少年は魔人になるようです
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第25話 決着は嵐の前のようです
Side 愁磨
「『ク、ククククク・・・フハハハハハハハハハハハハ!!!
よい!よいぞ『魔人』よ!!貴様を倒し、その力を我が内に加えてやろう!!』」
高笑いしつつも、先程の無詠唱魔力砲を雨の用に撃って来る。
一つ一つが、ナギの『千の雷』も真っ青な威力。
「【フハハハハハ!!この程度の攻撃、蚊に刺された方が幾分か辛いぞ!!】」
しかし、俺はそれを殴って消し飛ばす。
「【純粋な魔力には、純粋な気合いをおおおおおおおおおおおおお!!】」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!
音速程度は常に超えながらの、ビームと拳圧の応酬。
しかし、このままではいつ終わるか分からない。
あっちは星を維持できる程の魔力量で、消費量MP1で限界値突破済みの魔法連射。
こっちは自動回復スキルの『回帰』によってスタミナ常にMAX状態。
いずれはあっちが力尽きるだろうが、千日手(意味違い)とは良く言ったモノで、
このままでは本当に千日掛かってしまう。
「【―――フッ!!】」
思ったが即時決行時。弾幕を『答えを出す者』で見切り、一瞬で距離を詰める。
「【アァァァク・エネミィィィィィィイイイイイイ!!!】」
バババッバババババババババババリィィィン!!!
障壁は、矛先状にした魔力を纏った貫手で突破して行く。
「『遅い・・・、蠅が止まる。』」
しかし、突破する毎に速度が下がるせいで、距離を開けられてしまう。
その間にも弾幕が止む事は無いから、反撃する態勢に持って行けないので避けに徹する事になる。
そして、その内に距離がまた開く。
「【だああああああ!うっぜええええええええ!!!男なら拳で掛かって来んかい!!】
」
「『残念だが、我の戦闘スタイルでは無いので無理だ。
相手の有利なステージに行ってやる様な善人に見えるか?』」
「【見えねーよ!!】」
しかし、マジでどうする?
遠距離攻撃ほぼ無効、物理攻撃ほぼ回避、大技使用不可。
いや、大技はダメージ覚悟なら使えるんだが・・・、さっき特攻時に一発掠ったんだが、
それだけで残機を2つ持って行かれた。だから―――って言ってる訳にもいかないか!!
「【『|熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』!!】」
とりあえず、頭上に傘を創る。当然そこには雨(ビーム)が降り注ぐ訳で―――
バリィィン!! パリィィィン!! バリィィン! バリィィン!!
一枚辺り0.1秒と言ったところだろうか?――ならば、もう一枚あれば事足りる。
「【『熾天覆う七つの円環』!!
『追う者』『貫く者』『轟く者』『初源』『|終焉《オメカ
゙》!!!】」
――パリィィィン!! バリィィィィン!!
オリジナルで創った宝具を5つ呼び出す。
――パリィィィィン!
これで、残りはあと七枚。
「【展開、『束ねる者』 武装付与:『追跡者』-『初源』
『貫く者』-『終焉』『轟く者』!!】」
『禁箱』から出したのは、一本の槍。
しかしそれは、針がそのまま槍に成ったかのように、武骨さも無く装飾の類も一切ない。
当然だ。これに俺が求めたのは『集約する事』。
「『ヌ・・・?』」
バリィィパリィィィン!!!――パリィィン!
この組み合わせが危険だと直感で感じたのか、攻撃が更に激化する。
「【残念、もう終わった。《モード:『神子殺之故神槍』》。
きっえっろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!】」
ボッ!!
ロンギヌスを『造物主』に全力で投げつける。
「『その様な実直な攻撃が当たるものk―――』」
ノワールの≪夢無明亦無≫と比べると速さが全く足りないが、
この槍は魔弾。故に――――
「【悪いな、それは必ず当たるんだ。】」
パパパパパパパパパパパパパパパパパ!!!
『造物主』の障壁を、先程の堅固さが嘘のように貫いて行く。
「『な!?』」
驚愕の言葉と同時にロンギヌスが『造物主』に突き刺さり、炸裂する。
「【お疲れさん、アリーヴェデルチ。】」
ドッグオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!
