ソードアート・オンライン〜Another story〜
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SAO編
第33話 白銀と漆黒Ⅱ
~2013年12月24日 第49層・ミュージエン~
以前に何度も来た事がある層。ここの特徴は? 印象は? と訊かれれば、多分殆どが街の中心に大きなクリスマスツリーと言うだろう。
そう、この街のNPCに今回のMobの話を聞いたのだ。
《背教者ニコラス》その情報を。
この街でリュウキとキリトは落ち合う予定だった。
そして、アルゴともだ。より詳しい情報が無いかどうかを聞く為に。
そして、先にこの場所に着いたのはキリト。そのキリトにゆっくりと近づく人影があった。
「……随分と無茶ナレベル上げをしているそうじゃナイカ?」
ベンチに座っているキリトにアルゴが話しかけた。
「……新しい情報が入ったのか?」
キリトは振り向かず、そう聞く。誰が来たのか振り向かなくてもわかったからだ。
「んー、金を取れるモノは何もネーナ」
アルゴはお手上げ、と言わんばかりだった。新たな情報があれば、と思いアルゴもこの場所に呼んだのだが、キリトにとっては肩透かしだ。
「なんだ。情報屋の名が泣くぜ……」
「これは、βテストの時にもなかっタ初めてのイベントだシ……。それニ何よりモ、オイラのとっておきの情報収集源モ喋ってクレねーンダ……。愚痴りタクなるってモンさ」
アルゴは肩を縮ませ、そう言っていた。
宛にしていた最大の情報源が話してくれないから、と言うのが全体を占めているだろう。
「とっておき……、リュウキ……のことか?」
キリトはこの時、なぜ アルゴがリュウキの情報を扱わないかはっきりした。
アルゴの情報。それは、リュウキの情報をかなり重要視した上で、独自の情報とMixさせて作っている事が多いのだろう。
だから、その情報源が無くなったとすれば? 情報屋として、破滅的なものになると予想は容易にできる。だからこそ、彼の事は安易には話せない。機嫌を損ねでもして、情報を売ってくれなかったら。文字通り死活問題だ。
キリトは、結論づいたと同時に、深く 改めてリュウキに感謝もした。
リュウキがつい先日、一緒に狩りをしていた時に言っていた情報、てっきり、アルゴから買ったと思っていたんだが、それは違うようだ。
リュウキは、情報を知りつつ、情報のリークを抑えてくれたんだろう。一般プレイヤーからすれば、情報独占の悪徳プレイヤーに見えるかもしれない。でも、リュウキはそんな事をする男じゃない。
「……リュウキに感謝だな。本当に」
キリトは、そう、呟いていた。
「ん? どういうコッタ?」
アルゴは、キリトの呟きが聞こえたのだろう。意味が判らず、目を丸くしていた。
その時だ。
「別になんでもない……だろ? キリト」
いつの間にか、2人の直ぐ傍にまで来ていたリュウキがそう言っていた。
「ああ、リュウキか。……遅かったな」
キリトは振り返って手を上げた。アルゴと話をしていたから、周囲に気を配れていなかった様だ。
「悪い。待たせたな」
リュウキは、僅かに遅れたことを軽く詫びを入れる。基本的に、時間厳守をする性格だから。
そして、アルゴはというと、そんな2人の姿を何度も何度も交互に見たアルゴは再び目を丸くさせた。
「なななっ……ナナッ…… NA……!!」
言葉にならない……言葉がよくわからない発音をするアルゴ。2人の顔を交互に見ながら。
「何故、2人ガ一緒にいるんダ!?」
雪降る夜の街中で、アルゴは叫んでいた。
2人を見て、本当に驚いていた様だ。この2人のプレイスタイルはソロで有名だから。異名というか、2つ名も其々付けられている。
《白銀の剣士と黒の剣士》と。
……一時期はリュウキは勇者と呼ばれていたが、次第に、あまりに嫌になった為 アルゴに頼んで根回ししてもらい、勇者ではなく、剣士と呼ぶようにとした。
剣士が定着したけれど、それでも嫌そうだった、でも、やっぱり 勇者と呼ばれるよりは、ある程度はマシだそうだ。
そして、これは幸か不幸か……《ビーター》の名が広まった以上。前ほどは騒がれなくなった。基本的に騒ぐのは、顔見知りが割合的に多い。
「……別に、たまには良いだろ? オレが誰かとコンビ組んだとしても」
大袈裟に驚いているアルゴを見てリュウキはそう答えた。
