駄目親父としっかり娘の珍道中
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第11話 家庭のゴミってどんな分別にすべきだろうか。燃えるゴミ?それとも燃えないゴミ?
突如現れた謎の美少女(?)こと、フェイト・テスタロッサの奇襲を受けてしまった坂田銀時率いる(?)万事屋ご一行+α。
全く謎の異世界に跳ばされた影響の為か銀時、神楽は著しく力が使えなくなってしまい、簡単に言うと弱体化してしまい戦いにならず。弱体化してない新八は新八で結局戦力にならず、一時は主人公が倒されて終幕になってしまうかと思われた正にその刹那、神楽のペットである定春の気紛れのお陰でどうにかこうにかそのフェイトを退けるに至ったのである。
が、これは大問題であった。まさか弱体化の影響が此処まで出ていたとは。そして、魔導師の存在があそこまで強大だったと言う事に銀時達の驚きは未だ冷めやらぬ状況であると言う事は容易に想像出来たりした。
***
「すんまっせぇぇん! ご飯おかわりぃぃ!」
「あぁ、こっちもいちご牛乳のおかわり頼んますわぁ」
と、言うのはまっかな嘘であり、実際には銀時も神楽も全く気にしてなかったりであった。あれから無事に帰宅し、その後呑気に夕食にしゃれ込んでいる状況であったのだ。
「ってか、あんたら良くそんな堂々とおかわり出来ますね。一応僕達居候の身なんですから少しは遠慮して下さいよ」
「んだゴラァ! こちとら丸井デパートの自動ドアに挟まれて重症負っちまったんだよぉ。少しでも糖分を補給してエネルギーを蓄えないと銀さん死んじまうんだよぉ。ヒットポイント回復させろやボケェ!」
「そうアル。ホ○ミも使えない駄目僧侶は大人しく馬車の中で体育座りしてろやボケェ」
相変わらず毒舌な二人であった。そんな二人の毒舌ミサイルを受けた新八に黙ってると言う選択肢は皆無なのであった。
「おいぃぃぃ! 人の事を駄目僧侶扱いかぁ? そっちだって魔法の類とは全く無縁の格闘家と戦士の分際で何言ってるんだ! 僧侶の存在がどれだけ有り難いか分かってねぇのかてめぇらはぁ! そんな事言ってるからお前等はいつもダンジョン行く前に薬草とかを大量に購入する羽目になるんだよ。お前等の袋は全部薬草まみれなんだよ! クスリ臭いんだよボケがぁ!」
「んだゴラァ! 薬草舐めんじゃねぇぞ! Ⅷじゃ錬金術使って上やくそうとか特やくそうとか作れんだぞゴラァ! それを更に組合せりゃ最終的にはヒットポイント全回復する万能ぐすりとか超万能ぐすりとか作れんだからなぁ! 薬草100個あったって足りねぇんだよ昨今のドラクエはよぉ!」
最早御馴染みの光景であった。万事屋三人は毎回顔を揃えると大音量での口喧嘩を勃発させるのだ。しかもその理由が毎回下らない事だったりする。
最初は喧しいと思っていた高町家の人達も今では毎度の事と思ってるらしく気にしなくなっていた。
「大丈夫よ新八君。別に気にしなくて良いから。貴方達が来てくれたお陰で人手不足も解消されて家としては大助かりなんだから」
神楽のお椀を取りながら高町家の母にあたる桃子は優しくフォローしてくれた。そう言って貰えると新八自身とても気が楽になる。
「でも、半分邪魔してるってのもあるけどね」
「違いないな。人手不足はどうにかなったが、時々大赤字になる日がある。その辺はどうにかして欲しいものだ」
が、全員が賛成ではない。その証拠にこの二人、高町家長男と長女の恭也と美由紀は少しご機嫌斜めだったりする。
「まぁ、良いじゃないか二人共。食卓は賑やかな方が良いし、職場は楽しい方が良い。多少の赤字は皆でカバーし合えば済む話なんだし」
そんな二人をおおらかに包み込むこの男こそ此処高町家父であり大黒柱でもある士郎である。以上の四人がこの家の家族であり、銀時達はその家に住み込みで働かせて貰ってる。と言った図式なのである。
「ま、そんな訳だからしてぇ、俺達は冒険のメインパーティーだから必然的にヒットポイントを回復せにゃいかんのよ僧侶新八君」
「何時までそのネタ引っ張るつもりだぁ!」
