転生者が歩む新たな人生
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第21話 こっくりさんのその後の話し
前書き
長くなった。2日にかけて書いたのは初めてだったり。
さて、占い研究会が遊びでやった「こっくりさん」で悪霊を集めてしまい、困っていたのを颯爽と助けたのは良いが、助けた2-Aの少女長谷川千雨さんに魔法バレしてしまい、どうしたものかと悩み中の遠坂暁9歳だ。
とりあえず、未だ解いていない封時結界の中から【サーチャー】の魔法を結界外に跳ばし、周囲を確認する。
どうやら、悪霊を集めた魔力の高まりは、ごくわずかの間にリニスの封時結界内に隠されたため、周囲を学園の魔法使いや探索魔法で捜索している気配は無い。
後、予想通り、長谷川さんが急に消えたと言った占い研究会の他の会員3名は、結界の外で突っ伏している。
状況の説明やら何やらは結界内でした方が良いんだが、突っ伏している3人が目を覚ますと余計な騒ぎになりそうなんで、結界を解くことにする。
「ごめん、詳しい説明を欲しいなら後でするから、とりあえず、話しは合わせて欲しいかな」
「なんだってぇ」
長谷川さん、地が出てますよ~。
「リニス」
リニスに声をかけると心得たもので結界をすぐさま解いてくれる。ついでに人間体から猫の姿へと戻る。
「(げ。なんで、長谷川さんの前で元に戻るの!)」
「(暁………。説明するなら私のことも説明しないといけないし、それよりも他の子が起きた時に知らない人がいた方が問題になります)」
「なっ! 人が猫に………。夢だ。これは夢に違いない………」
とりあえず、放心している長谷川さんは放置して、気絶している近衛さんと会員3名の様子をミッド式の魔法で診断する。
うん。大丈夫そうだ。近衛さんは慣れない魔力放出を一気にしたため、他の3名はその魔力に充てられたせいで気絶しただけのようだ。
直に目を覚ますだろう。
そうなると後は長谷川さんへの事情説明だけか。
結界無効化の体質の件もあるし、話して良いかどうか、話すとしてもどこまで話すか………。
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ。
ホント余計なことをしてくれた。
「長谷川さん」
「なんだよ」
「色々聞きたいこと、納得できないこと、たくさんあると思うけど、まず1つめ。今回の件は「こっくりさん」による暴走だ。長谷川さんはわかっていたようだけど、2度としないこと。本当に危険だったんだよ。それと4人とも気を失っているだけだから、直ぐに気付くと思うよ」
「(見事に「何」が暴走したのか、「何故」気を失ったのかを誤魔化しましたね)」
「よかった………。じゃなくて! そんな説明だけじゃわかんねーよ。しっかり説明してくれよ!」
「長谷川さん。世の中にはね。知らない方が良いことがあって、この件はまさにそれに当たる。説明を聞くと後戻りできなくなる可能性が高いんだけど、それでも聞きたいのかい?」
「なっ。なんだよそれ………」
「と言いつつ、実は長谷川さんは聞いて知ったおいた方が良いとは思うワケだ。まぁ、聞いた後に「知りたくなかった」ってことなら、記憶は消すから」
「はぁっ? もう、何でもアリだな」
「まぁ、長くなるし。………、そうだな。今日はもう遅くなるから明日にでも数学のわからないことがある振りをして管理人室においで。多分長谷川さんが幼い頃から疑問に思ってたハズのことにも関係するから」
「なっ。それって………」
「うん。多分長谷川さんが想像した通りかな」
「(暁。うさんくさいです………)」
「(だな。オレもそう思う。とりあえず、リニスは分身体をここに連れてきてくれ。入れ替わるから)」
「(わかりました)」
気絶している女の子をいつまでも見ているわけにはいかないので、長谷川さんに後を託し、部室を出て扉を閉め、その前で待機しておくことにする。
もちろん、その旨はちゃんと長谷川さんに伝えておく。
しばらくするとリニスが猫の姿で分身体を連れてくる。監視の目が無いのはわかっているので、分身体を解除する。
それから5分ぐらいで、気絶していた子らは皆目を覚ましたようだ。長谷川さんからそう声がかかる。
ノックをして部室に入り、4人に対し一通り説教をする。何があったかについては、「こっくりさん」をしている途中、長谷川さんを除く4人が急に倒れ、慌てた長谷川さんが人を呼びに出て、見回りをしていたオレが駆けつけた。呼吸は安定していたので様子を見ていたが、「もう30分も気がつかなかったら救急車を呼ぶような大事になっていたんだぞ!」と脅しも込めて説明しておいた。
「大丈夫と思うが、一応保健室に行っておけ」
「「「はーい」」」
「後わかっていると思うが、2度と「こっくりさん」をするなよ! 「えんじぇるさん」とかもだぞ!」
「「はーい」」「えーっ!?」
ホントにわかってんのか?
