少年は魔人になるようです
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第23話 序盤でラスボスが出てくるようです
Side 愁磨
紆余曲折を経て、俺達は『完全なる世界』に反撃を開始した。
と言っても、『答えを出す者』で楽勝―――そう思っていた時期が俺にもありました・・・。
『答えを出す者』を発動しても、敵の居場所が分からなかったのだ。
戦闘時には問題無く使えるのだが、『完全なる世界』の内部事情となると、
全くと言って良い程効果が無い。仕方なく俺は戦闘班に混ざろうとしたのだが、
三姫様&アル&ガトウから「お前は両方だ」と言われ、泣く泣く承諾。
フッ、メガロに居た頃から分かってたさ。
そして開始から六ヶ月。マフィアだの武器商人だの腐った役人の○原だのを潰し周り、
遂にラスト戦闘前のセーブポイントまで辿り着いた。
戦闘をしながら不正を徐々に明るみにして行った事により、
俺達に掛かっていた疑いは晴れ、再び英雄として見られるようになった。
詳しい手順は控えよう。・・・それだけで単行本8冊は書けるから。
そして攻めるのは明日となり、今は皆英気を養う時間。の、はずだった。
「さて、シュウ。今日こそは聞かせて貰うわよ。」
「そうじゃ。散々逃げおって。今日ばかりは逃げられんぞ。」
部屋に帰って来るや否や、ノワールとアリカが詰め寄って来た。
二人が聞かせろって言ってるのは、六か月前の事。
『何故俺がテオの告白を受けなかったか』だ。
「………それを話すには、俺の……、いや、俺とノワールと、
アリアの秘密から話す必要がある。」
俺の言葉にノワールが反応する。・・・若干は察したようだ。
「……シュウマに秘密がある事など、百も承知じゃ。
見た事もない魔法を使い、人ならざる力を持つ。
御伽噺の中の者がおるのじゃ。今更何を言われようとも驚かぬ。」
アリカの言葉に、少しだけ空気が軽くなった気がする。
「…じゃあ、先ずは大前提から言うぞ。―――俺達は、この世界の人間じゃない。」
「……何を今更言っておるのじゃ?
主らが旧世界の人間だと言う事なら、前にも―――」
手を出し、アリカの言葉を途中で止める。
「……言い方が悪かったな。俺達はこことは別の、つまり平行世界からやって来た。」
と、アリカが俺のおでこに手を当てて来る。
「…………むぅ、熱はn「俺はいたって正気だよ!!」…信じられんのじゃが……。」
「コホン。パラレルワールドって言葉は知ってるようだな。
なら、説明は省くぞ。――俺は、前いた世界で一度死んだ。」
「は?え、えーと、輪廻転生と言うんじゃったか?」
「……それともまた違う。」
そして俺は、若干省略しつつ今までの事を話した。
「つまり、ここはシュウマの前におった世界にあった創作物の派生世界で、
私達はその登場人物。そして、この世界には大まかなシナリオが決まっていると言う事じゃな。」
「……そうだ。だけど、俺はこの世界をそうs――」
今度はアリカが俺の唇に指を当て、俺の言葉を遮る。
「分かっておる。それに……それに、じゃな………。」
急に真っ赤になり、もごもごやってるアリカ。
「……例えそうであったとしても……、この世界がシュウマにとって、過去、
偽りの世界であったとしても、私達が、ここで、こうして生きておるのじゃ。
