駄目親父としっかり娘の珍道中
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第22話 竜巻対バカ
一面青い海と雲空しか視界に映らない。
其処は日本や大陸から遠く離れた海原。
本来なら穏やかな海と曇り空だけが映る筈のその海原で、その場に似つかわしくない代物が存在していた。
天を貫く程の巨大な竜巻は、海を荒らし、雲すらも飲み込もうと渦巻いている。
その竜巻に果敢に挑もうと、フェイトとアルフの二人は其処に居た。
この竜巻は自然に起こった代物では断じてない。
これは、海底にあった6つのジュエルシードを強制的に起動させ、暴走させた産物が今の竜巻なのだ。
フェイトは焦っていた。
管理局の介入によりジュエルシードは殆ど管理局側に持っていかれてしまい、もう残りも少ない。
起死回生を狙い、無茶な回収を行ったのだ。だが、その結果がこれである。
幾多の無理な回収作業の為に疲弊し切っていたフェイトにそれを止める余力は既になく、アルフにも同じ事が言えた。
いや、もしフェイトが全快であったとしても、あの竜巻を止める事は困難であろう。
その竜巻に、フェイトは今無謀にも挑んでいたのだ。
手に持っていたバルディッシュから閃光の刃を放ち、竜巻を切り裂こうとその小さな体を竜巻に向けて突っ込ませた。
だが、巨大な竜巻はその小さな体を呆気なく吹き飛ばしてしまう。
小さなフェイトの体では天を突く程の巨大な竜巻を止める手立てなどなかったのだ。
「やっぱり無理だよフェイト! すぐに此処から離れないと巻き込まれるよ!」
「だめだよ。此処で封印しなきゃ、この竜巻が陸地に入ったりしたら……」
フェイトの脳裏に浮かぶ光景。それはこの竜巻が陸地に入り、そして人の住む場所に入った時の事だった。
あの巨大な竜巻がもし、陸地に入り……そして人の住む場所に入ったりしたら。
自然が生み出した竜巻ではなく、ジュエルシードの暴走によって引き起こされた巨大竜巻だ。
恐らく永遠に止まる事なくその竜巻は回り続ける。
そして、人の住む場所をその巨大な竜巻が飲み込み、破壊しつくしていく。
後に残るのは瓦礫の山と無数の死体だけとなるだろう。
そんな事をさせる訳にはいかない。
何としても此処で封印しなければならないのだ。
だが、迫る竜巻は更に巨大さを増していく。最早並の魔導師では止められる領域ではなくなっていた。
(このままじゃ、この竜巻は陸地に上がって行く)
最悪の情景が頭の中を過ぎった。巨大な竜巻により蹂躙されていく街。
そんな情景にさせる訳にはいかない。
しかし、現状の魔力武器ではあの竜巻を止める手立てはない。
となれば、残された手段は一つしかない。
残された魔力をフルパワーにし、自身を魔力の塊として竜巻に突っ込むと言う戦法だ。
しかし、これは半ば自爆に近い。全ての魔力を解放して体当たりするのだから当然防御魔法などは使えない。その上ジュエルシード目掛けて体当たりするのだから当然衝撃は諸に来る。
十中八九フェイトの体は四散してしまうだろう。
だが、それも覚悟の上だ。
こんな事態を引き起こしてしまったのは自分なのだから自分の手で終わらせるしかない。
例え、自分自身の命を賭してでも―――
(アルフ、御免ね……なのは、せめて最後に一目……会いたかったな)
覚悟を決めて、目を瞑るフェイト。後は自身の魔力を臨界まで上げた後に、竜巻に体当たりをするだけの事だ。
息を大きく吸い、体内にある残りの魔力を少しでも高めようとする。
肩を誰かに掴まれた。アルフの手じゃなかった。
一回り小さい少年の様な手だった。
閉じていた目を開き、その肩を掴んでいる存在を見た。
