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SAO─戦士達の物語

作者:鳩麦
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キャリバー編
  百二十三話 年末の大イベント

 
前書き
はい!どうもです!

GGO編が完結して、少しお暇をいただいておりました。更新が遅くなり申し訳ありません……

さて、それでは今回より、ようやくキャリバー編の開始となります!
原作とは一味二味違う戦士達のキャリバー編、どうぞ、お楽しみ下さい!

では、どうぞ! 

 
2025年 12月28日 日曜日 午前5時51分
桐ヶ谷家

「……ふぁ、眠みぃ……」
もぞもぞと布団を退けて、ベッドから一人の青年が起き上がる。ボサボサとそこら辺に跳ねる髪を掻いて起きた青年は、布団から出ると同時に身を震わせる。

「さっぶ……」
まあ、十二月も下旬である。寒いのも当然だろう。
と、青年は布団に戻りたくなる衝動を何とか押さえ込みつつ、立ち上がり、着替えだす。

長い袖のジャージを着て、玄関から野外にでると軽く準備運動をしてジョギングを始める。
最早涼人の身体はSAO前の調子を……と言うか、それ以上の物を得ており、その足取りは軽やかだ。
以前は町内半周だったが、今は一周を三十分で走れる。以前和人とこの話をして、ドヤ顔で勝ち誇ったのは中々楽しかった。

「ほい、とーちゃく」
再び戻って来た桐ヶ谷家の前で立ち止まり、クールダウンして家に入る。着替えと共にある程度汗を拭いて、洗濯機の下へ……

「よし、コレで……「わー!間に合った!」……懲りねぇなぁお前……」
溜め息混じりに振り向いた所には、やはりと言うかなんと言うか、道着に右手に竹刀、左手に洗濯物と言う奇妙な姿の直葉が立っていた。

「あはは、いや〜何か忘れちゃうんだよね〜って、あ」
と、其処で直葉は何かに気がついたように一瞬上向いて、警戒した目線で涼人を睨んだ。

「りょう兄ちゃん、後ろに居て」
「……はぁ?」
「今度こそ手も足も出せないように、後ろに居てって事!ほら!出る出る!」
「おわっちょ、押すなって……」
言いながらも、直葉によって涼人は洗濯機のある洗面所の外に出されてしまった。
直葉はしっかり涼人と洗濯物の間に立つと、ドラム式の洗濯機の中に次々に洗濯物を投げ入れて行く。

「〜♪」
そんな彼女の様子を見ながら、涼人は若干呆れたように呟いた。

「なぁ、スグさんよぉ……」
「え?何?」
「……そんなに嫌なら、投げなきゃ良いんじゃね?」
「…………」
至極真っ当な意見を言った涼人に、直葉は若干顔を朱くして、更に洗濯物を投げ入れる。

「それは……ヤダ。何か、負けた気がする」
「なんじゃそりゃ」
苦笑気味の言葉を背中に受けつつも、直葉は洗濯物を投げ続ける。そうして、例のブラジャーに手を伸ばし。投げた。
くるくると放物線を描いて飛んでいくそれは、直葉の絶妙なコントロールで見事に洗濯機の中へと吸い込まれ……る、直前で、突如張られた白い凧糸に引っかかり、その動きを止めた。

「……は?」
ゆっくりと、その凧糸を目線で伝って行く。それは洗濯機の前にピンと張られ、壁についたタオル掛けやその他突起物を軸にして直葉の後ろへと延びていて……

「おー、上手く行くモンだな」
「な……な……!?」
その先端を、涼人が持っていた。直葉の視線に気がついたらしい彼は、カラカラと笑いながら言った。

「いやあ、今日辺り来るかと思ってよ。お前が投げる高さを今までのから予想して、倉庫に余ってた凧糸でトラップを作って見たわけだ。上手いこと行くもんだ」
「…………(スッ)」
「ま、待て待てスグさん。ちょいと弁解させてくれ」
無言で竹刀を構えた直葉に焦ったように涼人は手をかざして言った。
目を細めて涼人を睨んでいた直葉は、若干訝しげな顔をする。

