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ヘタリア大帝国

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TURN77 虚脱状態その三

「立ち直るきっかけがなあ」
「ちょっと俺が行こうかな」
 イタリアはふとこう思いついた。
「デートしてね。あの人奇麗だし」
「それは構わないがな」
 ドイツはデート自体は許した、レーティアのイタリン趣味と彼がおかしなことをする国ではないことを知っているからだ。
「だが。今のあの方は御前のパスタを食べてもだ」
「駄目かなあ」
「おそらくな。届くことはない」
「ううん、難しいんだ」
「ですがそれでもです」
 日本は切実な顔で一同に言った。
「あの方の復活は必要です」
「その通りです。このことについてもお話したいと思っていました」
 このことも念頭に置いていた宇垣だった。
「皆さんはどうお考えでしょうか」
「最初の議題よりずっと難しいことね」
 ハンナもかなり厳しい顔になっている。
「今のあの娘を立ち直らせるのは」
「ハンナも思い浮かばないのかい?」
「ええ、悪いけれどね」
 ハンナは己の祖国にもその顔を見せて言う。
「これといって」
「そうなのか」
「リンファはどうあるか?」
「すいません」
 リンファは曇った顔で自分の祖国に返した。
「これといっては」
「そうあるか」
「舞台や公園を見て頂いても」
 シャルロットも難しい顔だ。
「それでもですね」
「それな、エルミーちゃん達がやってるんだけれどな」
 フランスもこのことはぼやくばかりだ。
「それでもな」
「効果がありませんか」
「歩いていると運動になるから極端な欝状態になってはいないさ」
「ですがそれでもですか」
「ああ、そうなんだよ」
 フランスはシャルロットに述べる。
「それ以上はな」
「晴れておられませんか」
「曇りのままだな」
 雨ではない、だがよくはないというのだ。
「そんな状況だよ」
「歩いてもよくないとなると」
「観劇でも効果はないでしょうか」
 日本はこれを提案した。
「歌舞伎や狂言は」
「普段ならばいいと思うが」
 ドイツは日本のその提案に普段なら、と述べた。
「しかしだ」
「今のあの方には」
「勧められない、下手に暗い舞台ならな」
「危険ですね」
「虚脱状態からさらに悪化すれば」
 ドイツが最も恐れているのはこのことだった。
「取り返しのつかないことになる」
「それは幾ら何でも・・・・・・いや違うね」
 イタリアですら今のレーティアには楽観が出来なかった。
「本当にまずいね」
「だからだ。中々難しい」
「俺以上に底抜けに根明っていうか振り返らない人が声をかけてぐいぐい陰のない場所に引っ張ってくれたらどうかな」
 イタリアがこう言うとフランスは眉を顰めさせて彼に言った。
「御前より明るい奴か?」
「うん、それで向こう見ずな人」
 そういう人物だというのだ。
「いるかな、誰か」
「いねえだろ、そんな奴」
 フランスもそうした人間は考えつかなかった。 
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