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銀色の魔法少女

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第十三話 覚醒?

side なのは

 学校からの帰り道、私はひとりで歩いていた。

「……そう言えば、ひとりで帰るのは久しぶりかな」

 いつもはアリサちゃんとすずかちゃん、最近は遼ちゃんも加わって一緒に帰っていたから、本当に久しぶりだった。

 いつもは仲良く歩くこの道も、ひとりだと少し寂しい。

 アリサちゃんとすずかちゃんはお稽古で先に帰って、遼ちゃんは風邪で学校をお休みしていたの。

 けど、本当の原因はそこじゃない。

 私が考え事をしていて、アリサちゃんの話をちゃんと聞いていなかったから、アリサちゃんが怒っちゃったの。

「……寄り道して帰ろう」

 みんなに今の顔、見られたくないの。



「……?」

 今そこの公園で、何か光ったような…………。

「あ……」

 覗き込むと、それがなんだったのか、すぐにわかった。

 木陰のベンチで、遼ちゃんが気持ちよさそうに寝ていたの。

「………………」

 私はまるで引き寄せられるように、遼ちゃんに近づいていく。

 すると遼ちゃんの側に普通の小学生が使うはずのない物が三本、置いてあるのが見えた。

 木刀が、短いのが二本、長いのが一本ベンチの上に置いてあったの。

 遼ちゃんの服装は学校指定の体操服。

 たぶん、これを使って練習している合間に休憩して、そのまま寝ちゃったのだと思う。

「……ん?」

 薄らと遼ちゃんが目を開ける。

「あ、ごめんね、起こしちゃった?」

「……いや、別にいい」

 遼ちゃんはそう言うと、ポケットから取り出した袋に木刀をしまい始めた。

「ねえ、それ全部使うの?」

 どう考えても腕が足りないと思うの。

「……うん、いろいろな物を使って訓練してるから、これもその一つ」

「どうして、そんなことをしてるの?」

 普通の女の子なら、こんな風に訓練したりはしない。

「………………」

 遼ちゃんは何も言わない。

 流石にまずいこと聞いちゃったかな、と私が思った時だったの。

「……弱いと何も守れないから」

「へ?」

 確かに聞こえた。

 何を守れないの? そう聞きたくなったけれど、とてもそんなことを聞ける雰囲気じゃなかったの。

「遼、ちゃん……」

 だって、彼女の目が、とても悲しそうにしていたから。

「ごめん、なんでもない」

 そう言う彼女はもういつもの遼ちゃんだった。

「……そういえば、なのはは今日は一人なの?」

 あ、っと私は今どうしてここいるのかを思い出す。

「うん、二人はお稽古があって先に帰ったの」

「そうなんだ……、ところで、今日お姉さんは暇?」

「ふぇ? たぶん家にいると思うの」

 急にお姉ちゃんのことを聞かれて、少しだけ驚いた。

「じゃあ、ついでだし、今からなのはの家に寄っていく」



side 美由希

「じゃあ、準備はいい?」

 私は練習用の木刀を構えて、遼ちゃんに聞く。

「いつでも……」

 彼女も私と同じように短い木刀を二本構える。

 けれど、私たちの構えはかなり違っていた。

 私が水平に構えたのに対し、遼ちゃんはそれを持ったまま脱力した感じで床に垂らしている。

 隙だらけ、と普通なら思うけどそうじゃない。

 たぶん、あれが彼女なりの構え。

「じゃあ、なのは、始まりの合図お願いね」

「うん」

 私たちを遠くで見守っていたなのはが私たちの間のところまで近づいてくる。

「それじゃあ……」

 大きく息を吸って、



「始め!」



 開始の合図を響かせた。

「――――!」

 先に遼ちゃんが動く。

 左足に力を込めて、跳ぶ。

 そしてそのまま右の刀で私に斬りかかる。

 私はそれを左で受け流す。

 たしかに彼女の一撃は速かったけど、年端もいかない少女の攻撃を受け流すのは簡単だった。

「むぅ…………」

 そう呟くと、彼女は左手の木刀を離す。

 たぶん、二刀流だと私に通じないと考えたからだと思う。

 私が驚いたのはその後だった。

 彼女は木刀を地面と並行に構え、左手を添えるように置く。

(あれって…………)

 御神流奥義之参・射抜。

 御神流の中で最長の射程距離の技にして、最速の刺突。

 彼女がとった構えは、それによく似ていた。



 そして、予想通りに高速の突きがやってきた。



(やばっ!)

 私は『神速』を使って、なんとか左に避ける。

 あの年であの速さだと、もしかすると技自体の速さは射抜より上かもしれないとも思えてしまう程、あの子は速かった。

 少しだけよそ見をすると、驚いた表情のなのはが見えた。

(たぶん、なのはには見えてないだろうな~)

 遼ちゃんは右手をそのまま折り、左手とクロスさる。

 彼女は左腕で右腕を弾き、横に刀をなぐ。

 私は同じように右で払おうとした、けど。

「うそっ!?」「え!」

 二人の持っていた木刀が威力に耐え切れず、砕けてしまった。

 流石に硬直する二人。

「あははは……、これは仕方ないね」

 物が壊れてしまっては、続けようがない。

 それに続けても同じ結果になるだろうし。

「すいません、木刀、壊してしまいました……」

「いや、いいよ、よくあることだし、それに遼ちゃんも壊れちゃったからおあいこでしょ」

「そう言っていただけると、助かります……」

 しゅん、と落ち込む遼ちゃん。

 …………ちょっとだけ、可愛いかったかな。



side なのは

 本当にすごい試合だったの。

 すぐに終わったけど、途中からは何があったのかすぐにわからなかった。

 気がついたら木刀が壊れてて、みんなで後片付けをしたの。

「遼ちゃんって、すごく強いんだね」

 掃除が終わると、私は遼ちゃんに話しかける。

「いつも練習してるから、それになのはのお姉さんほどじゃない……」

「にゃはは、それは仕方ないと思うの」

 流石に、小学三年生が高校生に勝つのは無理だと思うの。

「牙突からの紅蓮旋、うまくいったかと思ったのに、かわされた……」

 何か小さく呟いているけど、正直よくわからないの。

 二人の試合はほんとうによくわからなかったけど、私の心に響くものがあった。

 フェイトちゃんがジュエルシードを集めるわけを私は知らない。

 あの子の胸の内にある、その思いを知らない。

 けど、私はどうしても知りたい。

 どうして、そんなに悲しそうな顔をしているのか。

 どうして、ジュエルシードが必要なのか。

 聞いてもたぶん、教えてくれない。



      なら、私の思いを全力全開でぶつけて、わかってもらうまで叫び続ける!

 
 

 
後書き
はい、最後に悪魔フラグが立ちました。
解説すると、
紅蓮旋の本来の名前は
『焔燃型第二式紅蓮旋』(かぐつちのかただいにしきぐれんせん)となります。
本当なら美由希の持っていた木刀を破壊することが出来たのですが、遼が未熟なため、両方壊れました。 
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