とにかく5人を保健室に連れて行き、保険医に一通り話して後は任せる。
その後、学園長室に行き、「見回りの途中、嫌な魔力の高まりを感じ、念のため現場へ向かったら、占い研究会の子が倒れていた。唯一無事だった2-Aの長谷川に事情を聞いたら、4人で「こっくりさん」をやったらしい。その中にお孫さんの2-Aの近衛もいたので、「こっくりさん」により、東洋一と言われるあの魔力が暴走したんじゃないでしょうか?」と虚実入り混ぜて報告しておく。
悪霊が召還され、それを退治した時に長谷川さんに見られたことと退治方法を説明してないだけだ。
「なんとのぉ。よぅやってくれたのぉ、サギ君。こっちでも魔力の高まりは感じたんじゃが、直ぐに収まったもんじゃから、どうしようかと迷っていたところだったんじゃ」
「そうですか。見たところ4人とも気絶していただけと思いましたが、念のため保健室に連れて行っております。後の処置はお任せしても?」
「うむ。わかったぞい」
「では、失礼します」
そう言って、学園長室を出た。
………、そう言えば学園長と高畑先生抜きで話したのって初めてじゃないか?
☆ ★ ☆
次の日、と言っても休みの日なんだが、長谷川がやって来た。
何故か近衛も一緒に………。
話しを聞くと、あの後学園長は保健室に行き、一通り5人の無事を確認した後、説教をしたらしい。で、その際、学園長は麻帆良大結界の認識阻害の効果を利用して、5人の一連の記憶を「何も起きなかった」と誘導し、それを魔法で補強し、何も無かったことにしたようだ。
ようだというのは、長谷川には誘導自体が効かず魔法の効果が成立せず、近衛の方は一応効果はあったが、昨晩日課の日記を書いてる時に、一昨日のページから「こっくりさん」をしなかったことに矛盾を感じ、「変やなぁ」と考えてたら、霧が晴れたように消された記憶を思い出したらしい。
学園長、しっかり魔法をかけてくれ………。
ちなみに近衛は悪霊が退治されるまで、悪霊を通してずっと見聞きしており、一連の動きは全部見ていたらしい。
で、今朝、長谷川が挙動不審なのを見つけ、HANASHIをして一緒に来たんだと。
立ち話も何なので、2人を部屋へ通す。
一応近衛も長谷川から聞いて、数学のわからないところを聞きに来るというカタチはとってきたようだ。
「さて、何から話そうか」
デバイスを通して、今いる部屋に、封時結界だと希に来る客に気付かない可能性があるので、消音結界を張っておく。
「そやなぁ。まずは助けてくれたお礼を言わせてな。ありがとなぁ」
「そうだな。サギ先生。ありがとな」
「あぁー。そか。リニス」
部屋の隅でおとなしくしてたリニスを呼ぶ。
空気を読んで、リニスは2人の目の前で人型をとる。
「いえ、気にしないでください。とにかく何事もなくすんで良かったですね」
「「猫が人に変わった」」
一度見たはずの長谷川も驚きの表情だ。
つかみはOKなようなので、話しを始める。
「まずは、大前提なんだが、この世に「魔法」はある」
「はぁ?」「そうなん?」
長谷川がうさんくさそうな、近衛が若干嬉しそうな声をあげる。
「まぁ、聞いてくれ。質問は後で受け付けるから。でだ。「魔法」なんて聞くとゲームやマンガ、童話なんかで見かけるいかにも「ファンタジー」というイメージがするかも知れないが、そんなのはそのものズバリ「幻想」だ」
「どういうことなん?」
「つまりだ。「魔法」なんてものは只の道具であり、技術でしかなく、「ファンタジー」なんてものじゃなく、「リアル」なんだ」
まぁ、いきなりこんなことを言ってもわかんないよな。
当然2人とも首を傾げている。