「何ですか、オニイサマ」
「大丈夫だ。今回は直接触れてねぇからノーカン「ツキィィィィィ!!」ちょ待!?突きは死ぬ、ブホァア!?」

桐ヶ谷家の庭先から、驚いたように小鳥が数羽、飛び立った。

――――

さて、その後涼人はコッテリとお叱りを受け、例によって彼女の好きな物を一つ作る羽目になったのだが……

「ったくアイツは何でこう面倒な料理を知ってんのかね……!?」
如何にも不服そうに、涼人はキッチンで言った。
直葉から要求されたソレを、涼人は実を言うと以前自分の為に作った事が有ったのだが、正直面倒な料理なのであまり作りたく無かったのだ。が、今逆らうと後が怖い。
幸い材料は有ったので、涼人は渋々作業に移る。

先ず、湯煎で卵黄と白ワインを泡立て器で混ぜる。味付けとばかりにコショウとレモン汁を入れて、さらに混ぜ、ある程度混ざったらば其処に焦がしバターを少しずつ混ぜながら投入する。因みにこの時両者が分離してはならない。そうならないように乳化させつつゆっくりとバターを入れていき、完全に混ざったらソースの完成だ。
因みにこのソースにも名前が有るのだが、正直どうでも良いので涼人は覚えていない。

と、此処でドタバタと音を立ててこの桐ヶ谷兄妹の母、翠が居間に飛び込んで来る。

「わー!ヤバいヤバい!あ、おはよう涼人君!」
彼女は今日も年内の校了が数件残っているらしく、まあ端的に言うと年末最後に死ぬほど忙しい。

「おはようございます叔母さん。あー、トーストが後……(チーン♪)出来ました。コーヒーは?」
「うー、要らない!「んじゃ水筒に入ってますんで、こぼさないで下さいよ?」ごめんありがと!ほんっと助かるわー」
話しながら涼人は取り出した焼きたてのトーストに手早くマーガリンとジャムを塗ってコーヒー入りの水筒と一緒に彼女に渡す。完全に慣れている者の動きだ。

「ありがとっ!あ、今日も遅くなると思うけど、悪いんだけどお願いね。行って来まーす!」
「へい。行ってらっしゃい」
トースト片手に飛び出す翠の向かう先にある扉が開き、翠が足踏み。

「和人おはよう!行って来ます!」
「んあ?行ってらっさい……」
現在時刻は九時を十分過ぎた位なので、今日の和人は少し寝坊気味なお目覚めだ。案の定まだ完全には目が覚めていない様子で、しばらくボーっと其処に立っている。
まあ涼人、直葉含め学生組みは全員今日から冬休みなので、気持ちはわからないでもないが。

さて、何時までも和人の事を脳内で実況中継していても仕方がないので涼人は作業を再開する。

先ず先ほどまで翠のパンをトーストにしていたオーブントースターが冷める前に、スライスしておいたイングリッシュマフィン(市販)をぶち込み、タイマーセット。
鍋に湯を沸かし、沸騰しない程度まで温めて中火でそれを維持。そのままおたまでそれをかき混ぜて、渦を作り鍋の中心に向けて水流を作る。

そのままその中心に向けて、涼人は生卵を割り落とす。所謂、ポーチドエッグを作っている訳である。
と、熱湯に入れられ、即座に凝固し始めた卵がある程度固まる間に用意しておいたフライパンに油を引き、火に掛ける。
ベーコンを乗せて焼きはじめ、卵の様子を見つつ少し待つと、ベーコンが焼き上がるより少し前に、卵がいい感じの硬さになるので水に入れて冷やす。
と同時に焼き上がったベーコンを上げて、何故か良いタイミングで焼きあがったマフィンを取り出してその上にベーコンを乗せて、水を切った卵を更にその上に乗せる。この、卵、ベーコン、マフィンの作業を繰り返す事30分……

――――

「朝飯出来たぞ〜……」
「は〜い!」
「おぉ、腹減ったなぁ」
庭に居た直葉と和人をそう言ってよんで、朝食タイムだ。

「ったく、あーめんどくさかった」
「文句言わない!もとはと言えばりょう兄ちゃんの自己責任なんだからね!?」
「ハイハイ……」
「……?」
ぶつくさ言っている涼人に、直葉がそう言って涼人は気怠げに頷く。なんの話か分かって居ない和人はまだ寝ぼけ顔で首を傾げているが、まあ別にわざわざ言うべき話でもあるまい。

