真・恋姫†無双 白馬将軍の挑戦
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プロローグ ハムは反董卓連合に参加しないようです
前書き
ちょっと暇つぶしに書いてみた公孫賛物。オリキャラの田豫がいますが、主人公はハムな予定です。
幽州の広陽郡。州都の薊城で桃色の髪をした女性が悩んでいた。彼女の名は公孫賛。代々二千石級(太守や将軍などの高官)を輩出する名家の子として生まれたが、生母の身分が下女であったため厚遇されなかったが努力で苦難を乗り越え、本来、エリートの官吏が60になって任命される太守に20代で任じられた秀才であった。
黄巾の乱は劉備とか曹操とか孫策の陰に埋もれて空気となり、漢王朝から忘れ去られ、報酬をもらい損ねたりもしたが、政治手腕を駆使して幽州牧という地位に就いた。
黄巾の乱の後、霊帝の後継をめぐり劉弁と劉協が争い、後見である大将軍何進と西園八校尉の上軍校尉蹇碩が謀略を駆使したりなんだりしていたが、辺境の中でも特に空気な州である幽州にはあんまり関係がなかった。
そんな平和を享受している中、袁紹から『董卓が暴政しているからみんなで攻撃しようぜ!』と檄文が飛んできた。
反董卓連合である。
「田豫……この檄文をどう思う?」
公孫賛は自分の主簿の田豫に意見を聞こうとするが、田豫は公孫賛に視線を向けず、事務仕事をしながら淡々と質問に答えた。
「はぁ、どう思うといわれましてもね。漢王朝に対しての反逆のお誘いなので、多分、漢王朝の方からも反袁紹連合のお誘いもあるでしょうし。軍備を整えて待っていればよろしいのでは?来ないのであれあば忠を示すのがいいかと。」
プロローグ ハムは反董卓連合に参加しないようです
目の前の黒髪の少年田豫。私が属官に取り立てた少年は考えるまでもないとばかりに答える。あれ、そんな簡単な問題なのかこれ?しかも反袁紹連合ってなんだ?
私は、そんな事を考えてしまう。
反董卓連合を結成しようという袁紹……麗羽の構想は分かりやすい。
董卓は劉協の後見だった祖母の董太后の一族として劉協を担いだが、その基盤は弱い。董卓を殺してしまえば皇帝を傀儡にできるということだろう。劉弁を立てるという選択肢もある。
参加を表明するかしないかは大きな選択となる。下手に敵に回せば、反董卓連合後、皇帝を手に入れ、傀儡とし、彼らは参加しなかった者たちを糾弾する事になりかねない。洛陽は守勢には向かない土地だ。
董卓に勝ち目は薄い。やっぱり、ここは早期に参加を表明すべきじゃないか?
「田豫は反董卓連合に参加するのは反対か?」
「董卓が無能でなければ漢王朝に付くしかないでしょう。反董卓連合に参加し勝利し、各地が独立運動を始めれば、それと同時にこの幽州が分裂しますね。公孫賛殿が鎮圧してる間に袁紹に滅ぼされるか無力化させられます。仮に貴方が反董卓連合で活躍しようとそれは変わりません。」
なんだよ分裂って……
「分裂?悪名を轟かす董卓を討てば私が討てば名声があがるんじゃないのか?そうすれば従うやつもでてくるはず。なんで分裂することになるんだ?」
「漢王朝というより、漢王朝を牛耳っている董卓がまともな脳をしているならまず、官位を取り上げ、自分の派閥の人間を反乱軍の土地に送るか、官位の剥奪を示唆し、味方に取り込むかするでしょう。光武帝が華北で名を挙げた際、更始帝が各地の太守の人事を変えたように。貴方は幽州牧たる地位をなくして各地の太守や県令を統率することができるとお思いで?光武帝のように皇帝を名乗り、割拠できる自信があるならそれもいいでしょうが。」
それなら知っている。光武帝が皇帝になったのも、自分の派閥の解体を更始帝が始めたからだ。だから、各地の州牧や太守は、自分の身分を保障させるために皇帝になることを促した。それができたのは、光武帝にそれだけの実力があり、周りも協力し、勝てる算段があった。私はどうだ?皇帝になんて……いやいや、なら他の奴も同じだ。
「わ、わたしは別に皇帝になんてなる気ない。だが、それは、それはほかの奴らも同じじゃないのか?」
「袁紹以外はそうですね。」
えっ、なんで麗羽だけが平気で私が駄目なんだ。人口には差があるが、麗羽と私の立場は同じ州牧なはずだ。対等。いや、私の方が長く州牧やってるし、むしろ先輩なんじゃないか?