「ざっとおおまかに説明すると、普通の一般人、裏に対しての表の人が言うところの「世界」はこの地球を中心とした世界しか指さないけど、実際には次元を越えた世界が幾つもあって、それぞれに多様な文化・生活があるワケだ。その中には「科学」が発達した世界もあれば、「魔法」が発達した世界もあって、この地球は「科学」が高度に発達し、「魔法」が秘匿された世界になるんだ。
で、唯一裏世界でも公式に交流がある世界に、「魔法世界(ムンドゥス・マギクス)」っていう世界がある。
そこは地球で言う「科学」の代わりに「魔法」が使われ、それが当たり前なんだ。で、世知辛いことに「魔法世界(ムンドゥス・マギクス)」っていうのは、ドラゴンもいれば、妖精もいる世界なんだけど、地球と同じようにヒトが生活している。その生活の中には地球では公式上無くなった「奴隷」や「賞金首」なんてものが、当たり前に存在している。ゲームなんかの影響で、それを「幻想」と捉えるかも知れないが、ぶっちゃけ「現実」に考えると只治安が悪く、行政能力が未熟なだけなんだ」
「ど、どういうことなん?」
「つまりこういうことだろ。現代日本のように基本的人権が確立されていれば、「奴隷」なんて存在しないし、行政つまり警察なんかが犯罪者を捕らえ、治安維持をしっかりしているなら「賞金首」なんてものは存在しないってことだ」
「なるほどー」
「まぁ概ね長谷川の言う通りだ。別に魔法世界よりも地球が優れているとか言うつもりはないが、治安という一点に関しては、魔法世界よりも日本が優れていると言えるだろうね」
「「なるほどー」」
「でだ。今までおおざっぱに「魔法使い」ってひとくくりに話してきたけど、実際には魔法世界をルーツとした「魔法使い」と地球世界、特に日本古来からある呪術をルーツとした「呪術師」の2つに分けられる」
「サギ先生はどっちなんや~?」
「オレか? オレは「呪術師」の中の「符術師」になるな。で、まぁ、ご多分に漏れず「魔法使い」と「呪術師」は仲がすごく悪い。これはもう過去の因縁もあるから割愛するけど、「魔法使い」の関東魔法協会と「呪術師」の関西呪術協会で、組織立って対立していると覚えておいて欲しい。ついでに言うと、今まで話したこともこれ以降話すことも全て「呪術師」の立場からの話しで、「魔法使い」からしたら別の意見があるかもというのは覚えておいて」
「ああ」「わかったぇー」
「その上で話すけど、この麻帆良って都市は「魔法使い」に支配されている都市だ。2人も「魔法少女」ならぬ「魔法番長」や「魔法婆」なんて噂を聞いたことがあるんじゃないか? そう言ったのは、物事を「魔法使い」に都合の良いように認識ささせる麻帆良全域に強固に張られた「麻帆良大結界」の認識阻害の効果なんだ」
「へぇ~。そうなん「なんだと!」や。どうしたんや、千雨ちゃん」
「そう、つまりだ。ギネスに載るような巨大な世界樹が話題にならないのも、意味不明な図書館島なんて言う施設が許されるのも、オリンピックに出ても勝てるんじゃね? っていう生徒が普通にいても騒がれないのも、ロボットが歩くのも、大学部で爆発が起きても問題にならないのも、9歳児が先生をやってもおかしいと思わないのも、全て「麻帆良大結界」のせいなんだ」
「なっ!」
「で、まあいろいろ言いたいことはたくさんあるけど、基本的なところは話したから、とりあえず、2人が聞きたいことを聞こうか?」
「それやった「サギ先生「麻帆良大結界」ってのはなんなんだ」らー、千雨ちゃん?」
「イタイとこを聞くね。呪術師としては「わからない」かな」
「わからないだと!」