爆光が部屋を包み込み、間もなくドチャッと言う鈍い音が響く。
「『ば、かな・・・我の障壁は『創造物』用に特化させてあったのだぞ・・・!?』」
体が半分吹き飛びながらも、『造物主』は俺を睨みつける。
「【分かってんじゃねぇか。なら、後は簡単な話。
俺の創造物の攻撃力が、お前の障壁の防御力より強かった。単純明快、故に真理であり全てだ。】」
「『クフ、ククク・・・我の予想より貴様の方が上だったと言う事か・・・・。』」
「【冥土の土産に教えてやろう。
今のはな、『追跡者』により永久に追って来る槍にして、『初源』により『貫く者』を始めから
――つまり、『追跡者』と同時に発動させ、全てを貫通する攻撃として放ったんだ。
しかし、このままでは攻撃力は皆無。
そこで目標に到達した終わり、『終焉』と連結させ『轟く者』を発動。後はご存じのとおりだ。】」
要するに永久追跡+永久貫通、敵に当たったら爆発する槍って事だ。
「『ク、ククク・・・・。そうか、それはすごいな。』」
「【うむうむ、そうだろう?】」
これ創るのに掛かった時間、宝具以上だったからな。
「『そして、感謝しよう―――――――――』」
ドズッと鈍い音がする。脇腹を見ると、そこには―――
「【『造物主の掟』………!!】」
呟くとそれが引き抜かれる。
いつもなら直ぐに回復するのだが、桜色の何かで傷口が覆われている。
「『素晴らしい・・。
普通ならばそれに傷口を広げられ、一瞬のうちに弾け飛ぶと言うのに。』」
そのお陰で血も止まってるんだが、普通なら直ってるんだからマイナス。
「『儀式は既に最終段階に達している。そして、私も貴様の攻撃で限界だ。』」
ビシッ、と『造物主』の全身を覆うマントに罅が入り、今まで以上の魔力と殺意が放たれる。
「『これで―――オシマイダ。』」
マントが砕け、『造物主』が一瞬光に包まれる。
次の瞬間そこにいたのは、最早人間では無く、魔物と言うにも禍々しいモノだった。
「『散レ、『魔人』ヨ!!』」
グォォン!!
2m程に巨大化した拳が俺を襲う。
「【グ、チィィッ!】」
脇腹の痛みで若干初速が遅くなるものの、攻撃も遅くなっていたので
ギリギリの所で避ける事に成功する。
「『ヤハリ、コノ姿デハ追イキレヌカ。』」
背後の声に振り向き、改めてその姿を見る。
それは闇に覆われた人型で、悪魔の様な翼も生えてるし尻尾も生えている。
・・・・・肉体があるか無いかって点と体長20m級って事以外は俺と変わらんか。
「【なんだ、俺のパクリじゃねえか。しかも、魔法も使えねえみたいだな。】」
「『ソノ通リ。シカシ、全テノ魔力ガ攻撃ト再生ニ注ガレテイル。貴様ト同ジダ!!』」
「【いや、俺は魔法とか使えるし。それに、決定的に違う所があるぜ?】」
「『ヌカセ!!貴様ト我ハ所詮同ジダ!!!』」
再び拳が放たれるが、
ドガアアア!!! ブォン!! ザンッ! 「チェストォォォ!」 ザザザザザ!!
