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少年は魔人になるようです

作者:Hate・R
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第42話 少年は騙され、少女が守るようです


Side ネギ


ドサッ
「う、うぅうぅぅぅぅ……。」

「フォッフォッフォ。では、今日はこれまでにしておくかの。しっかり寝て、明日に疲れを残すでないぞい。」

「あ゛、ありがどう……ございまし、た……。」


学園長先生と修行を初めて早三日。

内容は僕が想像したのと全く違って、体の正しい動かし方だとかから始まって、

今は実戦向きの格闘技や対近距離用の魔法を教えてもらっている。学園長先生が言うには、


『ネギ君は魔力量は桁違いじゃから、とにかく持久戦に持ち込むのじゃ』


だそうだ。受けて避けて流していれば、ほとんどの相手は魔力が切れて勝てる・・・らしい。

上級の魔法は、戦況判断が出来るようになってからだって。


「って、言ってもなぁ…………。」

「アーカードとアニキじゃ、あっちのがどう考えても魔力量も上でさぁ……。

まぁ、東最強の魔法使いの事でさぁ。考えあっての事でしょうぜ。」


確かに、愁磨さん達と戦うには絶対に接近技が必要になる。

魔法より剣とか槍とか使ってるイメージあるし。魔法障壁(かどうかもあの人達は怪しいけど)も凄いし、

平気で魔法を切っちゃう人だから、数を撃っても無駄な事は分かった。と言う事はやっぱり至近距離から・・・


「アニキ、アニキ。んなこたぁもっと修行してからにしやしょう!今は頭より力でさぁ!!」

「う、うん。そうだね。じゃあ、寝てから寮に戻ろっか。」


変な言い回しなのは、ここがダイオラマ球って言う魔法具の中の世界だから。

学園長先生が修行の為に、って持って来てくれたんだ。とある筋に貰ったらしいけど、


『うぅ~む、なんでくれたんじゃろうなぁ……?罠かのう?そんな事する必要はないしのう……。』


とかブツブツ言ってた。

まぁいっか。今は寝て、早く明日菜さんと作戦会議しないと・・・・。


………
……



「う~~ん……。半日も寝ちゃったよ……。」

「これでも外は10分しかたってねぇってんですから、恐ろしい魔法具でさぁ。

(しかし妙でやすねぇ?最新式でも、外の一時間を一日にしかできねぇはずでさぁ。)」


喋りながら魔法陣に乗ると、淡い光が周りに昇って来てパシュッと軽い音を立て、

僕は元の麻帆良学園に戻ってきた。


「ああ、ネギ・スプリングフィールド君じゃね?」

「え!?あ、はい。えっと、あなた達は確か……。」

「ああ、申し遅れた。私達は5学区から23学区までの理事会代表者じゃ。

私はボルレア……失敬、名前は長いでの。ジャイロと呼んでくれい。」


陣の前に立っていたのは、50歳くらいの初老の男性だった。ジャイロ・・・学園長先生?