銀時と神楽のボケ、新八のツッコミ。この三重奏こそが万事屋の御馴染みな風景だったりする。そして、そんな風景を楽しそうに眺める高町夫妻と呆れながら眺める高町兄妹が居たりしたのであった。
***
食事を終えた銀時達は居間に集合していた。高町家の一同は後片付けを終え各々の部屋へと退散してしまい、今此処に居るのは銀時、新八、神楽、定春、そしてユーノの三人と二匹(?)だけになっていた。
「あ~、食った食ったぁ……後は温かい布団に入って寝るだけだ。そうすりゃヒットポイントも全快になるって訳だぜぇ」
「本当アル。そうなればあんな金髪変態女なんか目じゃないネ! 次にあったらあべこべにギタギタにしてやるヨォ!」
どうやら二人の間ではフェイトはすっかり変態の仲間入りを果たしてしまった様だ。そんな発言をして果たして大丈夫なのだろうかと新八は気が気でなかったりした。
「でも、相手は凄腕の魔導師です。残念ながら、今の僕達じゃ彼女に対抗するのは難しいと思われます」
「舐めんなよユーノ。相手が魔法使うだろうが変な術使うだろうが変態だろうが二度も負ける訳にゃいかねぇんだよ。それになぁ、あいつがなのはを匿ってるって事が露見したんだ。次は首根っこ引っ掴んででもなのはの居る場所に案内して貰おうじゃねぇか!」
「おうよ! 首に縄括りつけて逃げられないようにしてやるネ! ドM忍者みたいにしてやるヨォ!」
二人共前回の負けを相当根に持ってるらしく、闘う気満々であった。気のせいか二人の背後にはメラメラと怒りと闘志のオーラが滲み出ているのが分かる。
そんな二人を見て新八とユーノは揃って溜息を漏らす次第なのであった。
「大変ですね新八さんも、銀さん達の相手をするのって結構骨が折れるでしょう?」
「もう慣れたよ。ユーノ君の方こそ慣れないからしんどいんじゃない?」
「はい、僕の場合肉体的にも辛いです。毎回銀さんに踏み潰されるし子猫の生贄とかにされるし……こんな事なら別の動物になれば良かった、と真剣に考えたりしちゃいますよ……」
話の途中でユーノの肩が下がった。相当気落ちしてしまったようだ。しかし、そんな事など今に始まった事じゃない。なので、別に気にする必要がなかったりする。
「ふぅ、流石にそろそろ眠くなっちまったぜ。さっさと寝ちまおうぜ」
「そうですね。明日は休みですし、ユーノ君のジュエルシード探しやなのはちゃんの捜索もしなきゃいけませんしね」
「ったく、折角の休みだってのに面倒な事をする羽目になっちまうなんてよぉ……ん?」
ふと、銀時は戸棚に置かれている写真立てを見た。其処には家族仲良く映っている写真が備わっていた。高町夫妻に兄妹。そして、母桃子にそっと抱き上げられている赤子が映っていた。
「ん? んだこの赤子」
「え? 赤ん坊って、確か高町家は四人家族ですよねぇ。それじゃ、この赤ん坊は一体何処に居るんですか?」
「さぁなぁ、どうせどっかで家出でもして盗んだバイクで走り出してるんじゃねぇのかぁ?」
「でも、此処に映ってる子供って恭也さんと美由紀さんですよね。この二人がこの年齢だとすると、この写真って少なくとも10年近く前になりますよ」
「10年近く前?」
銀時はその言葉に疑問を感じ、写真立てに映っている赤子を見てみた。この赤子に何処か見覚えが感じられる。まるで、以前何処かで見たような気がする。
(ま、まさかなぁ……)
確かにその赤子に見覚えがあった。だが、まさかそんな筈はない。そんな筈が絶対にない。そう、銀時は心の中に押し留めた。
あの写真に写っている赤子が、かつて、銀時が9年前に拾ったなのはだと言う事がありえない……と。
***
空にはさんさんと輝く太陽が昇り、気温も過ごしやすい位になっており絶好の休日日和である。が、そんな日だと言うのに、坂田銀時は何故か不機嫌なのであった。
「銀さん、いい加減機嫌直して下さいよ。もう頼まれたのはしょうがないじゃないですかぁ」
「バーロィ! 何が悲しくて折角の休日にこんな所に来なきゃならねぇんだよ!」
不満そうな顔を浮かべる銀時。彼が何故不満かと言うと、それは今彼が居る場所に問題があった。
回り一面に見えるは汚く積み上げられたゴミ、ごみ、GOMI!