「なんで麗羽だけ大丈夫なんだ?」
「董卓の参謀は袁紹の奔走の友と呼ばれる人間です。董卓は人事はそれらによって決められた。……まあ、今は処刑されたでしょうけど。つまり、袁紹に近い者が太守として各地に散らばっている状態。かれらは漢王朝の臣下ではなく、袁紹の友なのです。袁家は四世三公の名家。その影響力は計り知れない。」
「なにやってんだ。董卓は、麗羽の友達に人事を任せるなんて……馬鹿なんじゃないか?」
「何進の参謀を吸収したつもりが袁紹の参謀を吸収していたとは思わないでしょう。董卓はそういった機微に疎いようですし。そもそも派閥なんてものは見ただけじゃわからない。そういうのは名士の集団に入り、自然と分かるものです。董卓はすべての官僚が誰に推挙されて、どのような地位についているかなど分かりようがありません。何進の変わりとしてその地位を安堵したのでしょう。」
うん……たしかに、早急に混乱を収めるために地位を安堵し、取り込むのは常道だ。計算外として、何進の部下が麗羽の友人ばっかりだったということか。私も董卓の立場だったらやってたかもしれない。
「……無力化ってたとえばどうするんだ?」
「公孫賛殿はこのたびの連合で大きな功があった。ゆえに三公の一つを与える。とかいって袁紹は幽州牧の地位を剥奪する。出世させてくるでしょう。三公になりますか?」
たしかに。この状況での三公なんて意味ないだろう。というか、売官してた時の三公の値段って太守よりも安かった。太守より価値がないって皇帝が言ってるようなものだ。そんなものもらってもしょうがない。麗羽の本拠地の北部だ。自分の部下に任せたいだろう。それに……
「……三公になったってすぐに解雇されるか。」
三公になった後は基本的に引退するのが普通だ。それ以上出世しようがないから。まあ、皇帝の教育かかりとかそういう職こそあるがそういうのは名門の家がやることだ。私には関係ない。
「ええ、三公といってもお飾りみたいなものですので。一度軍権を奪ってしまえばいい。袁紹が勝てば人事異動をさせるでしょう。自分が反袁紹連合なんて組まれても困りますから。まあ、拒否したら、各地の太守に選択を迫るでしょうね。どっちに付くかを。その時にどれだけの兵が集められるか……」
うっ、全く自信がない。
「つまり、田豫。お前が言うのは、袁紹にだけ都合のいい連合だから、参加するな。袁紹の友人以外の大守は皇帝の命令で反袁紹連合を組む事になるってことなんだな。」
なるほど、ならばこんな戦に参加すれば終わりだ。参加せずに居た方がいい。参加した諸侯に九卿や三公なんかの名誉職を与え、州牧や太守の地位を奪われる。
「いや、違いますよ。」
「えっ?だってお前は言ったじゃないか?」
「参加するでしょうね。袁紹の友達以外の諸侯も。」
「……州牧や太守も分裂するんじゃないのか?」
「例えば曹操殿なんですが。彼女は張角を手に入れているんですよ。」
「はっ?……おい、待て。張角は曹操が打ち取ったんじゃなかったのか?」
「居るようです。」
「聞いてないぞ。」
「はい。伝えてません。私もついさっき知ったので。」
「……で、なんで張角が居ると参加することになるんだ。」
「張角が率いていた黄巾がそのまま曹操軍に編入されています。まあ、数万の軍勢を養っているとか。そんな戦力をもってる奴に逆らえませんよ。一族は名将だらけ。配下は黄巾として戦なれした連中。最強じゃないですかね。太守の保有戦力なんて基本五千以下。集めるのにも時間がかかります。集めてるうちにやられるでしょうね。一族に名将が何人もいて、兵は精強な軍なんて軍にわざわざ逆らいません。むしろろ反董卓連合して漢王朝の権威を吹っ飛ばして乱世にしたいんじゃないですか?漢王朝の命令(笑)と無視して覇王できます。」
「じゃ、じゃあ、荊州の袁術はどうだ?」