俺の後ろから放たれた五撃によって、拳が止まる。
「愁磨!!てめえにばっか美味しい思いはさせねえぞ!?」
「【いや、空気読めねえのか、鳥頭。】」
「オイオイ愁磨。ンなもん今更じゃねえか。」
「【ああ、それもそうか。】」
「てめぇ!わざわざ助けに来てやったのになんだその言い草は!?」
「いや、お主ら。愁磨の姿に何も疑問は抱かぬのかの?」
「フフ・・・、愁磨の異常さを一々気にしていたら負けですからね。」
うん、もうラスボス前とは思えない空気だね。
「『ホウ、貴様ラ。一番目達ヲ倒シタノカ。』」
「……愁磨、あいつ誰だ?」
「【いや、『造物主』だよ。】」
「オイオイ、大分でっかくなったなぁ!!こっちのがやり易そうだぜ!!」
「ジャック、油断してはいけませんよ?」
「仮にもラスボスじゃからのう。」
「まぁ、神鳴流は化け物の方が得意だから助かるが。」
「【と言う訳だ、造物主君。俺とお前は違うだろ?】」
「『・・・・・なにが言いたい?』」
「【俺には、仲間ってのが居るんだよ。テメー見たいに引き籠ってる奴とは違うんだよ。】」
「しゅ、愁磨……。」
「【ん?どうした、ナギ。】」
ナギが言葉に詰まっている。
「【そうかそうか、俺の言葉に感動したか。流石の鳥頭でもそのていd――】」
「流石に、それは無いと思うぞ?」
「ええ、流石に恥ずかしいですね。」
「うぉぉぉ!?鳥肌立っちまったぜ!!」
「せ、背中が痒いのじゃ!!?」
「【て、てめぇら………。】」
「なんだ、お前ら?愁磨が仲間じゃいけねぇのか?」
本っ当にこいつは空気読めねえな・・・・・。
「いや、まぁ、そうだな。俺達も愁磨を仲間とは思ってるぞ。」
「フフ・・・ナギは本当に空気が読めませんねぇ。」
「『時間ガ無イト言ッテイルダロウ!!!』」
グォン!!と『造物主Ⅱ』の拳が俺達に襲いかかる。
「「「「うぉぉぉおおおおお!?」」」」 「ッ!」
アルのみが冷静にバックステップで避け、
他の四人はMHの無敵スライディングジャンプの様に避ける。
「【ぬぅぅぅぅぅらあああああああああああああああああ!!】」
俺はそれを回し蹴りで止めると、足場が陥没し天上から壁に衝撃波が奔る。
「【ナギとアルとゼクトは上から魔法ぶっ放せ!!詠春とジャックは接近戦頑張れ!!】」
「簡単に言ってくれるな!!『らいっこぉぉぉぉぉぉけん!!』」
「へっ、いつもの事だぜ!『ゼロ・インパクトォォォォォォオオオオ!!!』」
詠春の剣から落雷が迸り、ジャックは練っていた氣を圧縮し、それを殴ってぶつける。
「へっ、負けてらんねぇな!リィン・ニーグ・ゴエヴォーイ!
百重千重と重なりて走れよ|稲妻(アストラプサトー)!!『|千の雷(キーリプルアストラペー)
』!!」
「ナギは呪文を増やすべきだと思うのですが・・・。まあ、後で良いですね。
イーソ・リーソ・ヴォンヴァリーメ!『押し潰す黒重』。」
「飛ばしとるのう。ワシも負けておられん!!『水たす濁流』!」
ナギはお得意の『千の雷』を放ち、アルは扇状に重力場を形成し、
ゼクトはナギとアルに合わせ水の殲滅級魔法を放ち、電撃付きのウォーターカッタ―にする。
「『ぬぅぅぅおおおお!?』」
脚部に全員の攻撃が集中した為、
ジャックの十数倍タフになっている『造物主』でも体勢を崩す。
「【 黄昏よりも昏きもの 血の流れより紅きもの 時の流れに埋もれし 偉大なる汝の名において
我ここに闇に誓わん 我らが前に立ち塞がれし 全ての愚かなる者に 我と汝 が力持て
等しく滅びを与えん事を!《待機:『竜破斬』:七秒》!!】」
その内に俺は魔力量にモノを言わせて必殺技の高速詠唱を開始する。
「【カイザード・アルザード・キ・スク・ハンセ・グロス・シルク
灰燼と化せ 冥界の賢者 七つの鍵をもて開け 地獄の門!
《待機:『七鍵守護神』:五秒】」
「愁磨~~!!いい加減もたねえぞ!!」
ええい、分かっとるわ!!集中力が切れんだろうが!!
「【『束ねる者』発動。付加対象:《十三騎士》!!
