ヘンゼルとグレーテル
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第二幕その一
第二幕その一
第二幕 魔女のケーキ
天使達に護られた二人は森の中ですやすやと眠っていました。けれどその眠りが遂に醒める時がやって来ました。
朝日と共に今度は赤い髪をした妖精が朝の霧の中に姿を現わしたのです。
「さあ、目を覚ましなさい、子供達」
穏やかな声で二人に声をかけます。
「露のしずくを目に浴びて。それで目を覚ますのです」
そう言いながら天使達の護る子供達に近寄ります。天使達は彼女の姿を認めると静かに消えてしまいました。
「さあ」
しずくが二人の瞼にかかります。
「これで。夢の世界から戻るのです。そして現実の世界に」
そう言い終えるとその場を去りました。後には目をこすりながら身体を起こす二人が残されました。
「ふあああ」
ヘンゼルが大きく身体を背伸びさせながら身体を起こします。
「よく寝た。グレーテル」
起きるとすぐに妹に声をかけました。
「起きてるかい?」
「ええ、今」
グレーテルも起き上がっていました。
「よく寝たわね」
「ああ、気持ちよかったね」
「そうね、ぐっすりと寝られたわ。ところで」
「何だい!?」
「ここ。何処かしら」
「何処って昨日の場所さ」
こうグレーテルに答えます。
「昨日の」
「そうだよ。昨日の森さ」
「そうなの」
「けれど。夜とは全然違うね」
「そうね」
妹はお兄さんの言葉に頷きました。
「夜はあんなにおっかなかったのに」
「今は。優しい日差しが入り込んでいて」
緑の葉の間から白い、柔らかい日差しが入り込んできています。
「それに小鳥のさえずりが」
「朝の挨拶をしているね」
「ええ、あれひばりよ」
グレーテルが上を飛んでいる小鳥を指差しました。
「朝だから。私達に挨拶をしてくれてるのよ」
「ひばりさん、おはよう」
ヘンゼルはそれに応えてひばり達に挨拶をしました。
「今日も元気にね」
「頑張ろうね」
「じゃあ僕達もお家に帰ろう」
「待って、その前に」
ふとした感じでの言葉でした。
「野苺かい?」
「それもあるけれど。昨日のことよ」
「何かあったっけ。野苺以外に」
「夢、見なかった?」
グレーテルはヘンゼルにそう言ってきました。
「夢を?」
「そうよ。私達眠りの精に寝かしてもらって」
「あれっ、グレーテルも!?」
「兄さんも!?」
「同じ夢を見たみたいだね」
「そうみたいね」
二人は顔を見合わせて言い合いました。
「明るい薔薇色の光に輝いた雲から」
「天使様達が降り立って」
「私達を護ってくれたのよね」
「そう、輪になってね」
「十四人いたわよね」
「うん、十四人」
ヘンゼルは妹の言葉に頷きました。
「確かにいたよ」
「ええ」
「そして僕達を護ってくれていたんだ」
「お父さんとお母さんが来るまで」
「護っていてくれたんだよね」
「ええ」
「だからさ、グレーテル」
ヘンゼルは素早く側にあった野苺を摘んでいきます。
「早く済ませて帰ろう」
「そうね、お母さんも腹ペコだろうし」
「ここはね、すぐに」
「うん」
「摘んで。帰ろう」
二人はすぐに野苺を摘んでいきます。それが終わった時ヘンゼルはふと遠くに目がいきました。
「あれっ!?」
「どうしたの?」
「グレーテル、見なよあれ」
そう言ってそちらを指差します。
「何かあったの!?」
「あれだよ、ほら」
「あれって」
「あそこに。見えないかい?」
「!?」
「家が。家があるよ」
「あっ、本当」
グレーテルはそれを聞いて声をあげます。
「お家があるわね」
見ればヘンゼルが指差した方にお家が見えます。そして何かいい匂いが二人のところにもやって来ました。
「この匂いって」
「チョコレートの匂いだよ」
「ええ」
「それにクッキーにケーキに。凄く美味しそう」
「あのお家からね」
「そうみたいだね。行く!?」
「ええ」
グレーテルはヘンゼルの言葉に頷きましょう。
「行きましょう。若しかしたら」
「お菓子が一杯食べられるかも」
二人は籠を持ってお家の方へ向かいます。見ればそのお家は普通のお家ではありませんでした。
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