そう、此処は海鳴市の何処かにあるゴミ集積所であった。
今、此処に銀時達万事屋ご一行+αは訪れていたのだ。
「臭いアルなぁ。こんな所にレディを連れてくるなてお前等の神経どうかしてるアルよ」
「自分をレディとか抜かすてめぇの神経もどうかしてると俺は思うぞ」
「んだよ天パー! お前なんかマダオと同じで今頃ゴミ捨て場で寝泊りしててもおかしくない癖によぉ」
「あんだとぉこの毒舌チャイナ。今すぐてめぇをペットボトルミサイルに括りつけて故郷に返してやろうかぁ?」
「上等だよゴラァ! そうなる前にてめぇを逆に括りつけて宇宙の粗大ゴミにしてやるよゴラァ!」
何処でも飽きる事なく喧嘩しまくる二人。そんな二人を見て新八は大層溜息をつく羽目となった。
何故銀時達がこうしてゴミ集積所にやってきたのかと言うと、それは今から数刻前へと遡る。
***
「さぁて、折角の休日だし……此処はパチンコでも行って一儲けしてくるかぁ」
「少しは主人公らしい行動を起こして下さいよ。それでもジャンプ系列の主人公ですか?」
「るせぇ! 俺はなぁ、あぁして銀色の球っころが流れていく様を見てねえと落ち着けねぇ性質なんだよ! 心の平静が保てねぇんだよ! 明鏡止水の領域に達せねぇんだよ!」
「そんな事してたら一生明鏡止水の領域に達せねぇよ! 錆びた刀で大木も切れねぇよ!」
とまぁ、こんな感じで主人公らしいことをせずに遊びに興じようとする駄目人間を必死に止める新八。一応店の手伝いをしているのでそれなりにお金は貰っている。だが、それをこの男は全額使い果たそうと企んでいるのだ。
これでは元の木阿弥である。そう察し、新八は止めに入ったのだ。
「心配すんなよ。パチンコに行って100倍にして帰って来るからよぉ」
「そう言って何時もスカンピンになってるのは何処のどいつだぁ! 頼むから少しはジャンプの主人公らしくして下さいよぉ! 折角強敵も出てきたんですから此処は特訓して強くなろうとか、新しい技とか武器を見つけようとか、そう言う努力をして下さいよぉ!」
「えぇ? 面倒だから別に良いよ俺。それにあれだろ? こいつが集めてるそのジュエルシードってのは元々こいつの不祥事でばら撒かれちまった奴だろうが。それをあの金髪変態女が集めてるんだったらいっその事アイツに任せてれば良いじゃん。勝手に集めてくれるんだからこっちとしちゃ万々歳なんじゃね?」
「全然万々歳じゃねぇよ! 返って事態が悪化してんだよ!」
最早御馴染みの光景とも言えた。そんな感じで休みの一日が無情にも過ぎ去ろうと誰もがそう思っていた正にその時であった。
突如、銀時の懐の携帯が鳴り響く。誰かと思い相手を見ると、それは江戸に居るであろう源外からであった。
「あいよ」
【あぁ、波動件ですか? チャーシューメンお願いします】
「おめぇは以前の俺の報復がしたかっただけかよ!」
以前の報復と思われた。そりゃそうだろう。前回銀時もまたこう言ったネタを使ったのだ。それを源外がお返しにと放ってきた次第なのである。
【冗談だよ冗談。それより銀の字、ちょいと厄介な事になっちまってよぉ】
「厄介な事って何だよ? チャーシューメンのチャーシューが一枚足りなかったのか? んな事で一々騒ぐなよ。女子高生かぁコノヤロー」
【違ぇよ。要件はお前等を転移させた装置についてだ】
どうやら修理中の装置についての事らしい。まさか直ったのだろうか?
「お、もしかして直ったとかかぁ?」
【嫌、少々厄介な事になっちまってよぉ】
「厄介な事?」
またこんな時にである。嫌な予感が銀時の背後を過ぎった。源外がそんな事を言うと大概禄でもない事を押し付けられるのが常だ。今回もそうなのだろう。
【実はあの時暴走が原因みたいでなぁ。装置の内面部分の大事な部位が焼き切れちまってんだ。こうなるともう交換するっきゃねぇんだよ】
「すりゃ良いじゃねぇか。何も迷う事ぁねぇだろう?」
【そう言う訳にもいかねぇんだよ。この部位は偉く特殊でなぁ。今の俺の工房にはそのパーツがねぇんだよ】
どうやら壊れたパーツの交換を行いたいのだが肝心のパーツが何処にもないと言うらしい。買いに行きたいのだが生憎源外も面倒臭いのだろう。其処で、異世界を出歩いている銀時達に白羽の矢を立てた、と言う事らしいのだ。
「ふざけんなよ。何でもかんでも面倒毎を押し付けやがって! 俺達は何でも屋じゃねぇんだぞ」
「とんでもない事言っちゃったよ。自分の職業否定しちゃったよこの駄目人間」
読者の皆様は既にご承知の事かと思うがこの際語るとしよう。この男、坂田銀時は江戸では知る人ぞ知るが、知らない人は全然知らないと言うので有名な万事屋を営んでいるのだ。依頼と金さえ貰えば子猫の捜索から要人の護衛に至るまで何でもこなすなんでも屋なのである。
そして、先の発言から分かるとおり、この男その生き甲斐まで否定してしまう始末である。弱体化すると心まで弱体化してしまうのか?
そんな疑問をお持ちの方々は是非ご安心下さい。単に本人が面倒臭がりなだけなので。
「どうでも良いですから早く要件を聞いて下さいよ。このままだと何時まで経っても過去の回想シーンから抜け出せませんよ」
「さり気にメタ発言してんじゃねぇよ! ったく、んで……要件はなんだよ?」
このままだと更に新八がメタ発言をしそうなので早々に要件を聞く事にした。深い溜息をつき、どうせ面倒な事を押し付けられるのだろうかぁ。等と脳内で考えながら再び銀時は携帯電話に耳を傾けた。
【まぁ、そんなに難しい要件じゃねぇよ。只俺の工房じゃ残念な事にパーツが足りねぇんだよ。其処でお前等に何かしらパーツになりそうなゴミを集めて来て欲しいんだよ】
「お前ふざけんなよ! 俺等がそっちに今帰れないってのに何でてめぇんとこにゴミを持っていけるんだよ?」
【安心しろ。実はお前の使ってる携帯には嬢ちゃんには内緒で小型転送装置を内装しておいた。それを使えば転送が使える筈だ】
「マジかよ! それならこれ使って俺等も帰れるんじゃね?」
銀時は思った。その転送装置を使えばわざわざ源外の所にある転移装置の修復を待たずに帰れるのではないか?
