魔法少女リリカルなのはStrikerS ~賢者の槍を持ちし者~
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Chapter14「賢者の槍」
前書き
ハーメルン投稿時のサブタイトルのバックアップを取っていなかったため、
困まっています。
読者の方でわかる方がいましたら、教えていただけないでしょうか?
突然のガジェットの再襲撃により現場にいるライトニング分隊同様に指令室にいるロングアーチスタッフも全く反応がない状態で有視界領域に入らなければガジェットを探知できなかった事に動揺を隠しきれずにいた。
「索敵班!シャーリー、何してたんだ!」
「わ、私はちゃんと反応がないかサーチャで探索してたわよ!」
幼なじみ同士でもあるグリフィスとシャーリーは素の口調で動揺を隠しきれずにいる。
「落ち着くんや2人共」
はやての冷静な声で何とか落ち着きを取り戻すグリフィスとシャーリー。
部隊を率いる者たる者は常に冷静でいなくてはならない。そう言った意味ではやては十分その役を果たしている。
「何か仕掛けがあるはずなんや……何か……」
反応なく奇襲……有視界……増援……頭の中に今までに出てきた言葉を並べ、作戦行動に入ってからの事を全て思い返す。あり得ないという思考、常識を破棄しろ……子供のように突拍子のない発想を思い浮かべろ……あの頃の自分達のように………ただ純粋に……
もう一度今ある工程を一から組直せ!
型に捕らわれないようはやては考える事を止めはしない。止めたらそこで試合終了=敗北。
しかもそれは自分に負けるのだ。自分にだけ絶対に負けない……それが今まで彼女の根本にあった信念……決して負けられはしない。
「ぁ!そうか……!」
ある過程がはやての頭に浮かび上がった。エアディスプレイを呼び出し大型モニターに数分前の作戦行動時のリニアレールを映つし出す。
「八神部隊長?」
「皆あれを見るんや!」
モニターのたった今自分が映した映像をロングアーチの自分の部下に見るよう促す。
「これがどうしたんですか?」
「この崖の斜面を見て!ええか?普通のカメラではここには何も映ってへん。けどな、ここをスキャンすると……」
コンピューターに斜面の画像をスキャニングさせる。
すると……
「ガジェット!」
「まさか、姿を消してリニアレールに侵入していたって事ですか!?」
「そんなところやろうな。まぁ私が気付いたのは別の事やけどね」
またはやてはモニターに別の映像を映し、その映像の崖の斜面を拡大させる。
「私も偶然気付いたんやけど、よく見たらほら…ここに石ころがドンドン転がって行ってるのわかるか?別に崖崩れも起きてへんのに不自然やろ?んで、ここを、石ころが転がる瞬間をスキャニングすれば………」
スキャンされる映像。そしてスキャンして映し出された映像には数機のガジェットの姿が移し出されていた。
「こんな方法でサーチャーの目を掻い潜ってたなんて……」
「シャーリー、今は反省する場合やない。この事をライトニング分隊とエージェント・ヴィクトルに伝達。それから試作用のAMFキャンセラーを散布するようフェイト隊長に」
「で、でもアレは散布すると魔力弾による攻撃が拡散してしまうんじゃ……」
「それでも後ろから撃たれるよりは遥かにマシや。責任は私が取る」
「り、了解!」
もうためらっている余裕は何処にもない。攻撃が通らないより隊員の安全が第一。フェイトなら接近戦や膨大な魔力で魔力弾を撃てるだろう……しかし問題はエリオとキャロだ。実戦経験は初陣でもある今作戦だけ……残存魔力も前戦で少ないのは確実で、あの年齢でこれ以上のプレッシャーに耐えきれるか不安である。
「なのはさんからの緊急通信です!指示を求めています」
「スターズはレッリクを中央ラボに護送し完了次第、現場に急行せよって伝えて。敵がヘリからなのは隊長が離れるのを待ってる可能性も捨てきれないしな」
「了解!」
アルトに指示を出し再び思案に没頭する。頼みの綱は3つ。レッリクを護送中のスターズが増援に入る事。エリオとキャロの精神が耐えきれるかどうか。