紛らわしいから先生でいっか。


「えと、ジャイロ先生は僕に何か用があって……?」

「おお、そうじゃ。―――とにかく、こっちに来てくれるかの。ここだと人目につく。」

「は、はぁ……。」


ジャイロ先生が歩き始めたので、僕も仕方なくついていく。

そして、しばらく歩いた所にあった魔法陣に乗って、またどこかへ飛んだ。


「えーっと、ここは……?」

「此処こそが私達の砦、要塞、最前線基地。そう―――」


真っ暗な部屋に明かりが灯り、部屋にいた黒いマントの人達が見えるようになる。

恐らく、ジャイロ先生と同じどこかの学区長の人達だろう。


「ようこそ、第二学長会――現通称、対学園内悪魔対策会の円卓へ。」

Side out



Side アリア


「アリカママ、プリント・・・・・。」

「おお、ありがとうアリア。丁度取りに行こうとしていたのじゃ。

……気のせいじゃろうか、久しぶりに会った気がするのじゃが。」

「・・・?おうちで、毎日・・・・会ってる。おととい、いっしょに寝た。」

「そ、そうじゃな。すまぬ、忘れてくれ。」


・・・・?変なママ・・・・。でも、私も変・・・誰が悪いか、分かる気がする・・・・・。


「ところでアリア。この後予定はあるかの?」

「・・・・んーん、ない。」

「そうか。私もこれを集めるので最期じゃったから、一緒に帰らぬか?」

「ん。じゃあ、鞄もってくる・・・。」


職員室から出て、教室に戻る。・・・あそこ、いっつも騒がしくてキライなの・・・・。

エヴァか真名が近くにいれば、だれも来ないからまだいいんだけど・・・。


「あ!おーい、アリアん!一緒に帰ろ~よ!」

「・・・・・・・・・。わたし、アリカママと・・・帰るから。」


教室に入った瞬間、アスモデウスが走ってきた。・・・・この子は、あんまり好きじゃない。

なんか・・・パパといるとき、エヴァより・・・・ママに近いかんじがするから。


「え~?ボクも一緒に帰っちゃ……ダメ?」

「・・・アス―――もみじ、寮。わたし、おうち。行くの、反対側・・・・。」

「むぅー!どうせ行くんだから良いじゃん!」

「よろしいじゃない、アリアさん。帰るくらいいいじゃありませんこと?」


話してると、いいんちょが横から入ってきた。だから、ここはキライ・・・。

関係ないのに・・・おせっかい・・・。


「ママ、待たせてるから・・・。いそいで・・・。」

「あ、うん!って、ちょっと待ってよぉーー!」


………
……



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「あ、う…………。ぅう…………………。」


あのあと、職員室に戻ったら、アリカママはお仕事がまだあるって言った。


『すまぬ、愁磨にどやされてしまったのじゃ。

こやつらに赤点を取らせると、夏休みアリアと遊べんからの。』


ばかれんじゃー四人が、英語の補習なんだって・・・。

アスナ・・・明日菜は、英語だけできるから・・・なしだった。

前は一番だめだったんだって。パパが魔法の事教えたから、記憶・・・なにか変ったのかな?


「アリアさん、もみじさん。こんにちは。」

「ちゃちゃ・・・なにしてるの?」

「お買い物です。夕食と、猫の餌です。」


歩いてたら、ちゃちゃと会った。スーパーの袋から、ネギが出てる。・・・アレの事じゃない。

餌も買ってるし、ねこさんのところ、行くみたい・・・・。


「いっしょ、行く・・・・。」

「かしこまりました。もみじさんはどうしますか?」

「え、あの、ボクは………行ってもいいの、かな?」

「ねこさん、いじめないなら・・・・・いい。」

「うぇえ、いじめないよぉ!じゃあボクも行くね!!」


・・・・騒ぐのも、だめ、なのかな・・・?一人くらい、いっか・・・・・・。


「それでは、お先に行って頂けますか?まだ買い物が残っているので……。

すぐに参りますので。」

「・・・ん、わかった・・・・・。いこ、もみじ。」

「え、あ、うん!じゃーね、茶々丸!」

「はい、お気をつけて。」


ちゃちゃと別れて、裏道に入ってく。


「――――ね、なんで手伝うって言わなかったの?

アリアんなら茶々丸の手伝いすると思ったんだけどな?」

「・・・・・ねこさん、おなか減ってるから。ちゃちゃ、時間決めてるの・・・。」


毎日あげると、自分でごはんがとれなくなるから・・・・・毎日じゃないけど。

毎日来るくらいなら、飼った方がいい。あぶなく、ないし・・・。

でも、20匹くらいいるから、飼うと・・・大変・・・。


「・・・・ここ。」

「はぇー……なんか、綺麗な所だね。」

「ん、わたしも・・・そう、思う・・・・・。」


ビルに囲まれてるけど、汚れてない、不思議な場所・・・。いっつも、ねこさんがいっぱいいる。


「ニャーニャー!すっごくいっぱいいるね!ニャーーふげっ!?」

「・・・いじめちゃ、ダメって・・・・言った。」


走っていこうとした首根っこをつかんで、止める。

・・・・にわとりじゃないんだから、すぐに忘れないで、ほしい・・・・。


「にゃー、ごはんだよ・・・・。」

ニャー ニャーニャー ニャ? ニャニャー!

「う、わ、ちょ、わわわ!!ね、ねぇ。これ触っても、良いのかな?かな?」


ねこ缶をお皿に出すと、ねこさん達が集まってくる。

もみじは、足元に来たねこさんに、恐る恐る手を伸ばしながら聞いてくる。

・・・・ねこさんって、魔除け?だってパパが言ってたけど・・・だいじょぶだよね。


「・・・・うん、この子たち・・・・やさしい。」

「そっか!わしゃしゃしゃしゃ……おお、もっふもふじゃん!!

