魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~
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A's編 その想いを力に変えて
25話:迫る狂気
前書き
早くもできました。
やはり作者は戦闘描写が苦手です。戦闘が絡むと必ず文字数が減ってしまう……
コツ、コツとわざとらしい足音を出しながら、ゆっくりと士に歩み寄る、見た事のない怪人。
歩き方、その立ち振る舞い。その雰囲気は紳士的にも見えるが、その見てくれと口に浮かぶ禍々しい笑みが、そんな雰囲気もぶち壊してしまう。
「まったく…書を速く完成させたいからといって、ここの魔導師まで襲うとは……よほど切羽詰まっているようですね、彼等は…」
「いったい…何のことだ…?」
「いえいえ、こちらの話ですよ」
士の質問もやんわりと受け流し、それでも怪人は足を止めない。
「ならもう一度聞こう……お前は、誰だ?」
士は先程の質問をもう一度、自分も知らない(・・・・・・・)に向け問いかける。
すると怪人はようやく足を止め、口を開く。士と怪人の間は距離にして、約20メートル程。
「ふふふ……分からないのなら、私の正体自体は私の口からは言わないでおきましょう。知りたければ…自分で考えることですね」
「なに……?」
「ただ…これだけははっきりしています」
そう言いながら、怪人はスッと右腕を横に伸ばす。
すると怪人の体に刻み込まれた青のラインが光り、伸ばした右腕に集束し始め……
―――肘から先の右腕が、漆黒から青に変わった。
それと同時に、淡い青色の光が右手に集まり始め、次第にその光は、青色の銃へと変わる。
「っ!?」
「私はあなたの……」
―――敵ですよ―――
その言葉が士の耳に届くと同時に、怪人の持つ銃が火を吹いた。
マシンガンのように放たれる銃弾は、まっすぐ士の元へ向かっていく。
士はそれらをライドブッカー・ソードモードで弾いていくが、不意の一発がライドブッカーを持つ手に当たり、ライドブッカーが士の手から弾かれる。
「ぐっ―――ぐあぁあぁぁぁぁ!」
手に当たった痛みに顔を歪めるが、それも一瞬のこと。防ぐ術をなくした士には、当然銃弾が命中する。体の各部から火花が散り、士は再び地に伏せることになる。
「ぐっ…ぁぁっ…!」
「ん~、能力が発動するのに時間が掛かってしまいますねぇ……
おそらく私の経験不足が原因。もう少し戦闘訓練を積んでおくべきでしたかね…」
そう言いながら、怪人は自分の持つ青い銃を眺める。
だが、それも小さなため息をつくと共に止め、
「ま、今はそんなことも言っていられないでしょう…」
と言いながら銃を手放す。
すると普通は落下していく筈の銃が、光となり消え去り、青かった腕も体の青いラインが光ると同時に、元の漆黒へと戻る。
「ふふふ……それにしても、この程度ですか?仮面ライダー」
「くっ…ぅぅっ…!」
怪人はまたも不敵に笑いながら、今度は怪人が士に問いかける。
士はそれに応えるかのように、腕に力を込めゆっくりと立ち上がる。
「そう!それでこそ仮面ライダー!それでこそ私が戦いたいと思う相手ですよ!
さぁ、戦いましょうディケイド!そして私を―――」
「満足させてください!!」
その光景を見ていた怪人は手を広げ、狂ったかのように叫び、笑う。その口は先程よりも大きく開き、赤い複眼も歪んでいるように見える。
「満足させろだぁ?ふざけやがって……!」
怪人の言葉を聞いた士は、地面に転がったライドブッカーを拾い上げながら、小さく毒を吐く。
「戦いってのは、楽しむ為にあるんじゃねぇぞ!」
そして怪人に向け叫び、士は走り出す。
「私にとって戦いとは、唯一の楽しみなんですよ!」
怪人も負けじと叫ぶと、上げていた両手を前に突き出す。
すると今度は銀色のラインが光り、両腕が銀色に染まる。そして突き出した手に銀色の光が集まり、それが銀色の棒へと変わる。
「「はあああああああああああああああっ!!」」
士が怪人の前まで到達すると同時に、士は剣を、怪人は銀色に煌めく棒を振るう。
あるときは屈んで、あるときは武器で、またあるときは上半身の動きだけで、それぞれの攻撃を避け、受け、防ぐ。
「ふっ!」
「ん!」
そこへ唐突に怪人が突きを繰り出す。士はそれを避け、棒の下をくぐらせながら横薙ぎに入る。
ギィィンッ!
「っ!?」
だがその攻撃を、怪人は突き出していた筈の棒で防いでいた。
(腕を引くと同時に、棒を縦に持ち替えて剣の進路を…!)
「はぁっ!」
「なっ!?」
すると怪人は防いでいた棒を振り上げ、士の剣を上に弾く。
幸い、剣は士の手元から離れてはいないが、その一撃は力のあるものだった。
「はっ!」
そこへ怪人の横一閃の一撃。
士はそれに素早く反応して、持ち上げられた剣を右手で逆手に持ち、左手を添えてそれを防ぐ。
二つの武器が衝突し、金属音と衝撃波を生む。
「ぐっ…ぐぅぅ…!」
「どうしました…?もう、根を上げてるんですか…!?」
「だ、誰が…!」
表面上はそう言っているが、内心では怪人の言葉に頷いていた。
(くそっ…くそ、くそっ!魔力の消費もやべぇし、あいつとの…シグナムとの戦いでのダメージも多少ひびいているみたいだ…!)