だが、世の中そう上手く行く物ではなかったりするのであり……
【あぁ、残念だがそれは欠点があってなぁ。実際に転移が行えるのは総重量25kg以上の無機物しか使えないんだよ。つまりお前等人間や生き物には使えねぇんだよ】
「んだよ、ぬか喜びさせやがって」
楽出来ると思っただけに銀時は酷く落胆してしまった。この人何処までやる気がないのだろうか?
隣で見ていた新八は心底そう思っていた。が、やるしかない。そうしなければ転移装置が直らないし、そうなれば自分達は帰る事が出来なくなってしまうのだから。
***
と、そんな訳で銀時達は此処ゴミ集積所にやってきたのである。全く、とんだ休日である。
さっさと終わらせて休日をエンジョイしたいものである。
「ところで銀さん、その肝心のパーツってのはどんなのなんですか?」
ユーノが問い掛ける。電話の内容を聞いていなかった為にどんなパーツなのか聞いてなかったのだ。が、ユーノも薄々感づいてはいる。この男がそんな大事な話を聞いている筈がない……と。
「知らねぇ。ま、何でも良いだろう。適当に送りつけりゃぁさ」
「予想はしてましたけど、本当に銀さんって無計画なんですね」
今更ながら銀時の無計画さが身に染みるユーノであった。とにもかくにも、此処でならパーツに使えそうなゴミがありそうだ。何せ、回りには機械のゴミや家電製品、その他もろもろなどが所せましと収められている。
「銀ちゃん! これなんかどうアルかぁ?」
そんな中、神楽が摘むようにして持ってきたのは、一枚の雑誌であった。所々汚れているが、それでもその雑誌がどんなのかは理解出来る。其処に映っていたのはほぼ全裸の女性がうっとりした姿で映っている表紙でありタイトルには【月刊美人】と描かれていた。
早い話が18禁物である。
「あぁ、これなんかうってつけだろう。これ使えばジジィのあそこも元気になるんじゃね?」
「間違いないアル! 男は皆こういうのが大好きアルから確実にジジィのジョイスティックはそそり立つ筈アルよ」
「マジだよ。こりゃマジで完成度高ぇよこれ。これジジィに渡しちまうのか。ちょっと惜しいなぁ」
等と言いながら神楽が拾ってきた雑誌を眺める銀時。とても主人公とは思えない光景でもあった。
「ちょっと銀さん。ふざけてないで真面目に探しましょうよ」
「そ、そうだったな。流石にそろそろ真面目にやんないと読者に小物とか言われそうだしな」
「わざと字を間違える辺りどうしようもないと思いますけど……とにかく、源外さんが言ってるようなのだと、多分電化製品とか家電製品辺りじゃないですか?」
流石は新八である。彼が居るお陰で脱線しかけた話を修正してくれている。この物語において彼なしでは話が進まないと言っても過言じゃない気がしてきた。
とまぁ、そんな感じで銀時達はゴミ集積所の中から適当にゴミを見繕う事になったのである。
「とりあえず、これで良いか」
銀時が持ってきたのは小型のラジカセであった。ゴミ捨て場に置かれていた為か汚れが酷く、使い物にならないのは一目瞭然の如しである。
「私はこれ持ってきたアル!」
神楽が持って来たのは電子レンジであった。神楽だったら冷蔵庫とか持って来ると連想した其処の方々。私もそう連想した時期がありました。
「僕はこれですね」
新八が持ってきたのは今や懐かしいビデオデッキである。しかもβ型と言うこれまた20代には分かり難い代物でもあった。
因みにユーノは何も持って来ていない。まぁ、フェレットだししょうがないよね。
定春は定春でゴミ捨て場で好き勝手に遊びまわっているのでこの際放って置く事にした。下手に叱って齧り殺されるよりはマシだし。
「さてと、大分集まったな」
銀時達の目の前には集めてきたゴミ+先ほど神楽が見つけたいけない雑誌が置かれていた。さて、問題はこれからである。
果たしてどうやってこれを源外の元へ届けるのか? そんな時、またしても源外から電話が届いた。
【銀の字、お前の事だからどうやってこれを届ければ良いか困ってるだろう?】
「お前はエスパーかぁ? まぁ、そんな所だ。どうすりゃ良い」
【その携帯で写真を撮る感じの操作をしろ。それが小型転送装置の起動ボタンになってる】
携帯を目の前に置き、言われた通り写真機能のボタンを押す。すると、普段から映っていた待ち受け画面が切り替わり、目の前の光景が広がりだす。
見た事はないが、これが携帯で言う写真機能なのだろう。
「切り替えたぞ。この後はどうすりゃ良いんだ?」
【普通に決定ボタンを押せば勝手に転送してくれる。試しにやってみろ】
「あいよ、そんじゃ照準を新八に合わせて……と」
「おいぃぃぃ! 僕は物じゃないぞ!」
いきなりな無理振りに切れる新八に向かい照準を向けて決定ボタンを押す。
激しいフラッシュが焚かれ、一瞬新八の視界が塞がれる。回復した視界で回りを見るが、其処は前と何ら変わらない場所であった。
しかし、その割には目の前が妙にぼやけて見える。
「あ、あれ? 良く見えない……一体何が起こったんですか?」
「あぁ、転送装置は実在したぜ。まさか本当に転送装置があったなんてよぉ」
顔はぼやけてどんな顔をしているか分からないが、声色からして銀時が驚いていると言う事が分かる。そして、その銀時が転送装置が実在したと言う事を言っている。となれば転移が成功した事を告げている事に他ならない。
だが、問題が浮上した。転移が成功したと言うのならば一体何が転移したと言うのだろうか?
