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久遠の神話

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第四十八話 会食その一

                   久遠の神話
                第四十八話  会食
 上城は大石の教会に来ていた。そのうえで彼からこんな話を聞いていた。
 場所は教会の奥の大石の私室だ。その質素な部屋の中で二人は大石が淹れたそのコーヒーを飲みながら話をしていた。
「じゃあアメリカの日系人の人達は」
「アメリカ人でした」
 大石は自分の前に座る上城に話した。二人で向かい合ってテーブルに座りそのうえでコーヒーを飲んで話をしているのだ。
 そうしながら大石はこう彼に話した。
「紛れもなく」
「日本人じゃなかったんですね」
「はい、国籍はアメリカでした」
「じゃあ本当にアメリカ人だったんですね」
「その通りです」
「それでもなんですか」
 上城は難しい顔で大石に返した。
「あの人達は酷い差別を受けていたんですね」
「アメリカで差別を受けていた人達は多いです」
 大石はアメリカ史の一面を話していく。
「日系人だけでなく」
「あっ、そういえばケネディ大統領のアイルランド系も」
「そうです。アイルランド系もまたです」
 彼等もまた差別されてきたというのだ。
「イタリア系もドイツ系も差別されてきた歴史があります」
「アメリカって差別の激しい社会なんですね」
「このことは否定できません」
「それで日系人もですか」
「中国系もそうでしたが」 
 その彼等もだというのだ。
「移民を制限もされましたし」
「もうアメリカに来るなって言われたんですか」
「はい、中国系と日系は」
 そうした法的な差別まで受けていたというのだ。
「その中でも日系人は徹底的な差別を受け」
「そして第二次世界大戦の時にですか」
「強制収容所に入れられました」
 アメリカ史における最悪の事件の一つだと言われている。
「アメリカ人でしたが」
「敵国にルーツがあるからですか」
「その通りです」
「それって明らかに」
「人種差別に基いた政策でした」
 全く言い繕うことのできない、まさにそういった政策だったというのだ。
「それによりアメリカ西海岸の十万に及ぶ日系アメリカ人が砂漠の、プライベートも何もない粗末な強制収容所に入れられました」
「酷い話ですね」
「収容所には監視塔があり銃が日系人に向けられていました」
「それで日系人を撃ったんですか」
「はい、自国民を」
 国籍はアメリカだ。法的には間違いなくそうなる。
「逃げ出そうとすれば容赦なく射殺していました」
「ナチスの収容所みたいですね」
「大して変わらないですね」
 アウシュヴィッツも人種差別に基き設けられたものだ。日系人強制収容所も人種差別に基くものだからだ。
「否定できない事実です」
「ですよね」
「日系人の人達は全てを失いました」 
 大石は事実をさらに話していく。
「財産も奪われました」
「アメリカって個人の財産保障してますよね」
「基本的人権の一つです」
 紛れもなくだと、大石も言い切る。
「若しそれが守られないなら」
「どうなるんですか?」
「それは全体主義国家です」
 それに他ならないというのだ。
「そもそも自国民であっても敵対国家にルーツがあるというだけで強制収容所に入れられるというのならばそれもまた、です」
「全体主義国家ですか」
「それは例え民主的な選挙が行われていても」
 それでもだというのだ。 
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