最初に映ったのは黒い髪に同じ色をした瞳の少年だった。真剣な面持ちでこちらを見ている。
「き、君は……」
「どうやら間に合ったようだ。後先考えない子だとは思ったけど、まさか自爆するつもりだったなんて」
目の前に居た少年、クロノは呆れたように呟く。だが、フェイトからしてみればクロノの出現はとんだイレギュラーだった。
現状でフェイトは彼とは敵対関係にある。その上管理局は自分達を捕獲しようと躍起になっている。
竜巻に加えて時空管理局まで相手にしなければならなくなってしまった、と言う事になる。
「は、離して下さい! 私は、あれを止めないと……」
「一人で止める気なのか? だとしたら無茶だ。あれはもう君一人で止められるレベルじゃない! それ位君なら分かるだろう?」
彼の言っている事は正しかった。現状であの巨大竜巻をフェイト一人で鎮めるのは実質不可能だ。
だが、理屈で丸め込めるほどフェイトは大人しくない。
「それでも、それでも私が止めないと駄目なんです! 私が引き起こしてしまったから、だから……例え死ぬような事があっても私自身の手で―――」
言葉は其処で遮られた。フェイトの右頬に痛みが走る。
見ればクロノがフェイトに平手打ちを放っていたのが見えた。
その時のクロノの顔は今でも印象に残っている。
とても厳しい目でフェイトを睨んでいた。
「え?」
「まだ10年も生きてない子供が生意気な事言うな! 死ぬってのがどんな事か分かってるのか? 凄く痛いし、凄く辛い事なんだぞ! それがどんな事が、お前に分かるのか?」
つい先ほどまでの冷静な少年とは思えない感情的な発言であった。その発言を聞かされたフェイトに、反論する事は出来なかった。
只、黙ってクロノの言い分を聞く事しか出来なかったのだから。
ジンジン痛む右頬を押さえながら、フェイトは黙ってしまった。
「それに、君が命を賭してあれと止めたとして、誰が喜ぶんだ? 誰も喜びはしない。寧ろ君は君が死んだ事によって泣く人を増やすだけになるって事に何故気付かないんだ?」
「あ?」
その一言が全てを物語っていた。もし、自分が命を賭してあれを止めたとしても、そんな事をしても誰も喜ばない。
寧ろ自分が死んだ事により泣く人間を増やすだけになると言う事を。
「君があれを作ってしまったと言う責任感も分かる。だが、だからと言って軽はずみに命を投げ出すような真似はするな!」
「でも、それじゃあれはどうやって……」
「僕も一緒に封印する。一人じゃ無理でも二人なら出来る筈だ」
信じられない発言であった。管理局がよりにもよって犯罪者の行いに加担しようと言うのだから。
本来の管理局なら自分が衰退した辺りでやってきて漁夫の利を狙うのが常だった筈。
その辺りで彼は他の局員と何処か違うようにも見えた。
「君は、君は一体何者なの?」
「僕かい? 僕は……ただのバカだよ。どうしようもない位のお人好しのね」
一言そう言い残し、少年は竜巻に向かいあった。少年から見てもその竜巻が尋常じゃない大きさだってのは分かる。
下手したら二人でも少し厳しいかも知れない。だが、一度やると決めた以上やるのが男の子だ。
そう勝手な解釈を決め込んだ後、クロノは自身のデバイスを構える。
「フェレット君、聞こえるか?」
「フェレットじゃない! ユーノだ!」
声と共に上空から別の少年がやってきた。金髪の少年だ。
何処となくこちら側の服装を身に纏っている辺り彼もまたミッド側の人間なのだろう。
「あの巨大竜巻を封印する。手を貸してくれないか?」
「そのつもりで連れてきたんだろう?」
「良く分かってるじゃないか。なら早速頼むよ」
「分かったよ」
半ば渋々しながらもユーノは動いた。会話からしてあの二人はあんまり仲が良くないようだ。
