アイーダ
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第二幕その一
第二幕その一
第二幕 凱旋
ラダメスが出征して暫く経った。まだ音沙汰はない。
勝っているのか負けているのかもわからない。人々はそれを少し不安に思いはじめていた。
そんな中アムネリスはナイルの河畔で侍女達を周りにくつろいでいた。豪奢な白い衣を着て化粧までしている。その中で彼女はいた。アイーダも一緒であった。
「王女様」
侍女達は椅子に安楽に座る彼女に声をかけてきた。
「何かしら」
「今日は優雅なものですね」
「そうね」
アムネリスは彼女達の言葉に優雅に頷いた。彼女達にとってアムネリスは優しくよく気の利く優しい主人であった。少なくとも悪い主ではなかった。
「後は将軍が帰って来られるだけね」
「どうなのでしょうか」
「勝利は疑いがないわ」
にこりと笑ってそう答える。
「間違いなくね」
「左様ですね。それは間も無くだと思います」
侍女の一人が言う。
「エジプトの勝利が告げられるのは」
「その時は皆に私が祝いをあげるわ」
優雅に笑ってそう述べる。
「皆にね」
「宜しいのですか?」
侍女達はその言葉に驚きを見せた。
「私共なぞに」
「そのような」
「いいのよ」
しかしアムネリスはこう述べる。
「私にとって貴女達は次女でも奴隷でもないわ」
アイーダに言った言葉をそのまま彼女達にも言う。
「友人であり姉妹でもある。だから当然よ」
「有り難うございます」
「それでは」
「ええ」
侍女達に顔を向けてにこりと笑った。
「その時を楽しみにしていてね」
「そうですね。ところで」
ここで話を変えてきた。
「皆疲れたでしょう?休んではどうかしら」
そう侍女達に声をかけてきた。
「えっ」
「休んでって」
「休息よ。私の命令よ」
また彼女達に言う。
「だからね。いいわね」
「宜しいのですか?」
「あの、お側には」
「いいのよ」
しかしアムネリスはそう彼女達に述べる。
「わかったわね。それじゃあ」
「わかりました」
「では喜んで」
その言葉に応えて侍女達は姿を消す。アイーダも去ろうとする。しかしアムネリスは彼女は呼び止めたのであった。
「待ちなさい」
「えっ」
「貴女にあげたいものがあるの」
優雅な笑みを表面に浮かべて述べてきた。
「いいかしら」
「わかりました。それじゃあ」
「ええ」
こうしてアイーダだけが残った。そうして二人並んでいた。
アムネリスは座っていてアイーダは立っている。アムネリスはその中で言うのであった。
「いいかしら、アイーダ」
「はい」
アムネリスの言葉にこくりと頷く。ラダメスの出征以降顔が晴れない。それは今も同じであった。
アムネリスは横目にそんなアイーダを見ている。そして声をかけるのだった。
「いいかしら」
「あの、それで」
「貴女への贈り物はね」
じっとアイーダを見据えて言う。言葉を続けてきた。
「エチオピアのことよ」
「エチオピアの!?」
「そう、貴女の祖国」
「私の祖国のことを」
それを聞いて顔を蒼ざめさせる。アムネリスはさらに言うのであった、
「祖国は無事のようね」
「そうなのですか」
そのことにまずは安堵した。
「そうなのですか」
「そうよ。それでね」
「ええ」
「私は他にも貴女にあげたいものがあるの」
今度は顔を彼女に向けてきた。
「私にですか」
「ええ。何でも言いなさい」
アイーダに告げる。
「何が欲しいのかしら」
「それは」
(言いたい)
ラダメスのことを。だが言えなかった。
それだけはどうしても言えなかった。どうしてエチオピアの奴隷がエジプトの将軍に対して何が言えるのか。それを思うとどうしようもなかったのだ。
(けれどそれは)
(ふん)
そんなアイーダをアムネリスも見ていた。じっとその表情を探っていた。
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