「うん。まあ、効果は幾つかある。さっき言った、物事を「魔法使い」に都合の良いように認識させる認識阻害の効果とか、力を持った怪異、これはまぁ、業界用語で言う鬼とか悪魔とか悪霊と言った類のモノと思ってくれたらいいけど、そういった人に仇なす怪異の力を弱める効果なんてものもある。ただね。麻帆良全域にかける意味がわからない。どういうことかというと、麻帆良の世界樹は確かに神木と言ってもいいぐらい神格のある木で、一般人から隠すのはわかる。わかるけど、そもそも何故そんな神木の近くに一般人が住む都市があるのかが意味不明なんだ」
「どういうことなん」
「つまりね。秘匿に一番なのは近づけないことなんだ。それなのに一般人が住む都市を近くに造る。矛盾していると思わないかい?」
「そやなー」
「実際、そうやって秘匿されている神域や霊山なんかは日本にもたくさんある。なのに麻帆良の魔法使いは、一般人を住まわせ、その上で魔法使いの都合の良い結界を張るなんてことをしているんだ」
「全部「魔法使い」のせいってことか? なぁ、サギ先生。その結界が効かないなんてことはあるのか?」
「あぁ………。嘘を言ってもしょうがない。昨日リニスは「こっくりさん」という原因がわからないまま、とにかく魔力とその原因になるものだけを隔離する結界を張ったんだ。だから結界内には、悪霊と近衛だけしかいないはずだったんだ」
「あれ? じゃぁなんで千雨ちゃんが………」
「まぁつまりそういうこと。長谷川は「先天的に結界が効かない体質」なんだと思う」
「そうか………。そうだったのか」
「色々思うことはあるだろうけど、正直麻帆良の「魔法使い」はおかしいんだよ。他の世界はともかく、ここ地球では魔法や呪術と言ったモノは秘匿するものだ。それがルールだ。本来、魔法の秘匿に失敗したら、今しているように説明して手順を踏んで相手に理解を求めるものなんだ。だけど、ここの「魔法使い」は麻帆良大結界があるため、その辺がなぁなぁになってしまい、秘匿意識が薄くなり、薄いからまた魔法の秘匿に失敗する。その繰り返しが、噂とかになって出てるんだ」
「そうだったんやー」
「あとね、「陰陽師」なんて聞いたこと無い?」
「あるぇー」「あぁ」
「陰陽師も呪術師の括りに入るんだけど、元々日本の歴史を振り返ると「陰陽寮」といった国の公の機関に属する今で言う公務員だったんだ。で、そういった呪術師が呪術を秘匿するのは、技術の一つとして他者に教えたくないというのと、そう言ったモノを知っている者ほど、そういったモノに巻き込まれるからなんだ。それに対し魔法使いは中世ヨーロッパであった「魔女狩り」の影響もあって、迫害されるんじゃないかっていう恐怖が根本にあるんだ」
「そういうことか………。全部魔法使いどもの都合ってワケか」
「ど、どうしたん、千雨ちゃん」
「あぁ、近衛。そっとしておいてやれ。「麻帆良大結界」の影響を受けないってのはな、こういうことなんだ。9歳児の先生ってのはおかしいって思わないか?」
「なんで? そんだけ優秀ってことなんやろ」
「近衛、よく考えてみろ。日本には労働基準法ってのがあってな、9歳児は働けないんだ。働くってのは労働に対し対価を、まぁ主にお金なんだが、得ることなんだ。当然それに対して義務や責任も生じる。9歳児に先生として責任が負えると思うか?」
「無理やなぁ」
「それに近衛達は来年の今頃高校受験なんだが、「ウチらはエスカレーターやで」そうかも知れんが、例えば近衛が高校から実家に戻るとすると京都だろ」
「そやよ」
「そうすると外部受験になるけど、9歳児の先生に進路の相談とかできるか?」
「それはー、無理やね」
「だろ。ちょっと考えればわかることなのにそのちょっとを考えさせないんだ。ホント質が悪い」
「はぁー。そやったんか」
「結界の効果がない体質ってのは、そういうことがずっと続いてたってことなんだ。そしてそれは周りの結界の効果がある人達と、認識にズレがあるってことになるね」
