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DQ1長編小説―ハルカ・クロニクル

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Chapter-4 第13話

Dragon Quest 1 ハルカ・クロニクル

Chapter-4
太陽と雨
第13話

アレフガルド王国に嵐が来た。
おかげでハルカは数日間外に出られなかった。
ラダトーム城で戦士団の仲間と共に体を鍛えたり、ローラ姫と会って話したりしていた。
「……一気に涼しくなりましたよね」
ハルカはアンダーシャツを半袖から長袖に着替えていた。
「ええ。ようやく秋らしい気候になるのですね」
ローラ姫も秋物のドレスに衣替えを行っていた。秋物のドレスは、いつものドレスより少しオレンジが入った黄色のドレスで、長袖になっていた。
秋の訪れを知らせる嵐、とここでは伝えられている。いつもならサファイアの月の半ばに来るはずだったが、遅れてサファイアの月の最後の日にようやく来たのである。
「今年もおかしな気候でした」
「ええ。昨年は春が来るのが遅れたんでしたっけ」
「そうですわ。……ハルカ様、嵐が過ぎたら、また旅に出るのですね寂しいです」
「その時は、“王女の愛”があるでしょう?それでいつでも僕達は会話できます」
“RAIL”と彫られたハルカの“王女の愛”と、“PLATINUM”と彫られたローラ姫の“王女の愛”はお互い離れていても、どこでも会話ができるという、魔法の道具で、ローラ姫曰く、母親が「先祖代々受け継いできた大切なペンダント」と言っていたとの事である。
そのペンダントの能力が解ったのは、箱の底に隠されていた紙切れに書いてあったのだ。ローラ姫はあまり箱を触っていなかったので気がつかなかった。
「そうですわね。ハルカ様の声は聞けますものね」
ローラ姫は可愛らしい笑みを浮かべる。
「ええ。僕も貴女を呼びかけますから」
「私もですわ」
ハルカも優しい笑みをローラ姫に向ける。
そして誰も見ていないところを確認してから、そっと口付けを交わした。

翌日、嵐はすっかり去った。
ハルカはラルス王に呼び出されていた。
「勇者ハルカよ、再び出発するんだな?」
「ええ。まだやるべきことはたくさんあります。私が聞いた話だと、勇者ロトの使用していた武具が何処かで眠っていると聞きますし、“証”も見つけなければなりませんから」
「おお、そうか。その事なんだが、わしはそなたに贈り物をしたいと思うのだ」
「……何を、ですか?」
「この城の隠し部屋の場所を教える。そこへ行き、太陽の石を受け取ってくるが良い」
「……太陽の石!」
ハルカも養母の遺した書物の中に載っていたことで、太陽の石の存在を知った。太陽のように赤く燃えるような美しい石だと聞く。詳しいことはよく解らないが、とても貴重な石であることは確かだった。
「そうだ。勇者ハルカ、そなたならこの石が役に立つ時が来るだろうからな……これは行き方が書かれた紙だ。誰にも見せるのではないぞ。行き着いたら、何処かで処分しておくのだ」
王はハルカに何回も畳んだ紙を渡した。
ハルカは静かに頷きながら受け取った。

そして書かれた通り通りに進むと、外に出た。そして、秘密の入り口を発見したのだ!
ハルカは慎重に扉を開け、ゆっくりと階段を下りていった。
着いた場所は少し薄暗い部屋。一人の老人が立っていた。部屋は置くに長く続いていた。薄汚れた老人には似合わない、石造りと青い宝石で飾られた部屋だった。奥には台座があり、そこには豪華な装飾のついた箱があった。
「よく来た。勇者ハルカよ」
老人はゆっくりした口調で話す。
「……何故僕の名を」
「そなたが来るのを待っていたのじゃ。さあ、奥にある箱を開けて、太陽の石を受け取るがよい」
老人はハルカの話を聞いていない。耳が遠いのか?と思っていたが……。
ハルカは戸惑いながら奥の箱を開けた。中には美しい太陽の石があった。手に取るとほんのりと温かい。ハルカは思わず、「温かいですね」と呟いてしまった。
「おお、そう感じるか。それはロト一族に関係の無いものにとってはとても熱くて触れないものなのだ。やはり勇者ハルカ、そなたはロトの子孫なのだな」
その老人はすぐにハルカをロトの子孫を見抜いた。老人曰く、顔を見ただけで解った、とのことだ。
「……そういわれていますが」
ハルカはそんな老人に違和感を感じていた。何というか、彼は……人なのだろうか?と思うような雰囲気。しかし、老人に訊くわけにもいかず、黙っていた。
「そうか。よし、わしの役目も終わった。また、眠りにつくとしようか」
「……え?」
老人はゆっくりと飾られた部屋に併設された小さな扉の方へ歩いていき、ドアを開けて入ってまた閉めた。
「……」
本当はいけないのだろうが、ハルカは老人のことが気になって仕方が無かった。しばらくしてから老人の入った小さな部屋に入った。
「あの、すいません」
「勇者ハルカか……そなたは昔わしに太陽の石を預けて来た勇者ロトの面影がある。彼も、そなたも、穏やかで、強い男だった……」
ハルカは耳を疑った。この老人は勇者ロトの顔を見たというのだろうか?
勇者ロトの時代はハルカの時代から約400年も前の話である。
(このじいさん、何者なんだ?まさか本当に)
話しかけようとしたとたん、老人はいつの間にか眠ってしまった。
(……知らない方がいいのかもしれないな。さて、僕はもうここに用は無い。出かけなければ。そう、これはロト様が言っていた3つの神器の一つ……)
ハルカは老人に小声でお礼を言うと、静かにその場を後にした。
受け取った秘密の場所の紙はこっそりとギラで処分しておいた。

