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SeventhWrite

作者:完徹
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一日目(4)

「その名前ってのは、かずみだ」

 かずみ?
「なんだそりゃ、まるで馴染みの無い名前だな」
 こずえだったらビックリだったのに。
「そうだな、美咲なら面白かったのに」
 ちょ、おま……てめぇ!!!


「唐橋さんを呼び捨てにするなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」


 校門前の時と同様に絶叫している僕だった。
 学習能力の乏しい僕である、そして今は場所が悪かった。 
 ざわざわ!?(クラス中が僕を見る音)
 はい!教室でした。………何だよ、章替えしろよ、こんなシーン長いこと描写しても面白くないよ?
「はぁぁぁ……さっきも言ったろ、場所を考えろって、何で唐橋のことになるとお前はそんなに盲目的なんだよ」
 くそっ、焚き付けたのお前だろう!?あとお前は馬鹿なんだから盲目的とか言葉使うな! 
 なんて現実逃避しても現状は全く変わらない。
 当たり前だ

「あのぅ、峰岸君………どうして私の名前を大声で叫ぶのかな?」

 あらビックリ!唐橋さんが僕に話しかけてきました。
 普段なら諸手をあげて喜ぶんだけど今はちょっと状況が悪いかなぁ。
 というかどうしよう!?思いっきりひいてるよ!!
「唐橋、それはコイツが突発性絶叫候群(とっぱつせいぜっきょうしょうこうぐん)という病気でな、いきなり叫びだすんだよ、残念な事にな」
 ちょ、おま、悠哉!!どさくさに紛れて何テキトーほざいてんだ!!
「そうなんだよ、時も場所もかまわず絶叫し放題なんだ、でも今日は多いほうでいつもは少ないんだよ、それと絶叫する内容についてはあまり意味は無い」
 いや、ナニ便乗してんの善則!?違うからね、僕はそんな怪しい病気じゃ無いから!!クラスの大半が『そうなんだ……』とか『そういえば今朝も校門で……』とか納得しちゃってるじゃん!!

「ち、ちが………ムグッ!!」 

 否定しようと口を開くと善之助にあんパンを突っ込まれた。
 いつの間に用意したんだよ………
「いや、悪かったな唐橋、大樹がいきなり絶叫して」
 本当のことなのに今の謝罪、何か納得いかねぇ!!むぐむぐ!!
「全くだ、ホントに残念な奴で申し訳ない」
 悠哉!!好き勝手言ってんじゃねぇ!!あ、これつぶ餡だ。
「そう?意味は…無いんだね?」
 あぁ、納得しないで唐橋さん……ゴックン。

「からは………」



 キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン



 始業ベルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!