キミ~はどうかな~~♪わっしゃ~しゃ~~♪」


・・・・・変な歌歌いながら、ねこさんを次々回収してく。嫌な顔してないし、多分・・・だいじょぶ。

もみじ、今なら夢中になってるから・・・・だいじょぶ。

私はそっともみじ達の傍を離れて、ずっとつけてきてた、パパの敵の後ろに『ぎじてきにわーぷ』する。


「一人だけお願い、『神虎(シェンフー)』。」

「「「なっ!?」」」


私が『神虎(シェンフー)』を呼んだ声で、やっと気がつく・・・敵?そっか・・・こんなに、弱いんだ。


「・・・・・なにか、用?先生。」

「アリアさん……!!クッ、『光よ(ルークス) 弾けろ(バーンナボル)!!』」


ネギ先生が閃光弾・・・みたいな魔法を放って、目くらましをする。

けど、無駄・・・・。パパとママと戦ってて、この程度なら・・・・見飽きてる。


「『神虎(シェンフー)』、捕えて・・・。」
ゴロァルル.....

「今のうちに、もみj――うわぁ!?」

「ネギっ!!あう!」

「兄貴!姐さん!!って、おおおお!?食わんといて!食っても俺っチは美味くないぜ!?」

「うるさいだまって・・・。あなたみたいな、汚いの・・・・食べさせない。」


捕まえた三人・・・?は、思った通り・・・ネギ、明日菜、・・・・・変なのだった。


「もう一回だけ、聞くね・・・・。なに、してたの?」

Side out


Side ネギ

「もう一回だけ、聞くね・・・・。なに、してたの?」


僕たちは、もみじさんを・・・いや、魔王を倒そうと後をつけて来た。

だけど、あっさりアリアさんに捕まってしまった。

なんでだ!?愁磨さんにすら僕たちの位置までは分からなかったのに!!


「(まずい、まずいまずい……!!この虎、明日菜さんに触っても消えない。

と言う事は、魔力や魔獣じゃなく別のモノで構成された召喚獣!

抜けだす事は……出来るけど、時間が足りない!)」


ここは仕方ないと判断した僕は、一昨日の事を多少混ぜながら話す。

・・・なんだか、嫌な事ばっかり教わる。


「……昨日、第二学園長会の人から話を聞いたんだ。

もみじさんが結界を内側から破って、魔王軍を麻帆良に呼び込もうとしてるって。

それで、知り合いの僕達が先に説得に来たんだ……。」

「・・・・・・嘘ついても、分かる・・・・。『神虎(シェンフー)』、左。」
ゴロゥゥアァ......

「きゃああああああああ、あ、あぁ………!?」


アリアさんが虎に命じると、左足――明日菜さんの方に力を入れ始める。

骨の軋む嫌な音が聞こえ、悲鳴すら出なくなっていく。


「ま、待ってください!!ほ、本当の事を話しますから!!」

「・・・・ん、6割本当みたいだから・・・・半分だけ。」

「う、ゲホ、ゲホッ……!!」


要するに、4割が嘘だったから、半殺しにしたって・・・!?こんな、こんな簡単に人を傷つけて!!


「アリア~ん、何やってるのーー?」

「ッ、もみじ・・・・!!」


もみじさんがこちらに来た事で、アリアさんに動揺が走り、僅かに虎の拘束が緩まる。

その瞬間、僕は魔力を右足に集め、学園長先生に教わった蹴り技を放つ。


「『蠍狩』!!」
ガッッッヅン!!

グルオァアァァァアアァ!?

「っ、朱里さん、ごめんね!!」

「うぇ、え?明日菜!?なに、何これ!?」


足が離れた瞬間、明日菜さんはもみじさんを羽交い絞めにして捕え、僕は魔法を遅延しておく。


「ハァ、ハァ……!もみじさんアリアさん、すみません。

学園長達には、ウェールズの村の……あの時の映像を見せられて、

麻帆良をこうされては敵わないって言われて、もみじさんを倒しに来たんです。

そう、村を嗤いながら燃やすもみじさんがバッチリ映ってたんですよ。

お陰で、話に聞くだけじゃできない覚悟も出来ました。」


明日菜さんは困惑した表情で、もみじさんは震えながら、

アリアさんは・・・相変わらず、無表情で僕の話を聞いている。


「でも、ハッキリ言って僕には関係無いんです。麻帆良の治安とかそんなのは後回しなんです。」

「「えっ?」」

「僕にとっては――――」


明日菜さんともみじさんが、疑問の声を上げる。そうでしょう。

明日菜さんにはそれとなくしか伝えていませんから。理解しているとは思っていませんでした。


『アッハッハ!考えすぎだって!!お前は本当にどっちにも似てないな!!

