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魔法少女は今日も歩く

作者:天狗A
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プロローグ『地雷がたっぷりな世界……だったはず』

 
前書き
さらっとプロローグは終わらせるよ 

 
 産まれたときには既に意識があった。

 転生。
 あぁ、テンプレだな。
 そんなことを泣きながら考えていた。

 二度めの人生と言っても神様に会ったことも無いし、死んだ記憶も無い。そもそも前世の記憶の殆どが無い、無い無い尽くしだった。
 首が据わって、自分が女になったと知った時は驚いたが、へーって感じだった。
 ■■なんて名前を貰って、新しい両親の為に親孝行な人生を送ろうかなって思った。

 無理だった。
 徹底的に、確実的に、どうしようもないくらい無理だった。
 勉強は前世の知識で出来た、文系の貧弱な頭だったけど幼少の勉強なんかに躓くはずが無かった。
 ただ、問題は別の所だった。
 前世の知識。そして記憶。
 記憶がなによりも邪魔だった。
 なにをしても、どんな新しい筈の事も、その全てが既知感に押し潰された。初めての勉強も、初めてのお遊びも、全部知ってた。
 それでも親孝行をしようと思って、

 ──前世の親の記憶が邪魔をした。

 普通の親だった。特に虐待もなく、普通に遊んでもらって、普通に叱られて、普通に良い親だった。
 だからだろうか、今の親を、親と思えなかったのは。

 気が付いたら棄てられてた。

 養子縁組がどうとか、今日からよろしくね、とか目の前のお婆さんに言われて気付いた。
 どうやら親はオレの事が怖かったらしい。まぁ、何も教えて無いはずなのに既に知ってるなんて神童どころの騒ぎじゃない、それはもう化け物だろう。
 逆の立場だったら私でもそう思う。
 そんな両親の思いに気付けなかったのは多分、女の体に慣れるのに忙しかった上に両親を両親と思うのに抵抗があったからだと思う。

 新しく家族になったらしいお婆さんは変な人だった。

 自分の事を魔法使いだ、とか言ってた。それに対してオレが嘘だなんて言うと、長々しい準備と長々しい呪文を唱えて魔法を見せてくれた。
 なんと驚き、オレの新しい家族は魔法少女ならぬ魔法ババアだったのだ。
 いや家族になったんだしババアはあんまりか、じゃあ魔法熟女だな。
 そっからはもう興奮、オレ超興奮ね。
 魔法なんて本当にあったんだー、なんてはしゃぎながらお婆さんに教えて教えてってせがんだ。
 お婆さんも元々そのつもり、と言うか弟子を得るためにそういう才能のある子を施設で探していたらくて、

 つまる所オレは魔法使いの弟子となったのであった(壮大に)。
 正真正銘の魔法少女になったのだ。

 それからは勉強の日々だった。

 ゲルト? いやケントだったか思い出せないが、お婆さんはそのナントカ魔術の使い手でオレも頑張ったのだが、外国語の上にクソい長い文章を覚えろ、と言われてふざけんなと思ったが、やるのはタダのでややってみた。

 ここで物語の主人公とかなら不完全ながら覚えるのだろうが、無理だった。頭に全くと言っていい程入んなかった。
 これでは不味いとさしものお婆さんも思ったのか、るーん魔術とやらを教えてくれた、魔女術(うぃっちくらふと)とか言うのも勧められたが止めた。なんだ3倍返しって。
 そしてるーん魔術だがこれがもう便利、超便利。簡単な記号を覚えるだけで魔術が使えるんだから楽しいったらりゃしなかった。
 覚える記号の数を少しずつ増やしながら教えるお婆さんは、教師としては一流だったのだろう。まぁナントカ魔術の方も諦めきれなかったのかちょくちょく勉強に入れてたが。

 そしてある日の事だ。
 オレが魔法使い(見習い)位になった時に杖と本を持ってきて、読んみろとか言われた。
 なんでも西洋魔法とか言うらしく、世間一般で使われる魔法なんだとか。杖を握って呪文を唱えれば、それを精霊が指示通りに実行するとか言ってたが、これまた外国語だった。どうやらラテン語らしい。
 ただでさえ勉強の途中途中に挟まれるナントカ魔術の言葉を覚えるので忙しいのだ、こんなもん覚えるのとか無理だ! と言う様な事を婉曲に伝えたらお婆さん満足したのか、一応くれてやるとか言って部屋に戻っていった。
 たしか、「私が覚えるのはこれだけでいい」とかそんな感じのを言ったと思う、あの時は適当に格好つけて言ったから覚えてない。

 それでも興味がわいたので、やってみたら結構面白かった。
杖を振るうのはナントカ魔術と一緒だが、あっちと違って銀の杖を片手に格好いい呪文を唱えるのがなんか良かった。
 お婆さん曰くオレの魔力は人の3倍らしいので何回も唱えた。
倒れた。
 多分しょっぱなから大呪文って書かれているのを唱えたからだろうか、しかしもうやばかった。なにがヤバいって倒れた事よりも、倒れときながら不発ってのがやばかった。
 オレも魔法少女(自称達人)として自信があったがスカと言うのはイラっと来た。
 なんて考えてる内にお婆さんがいきなり入ってきて、こっちを見て事態を納得したのか鼻で笑って戻って行ったのも腹が立った。

