『じょ、冗談じゃ……』
全弾撃ち尽くす勢いで撃ち、実際に全弾撃ち尽くしきった。コックピットだけでなく、頭部や腕部、脚部といたるところに穴が空いている。おそらく外れた弾丸も多かったのだろうがディープフォビドンは完全に沈黙していた。
『まさか二機ともやられることになるとはな』
「―――!?」
不意を突いたかのように上部より狙いを定める最後の一機。そして魚雷が発射され、爆発を起こす。
「グウゥッ―――!?」
爆発の衝撃に思わず機体の損耗が無いかを確認する。F型がいくら水中で使用可能といっても攻撃に対してはとても弱い。耐圧殻こそ存在するが、TP装甲をしていない上に、F型はゲシュマイディッヒ・パンツァーなどもなく、下手しなくとも水中では棺桶同然の紙装甲と言ってもいい。
損傷がなく、破壊されることが無いことを確認したレイは最後の銃火器であるレーザーライフルを取り出す。そして、そのまま狙いを定め、レーザーが放たれるが、
『甘い!俺を他の奴らと同じだと思うなよ!』
躱し、そのままディープフォビドンは次弾発射に時間が掛かるであろうと予測し接近した。だが―――
『―――ッ!』
「騙して悪いが、あれはブラフだ」
早々に次弾を放ったレーザーライフルが最後の一機をあっけなく落とした。レーザーライフル―――というよりもフォノンメーザーは音波兵器であり、それ自体は目で見ない。だからこそ射角を確認するためにレーザーが同時発射されるのだ。そして、レイはあえてダメージを与えることのないレーザーのみを一発目に放ち、二発目はレーザーと共にフォノンメーザーを放ったのだ。
「くそ、大分手間を掛けさせられた!」
焦りを見せるレイ。元々艦隊を撃沈させるために潜行していたにもかかわらず、かなりの時間を掛けてしまった。急がなければ、ミネルバが落とされる。レイは、再び敵艦隊への接近を試みた。
◇
「クソ、なんなんだよ!あの敵は!?」
撃ってきたウィンダムを逆に撃墜し、シンは焦りを見せながら敵MAザムザザーに向き直す。
『シン、近づけさせるな!あれにミネルバが取りつかれたら一巻の終わりだぞ!!雑魚共は俺たちに任せてさっさと仕留めるか足止めしろ!』
「仕留めるにしても足止めするにもどうやって!?」
マーレが言った言葉を反論しながらシンはインパルスを接近させる。敵は大きさの割に動きは機敏で、火力も予想通り大きい。四本足の先端についているガムザートフを両手を向けるように二発放たれ、距離をとる。
マーレ機が無理矢理ブーストをチャージして空中へと浮き上がり空中戦を執り成す。長時間は不可能であるし、動きもかなり制限されているが、不意を突かれたウィンダム部隊は一部が動きを止め、マーレとルナマリアによって落とされる。
『フン、戦場じゃビビった方が負けんだよ!』
ナギナタを構え、後ずさるダガーLを切り裂き、動きを止めたウィンダムに対して速射砲で蜂の巣にする。ウィンダム部隊の多くは急に乱入してきたマーレ機に気を取られ始めた。
「でりゃぁああ!!」
バルカンで撃ち続けながら接近してビームサーベルでザムザザーを切り抜こうとするシン。しかし、それは読まれていたのか、回避し右腕で逆にインパルスを捕まえる。
「そんな!?」
『このザムザザーと真っ向から対峙しようとはな!』
ヴァシリエフとよばれる大型クローを取り出し、ザムザザーはそのまま振動熱でインパルスの足を引きちぎろうとする。シンは一瞬焦りを見せるが、敵の狙いが足だと言うことに気付いた瞬間、どこかに弱点はないのかとザムザザーを観察する。
「―――ッ!ミネルバ、レッグフライヤーとソードシルエット、それにデュートリオンビームの準備を!」
『は、はい!』
腰に差してあるナイフを左手から抜出、シールドで隠すように構える。右手で持っているビームサーベルを振り下ろそうとするが、当然それを許すことなどなく、単装砲で腕を吹き飛ばされる。ビームサーベルを落とすことになるが、寧ろ好都合とばかりに本命のナイフを狙っていた位置に突き刺した。