ならば、この世界は偽りでは無いのじゃ。」
「………アリカ…………。」
「シュウマに会えた事、私は誇りに思っておる。
ならば、シュウマも……、その…………何でも無いのじゃ!!///続きを話すのじゃ!!」
先を促すアリカ。・・・ノワールが鼻血出してるが、気にしない方向で。
「と言っても、もう話す事は無いんだがな……。
えーと、さっき言った『大まかなシナリオ』から離れる行動、これを止める力が、
『修正力』または『抑止力』。」
「……そうか。『修正力』とやらによって、
シュウマはテオの告白を断らなければならんかったのじゃな……。
しかし、何故私は大丈夫だったのじゃ?主人公の母親ともなれば、物語の根幹に関わる事……。」
「……これは、俺の推測、憶測、推理でしかない。
原作ではテオの事を『第三皇女』と明記していたが、アリカの事は『王女』としかなかったんだ。」
「つまり、テオには『皇女の三番目』として確固たる役目があるが、
私には決まった役割は無い、と?」
「……多分な。って言うか、変に思ってたんだ。
帝国は確かにでかい国だが、ウェスペルタティアだって王国。
王の継承者が一人なんて事は有り得ないだろう?」
『英雄色を好む』とは言うが、元々王が継承者を何人も作るのは暗殺されても良い様に
・・・って言えば聞こえが悪いが、その為だ。
「確かに……。帝国王には妻が50人以上、子も100人程おるし、
我が国とて、20人の継承者候補がおる。」
「ん、つまり重要なのは王族の子とナギが結婚する、って事なんだろうな。」
「むぅぅぅ、私があの鳥頭と結婚…?何度聞いても信じられぬ……。」
ナギェ・・・すまん、マジですまん。
「とにかくテオを断った理由は分かったわ。それで、シュウはこの先どうするの?」
「う~~ん、そうだな。明日帰っt…って、やめとこう。死亡フラグだ……。」
「それはなんじゃ……と、聞かぬ方が良さそうじゃな。」
「察してくれる嫁ばっかりで、俺は幸せモノだよ。」
「「ンッンン!!///」」
「なんだ、二人して咳払いして。高校生か?」
「……ホント、鈍感なのか鋭いのかハッキリして欲しいわ……。」
「ノワール、これを天然と言うのじゃな……。」
すっげー失礼なこと言われてるんだが?俺が一体何をした。
「さ、もう寝ましょ。今日は私の番だったわね。」
「違うじゃろう!!ノワールは昨日だったではないか!!」
・・・・あー、うん。なんで喧嘩してるかと言うと、寝る時の位置だな。
いつも、一つのベッドで四人寝てたんだ。
俺の隣には必ずアリアが来るから、二人がもう片方どうするかって事。
「って、こんな事してる場合じゃないわ!!昨日も一昨日もその前もこんな事してる間に―――」
ノワールが言い終わる前に、部屋の扉が開け放たれる。
「何を騒いでいるのだ、アリカ殿、ノワール殿?
明日は大事な日だ!早く寝るのだ!!」
『寝てた』というのは、そう。五か月前からテオがこっちで寝るようになったのだ。
あの日から、一カ月経ってからだったのが不思議でならないが、とにかく。
テオが来るようになってから、俺の両隣が埋まってしまった。
最初一カ月の二人は、修羅もかくやと言う有様だった。
「テオ、何度言わせるの!貴方いい加減になさい!!」
「これ以上私達の至福の時を邪魔しようと言うのなら、手段は選ばんぞ!」
「フフン、今更と言うモノじゃ!
