管理局の問題児
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第13話 四人目
前書き
遅れてしまい申し訳ありません。
かなりの不定期での更新申し訳ないです。
では、楽しんで貰えれば嬉しいです。
「ディバイン―――バスタァァー!」
なのはの砲撃魔法が、10数体のガジェットを纏めて吹き飛ばす。
その近くでは、フェイトが、ハーケンフォームでのバルディッシュをもって、敵を殲滅していく。
流石は管理局トップクラスの魔導師なだけあり、その戦闘力は凄まじい。
「だからか、俺の仕事がほとんどないんだが…」
リクは、一人所在無さ気に佇む。
右手には身の丈程もある巨大な刀、斬月が握られているが、その斬月が振られた事はこの戦闘では一度もない。
それ程までになのはとフェイトが素晴らしい働きをしているという事なのだが、やはり色々と出撃前にカッコつけた手前、ある程度の活躍がリクは欲しかった。
「あいつら少しは手加減しろよ」
いまだ華麗に敵を倒しに倒しているなのはとフェイトを見ながら、リクはぽつりと、愚痴染みた言葉を漏らすのだった。
◆
新人四人は、特に苦戦らしき苦戦をせず、順調に進んでいた。
現在は三両目を制圧した所だった。
「案外サクサク進んでるねティア」
スバルがそう言った。
「あんま気を抜くんじゃないわよスバル。どんな敵が来るかわかったもんじゃないんだから」
そう言ってスバルを窘めるティアナだったが、彼女も内心では余裕を感じていた。
(これもあいつとの訓練の成果かしら)
思い出すのは、リクとの戦闘訓練。
とは言っても、この任務が来るまでの訓練内容は、なんら特別な事はしていなかった。ティアナとスバルが受けた訓練。
それは、ひたすらにリクの攻撃を避け続けるというものだった。
リクは、ティアナとスバルがギリギリ回避できる速度で攻撃を放ち、それを二人が避ける。
ただそれだけだった。
(でも、ガジェットの攻撃が遅い)
リクは二人が攻撃に慣れると、徐々に速度を早くしていった。それにより、二人の「見切り」とも言うべき技量は格段に進歩していた。
それは普段の訓練でも如実に表れている。
「ねえティア。やっぱリクさんに訓練してもらって良かったね」
スバルも、自身の力の上昇を肌で感じているのか、嬉しそうにティアナに話しかけてくる。
「別に、あいつのおかげじゃないわよ…」
「ティアは素直じゃないな~」
からかう様なスバルの言葉に、ティアナは僅かに頬を染める。
それは怒りなのか、スバルに自信の内心を言い当てられたからなのかは、分からない。
「う、うっさい!いいからあんたはさっさと敵の排除に動く!チビッ子達に遅れを取るわけにはいかないわよ!」
「うん!」
◆
順調に敵を倒していく機動六課の面々。
新人四人も、特に問題らしい問題はみられない。強いて言えばエリオがリニアレールから落ち、それをキャロが助けるという少しだけヒヤッとした場面もあったが、それ以外は問題はなかった。
(このまま行けばレリックの回収も時間の問題だな)
この時リクは僅かに安堵していた。
それは、リクの本質に近いものが生み出した感情だった。
リクはその他と隔絶した戦闘の才能故に、自分以外の他者の、いや、仲間の実力を信頼しない傾向にある。
その結果、彼は常に仲間の身を案じて行動する。
勿論自分と実力が極めて近いレイやアキに関してはそこまで心配していないが、なのはやフェイト、そして新人四人に関しては、現段階でも常に注意を払っている。
だから、このまま何の問題もなく終わりそうな事が分かり、安堵したのだ。
だからリクは見落とした。だから反応が一瞬遅れた。
―――自分に向けられた殺意を。
「―――後ろがガラ空きだ」
「―――ッ!!?」
咄嗟に振り向きながら後方に下がる。それと同時にリクは斬月を振り、剣圧を飛ばす。しかし、リクの放った剣圧を食い千切り、―――氷の龍が襲い掛かった。
「月牙天衝!!!」
距離的には完全に間に合わない。
それでも、直撃だけは避ける為、リクは月牙天衝を眼前に氷の龍に放つ。
生み出された巨大な刃は、氷の龍を真っ二つに切り裂き、消し飛ばす。しかし、完全には威力を殺しきれず、リクの左手は凍り付き、身体のあちこちにも、霜が貼り付いている。
「凄いな。今の攻撃」
聞こえるのは感情の起伏が乏しい声。
男のモノだとリクは判断するが、それでも中性的な印象を受ける。
「まさか“後ろがガラ空きだ”なんてセリフを聞くとは夢にも思わなかったよ。で?お前誰だ?」
リクは尋ねる。
月牙天衝と、氷の龍がぶつかった際に起こった煙は既に晴れ、一人の少年が姿を現した。少年は、真っ白な髪に、アイスブルーの瞳。