そして………
(ルドガー……)
はやてはこれから何か自分が予想もつかないような事態が起こるのではないかと思ってならなかった。そしてそれは見事的中する事になる………良い意味でもあり、悪い意味でもあるが………
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「了解!試作用のジャフを使用します」
ロングアーチからの指示でフェイトは手元にチャフ入りのカプセルを出現させ、リニアレールの上空に投げ捨て魔力弾でカプセルを撃ち抜く。カプセルの中からは銀色の鱗粉ような物がリニアレール上の空域に展開される。これが本局で試験的に開発された通称『AMFキャンセラー』。魔力の結合を妨害するのがAMFならこのAMFキャンセラーはAMFの効果を低下させる事が可能。しかし副産物としてAMF効果を低下させる為に使用されている粉末は魔導師が放つ小規模の魔力弾ならほぼ完全に打ち消してしまうデメリットがあり、魔力結合こそ妨害しないが広域に展開するという事は味方の攻撃手段を減らすの同義であり広域戦での使用はご法度……それにAMFキャンセラーに使用されている粉末は採取するのが大変難しいのでカプセル一つだけでも多大な開発費がかる。そのせいで試作段階で留まっているのだ。散布されたAMFキャンセラーによって崖にいたガジェットが次々に化けの皮が剥がされていく。AMFキャンセラーで迷彩化が解けるという
事はこれにもAMFが転用されているのだろう。
厄介この上極まりない。
「ルドガー!リニアに来るガジェットを頼むよ」
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「了解!ゼアっ!」
フェイトからの通信をガジェットをカストールで破壊しながら応答する。
「エリオ、キャロ!大丈夫か!?」
ルドガーの視界に入ったエリオとキャロはガジェットとなんとか戦えてはいるが、やはり長期戦には慣れていない為疲れが滲み出始めてきていた。
「た、大丈夫です、僕は…まぁだっ!」
エリオがⅢ型のアームを押し返しストラーダで切り裂く。
「私も、まだ行けます!」
「キュクル!」
Ⅰ型とⅢ型の数体をチェーンバインドで縛りつけ身動きの取れないガジェット達へフリードが火炎弾を吐く。しかし火炎弾はⅠ型には命中し破壊するものの、Ⅲ型には全くダメージを与えられずにいた。
これもAMFキャンセラーの影響だ。幸いバインド系の魔法には大して影響がないのが救いだ……。この隙にキャロが捕らえているⅢ型をルドガーが破壊しようと考え動こうとした時、先頭車両側からⅠ型が大量に押し掛けて来ようとしていた。
「月夜ばかりと……」
ルドガーもⅠ型の大群に向け、クランズオートを連射しながら迎え討つ。弾膜を掻い潜りなが屋根に空いていた穴に飛び込み、車内で床を滑り込みながら屋根に向けゼロディバイドを連射。
屋根上にいたⅠ型の大群は討ち洩らしこそあるが、その半数を撃破する。屋根を紅蓮翔舞でブチ破り、ついでにその上にいたガジェットを炎を纏った足で蹴り上げ斬撃で八つ裂きにし、着地地点にいた別のⅠ型を轟臥衝で圧殺、見事屋根にタケノコでも入りそうな穴を貫通させる。
「思うなよ!」
言葉を継むぎながら生き残ったⅠ型を殲滅させる為、ゼロディバイドで穴が空いた屋根の上を風のように駆ける。
----武身技 鏡月閃
鏡月閃の使用により後ろに下がってしまうが、直ぐ様舞斑雪で加速ついでに前方にいたⅠ型を破壊し、側転ですれ違い様にⅠ型を斬り裂き最終的には全機を鉄屑へと変貌させる。
この間……経ったの10秒。
「っと……」
いつの間にかルドガーのいる車両に現れたⅢ型がⅠ型を一掃したばかりのルドガーにアームで襲い掛かる。が、それが当然ルドガーに当たるはずもない。そんな大きい一撃をルドガーに当てるのは矢を100メートル先のちくわ穴に通すなみに難関だ。アームを難なくバックステップで躱したルドガーの手にはハンマーが握られており、アームを掻い潜りながらⅢ型の懐に入り技を放つ。
-----奥義 マギカ・ブレーデ
