一般人(?)が転生して魔王になりました
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何の為の御剣か?
前書き
お久しぶりです、ビヨンです。
今回も、かなりグダグダな出来に成っている為おかしな所が多数在るんだろうなと思っています。まあ、それはいつもの事なので気にせずにいきましょう。では、どうぞ!
「…最強の《鋼》」
蓮華はその言葉を噛み締めるように呟いた。それは最大にして最強の仇敵の名を本能的に感じての事であった。
「そう。世界の終末に現れ、魔王を――君ら神殺しを殺す最後にして最強の《鋼》だ」
「その《鋼》は極一部の《鋼》が持つ魔王殲滅の権能を所持している《鋼》です」
分かり易く言えば、とシリウスが付け足すように言う。
「神殺しと対峙する事でステータスがパワーアップする権能ですね」
「………何その物騒な権能」
その内容を理解するのに少しの時間が掛かったのは仕方の無い事だと思う。何せ、自分は世界に知られていないとは言え魔王の一人であるのだから。その魔王と対峙するとステータスが上がると言う悪い冗談以外の何物でもなかった。
「で、その権能で幾人もの魔王を討ち取ってきたんだよ。その《鋼》はね」
まるでその時を視て来たかのような言い方に疑問が生まれた。
「……何で知っているんだ?」
「うん、そうだね。この話は御剣の始まりに繋がるからちゃんと聞くように」
ゴホンと咳払いをしながら桜華は蓮華の瞳を見ながら話し始めた。
「僕の異能については知っているかな?」
「……未来視…」
桜華の異名は先読みの魔神。先――つまりは未来を読み、そこから捩って繋げたのが先読みの魔神という異名だ。
「正解。人が持つには強大すぎる異能。未来視。その力は本来なら数秒程度なんだ」
数秒でも十分凄い。相手の行動が数秒分かるだけで自分の動きが変わるし、避ける事だって容易だ。
「――けど、それが数秒から千年程先の未来が視えたとしたらどうかな?」
「…………は? いや、ちょっと待て。待ってくれ!」
蓮華は驚き声を上げた。
年単位、それも千年先だ? そんなの本当に神の領域じゃないか!!
「とは言っても“その時”は数秒程度でね。ある光景を視ただけさ」
それが、と言い一拍置く桜華。
「――魔王を打ち倒している最強の《鋼》の姿とそれで崩れ去った文明そのものをね」
「………千年先。言い換えると今の時代か…」
最悪だな。今の俺の実力だと幾人の魔王を倒した《鋼》には勝てそうに無い。というか確実に勝てない。目覚めたら即アウトだ。
「ああ。とは言っても千年というのはある程度確定しているのだが、正確な時期は定かではないんだよ」
「未来は酷く、不安定。だから分かりきれていないという事か…」
ため息を吐きながら蓮華は呟いていた。
「そうだよ。そして、僕はその未来を視て、絶望したんだよ。『未来はこんなにも酷いのか』とね。そして、そこから異能を鍛え始めたんだよ。様々な可能性を視る為にね」
魔術を極め終えており、そこから異能を極め始め、僅か一年で極めた。年単位から秒単位の未来、その全てを視れるようになった。
そして様々な未来を視た。しかし無限に等しい数在る未来を視ていき、絶望していった。その全てが過程は違えど結果が同じになるという最悪な未来――全てが終わった未来であった。
それでも何か一つの可能性が在るんじゃないか? けど、その全ては結局終わりだ。という二つの思いが存在した桜華は最後の一回として未来を視る事にした。
「一時は自分が王になろうかと思ったけど、僕は生粋の魔術師だ。近接戦なんか出来なかったからね。止めたんだよ」
そして最後の一回で見つけたのだ。無限に近い有限の未来から見つけた可能性を。刀を振るい、戦っている存在を。その名を。
そこから桜華の行動は早かった。その者が自分の子孫である事を知った桜華は様々な事をした。その過程で何故かしら美人である三人にいつの間にか包囲網を敷かれており、娶ることになっていたのだがそれは良いだろう。いや、良くないけど。まあ、桜華の人生の中では幸せ絶頂と同時に罪悪感が存在したのだが。
生まれた子供を鍛え、育て、戦いの中に置き、成長を促進させ、次へと繋がせていく。そして、その繰り返し。武芸の出来る者や異能者の血を取り込んでいき、純化させていった。そして、その間に《鋼》が起きるような事態を避けるために可能性を潰しまわり、神を封じてきたりもした。
