GANTZ New life
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第一話 新しい朝が来た
前書き
タグに「敵増量」および「敵強化」を追加致しました。
「どこだここは」
ゆっくりと辺りを見渡す。きれいな生活感の無い部屋いや、生活用品が何一つ無いので本当に誰も住んでいないのだろう。隣には必死に荒い息を繰り返して呼吸する高校生らしき人物が二人。そして目の前には大勢の男と犬が黒い球体の周りで座り込んでいる。
「君たちもしにかけたんだ」
スーツで眼鏡。髪型は七三とサラリーマン風の大人の男性が話しかけてきた。
死にかけた? ……いや、確実に俺は死んだはずだ。バイトで高層ビルの窓拭き。何回もこなしてきて慣れていた仕事だった。ろくに命綱も確認せず、そして、急に揺れた。震度4の地震。無常にも高いところを拭こうと爪先立ちでの最中で、バランスも取れる分けなくまっさかさま。さらに最後に眼に映ったのは一瞬ピンッと張った命綱が取れ、勢いよく俺の顔面に当たった瞬間だった。
「やっぱりキミ達も死にかけたんだ」
「いや、確実に俺は死にました。40階以上のビルから落ちて死なない訳がありません」
隣の男子高校生らが荒い息のまま膝をつく。余程怖い死に方をしたんだろう、体ががたがた震えていた。
「勝手にてめーらだけ死んでろよ」
後ろで髪をくくった青年がうつむいたままでつぶやく。
「私もそう思うよ。私はガンで死んでね。苦しさも痛みも今は無い」
白い服に包まれた初老の男性が意見に賛成した。
ここにはやはり死んだ奴らが集まってきているらしい。あの青年だって認めていないだけなんだろう。
「おい……待て」
隣で男子高校生が声を荒げながら立ち上がった。
なんだ、俺のこと……じゃねぇか。外か。こっち向いたから俺のことかと思ったじゃねぇか
「待てよおいあれ!! あれ東京タワーじゃねーか?」
「東京? 少し遠くまで来たみたいだな」
すると座っている男性らにも表情の変化があった。窓に近づく男子高校生を嘲笑う者が多数であったが、唯一一人だけ目線を変えない者がいた。
「……」
あいつ、ずっと俺のこと見てる。しかもなんか俺のことを探ってる様な気もする。
結論から言うと壁には誰も触れず音も隣には届かない。そして携帯の電源も尽かない。不可思議な密室が出来上がっていた。
「ねぇ、あんた」
先ほどから見てくる視線の鋭い少年に話しかけられた。目線はなおも、鋭いまま。
「ねぇあんた、一体何者?」
ずっと睨み付けてくる奴とはあまり話したくは無かったが、無視をするとこのままみたいなので少し嫌味を言ってやる。
「はじめまして」
「……はじめまして」
少し棘のある言い方になってしまったがまぁ大丈夫だろう。
「やっぱりおかしいよアンタ」
「……何が?」
「ビルから落ちたって言ってたけど、途中で気絶とかした?」
「いや、していない」
高いところから落ちると人間は気絶するようだが、あいにく俺は命綱が顔面に当たり、鼻血を出しながら痛みをこらえて落ちていったため気絶が出来なかった。因みにしたはコンクリートの道路だ。きっと死体は悲惨だったに違いない。
「ならなおさらおかしいよ。だいたいここに来る奴らはさっきの高校生みたいに必死になってここにきたりとか、あるいは軽く呆然としながらこの部屋とあの黒い球体――ガンツを見つめるってのに。あんたはガンツに見向きもせず落ち着いていて部屋を見たり俺らの顔を見たりした。なぁ、これっておかしくないか?」
「……」
そういえばそうだ。あの球体、ガンツをさぞ当然かのように流した。在るのは当然かのように。存在を知っているかのように。思い出せばあの死の光景だってたった今のを思い出すのではなくて古い記憶を思い返すようだった。
「当たり?」
「……すごい名推理だが、本当に俺は何も知らん。きっと偶然だろう」