ハンマーから光刃を生み出しⅢ型を斬り裂く。ルドガーが背後を向けハンマーを地に打ち着けるとその振動で光刃で斬り裂かれた箇所から斜めにズレⅢ型は爆散した。
「うわぁ!?」
キャロ達のサポートに回ろと考えていたルドガーの足下に一発のガジェットのビームが当たり、この戦闘で初めて冷や汗を流す事になった。
『ごめんルドガー!今そっちに攻撃いったよね?』
空で無数のⅡ型の相手をするフェイトから謝罪の言葉がルドガーに掛けられる。大丈夫だと空で戦っているフェイトに言おとした時、ルドガーはさっと外方を向ける。しかも何故か顔が赤い。ルドガーの様子がおかしい事に気付いたフェイトは彼にどうしたのかと聞く。
「その…言いにくいんだけど……」
『ん?』
Ⅱ型をバルディシュで狩りながらもルドガーが話そうとしている事を注意して聞こうとするフェイト。あれだけの戦闘する男だ。きっと何かこの戦いを左右する重大な内容なのだと予想を立てる。だが………
「スカートは履く時はもうちょっと……ガードを堅くした方がいいと思うぞ?」
『…………』
この時ルドガーはフェイトの表情を見て固まってしまう。そして何故かどんな時でも崩れなかった強固な涙腺が崩壊するのではとすら思えていた。理由は故に一つ。あの太陽のような笑顔を日頃から見せていたフェイトがまるでゴミ虫でも見るような目でルドガーを見ていたからだ。
『…………』
沈黙が痛い。耐えきれなくなったルドガーはフェイトに話し掛ける。
「えっと…フェイト?その何とか言うか……」
『ルドガー』
「はい」
最早言い訳は火に油を注ぐだけだと悟り、はいとしか返事ができない。
そして彼女の口から出た内容は………
『この任務終わったら“お話し”だよ、ルドガー?』
「……………」
いつも通りの満面の笑顔で私刑宣告をする。だがその目は決して笑ってはいない。
その宣告を受けたルドガーはフェイトのお話しと言う台詞に時の大聖霊クロノスが『審判を下そう!』と言っているようにすら見え、ガジェットを破壊しながらそこから飛び出るオイルがまるで返り血に
見え、ルドガーの恐怖心を煽る。
「だからごめんって!」
『見苦しいよルドガー。私のミスで2発、ルドガーに攻撃が飛んでいったから謝ってたのに……
ルドガーは……』
黒いオーラを放つフェイトにルドガーは何とも言えなくなる。これは帰ったら素直に怒られようと考えていたらフェイトの言葉に違和感を感じた。
「フェイト……今俺に行った攻撃は何発って言った?」
『えっ?に、2発だけど』
さっきまでの情けなさ全開の顔から一瞬で戦いの顔に変わり呆気に取られながらも質問された内容に答える。
「じゃあ、もう一発は何処に……」
『さっきの攻撃、もしかして一発しかルドガーのところに---』
しかしフェイトの言葉は最後まで続かない。悲鳴だ。空にいるフェイトにすら聞こえるほどの悲鳴だった。二人はそれぞれの場所からその声の主を見る。
「『キャロ!!』」
ルドガーとフェイトの目に映ったのはチェーンバインドで捕らえていたはずのガジェットⅢ型がアームでキャロを跳ね飛ばしていた。
『エリオ!キャロのバインドはどうして破られたの!?』
Ⅲ型のガジェットとといえど、疲弊しているとはいえ補助魔法が得意なキャロのバインドをこの短時間で破るのは難しいはずだ。なのに何故?
「空から降ってきた攻撃がガジェットを縛るバインドの一つに当たったんです!そしたらバインドが次々と破られて……」
『そんな……』
言葉を失うフェイト。無理もない。自分が避けた事でその攻撃が自分の部下……ましてや家族同然のキャロに間接的ではあるがキャロをこの状況に追いやってしまったのだ。
「くっ!」
動揺した影響でⅡ型のガジェットに取り囲まれてしまったフェイトはキャロの救出には直ぐ向かう事はできない。ルドガーはキャロ達の車両まで全力疾走で向かう。
だがⅢ型はそれを嘲笑うかのようにその巨大アームをキャロに振り下ろす。
「『キャロ!』」
Ⅲ型とⅡ型のガジェットに苦戦するエリオとフェイトの悲痛な声が渓谷に響き、二人の悲痛な思いがルドガーにも伝わる。
(間に合え……!)
