万華鏡
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第三十三話 合宿の終わりその八
「何処でも住めるわ」
「それはいいわね」
「迷うけれどね、正直」
将来のことはというのだ、先輩達もそうした話をしながらだった。
その広島城に来た、琴乃は天守閣の最上階まで上がりそこから広島の街を見下ろした、そのうえで隣にいる美優にこう言った。
「ううん、姫路城も大阪城も」
「どっちもだよな」
「ええ、天守閣を登ってから観る街ってね」
「いいよな」
「もう街の全部が見渡せて」
それでだというのだ。
「壮観よね」
「首里城ってこういうのじゃないからな」
美優は笑顔で話した。
「天守閣ってのがな」
「ないのね」
「ないんだよ」
「そういえば天守閣がないお城もあるわね」
「皇居だってそうだしな」
かつて江戸城と言われていた、この城にはかつて天守閣があったが江戸を包み込んだ大炎で焼けてしまったのだ。
「天守閣がない城もあるよ」
「絶対にあるものじゃないのね」
「大阪城だってそうだったのよ」
二人と共にいる里香がこう琴乃に話す。
「長い間ね」
「あのお城もなの」
「今の天守閣三代目なのよ」
「そうだったの」
「初代が大坂の陣で焼けて」
この戦で城の全ても豊臣家も全て炎の中に消えてしまった、太閤豊臣秀吉の栄華も紅蓮の炎となってしまったのだ。
「二代目は落雷でね」
「またなくなったのね」
「それで今は三代目なのよ」
「何か色々とあったのね」
「そうなのよ」
こう言うのだ。
「実はね」
「三代目だったなんて」
「初代じゃないのはわかるわよね」
「大坂の陣でよね」
琴乃もその話は知っている、それでなのだった。
「あの戦いで」
「ええ、完全に焼けたから」
琴乃も知っていた、それでだった。
そこに景子と彩夏も来た、それで天守閣から広島の街を見回していた。
風も受けた、その風を受けると。
琴乃はなびく風を受けて爽やかな笑顔で言った。
「またここに来たいわね」
「そうだよな、またここにな」
「いたいわよね」
「そうだよな」
美優も風を受けている、それは五人共だ。
風を受けつつそれでだった、琴乃は正面、今の彼女と同じ高さも見てあるものを見つけた。それはというと。
「鳥?」
「あの白いの?」
「そう、あれね」
鳥は天守閣から離れてかなり下の方を飛んでいた、その白い鳥を指差してそのうえで四人に問うたのだ。
「あの鳥何かしら」
「鳩じゃないの?」
景子がその鳥についてこう答えた。
「あれは」
「鳩かしら」
「ええ、八条神社にも白い鳩は一杯いるけれど」
景子の家の神社の上級のその神社にだというのだ。
「それに似てるから」
「白鳩なの」
「そう、それじゃないかしら」
「そういえば広島も鳩多いわね」
里香も言う。
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