「さて……」
と、食卓に出す前に始めに作っておいたソースを掛ける。黄色いソースが白い卵に付いたのを確認して、食卓に出した。

「へいお待ちっ」
「おぉー!」
「これは……何だ?」
和人の問いに、涼人は肩をすくめて答える。

「エッグベネディクト。アメリカかどっかの一般的な朝食メニュー。何故かスグが知っててな。作る羽目に……」
「へぇ……」
言いながら、興味深そうに皿の上の料理を凝視する和人を横目に食卓に付いた涼人は、皿の前で手を合わせて高らかに言った。

「さて、それでは皆さんご一緒に!」
「「「いただきます!」」」
両手を合わせて軽く一礼。どこの家でもやる、食事前の1コマだった。

「一度食べて見たかったんだよね〜」
ニコニコ顔で言うと同時に、直葉はナイフでそれを軽く切って口に運ぶ。和人などはソースで手が汚れるのも構わず手掴みだが、まあその辺は人それぞれなので特に制限もない。ちなみに涼人も手づかみだ。そして……

「(んぐっ)」
「(はぐっ)」
「(もぐっ)」
三人同時に、それを食べる。もぐもぐと少しかむと、三人ともそれぞれの表情で言った。

「んん!おいひぃ!!」
「へぇうも(ま)いじゃん……んぐっ」
「ふむ……ま、イケるな」
ベーコンのカリカリとした触感に、塩気。卵のぷりぷりとした触感。焼いたマフィンのサクサク感と、ソースの酸味。成程、流石に有名なメニューなだけあって、なかなかに美味い。

「うん!また作ってね!りょう兄ちゃん!」
「断る。お前コレ結構面倒臭ぇんだからな?」
ふんっ。と鼻を鳴らして答えた涼人に対して、和人が片手を上げた。

「俺も個人的にはまた喰いたい」
「ほら!お兄ちゃんもこう言ってる!」
「手前で作れお前ら!!」
そんな事を言っている間に、皿の上はドンドンと片付いて行くのだった。

────

「……ふぅ」
いち早く食べ終えたリョウが立ち上がり、和人達に振り向いて言った。

「お前ら茶は?」
「あ、私一杯」
「俺はいいよ。コーヒーあるし」
「よく飲めるよな。それ」
「慣れれば美味いんだけどなぁ……」
呆れたように言った涼人に、和人はふむん。と息を吐きながら言った。直葉の「そう言う所だけ子供だよね~」と言う発言に、涼人は「ほっとけ」と返す。

「あ、そーいえば……」
と、そんな話の中、不意に直葉が思い出したように、先程から彼女の懐に置いてあったタブレット型携帯端末を取り出す。それに直葉は何事かの操作をすると、それをそのまま和人に向けて差し出した。

「お兄ちゃん、これ見て」
「?」
差し出された端末を見るのを、和人は一瞬ためらう。
と言うのもついこの間のBoB本戦前での事が有る為だ。また自分は何かしただろうかと思考を巡らせ……それに気が付いたように直葉が苦笑した。

「別にお兄ちゃんの事をつるし上げようって訳じゃないわよ。良いからほら!見てってば!!」
そう言って彼女は端末をずいずいと和人に近づける。若干身を反らしながら和人がそれを受け取り、見ると同時に大声を上げた。

「な……何ィ!?」
「おっと!」
行き成りの大声に驚き、紅茶を入れる手元が狂いかけて涼人は声を上げる。カップ二つに紅色の液体を注ぎ終えて、テーブルに運びつつ、涼人はタブレットを覗き込んでいる和人の代わりに直葉に尋ねる。

「何見てんだ?彼奴」
「あー、うん。エクスキャリバーがね、ついに発見されちゃったって記事」
「へぇ……そりゃ成程だ」
《聖剣 エクスキャリバー》
ALOにおいて、現在最強とされる、《魔剣 グラム》を唯一超えるとされる、本当の意味でのALO最強の剣の名前だ。
と言ってもその存在は、ALOの公式サイトで武器銘紹介ページの一番下に存在だけが示されるだけで、実を言うと殆どのプレイヤーはその所在を知らなかった。
しかし、読者諸君も知っての通り、此処にいる桐ケ谷家の三人兄弟。和人/キリト。直葉/リーファ。そして涼人/リョウコウと、一緒にいたユイの四人だけは、ALOでトンキーを救出した際に、偶然にも実際にその所在を確認していたため、それが何処に有るのかを知っていた。
と、訂正しよう。正確にはその後でアスナとサチにもその事を話しているので、四人ではなく六人だ。とは言え、それを見つけたのは今年の一月。今は十二月も終わりなので、実に丸丸一年、その所在は彼らしか知らなかった訳だ。