失ってなるものか………内心でそう叫び左膝のベルトポーチから金色の懐中時計を取出し両腕を前に翳す。そしてルドガーは再び『力』を発動させる。全てを『破壊』する圧倒的な力。
………今その時の歯車が再び動き出す……………
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「邪魔だっ!」
Ⅱ型のガジェットに苦戦するフェイト。今すぐにでもキャロを助けに行きたいがⅡ型のガジェットに取り囲まれ被弾こそしないが直ぐには抜け出せず、苛立ちを覚える。だがⅢ型のガジェットが気絶しているキャロに止めをさそうとアームを振り下ろす光景を見て、苛立ちが恐怖に変わる。
「やめろぉぉぉ!!」
手を伸ばし唯叫ぶ。絶望がフェイトの心に浮かび上がり全てを支配しようとしていた。
しかし……神はその手を確かに掴む。
「……えっ?」
何が起きた?フェイトは目の前で起きた状況を把握できない。
ルドガーが居た車両から突如として金色の閃光が走り、エリオが戦っていたガジェットⅢ型が真っ二つに切断されていた。また潰されかけていたキャロと切断されたⅢ型と戦っていたエリオの姿がその車両の何処にもない。フェイトは目を凝らしてエリオとキャロを探す。
そして見つける。
だがその2人の状態を見てフェイトは目を見開く。
身の丈ほどある金のラインが入った槍を持ち、銀髪を揺らし、槍と同じく上半身に金のラインが入った黒と灰色の配色の鎧を身に纏ったような『何か』が左腕でキャロを抱えていたのだった。
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何が起こったのかわからなかった。キャロが叩き潰される光景をガジェットⅢ型と戦いながら見ていたはずのエリオはいつの間にか、自分達が最初にリニアレールに突入した際、降り立った場所に立っていた。
「……大丈夫か?」
呆然としていたエリオは隣から声をかけられた事に気付きそこを見た。そして固まった。
「っ!!?」
槍を持ち上半身に鎧を纏った銀髪の何かが自分を心配そうに見つめている。よくみると顔にも鎧の一部が入っている。その謎の存在を観察しているとキャロが左膝で抱えられている事にエリオは今更気付いた。
「キャロなら大丈夫だ…… ただ気絶しているだけだ」
今確かにキャロと目の前の存在はそう言った。何故キャロを知っている?そしてエリオはようやく
目の前の人物が何者なかのかを知る。
「……ルドガー…さん?」
そう。鎧を上半身に纏ってはいるが、この人物の目の色や声、顔の輪郭、スーツパンツに靴や羽の装飾品は間違いなくルドガーのモノだ。しかしそれでも自信がない為エリオは遠慮がちな声で尋ねる。
「ああ……キャロを頼む」
「あ、は、はい……」
静かな肯定をしエリオにキャロを預け、エリオ達に背を向ける。
「あの……ルドガーさん……その姿は……」
やはりこのルドガーの姿…『骸殻』・『ハーフ』を発動した姿を見たら、これが何なのか知りたいはずだろう。
だが今はまだその時ではない。
「悪いなエリオ……今は戦いに集中させてくれ」
「………」
返事が来ないため無言を了承したと判断する。
それからルドガーはフェイトとはやてにも通信を入れる。
『本当に…ルドガー…なんよね?』
「ああ……」
『その姿は……』
「悪いが話している余裕はないんだ。はやて達が聞きたい事は後で話す」
『…………』
「フェイトはガジェットをできるだけリニアレールに引き付けてくれ」
『う、うん』
そこからは一方的に通信を切り、ルドガーは前方にいる4体のⅢ型ガジェットを睨む。
もし正面にガジェットではなく人間がいたらルドガーの放つ殺気と骸殻の放つ得体の知れない圧力で怯んでいるだろう。
槍を左上から右下に払う………
「うおぉぉぉぉおおおおおっ!!」
世界の果てまで響くような雄叫びを上げながら、Ⅲ型へ駆けるルドガー。その動きを見て4機のⅢ型がビームによる攻撃を始めた。
しかし……その攻撃は全て空を切る事になる。
『消えた!?何処に---』
指令室にいるはやては突如姿が消えたルドガーを探すが、言葉を言い終える前にそのルドガーが現れる………Ⅲ型の頭上に。
「はあぁっ!!」
Ⅲ型の1体の頭上から現れ突き立てるように槍を構え標的のガジェットに槍は貫通し、爆発。
残骸の上に立つルドガーに3機のガジェットはただビームを撃ち続けるしかない。