銀時は驚いた声色でそう言っている。だが、この通り新八はこの場に居る筈。では、一体何が転移したと言うのだろうか?
新八は自分の体に手を置いて確認してみた。まさか服が転送してしまったとか言うベタな落ちがないか恐る恐る触れてみる。手に伝わるのは服の布生地の感触がした。ホッとする新八。
下の方も履いていたので安心しつつ、顔に手をやる。
無い!
無いのだ。本来掛けていた筈の眼鏡が何処にもないのである。
「ぎ、銀さん……まさか、僕の眼鏡が――」
「あぁ、無事新八が転送出来た。こりゃマジで凄い代物だぜ。だが、その代償として新八が転送されちまった……すまねぇ、新八」
「新八こっちぃぃぃ! 転送されたの僕の眼鏡ぇぇぇ!」
怒号を張り上げる新八。まぁ、自分じゃなくて自分が掛けてた眼鏡を新八と言われたらそりゃ怒るのも無理ない話しでもある。
「何言ってんだよ。新八の主成分の95パーセントは眼鏡で出来てるんだよ。公式設定でも言ってるだろうが」
「言ってねぇよ! って、眼鏡が95パーセントだとしたら残りの5パーセントが僕って事?」
「馬鹿言ってるんじゃねぇよ。残りの5パーセントの内4.9パーセントはツッコミで出来てるんだよ」
「僕は埃かぁぁぁ!」
とまぁ、そんな感じで銀時と新八の激しい口論が勃発しだしていた。この通り、たまに新八も脱線してしまう事もある。なので必ずしも新八がいるから安心とはいえないのだ。
「あのぉ、早く転送してあげましょうよぉ」
「もう駄目ネ。こうなったら銀ちゃんも新八も人の話聞かないネ。しょうがない、定春~」
神楽が定春を呼ぶ。するとそれに呼応して神楽の目の前に定春の巨大が降り立った。言う事を聞いた定春の額をなでなでした後、神楽の無情な指が目の前で暴れてる二人を指差す。
「あの馬鹿二人噛み砕くヨロシ! 遠慮なくガブガブして良いネ」
神楽の命令を受けた定春がとても嬉しそうに喧嘩し続ける銀時と新八に飛びかかってきた。
お互いしか見ていなかった二人にとっては正しく突然の奇襲であり、そしてそれに対応出来なかった二人は瞬く間に定春の口の中に放り込まれてしまったのであった。
必死に逃れようと定春の口から飛び出た下半身がバタバタと動き回る。が、そんなのお構いなしに定春は尚も口の中にある獲物の感触をその牙で楽しんでいた。その度に不気味な音が辺りに響き渡る。神楽はご満悦な顔をしているようだが、ユーノは青ざめて耳を塞いでいた。小動物である自分があれに食われたら一発で丸呑みにされてしまう。そんな恐怖感が彼を襲っていたのであった。
***
「さ、さてとぉ……おふざけもこの辺にしてとっとと済ませるとすっかぁ」
上半身が歯型だらけの銀時と新八の双方が落ち着きを取り戻し、今度は目の前のガラクタに向かい転送ボタンを押した。すると、先ほどの新八の眼鏡と同様にガラクタが一斉に姿を消す。今回も転送は成功したようだ。試しに源外に向けて電話を掛けてみる。
「よぉ、そっちに物は行ったかぁ?」
【おぅ、行ったぞぉ。しかしなんだこりゃ? ガラクタはまぁ良いとして、何で眼鏡と雑誌?】
「あぁ、それは眼鏡じゃなくて新八だ。後で返してくんねぇ?」
【まぁ良いけどよぉ、んじゃこの雑誌は何だ?】
「お前のジョイスティックを修理するのに使えるだろ? それつかってハッスルして修理に身を入れてくれや」
【いらん事に気ぃ遣うんじゃねぇ!】
どうやら要らぬ世話だったようだ。まぁ、そんな事はさておきであり、問題は先ほど送った物に必要なパーツがあるかどうかの話だ。
「んで、あったかぁ?」
【いんや、残念だがねぇなぁ。流石異世界なだけあってこっちとはまた別の技術を使ってやがる。だが、俺の欲しいパーツはないみたいだ。悪いがまた別の探してきてくれや】
「ったく、面倒だなぁ」
嫌そうな返事をしながらも渋々探す事にした。修理してくれねば帰れないのだから仕方がないと言えば仕方がない。
と、言う訳で第2巡目のゴミ捜索が開始された。
「僕は今度これ持って来ましたよ」
新八が持って来たのはトースターだった。恐らく、今のご家庭で利用しているのは極少ないと思われる二枚焼き式のトースターだ。
スイッチを入れて焼きあがるとパンが飛び出す型の奴でありこの型を見るのは恐らくかなり稀だと思われる。
「私はこれ持って来たアル!」
神楽が持って来たのは何処かで見たような携帯ゲーム機だった。折りたたみ式の奴であり付属品として字を書けないペンも取り付けられている。
本当に何処かで見た感じなのだが、皆様は見覚えがあるだろうか?