一目見ただけでその整った容姿が分かる。
それに何より目を引くのが、彼の着ている着物と、右手に持っている刀。そして彼の周りを守るように佇む氷の龍だ。
着物は間違いなく死覇装。そして持っている刀は斬魄刀だろう。
リクは目の前の少年が〈剣の民〉である事を理解する。
そんなリクの考えなど知らない少年は、リクの問いに言葉を返す。
「人に名前を尋ねる時はまず自分から、というのが常識だったと記憶しているが?」
「いきなり攻撃してくる常識知らずなお前に言われたくねえよ。ちなみに俺の名前は御剣リク。時空管理局機動六課所属のイケメンだ」
「俺の名は―――」
「いや最後の俺の小粋なジョークは無視かよ」
「―――剣崎シオンだ」
「聞けコラ」
「ちなみに、いきなり攻撃してきたのはお前だ。俺は声を掛けただけだ」
「………い、いやでも気配消して背後に立つお前もどうかと思うよ俺は」
「良い訳か…」
「やれやれ、みたいな感じだしてんじゃねえよお前。なんだお前、いきなり現れたクセに超ムカつくんですけど」
「いきなりじゃない。ずっと遠くからお前を見ていた。どれくらい強いのか、とな」
「…気持ち悪いなお前。…で、どうだった?」
リクの問いに、現れた剣崎シオンという男は薄く笑みを浮かべる。
「正直良く分からなかったな」
―――ガクッ!
リクはズッコケる。
「ざけんなお前!そこは『あまり強そうではなかったな。フッ』とか言う所だろうが!俺考えてたんだけど!?その言葉に対してどうカッコよく返そうかずっと考えてたんだけど!?」
「そんな事俺は知らん」
「うわ超クール!ウザい!死ね!」
そういうリクが現在一番ウザい事を、本人は自覚していなかった。
そして、この二人の間に漂う空気は既に敵同士というものではなくなっていた。それに、リクは最初こそ咄嗟に攻撃してしまったが、現在はシオンと戦う意思はほとんどない。
理由は、リクとシオンの実力を考慮しての事だった。
今リクと、シオンが戦えば、周りに対して何かしらの被害は出る。特に、陸戦魔導師である新人四人を巻き込むわけにはいかない。
(それに、あいつも〈剣の民〉。しかもさっきの攻撃を見るに俺との実力差はそこまでない…筈だ)
相手の力量を分析しながら、それでもリクは自分が負けるというビジョンを思い浮かべてはいなかった。
勿論敵と相対した時、負けるという事を前提に考え戦いを挑む者はそうはいない。
が、リクのこの自身の勝利への確信や自負といったモノは、気合を入れる意味合いではなく、単に事実確認という意味合いが大きい。
勿論「自分が絶対に勝つ」とは口に出さない。
(もし負けたら恥ずかしいからな)
その辺りがらしいといえばらしい。
「で、剣崎シオンとか言ったか。お前の目的は何だ?もしかしてレリックとかか?だとしたら残念だが渡す訳にはいか―――」
「いや、違う。俺の今回の目的はお前の実力の確認だけだ」
「今回の…ね。で、その目的は達成されたのか?だったら早く帰って欲しいんだが」
「正直まだ足りない。けれど、流石に三対一では分が悪い。時期が時期なら楽しめそうなんだがな」
そう言ってシオンは視線を僅かにずらす。
リクも視線を向けずとも感じていた。後ろから、なのはと、フェイトがやってくるのを。オーバーSランク魔導師である高町なのはと、フェイト=T=ハラオウンが揃えば、いかに剣崎シオンの実力が未知数でも、勝てるとは思えない。
(俺も、レイかアキのどちらかがなのはとフェイトと一緒に向かってこられたら勝てないからな)
だから自分より弱いだろうシオンも同じである。
なんとも勝手な推察だが、その考えは大体当たっていた。少なくとも三対一で勝てる程剣崎シオンは強くはない。
「とびっきりの美少女二人と戦えるのはお前的に嬉しくないのか?」
「何を言っている?戦いに容姿は関係ないだろ」
その言葉に、リクは僅かに表情を詰まらなさそうにした。
期待していた答えではなかったようだ。
「では、いずれお前と戦う事を楽しみにしている」
それだけ言って、シオンはその場から消えた。
「…俺は全然戦いたくないけどな」
ぽつりと、リクはそう漏らした。
その顔は非常に面倒臭そうである。
「だってあいつ絶対〈卍解〉使えんだろ。顔的に」
それは、愚痴のような響きを持って、リクの口から吐き出された。
後書き
今回、ルカさんから送られたオリキャラを出しました。
いかがだったでしょうか。
正直結構ドキドキだったりするのですけど…(汗)
まあ、楽しんで頂けたのなら幸いです。
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