鬼の笑み
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第二章
「それで僕をヤクルトとのオープン戦でマウンドに出したんですよ」
「ピッチャーですか」
「はい、話題提供の意味で」
オープン戦だからいいだろうということでだというのだ。
「それで投げたんですけれどね」
「ああ、この映像か」
「これか」
ファン達もここでテレビに映った映像を観た、そこには確かに現役時代の金村がマウンドにいて投げていた、そして。
ベンチにいる関根が苦笑いを浮かべていた。その映像も映っていた。
「関根さん苦笑いだな」
「まあ余興だしな」
「仰木さんらしい話題作りだな」
「この人こういうのも上手だったからな」
「いい人だったな」
「そうだよな」
彼等は今は亡き仰木も偲ぶ、かけがえのない野球人を。
金村はその彼等の前でさらに語るのだった。
「で、投げた後ですけれど」
「何かあったんですか?」
「関根さんが来られたんですよ、僕のところに」
その試合の後でだというのだ。
「それでこう言って来られたんですよ」
「んっ、何て言ってきたんだ?」
「関根さんがそえで」
「野球舐めてるのかって」
こう言って来たというのだ。
「そう言って来られたんですよね」
「あの関根さんがかよ」
「そんなこと言って来たのか」
これは聞いていたファン達もびっくりした、普段の関根のイメージとは全く違った話だからだ。
「意外だな」
「ああ、信じられないな」
彼等も驚いている、金村はその間もテレビで話す。
「僕サードでしたから、甲子園の優勝投手でしたけれどね」
「野球については締めてるんだな」
「肝心なところは」
ファン達は関根のそうしたところを知った、そして。
関根についてさらに興味を持ち調べてみた、するとだった。
「意外と怖い人みたいだな」
「ああ、そうだな」
「笑顔で怒るのか」
「それもヤクザ屋さんみたいに怖いみたいだな」
その外見からは全く想像出来ないことだった。
「試合で負けても怒らないけれどな」
「ああ、それはないな」
このことはそのままだった。
「負けても怒らないのは事実だな」
「勝敗はそんなに気にしないんだな」
「けれどな」
だがそれでもだった。
「この人怖いぞ」
「ああ、怒らせたら怖かったんだな」
「結構選手怒ってるな」
「それも笑顔でな」
その怒り方はというと。
「笑顔でマウンドに来てピッチャーの足踏んでか」
「ここで打たれたら怒るって警告してか」
「一生懸命プレイしないと怒ったんだな」
「負けても肝心なところで締めないとか」
そうしなければだったのだ。
「怒ったんだな」
「大洋の時はミーティングで遅刻した選手を怒鳴ったりもしたんだな」
「広島のコーチ時代門限破った衣笠さんに朝まで素振りさせたりか」
「そういうこともしてたんだな」
「というか先に手が出る人だったって」
実際にこういう人物だったというのだ。
「いや、意外過ぎるな」
「そういう人だったのか」
「イメージと全然違うな」
「みたいだな」
そしてある映像も観た、そこでは。
軽率な発言をしたある元野球選手に対してこめかみを震せんばかりにして叫んでいた。
「ふざけるんじゃないよ!」
こう叫んでいたのだ、その姿は彼等若い野球ファンにしても驚くべきものだった。
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