「俺はこれを持ってきたぜ」
銀時が持って来たのは今や懐かしのブラウン管テレビであった。時代はプラズマや小型が進み、デジタル放送に切り替わってから殆ど姿を消してしまった青春の思い出が詰まったブラウン管テレビである。
「さてと、この次はどうだぁ?」
一箇所に集めて再度転送ボタンを押す。フラッシュと共に目の前にあったガラクタが一瞬の内に姿を消す。今度はどうだろうか?
【ん? どうした銀の字。今飯食ってんだから邪魔すんじゃねぇ】
「てっめ飯食ってる暇あったら修理しろや! 折角物送ってやったんだからしっかりやれや!」
【わぁったよ、ったく……】
不満そうに源外は送られてきたガラクタを見てみる。例え異世界の技術とは言え天才からくり技師である源外ならばばらすのは容易な物だ。あれよあれよと言う間にガラクタはすぐさま屑鉄の塊となっていた。
【銀の字、聞こえるか? お目当てのパーツは見つかったぞ。だが、こいつぁさび付いてて使い物にならん。出来れば新鮮な状態でくれ】
「何だよそれ、だったらせめてどの製品か教えろよ」
【このパーツはさっきブラウン管のテレビから取り出した。テレビを適当に集めてくれれば恐らく大丈夫だろう】
「あいよっ」
ヒントは貰えた。後は源外の言う通りにテレビを片っ端から集める必要がある。三人は集められるだけのテレビをひたすらに集めまくる事となった。
ブラウン管、プラズマ型、小型、大型、形振り構わず転送出来るだけの量を持って来た。目の前にはそれこそ大量のテレビが積み上げられている。これが使えるテレビであれば嬉しいのだが、生憎こいつらは全部ゴミなので使い物にならない。
迷う事なく転送ボタンを押し込んだ。願わくば1秒でも早くこんなゴミの溜り場からさよならしたい物である。
「どうだ? 無事に転送出来たかぁ?」
【おう、迷惑掛けたなぁ。無事にパーツも見つかったし、これなら無事に修理も行えるぜ】
「早めに頼むぜぇ。ジジィの言う通り此処は俺達にとっちゃぁかなりやばい場所みたいだからよぉ」
これ以上この世界で無駄足をするのは正直辛い。早い所やるべき事を終わらせて帰りたい所である。そう考えながらも携帯の通話スイッチを切ろうとした刹那、激しい痛みが手に伝わってきた。
見れば、先ほど銀時が持っていた携帯をオレンジ色の光る刃が貫通していた。火花を撒き散らし、黒い煙をあげている。これではもう源外との通信は行えない。
「なるほどねぇ、それで仲間と通信してたって訳かぁ」
「な、銀さん!」
新八が指差して見上げる。其処は使われなくなったクレーンの上に立っていた。
オレンジ色の長い髪に犬の様な耳を生やしており、何となく露出度の高そうな衣服を纏った女性だった。
「何ですかぁお宅はぁ? 馬鹿と何とかは高いところが好きって言うけどお宅もその類ですかぁコノヤロー」
「銀ちゃん、容赦する事ないネ! 私の哲学に胸のデカイ奴に良い奴は居ないって言ってるヨ!」
「お前の哲学は信じられねぇんだが、今回は当たりみたいだな……」
銀時達が見上げるその女性は明らかに味方とは思えそうに無い。どう見てもあれは敵だ。そう告げている。その女性が銀時達の前に降りて来た。手に武器を持っていないところを見るにこの女性はどうやら徒手空拳で闘うようだ。
「あんたに恨みはたんまりあってねぇ。お誂え向きな場所だし、此処でくたばって貰おうじゃないのさ」
「ちっ、この間の金髪変態女と良い、今回のてめぇと良い、何でこの世界で俺ってそんなに恨まれてるんだ?」
愚痴りながらも身構える。相手は恐らく前に闘ったフェイトと同じ魔導師の類だろう。となれば弱体化した現状ではかなりの強敵となりえる。油断は出来ない状況だ。
「そんじゃぁ、行くよぉ!」
「ちっ!」
迷う事なくその女性は一直線に銀時目掛けて突っ込んできた。咄嗟に目の前に木刀を構えて防御姿勢をとる。
凄まじい衝撃と共に銀時の体は後方へと吹き飛ばされる。只の拳だと言うのにとんでもない衝撃だった。やはり魔導師が相手では今の銀時達は分が悪い。
「ほらほら、しっかりしないとアッサリやられちゃうよぉ!」
「野郎、調子に乗るんじゃねぇ!」