愁磨が良いと言っているのだから、二人に決める権利など無いのだ!!」
・・・・今も、鬼くらいの勢いではあるんだが。
「……さ、アリア。もう寝ようか?」
「・・・ん。」
アリアが眠そうな半目で、両手を広げ見上げてくるので、ベッドまで運び一緒に寝る。
何故アリアが常に隣かって言うと、文句一つ言わずに黙ってる上に、
皆に譲ろうとまでする良い子だからだ。決して俺が娘煩悩だからって訳じゃない。
「お休み~~……。」(ナデナデ
「・・・・スー、スー・・・。」
「クッ!?二人とも、行くわよ!!」
「仕方ないのじゃ!!せーの!!」
「「「最初はグー!!じゃーんけーんポン!!!」」」
ちなみに今までの勝率は、ノワール1:アリカ3:テオ5。
大戦最終戦(?)前夜。静かに、騒がしく、しかし幸せに夜は更ける。
Side out
Side ノワール
今日の争奪戦は珍しく私が勝ち・・・・自分で言うのも悲しいわね。
とにかく。・・・皆はもう寝静まっているけれど、私は・・・なんだか眠れない。
「ノワール、眠れないのか?」
シュウも眠っていなかった?もしかしたら起こしちゃったのかも。
隣に居ないと聞こえない様な声で、私に話しかけて来る。
「…ごめんなさい、起こしたかしら?」
「いや。……なんか、眠れなくてな。」
シュウも眠れていなかったみたいね。
「…ちょっと、散歩しない?」
「……そうだな。あ、ちょっと待ってくれ。『魂晶憑依≪分身形成≫』」
唱えるとシュウの体がぶれて二重になり、もう一つ体が出て来る。
これは自分の体と全く同じモノを創って、
それに魂の欠片を与える事によりもう一人の創る業、と言っていたわ。
・・・・最早生命の創造なんだけれど、創っているのは『魂を入れれば動くし血も通う死体』で、
魂は創っていない――などなど、裏道があるらしいわ。
私の魂は使っていないから大丈夫とか言っていたけれど、なんだか、ね・・・・。
シュウは魂は創れないし、体が特別なんてモノじゃないから、消費する魔力が
聖剣級の武装の創造より遙かにかかる。
こんな無駄極まりないモノを何故創るかと言うと・・・一重に、シュウの腕に抱き付いて眠る
アリアの為。娘に、嫉妬すら覚えるわね・・・。全く、嫌な女。
「さ、参りましょう。お手をどうぞ、姫様。」
本物の方のシュウがベッドから降りて、手を差し出してくる。
・・・フフ、そんな事言ったら、三人は私に嫉妬するでしょうね。
「ありがとう、褒めて遣わす。……フフフ、結構恥ずかしいわよ。」
「う、うるさい。」
――外に出ると、嵐の前の静けさ、という表現がぴったりだった。
虫も動物も鳴いていなくて、風も吹いていない。
遠くに見える『墓守人の宮殿』は月光が落ち、
昼の不気味さは影もなく、幻想的な雰囲気を醸し出している。
「…ねえ、シュウ。明日、大丈夫よね……?」
思わず私は、3ヵ月くらい前から思っていた不安を口に出してしまう。
『完全なる世界』の事を調べるにつれ、その異様さが分かっていった。
帝国・連合両軍に潜入しているのは概ね予想が付いていたけれど、
戦争に参加している構成員は、両軍の中に百人居るか居ないか。
それなのに、幹部のフェイト・アーウェルンクスが頻繁に戦闘に参加している。
『紅き翼』の様な少数精鋭なのかと思いきや、悪魔も魔獣も使ってくる。
目的も不明確な上、フェイトはシュウを仲間にしたいかの様な言動を繰り返していた。
「フッフフ……、なんて顔してんだよ?そんな顔も好きだけどな。
………ああ、大丈夫だよ。必ず帰って来るから。」
そう言って、いつもより少し強く抱き締めてくれる。
「フフ、それって死亡フラグなんじゃないのかしら?」
「ああ、しまった。じゃあ、もっと立てとくかな。
……俺、帰って来たらアリカと結婚するんだ。」
「そう言えば、まだ式を挙げてないわね。」
「なぁ、ノワール。俺……いや、何でも無い。明日帰って来たら、話すよ。」
「それ、私にも影響があるのだけれど……?」
「貴方を殺して、涼宮○ルヒの出方を見る。」
「私にそんな知り合いはいないわね。」
「俺は、もう一人じゃない!……もう、何も怖くない!!」
「いつの間に契約したの?!あ、でも、シュウなら魔法少女似合うわね……。」
「……………こ、ここは俺に任せて先に行け!!」
「それ、実戦じゃないとダメじゃないかしら?」
「僕のLPは君の丁度百倍。これを君は逆転できると言うのかい?」
「状況が分からないと、自分が100で敵が1って言う事も有り得るわよね。」
「こ、これは…、そうか!!早く金田一さんに知らせないと!!」
「なんの事件に巻き込まれたのかしら?」
「これでお前のモンスターは全て攻撃終了。
ポイズンバタフライの効果で、お前のライフは0だひゃーひゃっひゃっひゃ。
やったー! 俺の勝ちだー!」
「何を勘違いしているのかしら……?ねぇ、シュウ……。」
「ん、ああ……。ごめん……。」
そう言って、シュウは笑う。いつもの様に笑う。
ギュッ
「の、ノワール……?」
ちょっと背伸びして、無理矢理シュウの頭を抱き締める。
察して、直ぐに座ってくれた。
「…あなたと、何年一緒に居ると思ってるの……?