――ハルカ、太陽の石を手に入れたんだね。次は、雨雲の杖だよ――
久しぶりに、謎の男の声を聞いた。ロトの石版を読んだあの時と同じ声。
(……ロト様?)
今度はそう思うようになった。しかし、勇者ロトは過去の人。本当はどんな姿でどんな声かは誰にも分からない。
けれど、ハルカの敵ではない、味方だということだけは分かる。
いつか、本当のことが分かるかもしれない。そう、ハルカは思った。

ラダトーム城下町で再び、食糧等を買いに行く。
そして、イアンの元を訪れる。
旅立ち前の挨拶なので、玄関での会話である。
「ハルカ、以前より逞しくなったな。旅立ったあのときよりも筋肉もついたし、がっしりしてきた気がする」
「そうですか?」
「ああ。たった一人で戦い抜いた勇敢な戦士だ。そして、ローラ姫を救出したと言う名誉もついた。お前は、もう、若いときの俺を超えた」
イアンは少し寂しそうな顔をした。いつかハルカがアレフガルドを離れるだろうと言う予測を立てているのであろう。
「そんな、僕はまだまだです。竜王を倒さなければならないのですから」
「ああ。お前なら出来る。勇者ハルカ、頑張れよ」
「……はい!」
サユリが笑顔で保存食を持ってきた。
「また、ここへいらっしゃいね。いつでも待ってますから」
「ハルカさん、皆のためにも、ローラ姫のためにも、竜王を倒してね!」
「サユリさん、エリカちゃん、ありがとう。僕はこれで、また来ますから!」
「おう!ハルカ!行って来いよ!」
「はい!行ってきます!」
ハルカは赤い(裏地は白の)マントを翻し、イアンたちに手を振りながら走っていった。

行き先は決まっていた。最初にマイラに行く途中で、謎の偽世界樹の葉売りの怪しい男の所である。今なら、通れるかもしれないと判断したのである。
歩いている途中、魔物は以前よりハルカに寄り付かなくなった。怖気づいて逃げていく者もいた。ハルカが強くなった証拠である。
おかげで、以前は数日かかっていたところを、2日で例の場所にたどり着いたのであった。
あの男はまだいた。
姿も全く変わっていない。
「おお、お前か」
男は胡散臭い笑顔で出迎えた。
「あの、そこを通してもらえませんか?今の僕なら、通ってもよろしいのでしょう?」
「う~ん、そうだ、あれは持っているか?」
「あれ?」
「太陽のような輝く石。特別な者しか持つことは不可能な石だ」
「太陽の石ですか?」
ハルカは少し警戒しながら男に太陽の石を見せる。男は肯いた。
「通ってよい」
「ちょっと待ってくださいよ。貴方何者ですか?何故僕を試すのですか?何故太陽の石のことをご存知で?」
警戒心は解かれていない。男が何者か、解っていないのだ。
「……知りたいか?」
「当たり前でしょう」
「そうか。俺はもう死んでるんだ」
「……はあ!?」
訳の分からないことをいう男である。ハルカは怪訝な顔で男を見る。
「俺はアリアハンから来た元商人だ。一時だけ、勇者ロトの旅に付き合ったこともあるんだぜ。アリアハンってのは異世界にある王国でな、とてもいい場所さ。ただ、勇者ロト一行の後をこっそりつけて、ここにきたってワケさ。勇者ロトが大魔王ゾーマを倒して、アリアハンへ帰れる穴が閉じてしまって、俺は一生ここで過ごすことになった。勇者ロトと仲間たちは、精霊ルビスのご加護で、アリアハンへ帰れたのだがね。俺はお呼ばれ出なかったからな」
「アリアハン……そこが勇者ロトの故郷と言うわけですね」
ハルカは異世界の存在を知っていたので、聞き慣れない地名でも驚かなかった。男の正体には少し驚いたが、勇者ロトの、秘密の情報が知れたので、少し嬉しかった。
「でも、貴方は勇者ロトの知り合いでも、仲間ではなかったのでしょう?どのようにして、“太陽の石”の存在を知ったのですか?」
「ああ、勇者ロトが上の世界に戻った後、城のものに聞いたんだ。変わった男が太陽の石を待っているから、勇者ロト様がその男に太陽の石を渡したとな」
太陽の石を待っている変わった男、それがハルカを待っていた老人と同一人物なのだろうか?本当に変わった人だ、とハルカは思う。
と、男は苦笑いをしながらこういった。
「おっと、大分口を滑らせたね。このことは誰にも言うなよ。まあ、いずれ、別の誰かがお前に話してくれるさ。精霊ルビス様もお前に会いたがっているだろうし」
「何故そんなことが分かるのです?」
「精霊ルビス様が俺に試練を与えてくださったんだ。そのときにルビス様はそう言っていたんだ」
「そうですか。……では僕は失礼します」
「ああ。気をつけてな」
ハルカは雨の祠の方向へ歩き出した。
(まだ、僕にはやる事はたくさんある。それが終わるまでは、ここ、アレフガルドを離れるわけにはいかないんだな)