 そんな事をやってる内に5歳だ、魔法少女2年目だ。

 そして、だ。
 昨日いきなりお婆さんのぐりもわーるとオレの杖に西洋魔法(笑)の道具を渡されて、なになに? と外出したと思ったら「いまこの世界では戦争がおきとる、西洋魔法使いも沢山おるから学んでこい」だとか言って知らない誰かに預けられた。

「ええと、私はアルビレオ・イマと言います。あなたの師匠の旧友です」

 なんだこの胡散臭い糸目、なんて思ってると前世の記憶を思い出した。

 確かオレは前世でスコッパー? で、この世界は地雷ばっかり積まれるって事だ(確信)。

「ぼくのかんがえたさいきょうのまほう……?」

「?」

 ふとそんな言葉が頭に浮かんだ。





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇







 魔法世界、火星に位置するそれはそれは今戦争状態にあった。
 北のメセンブリーナ連合と南のヘラス帝国。些細な誤解といさかいから始まった大戦は激化し、ついに世界を南と北に二分するほどの戦いへと化したのである。

 そんな中、無辜の民を守るために立ち上がった集団がいた。

 名を『紅き翼(アラルブラ)』と言う。
 弱冠14にして千の呪文を手繰ると言う最強の魔法使いナギ・スプリングフィールド。
 その師であるゼクト。
 ヘラス最強の元剣闘士の傭兵、ジャック・ラカン。
 旧世界日本の刀使い、魔を刈る神鳴流剣士、近衛(このえ)詠春(えいしゅん)
 歩く魔導図書館、アルビレオ・イマ。

 以上の4人で構成されるパーティーは瞬く間に成果をあげた、しかしそれをもってしても上回る帝国の国力、そしてなによりも魔法力は凄まじく侵攻は圧倒的であった。
 帝国の真の目的である連合との国境線に位置する国、彼ら古き民の文明発祥の聖地『オスティア』を巡る侵攻こそ失敗に終わるものの帝国は大規模転移魔法の実戦投入に踏み切り、全長300キロに渡る巨大要塞『グレート=ブリッジ』を陥落せしめる。
 連合にとっての最大の痛手に連合上層部は戸惑うが、前線に復帰した『紅き翼(アラルブラ)』によって戦況は逆転した。
 反転、連合は帝国領内へと攻め入り、前線を大幅に押し上げる事に成功する。

 そんな英雄達と三日前から行動を共にする無音拳の達人、ガトウ・カグラ・ヴァンデンバーグを師に持つタカミチは師であるガトウと共に連合の首都であるメガロメセンブリアのゲート施設にいた。

 ゲート、旧世界地球と魔法世界を繋ぐもの。後はサムライマスター近衛詠春の故郷への道。
 幼いタカミチにとってゲートと言うのはその程度の認識であるが、パーティーのメンバーであるアルビレオ・イマが用がある、と言って自分と師を連れてきたのである。
 最初こそ行く気は無かったものの、それを言うのも憚られた為に断ることも出来ず今に至る。

「おい、来たぞ」

 なんて考えてる内にアルビレオは用事を済ませたらしく師に呼ばれる。そこまで長い用事でも無かったのか、まだ5分かそこらしかたっていない。
 そうして施設内の時計から顔をアルビレオに向け、

「あれ……?」

 同い年であろうか、自分と同じ背丈の人影が魔法使いの側にあった。黒いフード付のローブを纏っている姿からは男の子か女の子かわからない。

「用事は終わったか?」

「ええ、ちょっと旧友に頼み事をされまして。弟子の魔法の知慧を広めて欲しい、と」

 と言うことはこの子は魔法使いなのだろうか、そう考えると少しもやもやした物を胸に感じた。
 魔法を使えない自分と違って、魔法使いな目の前の子。話した事もないのに嫉妬心から眉を少し潜めた。
 そんな自分を見てアルビレオが苦笑し、隣に話しかける。

「自己紹介をして貰っても構いませんか?」

「ふむ。自己紹介、ね」

 鈴の様な声色だった。女の子なのだろうか、独特な口調で話すなーとタカミチが思う目の前で。
少女がフードを脱いだ。
 長い夜を纏めたような綺麗な黒髪と黒曜石の様な黒い瞳、陶磁の様な白い肌。美しい少女だった。
っそりとした眉、猫の様な目は喜色に歪められぷっくらとした桜色の唇が動く、

「私の名前はクレア・ティアーヌ、ティアーヌは師匠の姓名だよ。特技は魔術、それと────」

 ずい、こちらに身を乗りだし、

「僕は天才だからそこのところ、誤解無いように」

 傲岸不遜に、そう言った。
 
 

 
後書き
主人公のキャラはプライドの高い小物、あるいは偉そうなビビり。
魔法使えるオレすげー。え?魔法使えないのププとか思ってる。
直ぐに調子にのるくせに直ぐに落ち込むからお婆さん大変。 
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