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ヘタリア大帝国

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TURN77 虚脱状態その六

「原語でな」
「そうなのですか」
「もう頭の中に入っている」
 レーティアは哲学の面でも天才である、多くの優れた論文も発表している。
「だからいい」
「では小説は」
 エルミーはさらに言う、今度はこれだった。
「若草物語ですが」
「ウォルコットだな」
「ガメリカの小説ですが」
「映画も観た」
 それもだというのだ。
「もう既にな」
「ではこれもですか」
「気持ちだけ受け取っていく」
 ここでも虚ろな目で返すレーティアだった。
「有り難う」
「勿体ないお言葉、ですが」
「本もいい」 
 それはだというのだ。
「今はな」
「そうですか」
 こうした感じだった。とにかく誰の誘いにも応じず無反応であった、レーティアは虚脱した人形になっていた。
 ロンメルもその有様を見てグレシアにこう漏らした。
「宣伝相もお疲れ様です」
「言われるだけのことはしてないけれど」
「いえ、しています」
 まずはこう言ったのだった。
「あの娘の為に。デーニッツ提督も」
「それはロンメル元帥もよね」
 グレシアはロンメルもそうだと返した。
「この前のワーグナーの舞台のチケットだけれど」
「あれですか」
「ロンメル元帥が手配したものよね」
 レーティアは無類のワーグナー好きだ、時間があれば聴いている位である。それでロンメルも舞台のチケットを差し入れたのだ。
「有り難う、そこまでしてくれて」
「大したことではありませんよ」
 ロンメルは微笑んでそのことはいいとした。
「あれ位は」
「そう言ってくれるのね」
「ええ、それであの方は」
「ワーグナーもね」
 それもどうかというのだ。
「チケットは受け取ったけれど」
「それでもですか」
「行こうとしないわ」
 ワーグナーに対しても無反応だというのだ。
「全くね」
「ワーグナーならと思ったのですが」
「今は本当に無反応よ」
「まずいですね、それは」
「ええ、どうにかなって欲しいけれど」
「きっかけがあればと思います」
 ロンメルはこれで終わりとは見ていなかった、それでこうも言ったのだった。
「あの娘は復活します」
「そうね。強い娘よ」
 グレシアはレーティアのことを誰よりも知っていた、だからこう言えた、
「今はああなっているけれどね」
「必ず立ち上がってくれます、再び」
「あのドクツを立ち直らせたのよ」
 絶望の中に沈んでいたドクツをだというのだ。
「それでどうして立ち直れないのよ」
「そういうことですね」
「ええ、レーティア=アドルフはまた羽ばたくわ」
 グレシアはレーティアの背に翼を見ていた。
「必ずね」
「俺もそう思っていますよ。それじゃあこれからも」
「お願いするわね、元帥も」
「俺はドクツ人です」
 だからだと返すロンメルだった。
「当然のことです」
「そう言ってくれることが有り難いわ」
「そうですか。ところでデーニッツ提督は」
「あの娘こそまさに良臣ね」
 グレシアは彼女に対してはこの最大の賛辞を贈った。 
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