「そうだな……。オレにとっては、パーティ組んだとしても足手まといになることが多いが、リュウキは数少ないプレイヤーだから」
今度はキリトは何やら偉そうに言ってる。それを訊いて、リュウキはニヤリと笑うと。
「……オレにとっては、キリトの方が足手まといになるんじゃないか? この場合。いつぞやの二の舞にならない事を願うが?」
そう言うと、鼻で笑っていた。それを訊いて、キリトに苦い記憶が頭の中を過ぎった。あのβテスト時代、健全なVRMMOだった頃の事だ。追えども追えども、離されていく。これ以上無い敗北を。
「なっ! 舐めんなよ! オレだって、やる時はやるんだ!」
キリトは、息巻きながらそう吐き捨てた。
別に勝ち負けのジャンルではないけれど。
そんな2人を見ていたアルゴは、本当に仲の良い兄弟に見えた。だから、最初こそ、凄く驚いていたアルゴだったけど、次第に表情が変わっていく。
「ぷ……くくくくっ……ッ」
次々と、沸き起こってくる笑み。最終的には、防波堤が決壊したかの様に、怒涛の勢いで笑いが止まらないようだった。
「あーはっはっは♪ ほんっと可愛いネ~。2人とモっ♪」
その止まらない笑み、大笑い。辺り構わず大笑いをアルゴはしていたのだった。クリスマスだからか、この層にはそれなりにプレイヤー達はいる。……注目を集めてしまうのをお構いなしだった。
「「ッッ!!」」
当然2人は直ぐにアルゴの笑いに気が付いて、直ぐにキリトは立ち上がった。リュウキも軽く頭を振る。
「さ……行こうか」
「ああ、そうだな」
2人はそう示し合わせると同時に素早く移動し、その場を後にした。
「あっはっはっは……ってアレ?」
アルゴが……大笑いしている隙に、2人は影も形も無くなっていた。きょろきょろと周囲を見渡したのだが、見当たらない。1度でも見失ってしまったら、もう追いかけるのは無理だ。
「ハハッ……逃げられちゃったカ……」
アルゴは、頭を掻きながらそう言う。そして、深いため息をつく。
「……キー坊もリューがいるおかげで、救われテル……。本当にそう思うナ……。あの事があって、キー坊……随分苦しソウだったから……」
アルゴもアルゴなりに、キリトの事は気にかけていたようだ。
あの2人を見て、安心が出来る。今回の危険なクエスト 例え、それがたった2人だけだとしても、何も心配要らない。強くそう思えるのだ。
「無事デナ。 マダマダ、稼がせテ貰うゾ? リュー。……キー坊モ」
アルゴはそう呟くと、夜の闇の中に消えていった。
~第35層・迷いの森~
一面銀世界、その森林の先は薄暗い。夜の漆黒の闇に包まれていた。そして、1度でもこの森に入ってしまえば、入ってしまえば同じような景色が広がる為、
その森の名同様に迷う可能性もある危険な場所だったが、2人にとって 特に問題はない。
「さて……この先だな」
リュウキは、目的地を見ると、指さした。
「……ああ」
リュウキの言葉を訊いて、キリトも気を引き締めなおした。此処から先の相手は、間違いなく強敵だからだ。リュウキと一緒に戦うとは言っても、初見だから 不確定要素も多いのだ。
「……キリト」
リュウキは、キリトに聞きたいことがあった。
それは、このMobと戦う事、その事を《彼女達》が知っているかどうか、だ。
「何だ?」
キリトは、歩みを留める事無く、顔だけを向け訊いた。
「今回の事 あの時のギルドのメンバーに言っているのか?」
リュウキは、その気になっていた事を訊いた。
「………いや、言っていない。」
キリトは首を振った。どうやら、彼女達とは話をしていないようだ。
「そうか……」
それは 良かったのかもしれない。クラインとは違うが、今回のアイテムが本当に蘇生アイテムだと言う可能性はあまりに少ないのだ。
自分達は良くても、悪戯に希望だけを持たせるわけにはいかない。
そして、サチという少女なら……そんな危険なことをキリトがしていると知っただけでも心を痛めるかもしれない事も考慮して。
そして茅場は、はっきりと言っている。
『あらゆる蘇生手段は機能しない。ヒットポイントがゼロになった瞬間、諸君のアバターは永久に消滅し、同時に諸君らの脳は、ナーヴギアによって破壊される』
そうはっきりと宣言しているのだ。……この世界の管理者が。
その破壊される最終フェイズがどれだけあるか推測以上の確信は無いが、間違いなく遂行はされるだろう。
「……どうか、したか?」