「其処の犬耳も力を貸してくれ。流石に僕達二人じゃちょっとこれはしんどいからさ」
「犬じゃない! 狼だ!」
「どっちでも同じだと思うけど? 同じイヌ科だし」
「一辺脳天に噛み付いたろうかこのクソガキ!」
ついでにだれかれ構わず喧嘩を売っているようにも見える。何処となくあの男に似ているとも思えるようなそうでないような。
「二人共、あの竜巻をバインドで縛って狭めてくれ。その隙に僕と彼女で一斉砲撃の元に封印する」
「無茶苦茶な事をサラリと言ってくれるね」
本当に無茶苦茶だった。あれだけの巨大な竜巻をバインドで縛るなど相当力が必要になる。それを簡単にやれと言うのだからパワハラも良い所だ。
「無駄口叩かずにさっさとやる! 口を動かす前に手を動かしてくれないと困るんだけど」
「本当、良い性格してるねぇ、あんたのお友達」
愚痴りながらもアルフは隣に居るユーノに語りかけた。その言い分にユーノは大層不機嫌な顔になりながら返した。
「友達じゃありませんよ」
本当に仲が悪いようだ。
まぁ、そんな事はこの際どうでも良い。今はまずあの巨大竜巻を処理するだけに神経を注いだほうが良さそうだ。
「ったく、人に面倒毎押し付けるなんてさぁ。これで死んだらあんたの事恨むからねぇ!」
「その時は墓前にドッグフードとフェレット用の餌をお供えしておくよ」
「竜巻よりも前にお前を仕留めたい気分だよ……ったく!」
心の底から湧き上がって来る思いをグッと堪えつつ、アルフとユーノの二人は未だに猛威を振るいまくっている巨大竜巻を見入る。
自身の魔力をフル稼働させて両手を翳す。
足元に魔方陣が敷かれ、そこから幾本もの鎖状のそれが放たれた。
放たれたそれらは猛威を振るう竜巻に絡みつき、やがては雁字搦めに固めてしまった。
これにより竜巻の大きさは縮小し猛威もそれなりに縮んだ。だが、それも長い時間は維持できない。
もって数分が良い所だ。
「け、結構キツイなぁ……これ」
「ガタガタ言うんじゃないよ! それでも男の子かい?」
互いを叱咤しながらも必死に耐え続ける。それと同時の頃、クロノとフェイトは竜巻に接近していた。
「どうして近づくの?」
「幾ら威力が縮んだからと言って耐久力が落ちた訳じゃない。確実に仕留める為にも至近距離から砲撃を当てる」
「なる程」
クロノの言い分に納得し、フェイトもそれに続く。確実性を考慮した戦法のようだが、はっきり言って博打要素が強い。
下手に近づき過ぎて、逆に竜巻に巻き込まれたらそれだけで仕舞いだ。
それに、距離を近づけた途端にバインドが解けたら、そう考えたら接近などできる筈がない。
どうやらあの少年は度胸もあるようだ。
「そろそろだな。此処で決めるぞ!」
「分かった!」
互いに細くなった竜巻を前にデバイスを構える。
魔力を収束させて放つ準備をする。魔力量や時間からして殆ど一発勝負だ。
これを外した場合後がない。
「収束砲でしとめる。出来るかい?」
「勿論! 一通りの事は出来るから」
「上出来だよ。それなら安心だ」
此処まで来て砲撃魔法が使えないと言うのでは話にならない。しかし、どうやらその辺の疑念は稀有に終わったようだ。
「タイミングを合わせて……合図と同時に砲撃、良いね?」
「分かった」
頷き、指示に従う。執務官と共に戦うのに些か戸惑いもあったが、今はそれでも構わない。
あれを封印出来るのならばなんだろうと良い。
「今だ! 撃てぇ!」
「ファイヤァ!」
合図と共に互いに魔力砲を放った。細くなった竜巻に向かい青と金色の極太な魔力砲が激突し、激しい閃光が辺りに放たれる。
閃光が止むと、其処には先ほどまであった巨大な竜巻は姿をなくし、変わりに空中に浮かぶ6個のジュエルシードの姿があった。
