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アイーダ

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第二幕その四


第二幕その四

 アムネリスはファラオの左横に立っていた。彼女もまた緋色の服で礼装である。その後ろにはアイーダが俯いて控えている。今城の入り口の凱旋門の方から歓声が起こった。
「来たぞ!」
「誇り高き英雄が!」
 民衆はその声を聞いて笑顔で声をあげる。そして凱旋門の方を一斉に見た。
 誰かが叫ぶ。それはすぐに全員のものとなった。
「エジプトを守る神々に栄光あれ!ナイルを統べるファラオに楽しき讃歌を!」
「今ここに!」
 彼等は神々とその子であるファラオを讃えだした。
「勝利者達の髪に勝利の冠を飾りましょう!」
 続いて女達が言う。
「武器を花で飾り勝利を祝いましょう」
「そして踊りを。天空で星達が太陽の周りを踊るように」
「そうだ」
 神官達が民衆の声に応える。
「勝利を統べるいと高き神々に感謝を」
「この幸運なる日に」
 彼等も言うのであった。
「偉大なる神々を讃えよ!」
「我等を守護されるファラオに!」
 口々に言う。そこで高らかな笛の音が鳴った。それは軍の曲であった。
 軍の曲に合わせ楽手達が来た。皆誇らしげに音楽を奏でながら整然と行進する。
「来たぞ!」
「英雄達が!」
 民衆は誰もが彼等を見てまた歓声をあげる。
「勝利者達が!」
「我等の誇りが!」
 続いて舞妓達がやって来て華麗な舞を舞う。その華麗な舞に見惚れていると遂にその戦士達が来た。
 戦車に乗り武具を構えている。神器に神像が同時にある。それを飾りながら前に進む。すべてエチオピアからの戦利品である。その中で黄金色の戦車に乗り黄金色の鎧と緋色のマントを羽織ったラダメスが遂にやって来た。
「あの方が」
 アムネリスはその姿を見て満足そうに笑う。
「遂に来られたわ」
「遂に」
 アイーダは彼の姿を見て顔を俯けさせる。
「エチオピアを破って」
「ラダメス万歳!」
 民衆達はラダメスに対して叫ぶ。
「我等が英雄!」
「誇り高き勇者よ!」
 ラダメスは無言で彼等に応える。そして歓呼の声の中戦車から降りて神殿の下からファラオに対して跪く。ファラオまでの道は既に開けられていた。ファラオはその道から彼を見下ろしていたのであった。
「ラダメス将軍よ」
 ファラオは玉座から彼に対して声をかけてきた。厳かな声であった。
「よくぞ勝った」
「有り難き御言葉」
 ラダメスはその言葉に礼を述べる。
「そしてだ」
 ファラオはまたその彼に声をかける。
「まずは立て」
「わかりました」
 ラダメスを立たせる。そのうえで話をまたしてきた。
「褒美は何がよいか」
 そうラダメスに問う。ファラオは微動だにしない。
「申してみよ。好きなものをやろう」
「私が好きなものを」
「そうだ」
 その厳かな声をまた出してきた。
「この王冠と玉座に誓おう。そして神々にも」 
 絶対ということであった。ファラオとしての誇りをかけてきたのだった。
「今それを誓う」
「それではファラオよ」
 ラダメスは自分の上にいるファラオを見上げて述べてきた。
「お待ち下さい」
 だがここでアムネリスが父に声をかけてきた。
「何だ、娘よ」 
 玉座から娘に顔を向けて問う。
「何用だ」
「まずは英雄に冠を」
「うむ、そうであったな」
 ファラオは娘のその言葉に頷いた。それから左右の者達に対して述べた。
「それではあれを」
 そう告げる。
「持って参れ」
 すぐに冠が持って来られた。それは薔薇の花と緑で飾られた冠であった。それがアムネリスの手に手渡された。
 
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