八条学園怪異譚
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第三十五話 座敷わらしその一
第三十五話 座敷わらし
茉莉也を入れて三人でだった、愛実と聖花はこの日も夜の八条学園に潜入した。
そのうえで保育園に向かう、茉莉也は二人を先導しながらこう言った。
「いい?保育園はね」
「何かあるんですか?」
「罠とかないですよね」
「そんなのある学校はないでしょ」
茉莉也は聖花のその問いには少し苦笑いになって返した。
「幾らこの学園でもね」
「ですよね、やっぱり」
「大学には軍事学部があるけれどね」
日本であるのは八条大学だけである。
「それでも罠とかはね」
「流石に、ですね」
「ないから」
「先輩みたいな人が他にもいて彼氏ゲットの為に仕掛けてるとかもですね」
「いないわよ、私みたいな娘は他にもいるでしょうけれど」
「いや、いたらそれはそれで凄いですよ」
「それでもよ、彼氏ゲットの為には。彼女もだけれど」
ここでも百合趣味も出す茉莉也だった。
「罠じゃなくて自分で動いてね」
「手に入れるんですか」
「そうよ、罠なんてかかるかどうかすらわからないから」
だからだというのだ。
「自分で動いてなのよ」
「そうなんですか」
「そう、そういう娘は最初から罠とか仕掛けないから」
自分で動いて手に入れるというのだ。
「そうするものだから」
「罠はないですか」
「絶対にね。妖怪さんや幽霊さんがいるだけよ」
「それでその妖怪さんですよね」
「ええ、保育園のね」
今日行くそこの話になった。
「座敷わらしもよ」
「その娘ですね」
「問題の」
「問題というか見えないからね」
茉莉也は二人にこう返す。
「今の私達にはね」
「そうですよね、だから博士に眼鏡とヘッドホンもお借りしてくれて」
「それで、ですよね」
「そう、そういうことよ」
「ううん、見えない妖怪ですか」
「考えてみると透明人間と同じですね」
ハリウッド系の妖怪の名前が出て来た、映画作品としてはかなり有名である。もっとも透明人間を妖怪と言うべきかどうかは意見の別れるところであるが。
「あと小豆洗いさん?ですよね」
「あの妖怪さんも確か」
「そうよ、あの人も姿は見えないわよ」
茉莉也はこの妖怪の名前も出した。
「ええと、この学校にはいたかしら」
「あの妖怪さんは小川のところにいるんですよね、確か」
「それで音だけするって」
二人は妖怪図鑑からこのことを知っている、だが姿が見えないということよりも学園に小川があるかどうかということから言うのだった。
「小川、ですか学校に」
「一応あるにはありますけれど」
河童のいる池から学園の外に出る小川のことだ、ただこの小川は。
「あそこ、人工ですから」
「ちょっと違いますよね」
「あそこ小石もないというか」
茉莉也のその小川のことは知っている、それで言うのだった。
「そんな研ぐ様なね」
「ないですよね、本当に完全に人工で」
「小豆洗いさんが出る様な場所じゃないですね」
「そうよ、出るのかしらね」
茉莉也もその辺りはどうかというのだった。
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