無理しなくても良いのよ。」
「……ああ、やっぱりバレるか。……正直言うとさ、すっげー怖いよ。
いつもは『答えを出す者』で未来が分かるし、
いざとなれば『ラケシスの天秤』使えたのにさ、全く効かねえんだもんな。
元々は何の力も持ってなかった一般人で、そんなの分からなかったし、
運命を変えるなんて出来なかったくせにな。
力を手に入れて、それが使えないからって不安になるんだぜ………カッコわりぃ。」
「……その格好悪い人に、私達は助けられてるのよ。だから、自信を持って。」
「ありがとう、ノワール………。」
―――5分くらい経つと寒くなって来て、どちらともなく離れる。
「さ、寝るか!!」
・・・・しかし、私にはまだやっていない事があった。
「……あ、あのね、シュウ。これ……。」
そう言って、シュウに箱を渡す。
「え?あの、なに、これ?」
「その……、不安になっちゃって、ね?ミカエルに頼んで、一緒に作って貰ったの。」
「……………開けても、いいか?」
こくりと頷く。・・だって、渡すだけで、かなり恥ずかしくて・・・・・・。
「六翼の、ペンダント?」
開けて出て来たのは、盾に白と黒の翼が付いたペンダント。
「黒はあの棺から作って、白いのは私の槍の欠片から作ったの。
シュウの創ってくれた『リバースドール』って言うのには敵わないけれど……。
その、気休めくらいには……………。」
「ありがとう、ノワール……。」
「……どういたしまして。…もう、寝ましょう。明日に響いちゃうわ。」
今なら、良い夢を見ながら眠れる気がした。
Side out
Side 愁磨
翌日、時刻は13時を廻り切った頃。
連合・帝国・アリアドネ―混成部隊が集結し、最終決戦が始まろうとしていた。
「不気味なくらい静かだな、奴ら……。」
「舐めてんだろ。悪の組織なんてそんなモンだ。」
「クク、実はあっちもワクワクしながら待ってるかもな。」
「……想像したら、ちょっと可愛いわね。」
「ノワールさん、流石に悪魔は可愛く無いと思うが。」
「あら詠春。人のセンスを貶すなんて、酷い人ね。」
「そんなんだからムッツリなんて言われんだよ。」
「主に言ってるのはお前とナギとジャックだろうが!!?」
と、俺達がいつもの調子で騒いでいると、後ろから声がかけられる。
「あ、『紅き翼』の皆様!連合・帝国・アリアドネ―混成部隊、準備完了しました!!」
「おう。あんた等が外を抑えてくれりゃ、俺達が本丸に突撃できる。頼んだぜ!!」
「ハッ!!そ、それで、あの、ナギ殿……///」
そう言ってアリアドネ―の少女が色紙とペンを取り出す。
「そ、尊敬しておりました!!サ、サインをお願いでしょうか!!?」
「ん、おお。いいぜ、そんくらい。」
「フフ・・、人気ですね、ナg・・・愁磨?