キリトは考え込んでいたリュウキに気が付いたのか、そう聞いていた。
「いや、なんでもない。……さっさと狩って帰るか」
軽く頭を振り そう答えると リュウキは剣を取り出し、軽く振った。
「………そう言えば、お前あの時のあの《剣》はなんだったんだ……? 両手剣、じゃないよな」
キリトは、あの時の事を思い出し、リュウキに聞いていた。リュウキが、サチやケイタの事を訊いたから、思い出したのだろう。
あの悪夢、トラップルームの事を。
「あ……」
キリトの質問を訊いて、思い出したように、はっ! とさせていた。
実は、あの武器とスキルに関しては、アルゴにも一切公開していない。今回の様な稀な情報操作は別として、基本的にリュウキは情報を出し惜しみしたりしないのだが、今回は仕方なく、秘密にしていたものだったからだ。
「………む、駄目か? 言わないと」
だから、リュウキはキリトにそう訊いた。
リュウキにしては珍しく動揺しているようだ。珍しいところを見れただけでも収穫あり、っと思えなくないがキリトだったが、頷いた。
「いや……、流石にもう見てしまったからな……。ちょっと気になって 訊かずにはいられないな」
「……まぁ それはそうだろう。仕方ない、か……」
観念しリュウキは、装備ウィンドウを出した。
全ての必要スキルを変えると、《極長剣》をあの時に使った剣を取り出した。オブジェクト化したと同時に光と共に現れる剣。それを目の当たりにしたキリトは。
「うおっ……間近で見るとやっぱでかいな……。あの時は、ここまではっきりと見てなかったから」
その長い刀身を見たキリトは目を丸くしていた。新たな武器やスキルに興味を持つのは、当然の感性だろう。
「これは、カテゴリー名 極長剣だ。 その性質は両手剣の1.5倍、片手剣の2倍の刀身。リーチが長い事、かな。長いが 刀身は日本刀の様に細い。だから、重量自体は両手剣とあまり変わらない。エクストラ・スキル」
リュウキは、軽く剣を振りまわしながら説明した。この武器の利点は、そのリーチが他武器に比べ圧倒的に長い事。投擲以外の遠距離の攻撃手段がないこの世界において、リーチの長い武器は使用者の腕次第で幾らでも化ける。小回りが利かないと考えられるが、筋力パラメータが十分に備わっていれば、普通の剣同様に振り回すことが出来る。現に、あの戦いの際、リュウキは自由自在、手足の様に扱っていたのだから。
そして、秘密にしていても 極長剣スキルは鍛えている筈だろう。正確に得たのが何時なのかは判らないが。
「………それ、反則じゃないか?」
キリトは若干苦笑いしながらそう言う。
リーチの外から攻撃してくる以上、その攻撃を掻い潜らなければならない。そして使用者の技量に比例して増していくその強さ。キリトはそう思わずにはいられないようだった。
「これは、盾を持つことも出来ない、そうでもない。近接戦闘になれば……、やはりどうしても不利なところもあるからな」
片手で軽く振り回すリュウキを見てそんな話を聞いても、まるで説得力がないと言うものだ。だけど、本当に心強い。
「まぁ いいか、……ありがとな」
キリトは 教えてくれた事に対して礼を言っていた。リュウキはそれを訊いて、軽く苦笑いをする。
「まぁ、出現条件みたいなのが判れば、出し惜しみせずに直ぐに公開してるんだけど、な。これに関しては、気がついたら合ったって感じだ。……所謂ユニークスキル。と言う奴かもしれない……。こんなの持ってるって知れ渡ったら……、正直考えただけで頭が痛い」
リュウキは頭を掻きながらそう言っていた。その気持ちはキリトにも判る。
「……ネットのゲーマーは嫉妬深いからな。……オレは言いふらしたりしないよ。勿論アルゴにもな」
キリトはリュウキの考えている事はわかる。だから、キリトはそう言っていた。
「はは……助かるよ。だけど、コレもいざと言うときは使うんだ。だから、出回るのは時間の問題だ……ってなっ!」
リュウキは、極長剣を構えつつ、振り向いた。それと殆ど同時に、青い光が場を照らした。
光は1つではなく、何度も瞬く間に現れては消える。現れた数だけ、人影が現れた。この場所に来たのは1人じゃない。
そして、あの光は転移の光。どうやら何人かこの場に転移してきたようだ。
――現れたのは、敵、だろうか……? それとも………。
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