まぁ、熟考するのは悪い事じゃない。けど、そう言う事じゃない事だってあるだろ?』


そう、僕にとってこの人達は―――


「教師と生徒の前に、ただの仇で、敵で、憎むべき相手なんです。

……『解放(エーミッタム) 降り立つ聖天(レーン・ガェンティン・ヴェチェクニクタ)』!!」
ゴバァァァアァァァアアア!!


天に光の柱が昇り、悪を滅する。

穿つ聖天(ラゥゾ・ヴェチェクニクタ)』を、更にあの魔法に近付けた魔法。威力は桁違いだけど、範囲が狭く魔力消費も多い。


「ちょっ、危ないじゃない!!」

「大丈夫です、この魔法は対象以外にはただの眩しい光ですから。それよりも、アリアさん――――!?」


いつの間にか、アリアさんが居なくなっていた。

――後ろを見ると、光が丁度収束して行って、中が見えるようになっていく。


「・・・・・ハァ、ハァ・・・・ハァッ!」

「あ、アリアん!!大丈夫!?ごめんね、ごめんね……!ボクの為に!!」


そこには、四頭の虎と大きな扇を持ち息を荒くしているアリアさんと、無傷のもみじさんがいた。


「明日菜さん、離れてください!!」

「・・・・勘違い、しない・・・・で・・・・。」

「「「え?」」」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

subSide アリア


傷ついちゃった『神虎(シェンフー)』を戻してあげる。

ごめんね・・・、ありがと・・・・。


「・・・あなた達、もみじが・・・・ほんとに、そんな事すると思うの・・・?

このいっつも、ばかみたいに笑って・・・何にも考えてない、子が・・・。

人を壊して、嗤うって・・・・思ってるの・・・?」

「あ、その、私は……。」


明日菜が、よろよろと後ろに下がる。・・・私は、この子がキライ。

・・・・でも、ダメな子じゃない。バカだけど、やさしいから。


「……でも、愁磨さんと会う前だったんだ………!

あの時は、そうだったと思うしかないじゃないか!じゃないと、そうじゃないと…!」

「ね、ネギ……。」

「・・・あと、もみじ。私は、あなたの為に、やった訳じゃ・・・・ない。パパと、ママの為。」

「え、えぇ?」


・・・あれは、もういい。もう・・・迷ったから・・・。それよりも、こっち。


「あなたが居なくなると・・・悲しむから。ママは、あなたが好きだし。

パパも、邪険にしてるけど・・・好き・・・。だから、殺させない。・・・・傷つけさせない。」

「あ、アリアん……。」

「だからあなたは、私が・・・私も、守ってあげる。」

Side out

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「すぅぅ……ふぅぅぅ……。すぅぅぅ……ふぅぅぅぅぅーーー。」


守る、か・・・・。僕には、守ってあげたい人は・・・・多分、いる。

一番は、明日菜さんだと思う。それと、カモ君。

次に、クラスの人達。その次に、麻帆良の人達。でも―――


「僕の……僕が、そんな風に自分を犠牲にしてまで守りたかった人達は、その人が、壊したんです。」

「・・・・"蔡雅"。」


杖に魔力を通して槍の様にすると、アリアさんはさっきの大きな鉄扇を広げる。

降り立つ聖天(レーン・ガェンティン・ヴェチェクニクタ)』を防がれた以上、多少の魔法ではあの鉄扇でかき消されてしまう。

だから、槍の先に集めての一点突破・・・・これしかない。


「あああああああぁあぁああぁぁぁぁあぁあああ!!!」
ドンッ!!


学園長先生から教わっていた『瞬地』もどきを使って、それでも普通の数倍の速さで突撃する。

アリアさんはそれを畳んだ方の鉄扇で防ごうとして―――


ザクッ!!


鉄扇で防がれた感じも、触れた感じもせずに、何かに刺さる感触がした。


「アリア、よくやってくれた。ハハッ、まさかお前がそんな事言うなんてな。

知らない内に育ってるもんだな。」

「ぱ、パパ・・・・・!?」


槍の先には、アリアさんを抱きしめて頭を撫でている・・・・すごく優しい顔をしている愁磨さんが居た。


Side out

 
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