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万華鏡

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第三十三話 合宿の終わりその十一

「確か」
「そうよ、青木茉莉也っていうの」
「神社の娘さんで茉莉也か」
「何かお祖父さんかお父さんがお友達の学園の中の教会の神父さんと飲んでる時に決めた名前らしいのよ」
 その名前にだというのだ。
「マリア様の像を見てこれだって言ってね」
「神社なのにかよ」
「そう、そう言ってね」
「何か凄い話だな」
「先輩今でも怒ってるわ」
 自分のその神道としてはどうかという名前にだというのだ。
「違うだろうって」
「まあそうだろうな」
「神道の名前ってあるから」
 景子はこう話す。
「特に決まってはないけれどね」
「要するに日本の名前よね」
 琴乃がこう返す。
「それがよね」
「そうなの、私だって景子っていう日本の名前だからね」
「茉莉也は流石になのね」
「どう考えてもあっちの名前だから」
 キリスト教のだというのだ。
「私もえっ、ってなるわよ。そうした名前は」
「そうよね」
「森鴎外は自分の息子さんや娘さんにドイツの名前を付けていたけれど」
 里香がドイツに留学経験のあったこの文豪の名前を出した。当然漢字は当て字だ、鴎外のドイツ崇拝が出ていると言える。
「あれもね」
「ないでしょ」
「見たらね」
 里香は景子に首を傾げさせて答えた。
「かなりおかしいわ」
「普通にしても西洋の名前には無理がある場合があるし」
「特に神社にはよね」
「茉莉也っていう人も最近いるし」
 景子は立って猫を見ながら話す、猫は琴乃に喉を里香に頭を撫でられながら寝転がってその喉をごろごろと鳴らしている。
「漢字的にも合ってるって思うけれど」
「それでも神社にはよね」
「やっぱり合わないわ」
 こうその里香に話す、何時の間にか美優も猫の傍に屈み込んでそのうえで猫の背中を丹念に撫でている。  
 その三人を見ながらだ、景子は話すのだ。
「何で酔って決めたのかってね」
「その先輩がも仰ってるのね」
「そうなのね」
「そうなの、違うだろうってね」
「まあそうでしょうね」
「どう考えてもないから」
 四人もこう話す、とてもだとだ。
 そうした話をしながらだ、景子も黒猫のところに来た、そして屈んでから彼女は猫の腹を撫でつつこう言った。
「この猫ちゃんあれね」
「人に慣れてるわよね」
「それもかなりな」
「ええ、よく見たらね」
 首の辺りを見る、するとだった。
「スカーフ巻いてるし」
「あっ、これね」
 最後に彩夏も来た、彼女は首の辺りを摩って言う。
「この赤いスカーフね」
「多分この猫ちゃん飼い猫よ」
 それだというのだ。
「首にこういうのしてるから」
「そうみたいね。見れば」
 彩夏はここで周りを見回した、するとだった。
 周りには黒猫以外にも色々な猫がいた、白猫に寅猫、三毛猫にだ。 
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