そんなに怖い顔をして、どうしたのですか・・・?」
アルが普段の読めない表情を崩す程心配した顔で、俺を覗き込んで来る。
「……すまない。無駄な事を考えていただけだ。」
「言われないと気になるのですが・・・・?」
「いや、こんな甘ちゃんが居る部隊を放っといて良いものか、とな。」
「おやおや・・・。」
アルはいつも通りクスクス笑っているが、
「あ、甘ちゃんとはなんですか!!確かに私は未熟ですが―――!!」
騎士っ子は笑えなかったようで、憤慨している。
しかし、論点がずれているのは微笑ましいと言うべきか・・・・
いや、やはり若いと言うべきか愚かと言うべきか。
「実力不足、成績不信、修業中未熟者大いに結構、一向に構わんさ。
俺が言ってるのは、命がけの戦争が今まさに始まるってのに、
お気楽にサインを貰うその精神が軟弱だって言ってるんだよ。」
「な、軟弱とは失礼ではありませんか!!幾ら英雄の『紅き翼』のメンバーと言えども、
貴方の様な犯罪者に言われる筋合いはありません!!」
ククク。毎回思うが、英雄なのに犯罪者とはこれ如何に。
そうしたのは俺なんだけどさ。
「あー、ハイハイ。ごめんなさーいー。用が済んだなら隊列に戻ってくれ~~。」
「むぅぅぅぅ!!言われずとも!失礼します!!」
鎧をガシャガシャ言わせ、少女は走って行った。
「・・珍しいですね、愁磨。貴方が美少女を邪見にするなんて。」
「アル、何か誤解してるわね。
シュウは確かに美少女・美女には限りなく優しいけれど、
その子の為にならないと思った事は、憎まれ役になってでも直すのよ?」
「……ノワール、危ないからそろそろ『家』に入ってなさい。」
「フフフ、分かったわ。頑張ってね。」
俺の頬にキスしてから『家』に入って行くノワール。
うん、周りの目が痛いや。
「よっしゃ!!姫子ちゃんを助けるついでに世界を救ってやるか!!」
「ナギ、普通は・・・いえ、私達は普通ではありませんでしたね。」
「そうそう。んじゃ、普通じゃない奴が普通に暮らすために頑張りますか!」
「よし!!んじゃ、やろうdグエッ!?」
ナギが号令を掛けようとしたが、それはアルによって止められた。
「まぁまぁナギ、異常ついでに開戦は派手に決めようじゃありませんか。」
「おお、良いなそれ!!んじゃあ、俺がリーダーとしていっぱグエッ?!」
「まぁ待てリーダー。」
今度は俺が『千の雷』を撃とうとしたナギを止める。
「いいか、上ってのは命令を出して美味しい所を取って行くか、
下の者を尊重しつつ己の偉大さを知らしめるもんだ。」
「う、そ、そうなのか?なら愁磨!!一番手柄はお前に譲ってやる!!」
「ははー、有り難き幸せ!!」
「・・・何バカな事をやってるんだお前等は。」
さて、丁度よくAir詠春が入った事だし。
「いっちょ派手に決めますか!!」
Side out
Side アリアドネ―の少女
あの犯罪者!!折角ナギ様と話せて幸せな気分だったのに、態々嫌味な事を言って!!
・・・確かに浅慮だったのは私かも知れませんが・・・、
でも、あんな言い方無いじゃないですか!!
そもそも、英雄『紅き翼』に、何故魔法世界最凶の犯罪者が居るのでしょうか!?
「おお、良いなそれ!!んじゃあ、俺がリーダーとして」
あ、ナギ様の雄姿が生で見られる――
「いっぱグエッ?!」
・・・・グエ?
と、ナギ様の後ろを見ると―――
「まぁ待てリーダー。」
またあなたですか!!?どれだけ私の邪魔をすれば気が済むのですか!!
アーカード・・・いえ、シュウマと言うのでしたか?・・がナギ様と2,3言話すと、
ナギ様が満足げな顔をして下がってしまい、
代わりにシュウマ・・殿が出てきました。
「「「「「「シュウマさまああああああああああああああああ!!!!」」」」」」」
―――と、騎士団の一部が沸き立ちます。
普通なら団長が止めてくださるのですが、今は止められる側になってしまっているので、
頭を抱えた副団長殿を始め、誰も止めてくれません。
「コホン!!レッディーースェェェンドジェントルメン!!
並びに魔界から態々お越し下さった魔族の方々!!今宵のクソったれな戦争へようこそ!
それでは不承、この愁磨・P・S・織原が開戦の一番槍を取らせて頂きます!!」
ワーーー!!と盛り上がる両陣――
って、何で敵まで盛り上がっているんですか!?