「で、出来た……あ!」
「おっと!」
突如、体中から力が抜けてしまった。
緊張し続けた為に全身の力が抜けてしまったのだろう。
その拍子に高度を保つ事が出来ずに、落下しそうになる。
そんなフェイトを、隣に居たクロノが抱き止める。
「緊張のし過ぎだな。無理しすぎもあるみたいだし」
「え? あ? あああ……」
次第にフェイトの顔が赤くなりだしていく。一般人ならば分かるだろうが、KYに定評のあるクロノには何故顔が赤いのかさっぱり分からないのであり。
「どうしたんだ? 風邪でも引いたのか?」
「うがああああああ!」
さっきまで大人しかったのが一変し、クロノの腕の中でフェイトが激しく暴れだし始める。それに意味が分からずクロノ自身も驚く始末であり。
「ええええええ! い、一体何? 僕何か気に障る事でも言ったああああ!」
と、この通りであったりする。しかし、一応常識のあるアルフとユーノはあの反応を見て確信を得たりするのであり。
「フェ、フェイト……まさか、あんた……その執務官の事がぁ!」
「ち、違う! 断じて違うよぉぉ! 私の心は既になのはって決まってるんだからねぇ! 今更誰かに心変わりなんてしないんだからねぇぇぇ!」
「でも、そう言ってる割には顔真っ赤ですね。恋する乙女って感じですよね」
「風邪だよ風邪! 此処最近お腹出して寝てたからそのせいで風邪引いちゃってさぁ! あ~、今も何だか頭が痛いな~、って感じでさぁ……ゴホッゴホッ!」
等と言う明らかな分かり易い嘘を交えているフェイト。が、そんな嘘を嘘と感じ取れないクロノはマジで捉えてしまい。
「やっぱり風邪か。どれ位熱があるんだ? 無理して悪化したら大変じゃないか」
そう言いつつフェイトの額に自分の額を当てる。こんな事をしたらどうなるか分かると思うが互いの目線が近づく。
ゼロ距離で互いの目線が見詰め合っている。
次第にフェイトの体温が急上昇し始めている。
何時しか少々赤くなっていたフェイトの顔は何時しか真っ赤になって行く。
【オイイイイイイ! てめぇ其処の金髪変態女! 今すぐ家の玉の輿から離れろやクソボケエエエエエエエエ!】
と、突然二人の間に通信モニターが開き、其処から銀時のドアップが映りだしていた。
そのドアップに大層驚く両者。
「ぎ、銀さん!」
「銀髪天然パーマ!」
【おいおい、家の屋台骨の次は家の玉の輿ですかぁ? どんだけ泥棒猫被りなんですかぁ? 末恐ろしいガキだよてめぇはよぉ!】
モニター越しに映る銀時はかなりご立腹でもあった。無理もない。
銀時としてはクロノは是非とも抑えたい玉の輿だと自負していたのだ。
その玉の輿候補であるクロノが、フェイトとあわや危険な関係になりそうだったので急いで止めに入った次第でもある。
「し、ししし失礼な事言わないでよ! 私はなのは一筋なの! ほかの男の事なんて私にはアウト・オブ・眼中なんだからねぇ!」
【そう言ってる割には顔真っ赤じゃん! 恋する乙女じゃん! 恋愛モードまっしぐらじゃん! あれですか? 伝説の木の下でコクるつもりですかぁ?】
「お黙り! 主人公の癖に恋愛のれの字もしてない駄目人間の癖に恋愛の事なんて語らないでよ! ギャグアニメの分際でこっちの領域に入ってこないでよ!」
【ルセエエエエ! この小説が俺達とコラボした時点でこれは根っからのギャグ小説にくら替えしてんだよ! 原作みたいな萌え要素なんざ欠片もある訳ねぇだろうが! 察しろやそこんところをさぁ!】
モニター越しに喧嘩を勃発し始める両者。相当仲が悪いようだ。
それを聞いているアルフもユーノも毎度の事だと思い呆れ果てる始末でもある。
