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八条学園怪異譚

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第三十五話 座敷わらしその九

 二人は座敷わらしの方に顔を向けてそして言った。
「早速その鏡のところに案内してくれる?」
「この保育園の」
「わかったわ、それじゃあね」
 座敷わらしも二人の言葉に頷く、そしてだった。
 二人と茉莉也をその鏡のところに連れて行った、それでだった。
 辿り着いたのは二メートルはある大鏡の前だった、二人はその鏡の前に立った、そのうえで言うことはというと。
 愛実は聖花に顔を向けてこう言ったのだった。
「何か多分だけれど」
「まあそれはね」
「そうよね、ここもね」
「違うわよね」
「あのね、確かめる前から何言ってるのよ」
 茉莉也はその二人にやぶにらみ目で突っ込みを入れた。
「まず確かめてからでしょ」
「それはそうですけれど」
「それでもいつもですから」
「いつもでもよ」
 茉莉也は既に半分諦めている二人にさらに言う。
「前向きによ、今度こそはって思わないと」
「次があるって思ったら駄目ですか?」
「私達そういう考えですけれど」
「それはそれで前向きだけれど少し違うでしょ」
 こう言うのである。
「それはまた」
「ううん、そうでしょうか」
「そういう感じの前向きが大事なんですか」
「そう、そんな何処かの横浜ベイスターズみたいな前向きはよくないわよ」
 このチームが何時また優勝するか、それは人類の謎にさえなっている。
「もっとね、今回は絶対に泉っていうね」
「そういう前向きですか」
「それでいかないと駄目ですか」
「というのが今の私の考えよ、さっきの阪神の試合結果を観て思ったのよ」
 携帯でチェックしてのことだ。
「明日、じゃなくて今日こそはなのよ」
「阪神勝ったからね」
 座敷わらしは何時の間にか着替えていた、阪神のかつてのホーム用ユニフォームである白地に黒の縦縞だ、背番号は三十一だ。
「茉莉也ちゃん前向きになったのね」
「今日勝ったのは大きいからね」
 茉莉也もその阪神のユニフォームの座敷わらしに応える。
「さあ、このまま優勝よ」
「今年は広島調子いいけれどね」
「大丈夫よ、今年は打線も好調だから」
 茉莉也は威勢よく話す。
「いけるわよ」
「巨人はあの様だしね」
 Bクラスである、最下位も夢ではない程だ。
「いいことね」
「そうそう、前向きじゃないと」
 また次という意味の前向きではなく、というのだ。
「今日も勝つ、これよね」
「だから泉もですか」
「今こそはって思うべきなんですね」
「そうよ、わかったわね」
 茉莉也は二人の前で両手を時分の腰の横に置き胸を張ってドヤ顔で言う。
「だからあんた達もね」
「そうですか、そういう前向きですか」
「今もっていう」
「わかったらいいわね」
 二人にハッパをかけもする。
「確かめてみなさい」
「わかりました、じゃあ今は」
「絶対に」
 二人も先輩の言葉に頷いてだった。
 そのうえで鏡の方に足を踏み出して二人同時に触れてみせる、だがそれでもだった。
 何の反応もなかった、だがそれでも。
 二人は全く動じずにだ、こう話した。 
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