仮面の下で少々顔をしかめながら、心の中ではそういい、それでも負けじと怪人の棒を弾き距離をとる。
(魔力消費は高いが、四の五の言ってはいられない。ここは別のライダーで一気に―――)
距離をとった士はライドブッカーよりカードを取り出そうと、手を伸ばす。
「させませんよ!」
「―――っ!?」
だがその瞬間、空気が爆発するような音と共に、怪人の声が聞こえる。顔を上げて確認すると、既に目の前には怪人の姿が。
(なっ、速―――)
「ふんっ!」
そう思ったのも束の間、怪人は棒を振り下ろし、ライドブッカーを士の手から叩き落とした。
「しまっ―――」
「はぁぁあああっ!」
刹那、次々と繰り出される棒術。
叩かれ、薙ぎ払われ、そして突き上げられ―――
「ぐはっ…!」
空中から盛大に落ちる。何度も繰り出された攻撃によるダメージで、士は地面にのたうち回ってしまう。
「くっ…!(こいつは…)」
士は痛みの走る体に鞭をうち、立ち上がりながら先程までの戦いを思い返す。
(銃に棒術、黒い体に……こいつはいったい…)
「―――エレメント・ブランディング」
「っ!?」
不意に聞こえた声に、士は顔を上げる。
そこには走りながらこちらへ向かう怪人の姿。棒を持つ右手にはさっきまではなかった赤、緑、黄色の三色のラインが走っていた。棒の先にはエネルギーが見受けられる。
(あれは、ヤバい!)
視界に映ったその光景から、大きな危機感を感じた士。すぐに拳を振り上げ迎え撃とうとする。
だが、怪人は反転しながらそれを避け、元の向きに戻ったところで、
「はぁあっ!」
「がはっ―――」
士に強力な突きを与える。
それを受けた士は大きく吹き飛び、ビルに衝突する。ぶつかった事でできた爆煙と共に士の姿が見えなくなる。
「…………」
怪人は士が消えた一点を、じっと見つめる。両手の銀色は消え、漆黒に戻る。
すると、煙をくぐり抜け人影が現れる。
背丈は小学生ぐらい、片腕を抑えながら出てきたのはディケイドではなく、元の姿の士だった。
士は煙から出てくるとすぐ、膝から崩れ落ち地面に倒れる。
「ぐっ……くぅ…ぁぁ……」
「……終わり、ですね」
苦痛に声を漏らす士に、容赦なく近づく怪人。左手を横に広げ、今度はキラキラと光る白へと変える。左腕に光が集まると、盾とそこに収まる剣が現れる。
怪人はそこから剣を抜き、切っ先を倒れる士に向ける。
「がっかりですよ、この程度だったとは。もう少し楽しめると思っていましたが……」
「ぐぅ…このぉ…!」
「まぁ、今ここで殺っておくのも…一つの手ではありますがね」
そう言うと、怪人は剣を振り上げる。今にも士を斬り捨てようと……
「今あなたを殺す事に何の抵抗もないですが、こんな形で終わってしまうのは、正直残念です」
「っ……!」
「では……さよならです」
―――そのとき
ズドオオォォォォン!!
「―――ぬぉっ!」
突然の轟音と揺れに、怪人はバランスを崩す。
士はわずかに見える視界に、一筋の桃色の光を確認する。
(アレは……なのはの…?)
「うむ、結界が壊れましたか。まぁ、私にとってはやる事は変わりません」
だが、怪人はそんなこと気にすることなく、再び剣を握る。
そして月の光に反射する剣を振り上げる。
「今度こそ―――」
「スティンガーブレイド!!」
そこへ不意に響く声と、怪人を襲う水色の魔力刃。
それにいち早く気づいた怪人は盾を構え、魔力刃を弾く。そして魔力刃が放たれた方向を見ようとして―――
〈 Blaze cannon 〉
「いけぇぇ!!」
今度は水色の魔力砲に包まれ、その姿が消える。水色の光が消えると、そこに怪人の姿はない。
「士!無事か!」
「その声…クロノ、か…?」
すると士のすぐ側にやってくる、黒いバリアジャケットに身を包み、手には愛用のデバイス、“S2U”を握っている人物―――クロノ・ハラオウン。
「なんで…お前が…」
「それは後でも話せる!とにかく、今すぐアースラまで転送する!」
そう言うが早いか、すぐに足下に魔法陣が展開される。
「ぐっ…小僧、やってくれますね…!」
そんな中、視界の端に立ち上がる怪人が映る。
「ですが、逃がしはしませんよ!」
剣と盾を構え、転送準備をしているクロノの元へ走っていく怪人。
「―――もう遅い…転送!」
だがそれもかなわず、クロノの叫び声と共に士達は光に包まれる。
士は転送時に出る光の中で、意識を失った。
後書き
後半部分……少々展開ひどかったかな…?なんて
やっぱり戦闘描写は苦手です……
最近、新たに執筆方法を編み出しました。
暇な時間、ルーズリーフに書き留めるという方法を!
なんで更新ペースはいつもより早くなる…と思います(汗)
では、また次回に。
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