が、クロノ自身その光景は始めてなようであり。
「ぎ、銀さん! そんな事よりこの子、熱出してるみたいなんです。多分風邪じゃないでしょうか?」
【あぁ、風邪だな。恋の風邪だな。今すぐ海の中に叩き込んで頭冷やさせろ。それかてめぇの魔力砲で粉々にしちまえ。その方が俺もせいせいすらぁ】
「ちょっ、何酷い事言ってるんですか銀さん! 相手は女の子ですよ! 確かにプチ犯罪を犯した子かも知れませんけど、ちょっと位は気を使っても良いじゃないですか!」
【馬鹿野郎! こう言うクソガキぁ調子に乗ると碌な事にならねぇんだよ! ガキの内にしっかり教育してやるのが世の常だろうが!】
仕舞いにはクロノとまで言い争いを始める始末。KYであるクロノは銀時の言い分を今一理解出来ていないご様子であり。
しかも、根が優しい為に銀時の言う通りに出来ないのが彼なりの良い所であり悪い所でもある。
「と、とにかく! 色々と事情も聞きたいし一度彼女も連れて帰還しないと―――」
【冗談じゃねぇ! そんなガキ連れて来た日にゃ家の娘と危ない関係になっちまうじゃねぇか! そんなのお父さん断じて認めませんよぉ!】
「いや、この子どう見ても女の子ですよ。確実に危ない関係にはならないと思うんですけど?」
クロノには銀時が何を警戒しているのかさっぱり理解出来なかった。
何故少女でもあるフェイトが同じ少女でもあるなのはと危ない関係になると言うのだろうか?
その辺はもう少し勉強が必要なようだ。
「上等よ! 今すぐ貴方の所に行ってあげようじゃない! そして、今度こそ貴方の息の音を止めてあげようじゃない!」
【上等だぁゴラァ! 今すぐ俺んとこに来やがれ! 後腐れねぇようにギタンギタンに―――】
言葉の途中であった。突如上空から不穏な空気が流れ出す。
しかし、当の面々は会話に夢中でそれに全く気付いていない。
気付いているのはその中でたった一人だけであった。
「アルフ!」
「え?」
咄嗟にアルフに向いフェイトを投げ渡す。驚きながらもアルフはフェイトを受け止める。
その直後、クロノに向い雷撃が直撃するのはほぼ同時だった。
「がっ!」
「クロノォ!」
ユーノ達の目の前で突如降り掛かった雷撃により黒こげとなるクロノが映った。
黒いバリアジャケットが背中一面焼け焦げて機能の大半が失われている。
それに彼自身の負傷具合も酷い事になってる。
「おい、クロノ! 大丈夫なのか?」
「ぼ、僕の事は良い……それより、ジュエルシードの方を……」
「無理だ。僕じゃ封印出来ない。それに、もう手遅れだ」
ユーノがそっと指差す。その方にはクロノが負傷したその隙をつき、フェイトが6個のジュエルシードを全て封印している光景が見えた。
完全な油断だった。フェイトが黒幕ではなかった。
フェイトは、只その後ろに居る黒幕に良いように利用去れていたに過ぎなかったのだ。
その証拠に、今のあの一撃をクロノがフェイトを手放していなければ両方直撃していた。
「ま、待つんだ!……行っちゃ……行っちゃ、いけない……」
傷つきながらもフェイトに向い腕を伸ばす。その掠れきった声を感じ取ったのか、フェイトはそっと振り向いた。
その顔は、とても申し訳なさそうにも見えた。
まるで、彼に申し訳ないと思っているかのように。
そっと、フェイトの唇が動いた。
(ごめんなさい)
そう、そう告げているかの様に、クロノには聞こえた。
真相は分からない。だが、そう聞こえた気がしたのだ。
それを最後に、クロノの意識は途絶えた。
つづく
後書き
次回【時には子供でも決めなきゃならない答えがある】お楽しみに
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