さらに目線がきつくなる。だが何かに気づいたかのようにふっと目線が外れる。どうやら興味を無くしたようだ。
「ちっ、なんだそういう事か。馬鹿見てぇ」
追求する前にさっと元いた場所に戻っていった。
結局何がしたいんだかわからないが、多少なりとも情報がわかった。あいつは信用できない。だがあの黒い球体はガンツというのは本当だろう、なんとなくだが。そしてなによりあいつは、何か俺が知らない俺のことを知っているようだ。
興味をなくしたあいつはもう俺を見ては来ない。なら今度は俺があいつを監視する番だ。小柄な体格と小さい背。黒い髪と目で服はなんてこともない珍しくない服。
「……ん? なんだあれ」
あいつが首をかいた時、インナーにしては何か変な物を着ていた。タンクトップとかではなく、ぴっちりとして黒光りする素材。ゴム製、だろうか。
「ねぇ、君の番だよ」
「え?」
不思議とあいつ以外の目線が俺に集まっていた。わからず、なぜか立っているサラリーマン風の男性が自己紹介と早口で教えてくれた。
「俺の名前は朝比奈竜夜。よろしく」
「あと職業と死に方も」
「ああ、えっと職業はフリーターで死に方はさっきと同じで窓拭きからの転落死」
俺が座ると次の男子高校生に視線が移った。耳を傾けながらなおも監視する。
「あ……後やってない人……」
どうやら終わったらしい。男子高校生は小さい方が黒野計。大きいほうが加藤勝。初老の人は鈴木五郎で後ろで髪をくくっているやつはパスした。そしてあいつは西丈一郎。中二で死因は転落死。次の二人はヤクザとだけ言って終わり、そして犬だけが残った。
あいつの情報があまり集まらなかった。だが何故か中のインナーは見られないようにしっかりと隠した。これもあまり必要ないかも知れない。
「また一人来た!!」
その言葉にはっとし、隣を見る。確かに誰か人が来る。少しみていると女の人で裸ということがわかった。やがて顔が出てきて、高校生ぐらいの女性って事が判明。そして俺はまたしてもはっとなる。
「なんか着せてあげろよ」
声は出したが誰も動こうとしなかったので着ていたジャケットを脱いで立ち上がる。
「オイ、にーちゃん。邪魔すんなや」
「はぁ?」
しまった。つい声に出してしまったがどうやら気にしていないみたいだ。だがやはり女の子が裸でいるとかわいそうなので歩き出す。
おいと肩を掴まれかけるがわかっていたので前にしゃがみこむふりをしてかわした。そして女性にジャケットもかける。
「あ……」
確かクロノとかいうやつが悲しげな表情で見てきたがそんなのは無視。その気持ちはわかるけども。
「あれ? なんだこれ……なんだろ……」
多分記憶が混乱しているんだろう。座り込んだまま後ろに倒れてきたのでゆっくりと受け止め、その場で寝かした。
「脈は、あるな」
手をとって確認する。すると突然脇から手が伸びてきて脈をとっていた手を掴んだ。
ヤクザだ、と思った瞬間頭を掴まれてかなりの力で床に押さえつけられた。だが一瞬で力は抜け、女性を無理やり立たせると廊下へ向かう。
「おまえら来んなよ」
頭を抑えながらたちあがる。
「いてて、あいつまさかこんな所で……」
「おし……」
隣にも誰かが立ち上がる。
こいつは確か、加藤だったか?
「度胸あんじゃん」
「……どうも」
「じゃあお先!」
ぐっと震える足に力を入れ、走りながらやくざに近づく。まず手を先に女性とやくざの間に割り込ませて引き離す。そして遅れながら加藤が加勢した。
結局いいのを一発腹にぶち込まれ、KO。崩れながらも足にしがみつき、加藤は力で必死に上半身を抑えてた。
その時だ。
あーたーらしーいあーさがきた きぼーうのあさーが
昔聞いたことがある音楽を耳にしたのは。
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