『No1.預言者バウル』『No.2聖母』『NO.3雷帝イシュテルテ』『No.4炎帝カーラー』
『No.5風神ヴィンドカイト』『No.6水神アスルル』『No.7剣聖アルデヒャルト』
『8槍王イルバーン』『No.9地鬼リッティモンド』『No.10氷鬼アクデモス』『No.11白師イフィコー』
『No.12黒師カーフィル』『No.13』……ッグ、『死天使サリエル』!!
――創造!!≪待機:『極・因果剣』:一秒≫!!】」
全ての技の待機させ、残りの一秒で全員を避けさせる。
「【いっくぜええええええええええええ!!!】」
バババババッ!
避けたのを確認し、混合系最強の一角である技が放たれる。
「【≪虹描く魔の刻≫!!!!!】」
『竜破斬』と『七鍵守護神』が螺旋を描き、
それに合わせ十三騎士の全必殺が追従し、虹色に輝きながら突き進んで行く。
「『造物主ノ理!!!』」
それを『造物主』は、全エネルギーを集約した拳で受ける。
しかし、その拳は赤と金の螺旋によって抉られ、螺旋は体を貫く。
周りの虹は拳の影響を受けない為、そのまま『造物主』の四肢を刈取る。
残ったエネルギーは『墓守人の宮殿』を貫き、宇宙空間まで飛んで行った。
「ヒャッハァァァ----!!すっげえな愁磨!!」
「【まぁ、お前らが時間稼ぎしてくれなきゃ無理だったな。】」
「急ぎましょう。早くしないと儀式が完成してしまいます!!」
「『行かせて、なる・・・ものか・・・・・・!』」
四肢を無くし、腹の8割が無くなりながらも『造物主』は立ち上がる。
足が無いから、正確には浮き上がる、だが。
「『貴様等如きに、我の悲願を・・・我等の幸福を邪魔させるものか・・・・!!』」
「【みんな、先に行け。俺はこいつに引導を渡してから行く。】」
「結局お前が……とか言ってる場合じゃないな!!行くぜ!!」
疲れ果てているだろう体を引き摺り、五人が最奥の部屋に走って行った。
「【さって、『造物主』。お前は】勘違いしている所がある。」
≪禁忌ヲ犯シタ救世主≫を解き、『造物主』に話しかける。
「『この後に及んで・・・、なにを・・言うか。』」
「言わせてもらうなら、だな。
俺は『お前のやり方』を否定しただけで『お前』を否定していない。」
「『なにを、言っている・・・・・・?』」
「これからゆっくりとこの星の在り方について話そうぜ、って事。」
「『フ、フフ・・フハハハハハハハアハハハハ!!!
我の一人相撲だったと言う事か!所詮は貴様の手の上か!!』」
「合って無くもないが、まぁ今はそれで良いや。」
言いつつ『造物主』にメガザルを掛けて全快させる。
無論、こんな事が出来るのは≪Alucard≫でストックがあるからだけどな。
「『そうかそうか、ならばこの、既に発動している『無に帰す魔法』も止めてしまうのか。』」
「それは、外の連中がやるさ。旧世界人と、魔法世界人が協力して、な。」
「『クククク・・・・・』――『魔人』殿。私のやった事は間違いだったのかな?」
「それがお前の正義だったんなら、俺は否定しないさ。」
「そう、か――――。」
それきりどちらも喋らず、外からは魔法陣が展開する音と、お姫様達の怒号が聞こえて来た。
Side out
Side エルザ
「エルザ様、これでよろしいのですか!?」
私とアリカの付き人役?の少年、クルト君が叫ぶ。
・・恐らく、アリカもあっちの船でガトウに同じ事を言われているんじゃないかしら?
「良い訳が、無いでしょう……………!!!?」
唇を噛み締めたせいで、血が滲んで来る。
・・・アリカにはこの事を話していないけれど、あの子は気付いているのでしょうね・・・。
それでも、私が話していないのだから言い訳は出来るわ。
「ナギ・・・・・・ごめんなさい・・・・・・。」
私の呟きは、多数の戦艦の駆動音と魔法陣の発動音で、
誰にも届く事は無かった。
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