その繰り返しの過程で極稀に人という枠組みから外れた存在も生まれた。その内の一人である泉華がアテナを地に着けたときは驚いたものだ。そこから約定を結ばせて、そこから先は繰り返し。そしてその中からベクトルは違えど枠から外れた存在が人相手に飽きて神相手に賭け事を吹っ掛けた時は焦ったものだ。まあ、それは置いておくとして、数多の実力者達の血筋と神格化した者の血を取り込んでいき、生まれたのが――
「御剣家現当主_御剣蓮華。君だよ」
人にとって長い千年の年月を掛けて生まれ、逸脱者である者を超え、御剣の全てを得た原石。戦いの神であるアテナが育て上げた結果。それが御剣千年の集大成である《御剣蓮華》である。
ただ、その最強の《鋼》に対する対抗策として。
「……成程。だから謝った訳か」
それは最早、人の在り方でなく兵器としての在り方。人生の強要と言ってもいい。その未来にいた人物に全てを押し付ける。それはその人物の可能性を潰すような事である。
「ああ。これは僕が始めたエゴ。人という存在の終わりを防ぎたくて、自分の子孫である蓮華君を捧げたんだよ」
「…………さいですか」
何だかアレだな。壮大な話で今更「あなたは兵器ですよ」と言われても「そうなんだ」程度にしか思わない。何故かって?異能者は人とは違う力を持っている時点で人という存在じゃない。それを早くに認識したからな。
さて、聞いていると気になるところがあるな。
「この事を知っていた人は?」
此処が結構重要だよね。どれだけの割合が知っていたのかなんて。まあ、興味本位なんだけど。
「全てを知りえていたのは僕とシリウス、そして泉華君に、月華君。あとはアテナだよ。で、他の当主も薄々だけど気づいていたかな?」
大半が知っていたという事か。けど完全じゃない。しかも先に挙げられた泉華と月華は御剣で長生きした数少ない当主だな。
「………ん? 月華さんは何で分かったんだ?」
此処でふと蓮華は疑問に思った。
聞いた話によるとあの人は運がもの凄く良く、異能は自身の制御だけであって、未来視や過去視なんて異能は持っていなかった筈だが?
「彼ね、凄く頭が良かったんだ。過去の歴史とアテナからの少しの言葉で分かったようでね。相手の表情と配られた札で手を読んだりとかが出来た子だったからね」
流石はアテナに『千年に一度の奇跡』と言わしめた男。単独でそこまで理解できるもんなんだな。
「泉華さんは何処まで視ていた?」
暫らく沈黙した後に桜華は言った。
「……恐らく僕と同じ未来か、違う未来か。そのどっちかだと思う。それについてはアテナの方が詳しいと思うよ。よく一緒に過ごしていた仲だったからね」
外から見ていた僕には分からなかったからね、と言う。
「……御剣の早死にの理由は?」
これが結構気になる所である。皆、早く死にすぎて当主がどんどん変わっていって、百代目なんていう数字に辿り着いてしまったのだから。
「……それについては性だよ。御剣はね『戦う』という事を性としているからね。それでだよ」
「……そう」
まあ、よく分からん組織と戦って死んだり、色々と馬鹿やって死んでいるようだからそう言う性なんだろうね。御剣と言う家は。
「最終的には君が決める事だ。だから今此処で決めてくれ」
「………てっきり、強要するかと思ったけど」
千年も掛けているから何が何でも承諾させるかと思っていたけど、ちょっとした驚きである。
「強要しても最悪な結果を招くだけだからね。そういうのは自分で決めてもらう必要があるんだよ」
「確かに。それは賛成だな」
だって、それで馬鹿やっている奴を前世で見てきたし。嫌々で作業していた奴なんかそれで大失敗をしていたからな。
それだけ言うと静寂が部屋に満ちた。
蓮華はその静寂の中どうするかを考えていた。
この目の前にいる桜華という人間はその悲劇を回避したいがために全てを捧げた。
視て、知って、どうにかしたいと願った。しかし自分では力が足りないと思った。たとえ神殺しに成ったとしても、自分は死ぬ。なら、自分を超える逸材に全てを託そうと思った。その未来を必死に探した。そして見つけた。それが俺_御剣蓮華だ。
その為の時間、その為の御剣。何時か来る破滅に対する俺か。
………はぁ。千年という時間を掛けているし、アテナも知ってて遣っていたし。ここで、受けないという選択は無いな。それに楽しそうだしな。
こういう思考をしている時点で御剣に染まっており、更には神殺しの性質まで加わっており、化学反応が起きていることを彼は後に知るのだが、それは先の話である。
「―――どっちにしろ戦う事になるんだろうから良いか」