そして雨の祠にたどり着く。入り口には雨(というより水滴)を模った紋章があった。
中には一人の老人――賢者が立っていた。奥には見慣れない、緑色の渦巻く空間が広がっていた。
「おお、お前は勇者ロトの子孫か」
「はい、ハルカと申します」
「ハルカか。さて、太陽の意思を持っているようだな。第一段階はクリアしたというわけか。次はわしからだ。ガライの町は知ってるね?そこにはガライの墓というダンジョンがある。そこにはガライの遺体と共に銀の竪琴が置かれているという。それを持ってきてもらいたい。その試練をクリアすれば、雨雲の杖を授けよう」
ガライの墓。ハルカは旅立って間もない時に訪れた際、その話を聞いた。そこは本当にダンジョンで強い魔物がうようよいる。犠牲者も出たくらい危険な場所で、結界が張ってあるという場所だ。
賢者の話からして、もうハルカは結界を破れるレベルであると判断したのかもしれない。
当然、ハルカはその話を引き受けた。
「分かりました。必ず、銀の竪琴をこちらに持ってきて差し上げます」
ハルカは立膝で、賢者に一礼をした。
「頼んだぞ」
「はい。……ところで、後ろの緑の渦の空間は一体なんでしょう?今の僕には関係ないかもしれませんが」
「今はな。後でお前にも関係するだろう。それは、今はいえないことじゃ。すまない。“証”を手に入れれば、教えてやろう」
「……解りました。行って来ます」
賢者の言うことが、ハルカにはなんとなく解った。
“証”それこそ3つの神器の最後の一つ。勇者ロトがお守りとして使っていたものといわれているアイテム。何処にあるかは分からないが。
(恐らく、メルキド方面だな。後で行く、問題ない)

雨の祠を後にしたハルカは、何気なく叫んだ。
「ルーラ!!」
すると、今までになかった感触がハルカの体を駆け巡る。そして空を飛び、あっという間にガライの街の近くに到着した。
(ルーラの完成だ!)
ハルカは小さく拳を握り締めた。喜びの表現である。
すると、ピピピと小鳥が鳴くような音がした。“王女の愛”だ。
「……ローラ姫様?僕は元気にやってますよ」
「ああ、それならよかったですわ。しばらく連絡が来ないものですから。あ、私、しつこいですか?」
ローラ姫の最後の言葉は少し声が小さかった。
「いえ。寂しかったのですね?そんなことはありません。ただ、戦いに集中したり、お取り込み中だったりすることもありますから、気をつけてくださいね」
「はい。気をつけますわ。あ、そういえばペンダントの宝石が赤く光ったり青く光ったりするのは目安になるのでしょうね?」
「そうでしょう。青がOKのサインで、赤は話しかけてはいけない、のサインかもしれません。僕も気をつけてみますね」
「私もですわ。ハルカ様、お慕いしております」
「僕も、貴女を思っております」
ハルカとローラ姫はほぼ同時に“王女の愛”に口付けをした。
会話を終えると、確かに宝石の色が赤く光っていた。しばらくすると青く光る。
「さて、ガライの街に入りますか」
王女の愛を大事に魔法の道具袋にしまうと、ガライの街の明かりの中へ入っていった。 
 

 
後書き
私はDQ1小説を書くときは、ルーラの仕様をDQ3以降のものに変えます。
勇者×ローラ姫は相変わらず書いてます。 
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