「ヤベ、もうホームルームだ」
 クソォ!!寄ってたかって僕の弁解を邪魔しやがってぇぇぇぇ!!!!
「おーし出席とんぞー」
 やる気の無い先生の言葉を聞き流しつつ二人への仕打ちと唐橋さんへの弁解について考え始めた。


  ~~~~~~~~~~~~


「何か言い残す事はあるか?」

 ホームルーム終了後、僕は善則と悠哉をトイレに引きずり込んでいた。
 理由はもちろんさっきの僕の言い訳を邪魔した事の復讐だ。

 ゴスッ! バコッ! メキッ!

 四秒でボコボコにされました………
 卑怯だよ、二人がかりなんて………
「「何か文句でもあるか?」」
 ハモって言うなよ……怖いじゃないか……
「うぅ……どうしてさっき、あんな適当な事言ったのさ?あれじゃあホントに残念な奴じゃないか……絶対ひかれたよ……」
 満身創痍ながらも何とか言わなきゃいけない事を聞く。
「「どうしてってそっちの方が面白いからに決まってるだろうが」」
 一言一句同じタイミングでした……
 オニだ!!!この二人!!!!!
「元々善則が「叫んだお前が悪いだろ」……………」
 苦し紛れの言い訳を言いきる前に否定されました。

 だがもっともだ!

「あぁ、もう唐橋さんの顔まともに見れないよ……」
 もう僕の学園生活は灰色だよ………この二人の悪魔のせいで………
「「安心しろ、元々脈無しだったじゃないか」」

 ブッチィィィィィィン

 頭の中で種がはじけた。

「言いたい事は、それだけかぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 ゴスッ! バコッ! メキッ!

 一発のパンチも当てられずにボッコボコにされました。
 二人がかりなんて卑怯だってばYo!
「「何か文句でもあるか?」」
 だから何でそんなにきれいにハモるんだよ、怖いって。
 あと、もう少し手加減してよ、起き上がれないじゃないか……


  キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン


「あ、やべ一限目って何だっけ?」
「たしか古典だったはず」
「マジかよ、俺あの先生に目ぇ付けられてるんだよなぁ」
「お前に目を付けていない先生なんていねぇって
「それもそうか!」

「「あっはっはっはっは………」」


「僕を置いていくなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」


 二人は談笑しながら僕を置いて行きました。

「あぁ、これも夢だったらいいのに」
 二人の去った後のトイレの片隅で僕は同じ内容の一人言を八回くらい呟いていた。
 ちなみに今は、一限目の真っ最中で僕は絶賛サボタージュを決め込んでいた。
 今の精神状態で授業を受けれる気がしない、受けれない気しかない。

 ブ~ ブ~

 な、なんだ?お尻がブルブルする!?べ、別に二連発で屁なんてこいてないぞ!!
 ゆっくりと震えている場所に手を当ててみると……

「ケータイ?なんで?」

 もちろん僕の物ではない、こんな物が買えて毎月お金を払う余裕など家には無いのだ。
 とりあえず二つ折りのそれ(ガラパゴス携帯っていうんだっけ?)を開いてみると、待ち受けがMTBだった。
 趣味丸出しだな………じゃなくて
 メールが届いていた。
 それを開いて見ると悠哉からだった。

『トイレに蹲っている(笑)ヘタレな峰岸?代記君へ、君に朗報だ。安心していい、唐橋やクラスの皆は何も無かったかのように授業を受けている、授業の最初に欠席無しといっても疑われなかった。それくらいいつも通りだ。

 僕は無言で両手に力を込めた。

 ちなみにそのケータイは一万円以上する、決して壊さないように』

 ……………………


「ぬわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」※突発性絶叫症候群発症中


 なんなの?アイツは?どうゆう神経してるんだっての!なんで名字で疑問符を付けるんだ!あと代記は誤字だろ!!そして地味に空気扱いしてんじゃねぇ!!!
 ぐぐぐと両手に力を込めるが、ケータイに負荷はかかっていない。
 一万円というのは僕にとって、とても高額なのだった。
「あいつ等、どこまで人をおちょくったら気がすむんだ?」

 ブ~ ブ~

 ええい、しつこい!!
 再び震えだしたケータイを床に叩きつけようとして腕を振り上げた

『そのケータイは一万円以上する、決して壊さないように』

 …………………

 ピタリと止まりゆっくりと腕を下ろす。
 いちまんえんかぁ、そりゃ壊せないよ。
 思わず涙が零れそうになったけどそれを堪えて再びケータイの画面を見てみるとまたしてもメールだった。しかも登録されてないのか送信者が誰か分からない。
 そしてこのケータイは多分善則の物だろう、彼宛のメールかもしれない。

 よし、読もう。

 僕は迷わずそのメールを開いた。ん?プライバシーの侵害?ハッ、知ったことか。
『今このメールを開いてるのは峰岸君ですか?』
 ん?なんだこのメール、名指しですか?
『はい、このけーたいはぼくのじゃないけど』
 ぎこちない操作でその送信者に返信した。
 するとまたしばらくしてケータイが震える
『よかった、私、唐橋だよ峰岸君、今授業休んでるけど大丈夫?』
 【唐橋】何か見覚えのある名前だな………からはし………KA・RA・HA・SI!?
 唐橋って唐橋さん!?あのエンジェルぷりちぃ唐橋さんでございますか??
 どういうことだ?これは善則のケータイ(多分)でそれに僕宛に唐橋さんからのメールがきた……うん意味が分からない。
 なんて考えている間に新しいメールが来る。
『萩原(悠哉)君から聞いたの、峰岸君が病気で落ち込んでるって』
 ………怒っていいのか感謝したほうがいいのか分からなくなってきたよ。
 えっと、唐橋さんとメールできるという夢のようなシチュエーションを用意してくれたのは確実にあの二人だ、僕のスラックスのポケットにケータイが入っていたのがいい証拠だ。
 だけど、そこに至るまでの経緯が酷すぎる。
 そう酷すぎる、だが………

 ありがとう、二人共……僕は君たちを忘れない……

 持つべきものは良き親友だ。
『ありがとう、だいじょうぶだよ、しんぱいさせてごめん』