「えっ。そんな」
「そういうことだろ、長谷川」
「あぁ。サギ先生の言うとおりだ。はっ、お笑いだね。小学生の頃からの悩みがこんなことだったなんて。まったく「魔法使い」のせいだなんて、笑い話にもなんねぇ」
「千雨ちゃん………」
「長谷川、悲嘆に暮れてるとこ悪いが、もっと悪い報せがある」
「はっ、もっと悪いだと!」
「あぁ。長谷川の体質ってのは恐らくどんな結界も無効化する。そしてそれは魔法使いが戦闘する際の人払いの結界も同じだと思う。つまり長谷川はそういった戦闘に無意識に巻き込まれる可能性が高いってことだ」
「はぁ? なんでだ。今まで一度もそんなことはなかったぞ?」
「それは、あれだ。魔法使いの戦闘は秘匿の意味もあり夜中や日中に結界内で行われることが多いんだ。当然小さい頃よりも今、今よりもこれからの方が、夜中ももちろん日中も出歩く頻度は多くなるはずだ。そうすると当然………」
「戦闘に出くわす機会も多くなるってことか」
「そういうことだ。で、オレから提案できるのは、魔法に関する記憶を消して今まで通り過ごす。記憶を消さずに一般人として少しでも危険を感じるようなら避ける。魔法または呪術を覚え、何かあったら逃げれる実力をつける。これくらいだな」
「そうか………。1つ目はダメだ。知らなかったならともかく、危険があると知ったんだから、何も知らないまま生きてくなんて、知らなくなるにしても嫌すぎる。2つ目は………。ダメだな。避けれるとは思えねぇ。………、成る程な。知っているから巻き込まれるか。その通りだ。サギ先生、確認だ。呪術ってのはサギ先生が教えてくれるってことなんだろうな。魔法使いに教えを乞うなんてしたくねぇぞ」
「えぇ。長谷川がオレに師事するって言うなら、オレとこのリニスが教えましょう。只、オレも一般の呪術師とはちょっと立場が違うので、弟子と言うことでオレの事情に巻き込んでしまうこともあるだろう。なるべく巻き込まないようにすると誓うけど、それでも良いなら逃げ出せるだけの力を目標に教えましょう」
「そうか。じゃぁこれからお世話になります」
「はい、わかりました」
「(リニス、頼むね)」
「(暁………。丸投げですか)」
「(いやいや、そんなつもりはないよ。只リニスは教えるのが上手いからよろしくねってこと)」
「(はいはい、わかりましたよ)」
これで、長谷川については丸く収まったか。
「なぁなぁ、サギ先生。ウチも呪術を教えて欲しいんや!」
なんだとー。
いや、まぁ元々占い研究会に入ってるんだから、そう言った方面に興味があるのは当たり前か。
しかも、ネギすら越える魔力量があるんだよなぁ。
ただ、近衛の場合、周辺がなぁ。関東魔法協会の理事の孫であり、関西呪術協会の長の娘。なおかつ、長からの後継者の指名がないものだから、非公式ながら次代の長候補であり、関東への人質とも見られている少女。
正直、あまり関わり合いたくないなぁ。
そもそも、長からは魔法に関わらせない目的で麻帆良に来ているんだしなぁ。
「(リニス~。どうしよ?)」
「(才能は折り紙付きなんですけどね。どうしましょうか?)」
まぁ生半可な覚悟で裏に関わらせるワケにはいかないから、オレの知る限りの近衛の状況を話して、近衛に判断させるか。
「近衛。自分が言ってる意味がわかるか?」
「もちろんや。今回のことやってウチが原因やったワケやろ。ならもう2度とこないなことが起きないようにせんといかん」
「そういうことなら教えるのはやぶさかではないけど、その前に近衛の状況をわかってもらわんといかん」
「ウチの状況?」
「ああ。ある意味、長谷川よりも危険だしな」
「どういうことだ!」