たがそれも全て槍を回転させ完璧にガード。
「おおぉぉぉ!」
高速で進行方向にいる3機のⅢ型を無数に縦横無尽に斬りつける。既にガジェットの機体は槍で傷つけらた傷が数えきれないほどあった。
「双刃乱舞!」
最後に横一閃……リニアレール上のガジェットは完全に殲滅される。
「おおぉぉぉぉぉ!!」
……だがルドガーは止まらない。空を見上げた途端Ⅱ型の飛ぶ空へ舞う。その跳躍力は生身の人間では決してあり得ない爆発的なモノ。もはや飛んでいるのと変わらないのかもしれない。
フェイトによってリニアレール上空に牽制させられたガジェットは、フェイトからルドガーへ標的を変更………機械のガジェットですらルドガーの力を危険視し始めているのは一目瞭然だった。
ガジェット特有のビームでルドガーを狙撃するがこれも全て宙を舞うように槍で捌いていく。Ⅱ型と同じ高度にたどり着くと1機のガジェットに乗り槍を突き刺し乗り捨て、同じように3機のⅡ型にも槍を刺し撃破。4機目に乗り移った際はガジェットも学習したのか、味方ごとルドガーを攻撃し爆散。だがルドガーは絶影を使い既にリニアレールの上に乗ってゼロディバイドを放って自分の居場所をガジェットにわざと教える。Ⅱ型はルドガーの策どおり彼に向け一斉に急降下し、滅茶苦茶にビームを放っくる。
ルドガーは自身の周囲を槍で円を描き、エネルギーを8つに収束させ、
ガジェットが射程内に入った瞬間
……放つ。
「ヘクセンチア!」
紫の8つの光柱がルドガーを中心に上から突っ込んでくるガジェットを襲い1機残らず串刺しにし、
全機破壊してしまう。
「「…………」」
その光景を間近で見ていたフェイトとエリオは目の前で起きていた現実が本当にあった事なのかと疑ってしまうが、渓谷に吹く冷たい風が肌に当たり、寒気を確かに感じ現実にあった事だと認識する。
エリオの下に降りキャロの無事を確かめ、フェイトは背中を向けるルドガーの下に歩く。
「……ルドガー?」
救援に戻ったスターズを乗せたヘリのモーター音が近づいてくるのを感じながら、フェイトはルドガーに話し掛ける。彼女に呼び掛けられ振り返ったルドガーを見て、フェイトは今あった戦いでその姿を確認してはいたがやはりその異様な容姿に驚きを隠せない。それによくはわからないが、動物が野生の感……本能で危険を察知しているというなら、今まさに自分が感じているモノがそうなのかもしれない。上手く表現できないが、決して人が……いや、生あるモノが触れてはならないような感覚を覚えていた。
戦いが終わったのを確かめ骸殻を解く。咄嗟に力を制限しハーフに変身したおかげか、時歪の因子化が起こらなかった事に内心安堵するが、目の前にいるフェイトと目を合わせた事で、これからさっきの戦いより遥かに面倒な事が始まる事を確信する。
「お話し……するんだったな?」
「そうだね……私は勿論だけど、隊舎にいる私の友達はもっと知りたがってると思うよ?」
「………はぁ」
骸殻を使いキャロを助けた事に悔いはない。
もしあそこで力を使う事に躊躇っていたらもっと、とてつもないほどの後悔をしていただろう。
………が、やはり今から色々話すのは面倒極まりない。
ヘリに乗っている間はどんな内容を話すか考える必要がある………
いや、考えなければならない……言い訳と出来る限りの嘘の少ない説明を……
後書き
・骸殻能力者
クルスニク一族で稀に現れる特殊能力者。大精霊クロノスが一族に与えた力(呪い)でもある。
骸殻を持つ者は分史世界への侵入、時歪の因子を破壊する事が可能。
能力使用時は特殊な鎧を纏い、身体能力を倍以上に倍加させる。
能力者は必ず時計を持って生まれ、それを使い変身する。
時計がなくては能力を使えないが、他者の時計を利用し、変身段階と能力を引き上げる事が可能。
しかし、時計一つで変身した場合と複数の時計で変身した場合、後者の方が能力的に低くなる。
更により時歪の因子化が早く進むというリスクを伴う。
骸殻には変身段階があり、クォーター、ハーフ、スリークォーター、フルの4段階があるが、
ほとんどの骸殻能力者はクォーター以下のレベルである。
また、レベルによって深度の深い分史世界には侵入ができないようだ。
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