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俺と現実とファンタジー

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part19 過去 そして 謝罪 そして ……

―――某所―――

「フッフッ……! シュッシュッ……!」
「おお、近距離戦のトレーニングか、張り切っとるのぉ」
「能力がパワーアップしたんだ、当たり前だわな」

初め、シャグリーンから”この能力は成長する”と言われた時は、この力にパワーアップする要素なんて何処にもないと思っていたけど……なるほど、あれは確かに”パワーアップ”だ。

「……しかし、おかしいと思わんか?」
「シュッシュッ……! ……何がおかしいんだ?」
「ここんところ、悪魔共の襲撃がないじゃろ……わしの力は微弱ながらにも感知できるようじゃし、わしも制御できるようになったのは最近じゃぞ……?」
「確かに……あれだけしつこかったのに、今ではさっぱり来ねぇよな……」

あれからシャグリーンも特訓をし、垂れ流されている力を抑えることに成功した。
だが、それは本人の言う通りつい最近のこと、それまでは力を感知できるはずなのだから、襲いかかってきても不思議じゃないはず……だが、ここに移ってからかなり経つのに、襲撃の”し”の字もない。
ここまで来ると不気味だっての……。

「そういえばシャグリーン、俺になんか用があったのか? トレーニング場まで来て話すことじゃないだろ、この話」

まぁトレーニング場とは言っても、毎日適当な場所でやってるけどな。

「そうじゃった、そうじゃった。 飯ができたぞ、早うゆくぞ」
「待ってましたわな!」





「ふぃ~ごっそさん」
「うむ、御粗末様じゃ」

シャグリーンの料理は本当に美味い! 少ない材料でも、これどうやって作ったんだ?、と言いたくなるような見た目綺麗、味美味い料理を作ってしまう。
俺は運動神経以外は本当にダメダメだから、シャグリーンには本当に感謝している。
おまけにこいつは頭もいいから、前に駒王学園に通っていた時も本当に助かった(男子に更に睨まれ、女子に更に騒がれたが)。
……それにしても……

「……やっぱ気になるな……何で襲ってこないか、茶髪(クソヤロウ)はどうなったのか……」
「何故襲ってこないかはわからんが……茶髪や原作キャラをズタボロにしたからの……もうやり直せんほど嫌われとるのは確定じゃろうな……」
「別にやり直せなくていいわな。キレた勢いだけで戦ったわけじゃないっての、覚悟もちゃんと決めてたんだぜ?」
「じゃ、じゃがの……わしは……お主に……」

……ったく、まだ気にしてんのか……ま、俺がしつこく言い続けたせいもあるし……しゃぁねぇ

「もう言わねぇよ。”ファンタジーな戦いがしたい”だの、”お前が聞き間違えしたせいで”だの……本当にすまんかった……お前だって、俺のせいで能力が狂ったり、神界に帰れなくなってるしな……すまねえ……」

俺は頭を下げ、精一杯誤った。……コイツだってわざとやったわけじゃないしな。……それに神界に
帰れないということは親に会えないということ。
……コイツは親がいるのに、会いたくても会えない……そんな状態なのだ……俺のせいで……
おまけに文句ばかり言う俺に、愛想をつかすこともなく付いて来てくれた。料理も作ってくれた、勉強も教えてくれた、特訓のコツも教えてくれた……普通なら愛想をつかし……いやコイツの立場なら、金を作り出し刃物を買い、俺を刺殺してでも神界に帰れるようにしたい、そう思ってしまうことも有るかもしれない。
……なのに俺についてきてくれた、共に笑ってくれた、話し相手になってくれた……そして俺のために怒ってくれた、泣くのを許してくれた……こんなにお人好しで、優しい奴を俺は知らない……。
転生前の世界では、俺は妬まれていた……運動神経がいいだけで、有名大学に推薦された、受かったからだ。
それまでいた友達も殆どいなくなってしまった……そいつらは必死に勉強してそれでも受からなかったのに、運動神経がいいだけで、大学に受かった俺が妬ましいかったんだろう……もとより、その運動神経の良さも憎まれていた。
ある日、幅跳びで部活をやっている奴を抜き、一番の記録を出したことがあった。……そいつの目は
”俺が苦労してたどりついたのを簡単にぬきやがって”……そういう目をしていた。
思えばあれからイジメが始まったんだよな……だが、暴力振るおうにも運動神経いい+身長高い、俺にはかなわないと見たのか、よくある陰湿なイジメを受けた。
……辛いといえば、辛かった。友達がいなかったら、引きこもっていたかもしれない。
だがその友達もここまでお人好しではなかった……ラノベを紹介してくれた奴も、最後は俺から離れていった。……だが、一度授かった命を無駄にはしたくなかったので、自殺だけは絶対に考えることをしなかった……結局死んじまったけどな……。

「……謝らんで良い……お主の気持ちは……わかったからの……」
「……だが……」

俺が渋ると、シャグリーンは少し怒ったような顔をし、

「じゃから、謝るなと言うておろうが! お主は他人に気にするなと言っておきながら自分はねちねち気にし続けるのか? お主は覚悟決めて、変わったんじゃろうが!」

……そうだ、そうだったな……そうだったよな!

「ああ! お前の言うとおりだ! シャグリーン!
改めて……よろしくな、親友!」

シャグリーンはキョトンとした顔をし、そして……

「うむっ! よろしくの! わしの親友、翔太!」


綺麗な笑顔を見せた……
見とれてしまう程の、花が咲いたような笑顔を。

 
 

 
後書き
次回、英雄派と接触します 
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