「落ち着け、長谷川。ちゃんと説明するから。まず、近衛。君には人が羨んで仕方がないほど魔力が眠っている。まぁ、これが今回の件のそもそもの原因なんだが。でだ。まずその魔力を利用せんとする悪意のある人間が、今までもそしてこれからもずっといる。だからある意味自衛の手段として、魔力を使えるようにするのは賛成だ」
「なら」
「だがな、近衛。大きな力はそれ相応のリスクや責任も吸い寄せる。これは多分絶対だ」
「う、うん」
「それに前話したことがあったけど、近衛のお父さんの詠春殿と話しが通じたのは、詠春殿が関西呪術協会の長だからだ」
「お父はんが?」
「ちなみに学園長は関東魔法協会の理事だ」
「お祖父ちゃんも?」
「ちょっと待て、サギ先生。さっきの話しだと関東と関西って対立してるんじゃないのか?」
「そうだよ。正直、一触即発かな」
「なら、おかしいじゃないか。どうして、」
「どうして近衛が京都を離れて麻帆良にいるかだよね。これが、まぁ、よくわからない。近衛はどう聞いてる?」
「どうって。京都にいると危ないからお祖父ちゃんのいる麻帆良に行けって」
「何故危ないかは?」
「えーと。小さい頃誘拐されそうになったことがあるんや。それでだと思う。」
「そか。一応、聞いてる話しだと近衛を魔法に関わらせないために麻帆良に行かせたと聞いてるから、その誘拐もあるいは魔法関係なのかもな」
「そ、そやったんか」
「ただ、正直近衛の魔力は関わらないのは無理、って言えるぐらい大きい。しかも、それは近衛家という代々続く旧家の血の結晶でもあるから、当然周りはそれに期待する。あるいは詠春殿はそう言う柵を嫌ったのかも知れない」
「お父はん………」
「こっからは私的見解も入るけど、近衛のお父さんの詠春殿とオレの父親は、魔法世界であった戦争に参加してる」
「そうなんか?」
「あぁ。それで向こうでは「紅き翼」なんて言う集団で「英雄」と呼ばれるほどの活躍をしてる」
「ほぇ~。そうやったんや」
「あぁ。だけどよく聞いてくれ。戦争の「英雄」ってのはつまり味方を助け敵をどれだけ殺したかってことなんだ。で、最悪なことに「紅き翼」は味方、しかも日本から来た味方も殺しているんだ。しかも魔法世界ではそんなことがあったのを認めようとしていない」
「えっ」
「信じられないのは無理もないけど、生き延びて日本に帰って来た人の証言もあるからこれは事実らしい。しかも、その日本から魔法世界に行った味方っていうのは、先代の関西呪術協会の長である近衛のお母さんが強権を発動して派兵した味方なんだ」
「そんな………」
「ちょっと待て、サギ先生。そんなことがあってなんで近衛のお父さんが長になれるんだ?」
「だよねー。本当不思議だ。当時は、亡くなった近衛のお母さんから、近衛に替わるまでのつなぎで、魔法世界での名声を使って、謝罪も何もないのを改善されることが期待されてたらしいけど」
「当時?」
「うん、まぁ。正直今までに何も結果が出ていないどころか、近衛の件もあったりしてマイナスもマイナス。底値の評価だ。近衛の前で言い辛いけど、詠春殿の立場はかなり悪いというか最悪だ」
「そんな………」
「親として子を守ろうとする心はうらやましいけどね。やり方が微妙だ」
「どういうことや?」
「例えば、今ここに近衛がいること。それ自体、組織の長としては間違った判断になるんだ。つまり、詠春殿だけの判断で、旧家に連なる将来性有望な次期長候補を敵対組織の都市に住まわせる。うがった見方をすれば、屈服して人質として差し出した。関西呪術協会の人間よりも関東魔法協会の人間の方が信じられる。しかも護衛もつけない。ようやく護衛をつけたと思ったら、詠春殿の弟子1人だけ。魔法に関わらせないという割には、近衛に魔力の封印もしなければ、長候補から外すということもしないし、別の長候補を立てようとしない。これで組織の者に納得しろという方が無理だと思わないか?」