 とりあえずそう返信する、一つだけワガママを言えば僕はメールを打つことに慣れていないということだ。
 当然だよねケータイ持って無いもん。
 あ、返事来た。

『本当に?私でよければ相談にのるよ?』

 ……………………ゑ?
 何々、なんて書いてあるんだっけ?

『本当に?私でよければ相談にのるよ?』

 そ、そうだん?

相談ー物事を決めるために他の人の意見を聞いたり、話し合ったりすること。
   また、その話し合い。「デートの予定をーする」「新婚旅行先をーする」※一部大辞林からの引用

 ありがとう善則、悠哉、僕が死ぬ時にはきっとその名を最後に口にするだろう。

『それなら、あいているじかんにおねがいします』

 お、送っちゃった、どうしよう!?………わ、返信きた。

『はい、じゃあ昼休みに校舎裏で』

 昼休み 校舎裏 相談 二人きり ×××(※僕にはとても書けません)

 よし、昼休みまで充電だ。

「は~るがき~た~♪は~るが(以下略)」

 スキップ気分で僕は歌いながら廊下を歩いた。
 その数十秒後、教頭先生に見つかって数十分間、説教を受けた事はまぁ当然だった。

 その説教されている間、僕は昼休みに唐橋さんとキャッキャウフフできると信じて疑わなかった。
 これまでのやりとりが全て相手の姿の見えないメールであるという事も忘れて。



「だーいきー、ケータイ返せー」
 一限目の終了チャイムで僕は教頭先生の説教から開放されて、ようやく教室に戻ってきた時の第一声が、善則のそんな言葉だった。
「あぁ、ありがとな善則、お蔭で…僕は…僕はぁぁ……ムグッ!」
 喋っている途中で口の中にあんパンを突っ込まれた。本日二度目だ。
「ふぁんでふぃふぃありくふぃひひふぁうふっふぉふふぉは(何でいきなり口にパン突っ込むのさ)?」
「何言ってるか分からんけど、今の流れから次に突発性絶叫症候群がくると思ったから」
 叫ばないよ、とは今まさに叫ぼうとしていたので断言できない僕だった。むぐむぐ…あ、これはこし餡だ。
 ゴックン
「お前はエスパーか」
 僕の行動を察知し、すぐさまあんパンを用意する親友にちょっとした恐怖を感じる。
「アホ、お前が分かりやすいだけだっての」
「まぁ、不本意だけど僕が分かりやすいという事はおいといてだ、何でそんなにあんパンを持ってるの?」
「それは……いや言わないで置こう」
 何でだよ?と聞こうとして止めた。確かにどうでもいいことだ。
「そうかい、じゃケータイ返すよ、ありがとうな、お蔭様で僕にも………何してるの?」
 善則はケータイを受け取るとすぐに何やら操作を始めた。
「お前………やられたな………」
 かと思えば何故か凄く哀れむような目で僕を見た。
「やられた?何それどういう意味さ?」
 僕の言葉に善則はそっか、知らねぇのかと呟く。
「メールってのはな、なりすましってのが簡単に出来るんだ」
「なりすまし?」
 なんだそれ?どんな漢字書くんだろう『成須磨師』かな?
「あのな、このメアドはまずこのケータイに登録されてない、つまり俺とは関わりの無い人物だ、そしてそいつが唐橋と名乗った。ここで問題だ、果たして本当にそのメールを発信したのは唐沢本人でしょうか?」
 どうゆうこと?よく分かんないな。っていうか説明まどろっこしいよ。
「そりゃ本人でしょうよ、唐橋って名乗ってるんだから」
「………お前、将来的にケータイ持ったら大変な事になりそうだな」
「もう、結局何が言いたいのさ?」
 いい加減怒るよ?
「だからな、俺のメアドを知っている奴が唐橋になりすまして……つまりは違う奴が勝手に唐橋と名乗ってるだけだって事だよ」

 な、何だってぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?

「つまりはその成須磨師って奴が僕をからかうために唐橋って名乗ったのか!?」
「あぁ、お前の言ってるなりすましは何かイントネーションおかしいけどな……まぁそんな事が出来るのは大体見当がつくけどな」
 と言って善則は教室でも最後尾の席で寝息を立てている悠哉を指差した。
「ケータイでメアドなんて二、三分あれば変更できる、そうすれば登録されているはずもねぇ、元々俺のケータイをお前のスラックスに入れたのも悠哉が面白くなるからって言うから、そしたらこんな笑えない冗談を用意してたなんて………」

「ゆ、許せねぇ………」

 よりによって唐橋さんだと名乗るなんて……………これは冗談にしては性質が悪い、いや、悪意しか感じない!!
「そうだな、これはちとやり過ぎだな、メアドだって何かテキトーだし」
 ふん、十分に楽しんだか?悠哉、だけどこれまでだ………今から服をひん剥いて廊下に晒してやる………

「峰岸君!戻ってきたんだ、良かった。でも昼休みにはちゃんと来てね、待ってるから!!」

 …………さぁ今から………あれ?
「なぁ善則、今の唐橋さんだよな?」
 隣に立っている汗をダラダラと流す友人に聞く。
「さぁ、幻覚幻聴じゃないか?」
 確信犯か!
「そうか、見間違い、聞き間違いかぁ~……って納得すると思う?僕にはたった今、さっきのメールのやりとりが無かったら有り得ない事を言われたんだけど?」
 汗を流し続ける善則はこちらを見ようとしない。
「これはさっきのメールが成須磨師(悠哉)では無かったという事じゃないかな?」
 汗を(以下同文)
「つまり、善則はあれだけ本人ではないと煽っておいて見事に見当違いだった………てことかな♪」
 なんて言いながら善則の前に、回りこむ。

「てへっ☆勘違いだった♪ゴメンネ!」

 舌を出しながらコツンと自分の頭を叩き、どこぞのマスコットキャラのポーズをとりやがった。


「何だそりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」(突発性ry)


 素直に唐橋さんだった事が喜べない僕だった。
 ま、一波乱あったけど運命の昼休みまで残り三時間。

 てか成須磨師って結局なんなんだ!? 
 

 
後書き
よく携帯電話に「久しぶりだね、覚えてる?」って登録されていないアドレスからメールが来るんですけど正体はなんなんでしょうね? 
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