久遠の神話
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第四十七話 アメリカ軍人その六
「血生臭いこととはあまり縁がありません」
「ですか」
「ないと言えば嘘になりますが」
空爆やそうしたことを言っているのだ。
「それでもです」
「あまり殺伐とはしていませんか」
「基地はそうです」
「それで大尉もですね」
「確かに海兵隊と比べると穏やかですね」
大尉は少し微笑んでジョークめいたことを述べた。
「海兵隊は陸軍すらお嬢さんと言いますからね」
「えっ、陸軍をですか!?」
スペンサーの今の言葉に工藤は特に驚かなかったが高橋は違っていた。彼の言葉に少し驚いた顔になりこう言ったのである。
「アメリカ陸軍をですか」
「そうです。お嬢さんと言いますよ」
「それはまた」
「それだけ厳しい訓練を経て実践を積んでいるということです」
「海兵隊はそんなに凄いんですか」
「真っ先に火事場に飛び込みます」
アメリカ軍が軍事行動を移す時には必ずそうなるのだ。
「ですからかなりの精鋭です」
「それで荒くれ者揃いですか」
「確かに荒っぽいところがありまして」
それでだというのだ。
「空軍、我々と比べますと全く違うのです」
「そうなんですか」
「同じアメリカ軍でもそれぞれの色があります」
アメリカ軍は五軍編成である。陸空海の三軍に海兵隊、そして沿岸警備隊という編成で戦略にあたっている。
「空軍はパイロットと整備屋ですね」
「それと管制ですね」
「管制はまた特別ですから」
こう工藤に返す。
「とにかくそれぞれの軍で違います」
「ううん、そういうものなんですね」
高橋はスペンサーの話を聞いて今は首を捻るだけだった。それで地連に戻ってもそこにいる制服組、工藤や一佐を見てそのまま首を捻り続けた。
「そうなのかな」
「まだ言っているのか」
「だって。自衛隊は三つですけれど」
陸空海の三つである。基本的な編成と言える。
「その三つの自衛隊のどれも」
「同じに見えるか」
「制服の色が違うだけなんじゃ」
警官である彼から見ればあくまでそれ位の違いだった。
「俺にはそうとしか思えないですけれど」
「ははは、高橋君にはわからないか」
彼のいぶかしむ言葉を聞いて笑って言ってきたのは一佐だった。
「うちと空自さん、海自さんでは随分違うのだがね」
「そうなんですか?」
「確かに仲は悪くないがな」
三つの自衛隊のそれぞれの関係は割かし円滑、円満だ。かつての陸軍と海軍の様な対立は完全に消え去ってしまっている。
「お互いにさん付けで呼び合うしこうして地連では一緒だからな」
「基本仲いいですよね」
「だから決して悪くはない」
一佐もそれは保障する。
「むしろいい方だな」
「ですよね、どう見ても」
「防大でも一緒だからな」
普通の国の軍ではそれぞれの軍が士官学校を持っているが日本では防衛大学で統一されている。ただし幹部候補生学校はそれぞれだ。
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