「落ちろォォォ!!」
『なんだとぉォッ!?』
左手で隠していたナイフで三基ある突起の一つを狙う。一瞬スパークが発生し、思わずと言った風にザザムザーは動きが鈍る。その隙を逃がすことはなく、シンはインパルスの下半身を外し、そのまま浮き上がる。
そしてビームライフルでザムザザーが掴んだままの下半身に命中させ、爆発させ、目晦ましにする。そのままレッグフライヤーと合体し、デュートリオンビームによってエネルギーを回復させる。
ソードシルエットも同時に装備し、ブーメランを投げつける。
『狼狽えるなリフレクターが壊されただけだ!この程度の攻撃!』
そう言ってザムザザーに乗る三人のパイロットの隊長が叱咤し、ビームブーメランを弾き返す。だが、シンの本命はエクスカリバーによる剣戟。既に構え、上から襲い掛かる状況にザムザザーはブームブーメランを弾いた体勢のせいで対応できない。
「うおおぉォォォ――――!!」
ザムザザーは切り裂かれた。せめてもの抵抗と言わんばかりにクローを放つが、逆にそれを回避して腕を断ち切られてしまう。
そして、最後の断罪とばかりにコックピットごと真正面から叩き斬られた。
◇
「インパルス、敵大型兵器を撃破!やりました!」
ブリッジ艦内でもその報告に湧き上がる。敵の首級を仕留めたのだ。当然の反応ともいえた。
『流石、シン!俺達とは格が違うってか!』
『凄いじゃない、ほんとスーパーエースって感じ!』
『落ち着け、お前ら。残った敵艦のナチュラル共を仕留めるぞ』
シンがそのまま敵艦に乗り移り、艦橋ごと切り裂いていく。反撃を行う艦もいるがレイの水中からの援護やショーン、デイルの攪乱、ミネルバとその上に乗るマーレ、ルナマリアの支援によって次々と艦隊を叩き落としていった。
「空母四隻の撃沈を確認。敵残存部隊、撤退していきます!」
艦内がこれまで以上に湧き上がる。艦長のタリアも流石にこの歓声を止めようとも思えず、疲れも溜まっていたことから椅子にもたれかかる。
「コンディションオレンジに警戒を下げて。その後、オーブ近海から離れたらイエローに切り替えるわ」
そう言いながらクルーたちは何よりも得難い充足感に包まれていたのであった。
◇
湧き上がる歓声は帰還したパイロットたちにも同様のことが言えた。ヨウランやヴィーノがシンの肩に腕を掛け笑い合う。
「すっげーよ、シン!ほんと正直助かんないと思ってたもん」
全員が活躍していたが、特にシンの獅子奮迅の活躍に皆褒め称える。
「ほんとに凄かったじゃない。一人であの大型機倒すなんてさ」
「止めてくれよ。皆のおかげだって。俺一人じゃ何にもできなかったさ」
「なんにせよ、お前が艦を守った。生きているということは、それだけで価値がある。 明日があるということだからな」
ルナマリアやレイもシンの活躍に対して惜しみない称賛を送っていた。
「ま、なんにせよ。俺達皆が生きて帰ってこれたのは良い事じゃん」
「そうそう、シンだけじゃなく俺達も必死だったんだぞ」
ショーンとデイルも茶化すようにそう言って、全員が笑い合って、生き残った喜びを分かち合う。
シンは思った。これで、この戦いで本当の意味でオーブを断ち切ることが出来たんだと。新しい仲間たちとこうやって喜びを分かち合えるんだと。そう思うと、少しだけ世界がいつもより明るく見えた。
後書き
今日のネタはAC。でも作者は殆どやったことない。精々タンクで弾幕戦。
シンが種割れしないで勝っちゃった!?もしかして成長し過ぎて成長フラグ折った系?ま、まあそれだけ強くなってるんだし問題ないと言うことで……
ミネルバにあるF型はマジで試作機と言ってもいい位だから水中じゃ紙装甲です。これなら普通に水陸両用MSのアッシュや、クラウがどっかからジーク・ジオンなMSを引っ張ってきて作った方がましだと思います。
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