何時か戦うことは決まっている様なものだし、なら乗ったほうが面白そうだ。
「良いのかい?」
桜華は確認の意を込めて聞いてくる。
「良いさ」
「――……死ぬかもしてないんだよ。最強の《鋼》と戦っても死ぬかもしれないし、その前に死ぬかもしれ
ない。それでもかい?」
それは最後の確認。これで決まるのは蓮華の人生である。
神殺しは天寿を全う出来て死んだ者は稀であり、中々居ないと義母さんに聞いた。戦いに明け暮れて
いればそうなるだろうね。俺もそうなる道を通るんだろうし。というか、乗った時点で天寿を全うできるかかなり怪しい。
まあ、刺激には困らない人生に成るから生きることには飽きなくて楽しいだろう。
「確かにそうだ。けど、俺が『王』になった時点で、何時かその《鋼》と戦うのは目に見えている。なら、家の―――あんたの願いをついでに叶えるさ」
「……他の神と戦って死ぬかも知れないのに?」
「ああ、それもあるね。けど俺は後六年は確実に生きるさ。―――アテナと戦うって約束したから」
自分の全てを見せてもいないのに、アテナと戦う前に死ねない。
だから、現時点で打てる手は全て打って置く。自分に足りないものを、組み込んでいくように。自分の全ての才を高めるように。
「―――でさ、桜華とシリウスの異能と魔術と技術の全てを教えてくんね。その全てを自分のものにするからさ」
長い時を生きている【魔神】と呼ばれ畏れられた魔術師と元人間の化物。この二人の培って来たものは、此処にいる『王』を更に成長させる。
「……それが君の選んだ選択なのなら教えるよ」
「私も教えましょう」
「……ありがとね。じゃあ、俺はアテナに用があるから」
そう言い蓮華は去っていたのであった。
◇ ◇ ◇ ◇
蓮華が去っていったのを見送ると桜華が呟いた。
「………何だか、悪い事をした気がするな」
「あなたがそう言っては、当主の意志を無碍にする事ですよ。桜華様」
「それもそうだね」
桜華は苦笑しながらそう言ったのであった。
その表情を暫らく見ていたシリウスはある疑問を口にする。
「―――ところで。何処でそれ程の呪力を手にしてきたんですか?」
自分が眠りに着く前、元主人の力は【魔神】と言われながらも人であった。神に近い呪力を持っていてもまだ人であったのだ。それが今では神と神殺しを超えて全盛期を上回ったのである。
「―――少しばかり、カンピオーネの一人『黒王子(ブラック・プリンス)』と呼ばれるアレクサンドル・ガスコインと協力して、『聖杯』の持ち主を追っていてね。呪力は『聖杯』から失敬した」
『聖杯』_それは膨大な呪力を秘めており、その総量はかなりの物で、こぼれる量だけでカンピオーネ数十人分の呪力を有しているのである。
「少しの隙を作って、『聖杯』の中に入って、少し幾つかの細工と呪力を貰ったんだよ」
本来なら所有者にしかそんな事は出来ない。しかし、それが出来るからこそ桜華は【魔神】と呼ばれ、畏れられ、崇められ、祀られたのだ。魔の神として。
「……『聖杯』の持ち主_《神祖》にして、『魔女王』グィネヴィアですか」
「……そしてその傍にいた最源流の《鋼》も居たよ」
「…最悪ですね」
昔に色々とあったシリウスは顔を顰めていた。如何せんアレは面倒な《鋼》なのだ。最強の《鋼》と共に戦場を歩いていたあの英雄は。
「―――そちらは私のほうで対処すれば何とかしますか」
「ああ、お願いね。今頼めるのは君しかいないからね」
「鈍っていますがね」
「それでも頼むよ、殺神鬼(カラミティ・モンスター)」
「随分と懐かしい異名を出しますね」
言われた本人は苦笑しながら表情を曇らせていった。それは過去の罪だ。歴史上一人で殺してきた数はシリウスが一番なのだから。
「さて、あの二人の約束は六年後。その前に色々と教えておかないといけないからね。………僕の方は持って一年かな?」
この後、二人はワインを片手に色々とつまみ飲食していくのであった。
後書き
さて、言い訳をさせて頂くなら色々と在ります。リアルが忙しかったり、書いた話を消しては書きを繰り返したり、別な小説に手を出していたりと様々です。で、書いている内に何だか迷走していき「もうこれでいいんじゃね?」となりました。
では、言い訳を終了して次の話を書いていきましょう。まあ、忙しいので遅くなるし駄文な文が更に駄文に成りそうですが、今後ともよろしくお願いします。
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