即座に体制を立て直した銀時は、再度突っ込んで来るアルフに対し木刀を横薙ぎに振るった。鋭い一閃が放たれる。それを察したアルフは即座に片腕を木刀の斜線上に掲げる。其処へ木刀がぶつかってきた。衝撃がアルフ脳でに伝わってくる。だが、それだけであった。アルフには大したダメージになってはおらず、あっさりと跳ね除けられてしまった。
「ぐっ! 効いてねぇってかよ」
「何だい今のは? 大して効いちゃいないよ!」
跳ね除けた直後に硬く握り締めた拳をそのまま銀時の腹部に叩き込む。銀時の体が拳の一撃によりくの字に曲がる。速度はフェイトに比べるとさほど早くない。だが、その分一撃一撃が諸に痛い。しかも、この前のフェイトと同様、このアルフの狙いは銀時のようだ。
全く、身に覚えがないとはこの事だろう。何もしてないと言うのに二人の魔導師に狙われるのだから災難と言えば災難でしかない。
「銀さん! 大丈夫ですか?」
「まだ死んじゃ駄目アル! こんなとこで死んだら今日から私が主役になっちゃうアルからねぇ!」
まともに戦えない銀時に加勢しようと神楽と新八も加わる。しかし、子回の相手に果たしてどう立ち向かえば良いだろうか?
個々で挑めば間違いなく勝ち目はない。だが、三人寄らばなんとやらだ。個々で駄目なら纏めて掛かるだけだ。
「新八、神楽! 俺達個々じゃあの犬耳姉ちゃんにゃ勝ち目がねぇ。多少反則っぽいが纏めて掛かるぞ」
「上等ネェ! あいつをぶちのめして金髪女や妹分の居場所を洗いざらい吐かせてやるネェ!」
「やりましょう銀さん! 此処で僕達は倒れる訳にはいかないんです!」
三人揃って構える。三人共思いは同じだった。こんな辺境の世界で倒れる訳にはいかない。なのはの中に寄生しているジュエルシードを取り出し、元の世界に帰る。それまでが旅なのだ。家に帰って「ただいま」と言うまでが旅。昔の人は良い言葉を作った物だと、この時ばかりは誰もがそう思えた。
「三人揃えば勝てるとでも思ったのかい? 甘いんだよぉ」
「行くぞてめぇら! 侍の意地と万事屋の底力を見せてやれぇ!」
怒号と共に再度激しい戦いが展開された。まず最初に突っ込んできたのは神楽だった。上空へと飛び上がりアルフ目掛けて蹴りを放つ。
しかし、それは軽々と防がれた。威力の無い蹴りはアルフにとっては片手で防げる威力でしかない。
だが、その背後に気配を感じた。振り返れば其処には既に振りかぶり終えた銀時が居た。片手を塞がれ、更に塞がれた方目掛けて木刀を振るってきたのだ。
「ちっ!」
神楽の足を掴んでいた手を離し、咄嗟に距離を開ける。結界を張るには距離がないしそんな猶予はない。
結果として銀時の一撃は空振りに終わった。二人から離れた地面に降り立つ。
「舐めんじゃないよ! そんな程度の連携でぇぇぇ!」
怒りを顔に貼り付けたようにアルフが特攻してくる。硬く握り締めた拳が銀時目掛けて飛び込んできた。
「させるかぁ!」
その一撃を新八が割って入り止めた。三人の中で唯一弱体化していない新八だからこそ、その一撃に耐えられたのだ。
「こいつ!」
「今です! 銀さん、神楽ちゃん!」
後ろに向かい叫ぶ。それに呼応したかの様にアルフの左右に銀時と神楽の姿が現れる。二人共既に振りかぶり終わり、後は叩き付ける動作を行うだけであった。
「こ、こいつら……」
「俺達の連携を甘く見てんじゃねぇ!」
左右双方からの衝撃が飛んできた。激しい衝撃のあまり砂埃が舞い上がる。視界一杯に広がりだし一同を覆いつくした。
砂埃が晴れた際、其処に居たのは銀時と神楽の一撃を両手で防ぐアルフの姿があった。
「は……ははっ、最後の賭けも失敗に終わったみたいだねぇ」
「馬鹿言ってんじゃねぇよ」
「これの何処が最後の賭けアルか?」
攻撃を防がれたにも関わらず銀時と神楽は笑っていた。この二人はまだ諦めていない。まだ何か隠しだまを持っている。そう察したとき、それはすぐさま来た。
「うおおぉぉぉぉぉ!」
「何! ……がぁっ!」
それはまん前に居た新八だった。縦に構えていた木刀をそのまま水平に持ち直し、アルフの首目掛けて突きを放ったのだ。両手を防がれた上に攻撃が来ないと思い込んでいた彼女にとって、この一撃は完全に予想外の仕打ちであった。
「これで……どうだぁ!」