「うぅーーーーーん、とうとう見つかっちまったかぁ……」
「まぁ、これでも結構時間かかった方だと思うけどね」
苦笑しながら直葉が紅茶を飲んだ。と同時に、和人コーヒーを口に含みつつ残念そうに言う。

「あぁー、こんなんだったらもう一回くらい挑戦しときゃよかったなぁ……」
そんな和人の発言に、涼人が首を傾げた。

「ん?発見って……誰かゲットしたって事なのか?」
「ううん。お兄ちゃん早とちりしてるよ。まだ入手までは行ってないみたいだから」
「なぬっ!?」
首を横に振った直葉に、和人が慌てたようにタブレットを再び覗き込む。数秒して、和人は安堵したように息をついて口を尖らせた。

「なんだよ、脅かすなよ……」
そこで再び和人はコーヒーを口に入れようとしたが、ふとしたように首を傾げる。

「でも、そういやどうやって見つけたんだ?ヨツンヘイムは飛行不能だけど、俺達みたいに飛ばなきゃエクスキャリバーは見つけられっこ無いだろ」
和人達がエクスキャリバーを初めて見つけた経緯は、読者諸君も知っての通りだ。と、その時の記憶を頭の中から呼び起こしていたらしい和人に、直葉が微笑みながら言った。

「お兄ちゃん、あの時すっごく迷ってたもんね。トンキーに乗ったまま地上に戻るか、ダンジョンに飛び移ってエクスキャリバーを取りに行くか」
「う……ま、まぁ、そうだけどさ、けど敢えて言わせて貰うなら、アソコで迷わない奴を俺はネットゲーマーとは認められない!」
「お!よく言ったカズ!!!」
「おう!!」
「二人とも、それあんまり格好良くないよ」
和人とその言葉に大袈裟に手を叩いた涼人に直葉がにこやかな顔でバッサリと突っ込みを入れた。
言われた二人がガクリと落ち込むのを面白がるように笑う直葉に口を尖らせつつ、涼人がふむんと考え込んだ後で言った。

「つーことは……トンキーみてぇのを俺らと同じ様に助けた奴がいるか……他に方法が出来たか……」
「トンキーとって、あのキモい……じゃなくて個性的な姿の奴を?」
「キモくないの!!か わ い い の!!!!」
「痛い痛いです!スグさん止めて下さい死んでしまいますぅぅぅ!!?」
かの象クラゲに不遜な物言いをした和人に、象クラゲの友人こと直葉がアイアンクローをキメる。
悲鳴を上げてジタバタと暴れる和人を、数秒してからようやく離した直葉は、ふんっ。と怒ったように息を吐いてから言った。

「でも、いずれにしても位置が分かっちゃったなら誰かが剣を手に入れるのも時間の問題かもよ。始めて私達が見つけてからもう一年だもん。その間にソードスキルの導入もあったんだし、きっとダンジョン自体の難易度は下がってると思う」
「あぁ、そうか。お前ら一回行ったんだよな」
「見事に跳ねっ返されたけどな」
ははは。と苦笑気味に和人が笑った。
そう、実はキリトとリーファに加え、アスナ、ユイの四人は、一度エクスキャリバーの在るダンジョンに、下見がてらの攻略に向かっているのだ。
その時はリョウやサチは都合が付かず一緒にいけなかったのだが、行って来た四人に曰く、通路を普通に徘徊している人型の邪神モンスターの強さが、それはもう「ないわー」と言いたくなるほどに強く、結局その一回で即時攻略は断念。「いずれもっと強くなってから」と言う事で落ち着き、それ以来はアインクラッドの攻略にかかりっきりになっていたり、そもそも誰も攻略出来っこないし見つけることすら出来るわけが無い。等と仲をくくって居たせいで、結局、あのダンジョンには手が伸びないで居たのだ。