「袁術は親が三公で、袁家の当主の娘でもあります。その人脈もありますし、南陽なんて袁家が代々太守やってるところ。代々の拠点です。南陽の人口なんて幽州に匹敵するので、そこだけでも袁術の兵力は公孫賛殿以上ですよ。人脈も兵力もあります。本人がアレですが、孫策とか名将いますから。まあ、河南の統一は普通に考えれば余裕ですね。普通なら。乱世にして好き勝手したいと思います。」
「桃香……桃香は?」
「あの人はよくわからないですけど。大徳とか呼ばれて、県令とか富豪が全力支援してます。青州にも色々と心酔している太守なんかもいるみたいですよ。」
ほかにもぱっとしない太守な話を聞いた。そいつらは私と同じく、漢王朝の権威ないとアレな連中だ。
「おい。田豫。なぜか私以外の有力な諸侯がみんな乱世を歓迎しているようなんだが……」
「いや、まあ。漢王朝の権威なんか頼りにしない能力が高い連中は、自分が王になって好き勝手したいですからね。いうこときかない太守とか追い出せるくらい力あります。それだけの力があるんだから期間限定の官吏より、王様したいでしょうね。」
他の勢力は大丈夫で私は駄目って……
「まあ、簡単にまとめると公孫賛殿には有力な諸侯が持つような血筋も軍事力も魅力もないので漢王朝という後ろ盾がないとどうしようもありません。というか配下の武将がほとんど一族だけなので率いる事が出来る戦線が酷いことに。具体的に言うと2か所以上の戦線を維持できないというか。」
「うわああああああああ!!!!!」
酷い!酷すぎるだろ~!
あれっ?私って有力な諸侯に入ってなかったけ?入ってたはずだ。いや、20代で太守なんてろくに居ない。もう十年に一人の……あっ、曹操や麗羽、袁術に桃香もそうだった。
ああ、私は有力諸侯(笑)だったのか。ほとんど名前もでてこない諸侯と一緒の部類だったのか。ははは……泣きそうだ。曹操はともかく桃香までも私の上に行っているなんて。あれっ?じゃあ、反袁紹連合ってなんだ。
「なあ、田豫。」
「なんですか?公孫賛殿」
「反袁紹連合って結局どうなるんだ。曹操達は麗羽に協力するんだろ。」
「まあ、董卓と我らでやるしかないでは。」
「それって連合なのか?」
「連合って定義は2つ以上の組織が協力することなので大丈夫です。」
別にそんな意味で聞いたんじゃない!
「いや、それじゃ勝てないだろ。」
「もちろん。董卓軍なんて当てにしてませんし、まともに戦って勝てません。なので董卓が新しく任命した太守に力借りて真下の袁紹の領地を奪うんですよ。」
「奪うって……反董卓連合の時にか?」
「はい。反董卓連合で兵を連れていくでしょう。その時、兵力が少ない都市を奪って補給を断つ。そして弱った袁紹軍を討ち、吸収。私兵化して彼女たちと同じく、各地の太守達を黙らせるだけの兵力を手に入れる。そして漢王朝からの正式な官位を貰い、正当に治めましょう。現在、血統も軍事力も魅力もない公孫賛殿が君主として唯一生き残る術はこれだけです。あと降伏してお情けもらったり、配下に名乗りでる選択肢もあります。うちは今の漢王朝のしょぱい権威で揺らぐくらい権力基盤があれな諸侯なので。」
ああ、董卓にとっては敵の背後を突く味方になるわけだし、官位を配ることが有効なら漢王朝の価値がそれだけで上がる。代表の袁紹の力が弱る。とりあえず利用してやろうという気持ちにもなるか。
それにここまで来て、自分がやってきたすべてを捨てる気はない。もう、やれるだけやってやる!駄目でもともとだ!
「よしっ!田豫!董卓に打診だ!精強な幽州騎兵が反董卓連合を脅かすのに幾らの値を付けるかを聞いてこい!」
「はっ!了解しました。」
こうして公孫賛はどの外史とも違う道を選ぶ。それはとても情けない理由で、覚悟も駄目で元々というものだったが、これが大陸の命運を分ける決断となる。
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