完全に決まった。手の感触からそう感じられる新八の前で、アルフは後方へと吹き飛ばされる。
しかし、吹き飛ばされながらも空中で体制を立て直し、地面へと着地する。
「ま、まだ立てるなんて……」
「ちっ、浅かったか!」
舌打ちしながらも、再度構えを見せる。そんな三人の前で、アルフは口から滲み出た血を地面に向けて吐いた。効き目はあったようだ。だが、完全に倒れる程の決め手にはならなかったようだ。
「な、中々やるじゃないのさ……まさか三人揃うとこんなに強くなるなんて思いもしなかったよ」
「ったりめぇだろうが。俺達は本来4人でワンセットなんだ。一人ひとりが強くても、そりゃ意味がねぇ。俺一人じゃ生きていけねぇし、こいつらも同じだ。だがなぁ、俺達が集まって力を合わせりゃ、どんな野郎が相手でも、どんなに不利な状況に立たされても、絶対に負けねぇ! それが俺達、万事屋銀ちゃんなんだよ!」
木刀を突き翳し、決まり文句を言い放つ。毎度毎度銀さんの言葉には心を突き動かされる。新八も神楽もそう感じていた。この男は普段はどうしようもない程のグータラで駄目人間なのは違いない。
だが、そんな男でも、やると決めた時や、決めるべき時には必ず決める男だ。
だからこそ、その男の回りには仲間が集まる。友が集まる。それが何時しか銀時の力となり、何時しか友の力になっていく。これこそが、江戸の侍の強さとも言えたのだ。
「さて、どうすんだ色っぽい姉ちゃん。まだやる気かぁ? 言っとくが今の俺達は全く負ける気がしないぜ」
「そうかい、だけどねぇ……私だって負ける気なんざこれっぽっちも……」
言い終わる前であった。アルフの体を突如金色のリングが取り囲み、その体を拘束しだした。その光景に銀時達は驚愕する。
「こ、これって……バインド!?」
「其処までだ! 君の負けだよ」
「お前、ユーノ!」
其処には恐らく彼がバインドを掛けたであろうユーノが居た。手を翳し、その先に魔方陣が展開されている。すっかり忘れていたが、こいつも魔法の類が使えたのであった。
只、ずっと影が薄かったのと銀時達が邪険に扱っていた為に全く忘れ去っていたのである。
「へっ、形勢逆転だな……さぁてと」
木刀を腰に納めた銀時が動けないアルフに近づく。今の彼女は手足を拘束されている状態だ。これでは殴る事も蹴る事も出来ない。そんなアルフのまん前に銀時は座り込み、視線を合わせた。
「さぁ、教えて貰おうか。俺の娘は何処に居る? さっさと吐いちまいな」
「教えると思ってるのかぃ? 例え口が裂けたって教える訳ないだろ?」
「そうかい、だったら本当に裂けて貰おうかぁ!」
そう言って、再度腰に挿していた木刀を抜き放つ。本来ならもう少し優しく問い掛ければ良いのだろうが生憎時間がない。こうしている間にも刻一刻となのはの体内にあるジュエルシードの起動までのタイムリミットが迫っている危険性があるのだ。
早く見つけ出して取り出さなければ最悪の場合、ロストロギア化したなのはと闘う羽目になってしまう。そうならない為の処置であった。
だが、この時銀時は気付かなかった。腕を拘束された状態でありながらも、アルフはその手に僅かながらの量ではあるが魔力弾を精製していた事を。
そして、それを地面に向けて落とした。落下の際に魔力弾は弾け飛び、砂煙が舞い上がる。
「うおっ!」
「わっ!」
突然の事に驚いた銀時達は咄嗟に目元を隠す。砂煙が晴れた時、目の前にアルフは既に居らず、彼女は既に上空へと舞い上がっていた。
「野郎!」
「あばよ、次に会ったら必ず仕留めてやるから覚悟するんだね!」
そう言い残し、アルフは飛び去ってしまった。空の飛べない銀時達では追いかけようがないし、今のユーノでは飛べたとしても追いつく事は出来ない。どの道見送るしか出来なかったのだ。
そして、悪い事が怒り続けるのは世の常であり。
「銀さん、携帯が……」
「あぁ、参ったなぁこりゃぁ」
一同はアルフに破壊され、機能を停止してしまった携帯電話を見た。江戸との唯一の連絡手段であった筈の携帯電話が使い物にならなくなってしまった。
これにより、文字通り銀時達は異世界に孤立してしまった事になるのだ。
つづく
後書き
次回【子供は遊ぶ時は何時だって本気】
ページ上へ戻る