なのは一途のはずがどうしてこうなった?
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外伝エピソード04
●
戦って分かり合う。
きっちりと高町なのはの血を受け継いでいると思う。
いや、俺となのはもそう言えば、出会った当時は戦い分かり合ったような。
……本当の娘ではないが、受け継がれるモノはちゃんと受け継いでる。
闘争の血だろうか……。
ヴィヴィオとアインハルトは戦う。
互いに分かり合うために。
廃棄倉庫区画。
救助隊の訓練でも使っている場所で、使用許可は取ってある。
周りに迷惑をかけないと同時に、互いに全力全開で戦える。
「アインハルト・ストラトス参りました……」
アインハルトと視線が合う。
「やあ。元気か?」
「はい。二度目ですね……」
俺への挨拶はそこそこにして、アインハルトはヴィヴィオの方に向かっていった。
言葉数は少ない。
彼女たちは、これから全力全開で戦う。
交わす言葉は、拳で。
「――それじゃあ試合開始!」
魔法なし。格闘のみの5分間1本勝負。
両名大人モード。
初めから全力全開の拳がぶつかり合う。
「この勝負どう思う?」
ヴィヴィオの師匠であり、格闘技を教えているノーヴェが聞いてきた。
ここ最近のナンバーズ達は主に俺の娘や息子の面倒を見ながら管理局で働いている。
過去の敵が今では家族ぐるみの付き合いとなっている。
「それは、鍛えているノーヴェが一番わかってるだろ」
「まあ、今のヴィヴィオでは勝てないわなぁ」
なかなか、厳しい意見だが同意だ。
結構良い感じで攻めているが、決定打にはなっていない。
アインハルトはカウンターを狙っている。
「次くらいにカウンターかな……」
「ああ、だがヴィヴィオも良い感じだろ? だからさ――」
――今度、夜の相手よろしく。
――はいはい。
浮気ではない。
なのは達も承知の関係だ。
紆余曲折あったが、ナンバーズ数名とは肉体関係がある。
罠にはめられて、はめてしまったという感じだ。
その時のいざこざは今では良い思い出である。
「――覇王、断空拳!!」
……これは決まりだな。
アインハルトの断空拳が、ヴィヴィオの腹部に直撃した。
だが、ヴィヴィオも負けていない。
当たった瞬間に、アインハルトの顎先端部分にカウンターがかすっていた。
アインハルトは今は自覚症状がないみたいだが、確実に脳が揺れている。
おそらく、戦闘後に倒れるだろう。
ヴィヴィオの方は、ノーヴェ達が診ているから、俺はアインハルトを支えるか。
「おっと。大丈夫か?」
「あ、あれ?! すみません……」
「気にするな。最後、ヴィヴィオのカウンターが顎にかすっていたからな。戦闘終了で気が抜けて一気に効いてきたんだよ」
「だ、大丈夫です!」
アインハルトはそういって離れようとしたが、足元が安定せず、再び俺に体重を預ける形になった。
「いいから、じっとしてな。しばらくしたら治るから」
「……はい」
アインハルトは、顔を朱に染めて大人しくなった。
多感な時期に異性である俺に抱きつく形というのが恥ずかしいのだろう。
格闘の後の検討だ。
アインハルトは相変わらず俺に肩を寄せているが。
「――断空拳。足先から練り上げた力を拳足から打ち出す技法そのものが、断空です。――私はまだ拳での直打と打ち下ろしでしか撃てませんが」
アインハルトは気絶しているヴィヴィオをジッと見ている。
何か、思う所があるのだろう。
徐々に、俺からアインハルトの体重が離れていく。
「で、ヴィヴィオはどうだった?」
しっかりと、アインハルトは自分の足で地に立つ。
「彼女には、謝らないといけません。先週は、失礼なことを言ってしまいました。――それを訂正します、と。そして私は、この子とまた戦えたら、と思っています……」
「起きたら言ってあげな。ヴィヴィオ喜ぶよ?」
「……恥ずかしいので、嫌です……」
アインハルトは顔を赤く染めて、ソッポを向いた。
●
ヴィヴィオさんの父親であるミウラ・ケイタさんにみっともない所を見せてしまった。
ヴィヴィオさんは覇王《わたし》が会いたかった聖王《かのじょ》ではなかった。
しかし、私は、彼女《ヴィヴィオ》とまた戦えたらと思っている。
私《アインハルト》と、彼女《ヴィヴィオ》はまだまだ未熟だ。
「――と、こんな感じでアインハルトとヴィヴィオのさっきの動きをスローでやるとわかりやすいだろ?」
ノーヴェさんと、ケイタさんが、先程の私とヴィヴィオさんの動きをスローモーションで再現していた。
ノーヴェさんが、私役で、ケイタさんが娘であるヴィヴィオ役で。
そして、一息。
「で、アインハルトの断空拳を再現するとこうだ」
私は、驚愕した。
「――!?」
「俺流断空拳?」
疑問形の口調だったが、ケイタさんが放った拳は断空拳に近いモノだった。
「な、なんで?」
「魔力を練りあげて拳に収束。んでもって、殴ると断空拳に近い感じじゃない?」
「ケイタ。感じじゃない? じゃなくて、もっと詳細に話せよ」
ノーヴェさんの言葉に全員が頷いた。
「うーむ。重心移動プラス魔力移動なんだよね。これ。足、腰、腕から拳へ。この重心移動に魔力を乗せて拳を、打つ! と、こんな感じで断空拳の偽物が出来上がる」
ケイタさんが自ら私の、真正古流ベルカの格闘武術覇王流を似せてみせた。
確かに、偽物だ。
どうしよもなく、偽物だ。
しかし、どうしよもなく私の拳と似ている。
「まあ、形を真似ただけで本物とは違う偽物だよ」
「それでも、凄いと思います……」
私の拳よりも、ケイタさんの拳の形のほうが、練度が高く見えた。
だからこそ、お願いをする。
「……私に、ケイタさんの戦い方を教えて下さい」
●
拳での話し合い。
それは親から継がれていく血統
配点:(高町なのはの血族)
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