「お父はん」
「まぁ、幸いと言ったら何だが、オレが見るところ学園長は近衛が魔法に関わらないというのは無理だと判断しているみたいだから、言えば手ほどきなり師匠なりあてがってくれると思うぞ」
「なぁ、サギ先生」
「なんだ?」
「この前までのお見合いとかも関係あったんか?」
「あー。あれだ。学園長が言ってたように、可愛い孫のひ孫が早く見たいというのもあったと思うぞ」
「その言い方は他にもあったってことなん?」
「この前のお見合い相手は全て魔法関係者かその縁者だった。弁護士だったら、魔法のことを知ってて、裁判があったとき、魔法関係者に有利に運ぶようにする弁護士だとかね」
「お祖父ちゃんまで………」
「あるいは、そういう魔法関係にまで力を振るえて、近衛が守れるといのを望んでいた可能性もある」
「どれくらい?」
そう必死そうな瞳で見つめんでくれ。いじめてるみたいじゃないか。
「さぁ? 学園長の考えはわからんとしか言いようがない」
「サギ先生は呪術師ってことだから、関西呪術協会の人間なんよね」
「大きな括りだとね。正確には関西呪術協会の傘下組織の中部魔術協会の人間になるね」
「やっぱりウチは京都に戻った方が良いと思うん?」
「どうだろ? 組織的には何もわからない長が就くのは勘弁して欲しいけど、近衛という旧家の血が魔法使いに流れるのは許せないんだろうけどね。正直、その質問には答える資格はないかな」
「資格?」
「うん、まぁ。今はサギ・スプリングフィールドっていう名を便宜上名乗っているけど、これは麻帆良に魔法使い見習いとして入るためであって、とっくの昔に「英雄」の息子サギ・スプリングフィールドって言う名は捨ててるんだよ。今の本当の名は遠坂暁って言うんだ。誰にも内緒だよ。つまりオレは近衛と同じ「英雄」の子という条件で、そこから逃げ出してるんだよ。だからさっきの質問には答える資格がない。あえて言うなら、全てを捨てれるなら逃げちゃえ、かな」
「あはは。全ては無理やなぁ。サギ先生は後悔してないん?」
「後悔ねぇ。大前提として、オレは両親に捨てられたと思っているから、3歳の時に拾ってくれた新しい家族に感謝しかないかな。リニスもいるし」
「(暁………)」
「せやったか。ごめんなぁ。言いにくいこと聞いて」
「いや、別に何とも思わないんだけど。で、まとめると近衛は魔法または呪術を学びたいと思っているけど、関西呪術協会と関東魔法協会という対立組織のトップまたはそれに近い人間の縁者であり、麻帆良には魔法に関わらないために送られた。だけど両方の組織にそう思っていない人間が多く、その身に潜む魔力と血を利用しようと良からぬ企みをする人間も多い。そして両組織の争いの遠因の1つにもなっている。こんなところか」
「「うわぁ」」
「どないすればええんや?」
「どっちを学んでもまずくないか?」
「そやね。これは困ったわ」
「まぁ、説明するのはこれぐらいか。長谷川も追加の説明で思うところがあるだろうから、改めて1週間考えて長谷川も近衛も返事をくれ。その返事を尊重して当たるから」
「わかった」「わかったぇ」
そう話して「こっくりさん」から始まった魔法バレの話しは終わり、解散した。
前途多難だ………。
後書き
とまぁ、魔法バレ後の説明回でした。
一応、木乃香がいるので千雨の過去についてはぼかしたつもりですが、そんな雰囲気が出てると良いなぁ。
会話文ばっかで申し訳ないですが、誰のセリフかわからないところがあったらご指摘お願いします
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