とは言えその当ては今はもう外れ、ダンジョンはどうやら見つかってしまったらしいし、ニュースサイトにも乗ってしまったのだ。今頃は既に最強武器目当てのパーティが大勢あのダンジョンに突入していてもおかしくは無い。

「……どうする?二人とも」
直葉が和人と戻ってきた涼人に問うと、和人はコホンっ。と軽く咳払いをした。

「スグ、VRMMOの楽しみ方ってのはさ、なにもレアアイテムを追い求める事だけじゃないと思うんだ」
「……うん。そうだね。武器のスペックで強くなってもしょうがないし……」
「……けど、俺達はあの剣の在りかを教えてくれたトンキーの気持ちに答えるべきなんだと思うんだ。彼奴もきっと、俺達があそこを攻略するのを望んでるんじゃないか?だって、ほら。俺達と彼奴は友達なんだし」
「……さっきキモいとか行ってたのは何処の誰でしたでしょうね」
「うぐっ……」
言葉に詰まった和人を見て、涼人は一度くっくっと笑ってから言った。

「まぁそう言うなよ。お前だってそのつもりで話題振ったんだよな。もう部活休みだろ?それに、さっき一瞬、ちょいと残念そうな顔してたじゃねぇか」
「う……」
ニヤリと笑った涼人に図星を突かれ、直葉は言葉に詰まる。相変わらず瞳から感情を読み取る特技は健在である。直葉の期待を察しつつ、そのまま涼人は続けた。

「ってわけで、やろうや、聖剣入手。最高難易度ダンジョンの攻略。報酬は最強の剣。アガるシチュエーションじゃねぇの!」
「まぁ、そうだけど、なんだかなぁ……」
目を輝かせながら盛り上がる涼人に、直葉は苦笑し、しかしその声を和人が遮った。

「この際細かい所は気にすんなって!そうとなりゃメンバー決めないとな!トンキーの上限は七人だから……」
「あぁ、カズ」
「えっと、ん?え?」
「お前はお前で六、七人集めとけ、俺は俺でメンバー集めるからよ。頭数は多い方が良いだろ?」
涼人の発言に、直葉が首を傾げる。

「え?トンキーの上限は?」
「其処はちゃーんと考えがあっからよ。ま、任せとけ、あ、とりあえずカズ、美幸と、詩乃と……あと、レコンも俺が誘っとくから」
「あ、あぁ。おっけ。んじゃこっちも色々と考慮して……」
「……りょう兄ちゃん」
「ん?」
考え込みながら紅茶を飲み終え、立ち上がった涼人を、直葉が呼び止めた、どうでも良いが、やたらと声が低い。

「レコン……長田君、まだALOやってるの?」
「あ?やってるのもなにも……バリバリだぞ?彼奴今、なぁ?」
涼人が和人に言うと、和人もコクリと頷いた。

「あぁ。こないだも男ばっかりでアインクラッドの方のダンジョン攻略……あの、直葉さん?」
「……はぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」
何やらひきつった顔で聞いた和人を無視して、直葉は大きく息を吐くと……ゆらりとその紙を揺らして、涼人を見る。

「……りょう兄ちゃん」
「……お、おう……」
珍しく緊張した面持ちで返した涼人に、直葉は今日一番の最高の笑顔で言った。

「レコンに、絶対来るように言っておいて?お願いね?」
「……あ、あぁ……」
そう言うと、直葉は無言で食器を片づけ、リビングを出て行った。

「……なんだ?あれ」
「いや、まったくわかりません。はい」
涼人が聞いても、和人は首を傾げるだけだった。


まぁ、兎にも角にも、こうして、キリト、リョウ率いるALOでも屈指の実力を持つと思われるPTが起動し、妖精世界でも指折りの能力を持つ剣を得るため、大攻略作戦が行われる事となった訳である。

年末の大イベント、涼人も和人も、メンバーを集めるメールを打ちながらほんの少し、口の端がつり上がってしまうのだった。

2025年 12月28日 日曜日
VRMMORPG ALO《アルヴヘイム・オンライン》


Link start !!
 
 

 
後書き
はい!いかがでしたか?

と言うわけで今回は冒頭部。次回はメンバー紹介のお時間となります。

原作だとALO以来全く出番のないレコンも登場いたしますので、どうぞお楽しみに(?)

ダンジョン募集の件はまだまだ続いております!
詳しくは前話のあとがきをお読みください!


ではっ! 
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