「それでは。『形態変化:≪Nein≫』『形態付与:≪Schwerter Schmuck≫』」
シュウマ殿が何か唱えると、取り出した奇妙なナイフ?を自分と同化させました。
すると、シュウマ殿が七色に光り出しました。
「これが次元の狭間を超えて来た宝石剣の使い方だ!『さあ、挙げて行こうぜ!平行世界の俺!!』」
と、空間に切れ目が10個ほど開き、そこから――――
シュ、シュウマ殿が出てきました!!?
「来てくれてサンキュ、これでもっとおm……助かるぜ!!
それでは、皆さんに伝えるのは『初心忘れるべからず』で良いかな?」
『《いいともーーー!!!》』
「と言う訳で皆様!!早速参ります!!!」
「『《バル・ボル・ベルグ・バルホルス!!異世界の者11柱 集い来たりて敵を穿ち尽くせ!》』」
聞いた事がありませんが、文面から行って恐らく魔法の射手ですが・・・。
11柱だけって、アホなんでしょうか?その五万倍は魔族が居ると言うのに!!
「『《魔法の射手・連弾・魔の1344431矢!【魔式ノ壱✝夜鴉乃帳】!!》』
」
え?と思った時には、既にそれが放たれていました。
闇の魔法の射手よりも黒いそれは、全軍の敵軍50万を覆い尽くし、
私達の眼前に夜を出現させ、魔族の軍団を飲み込みました。
ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ
ウンダリババババババッババババババズドドドドドドドドドドガダダダダダダダダダ!!!!
「『《粉砕!玉砕!!大喝采ィィィィィィィィィィィィィィィ!!》』」
意味不明な絶叫が終わると同時に魔法の射手の音が止み、
敵軍の様子が見えるようになりました。
敵の半分は消え去り、残りも、両腕が無くなったりしている魔族が4割、
多かれ少なかれ血を出している魔族が他5割。そして、ほぼ無傷の魔族が数体。
「チッ、ハンパな術式じゃこんなもんか。皆、ありがとう!もう帰っていいぜ!」
『《んじゃ、またな~~。》』
・・・・・恐ろしい事を聞いた気がしますが・・・・二重に。
多分聞かなかった事にした方が良いと、勘が告げています・・・・・。
「………ほら、ナギ。号令を。」
「流石愁磨だ、褒めて遣わすぜ!!野郎ども!俺達の道をしっかり作れよ!!――行くぜ!!」
ナギ様の号令で、連合国側が遂に動き出しました。
―――すると、宮殿の中からまた魔族が現れ始めます。
「倒した意味ねぇぇぇぇぇええ!!」
「なに、出て来るんなら倒しゃいいだけだろうが!!」
「残念ながら、そんな事してる暇はありません。彼等は、既に儀式を始めています。」
「チッ!!人手不足………!!」
言いつつも、襲って来る魔族を片端から倒して行く『紅き翼』の方々。
そして、こんな風に考えていられる余裕があるのは・・・シュウマ殿が、全体をフォローしているから。
・・・見ていれば分かります。シュウマ殿は、力のない私達を助けているのだと。
ですが、何故、大量虐殺をした犯罪者が、私達を助けるのでしょう・・・?
「シュウ、流石に見ていられないわ。」
「・・・・戦う。」
と、その影から女性と少女が出てきました。
「……分かった。リバースドールは持ってるよな?」
「ええ、10体ずつ持ってるわ。クローナシンボルもね。
それと、伯爵以上と当たる時は必ずアリアと一緒に戦うから大丈夫。」
「そ、そうか。なら後は防護符と反射香と「いいから早く行きなさい!!」
くぅ~~~!!ここは頼んだ!行くぞ!!」
「結局お前が仕切るのかよ!!」
・・・・戦場に有るまじき軽さで、『紅き翼』は『墓守人の宮殿』に向かいました。
「さて、皆様。『皆殺し』に代わりまして、私『微笑みの漆黒菩薩』がお守り致します。」
「・・・ママ、わたしも、いる・・・。」
「そうね。アリアも私と一緒に守ってあげましょうね。」
・・・この人達には危機感と言うモノが無いのでしょうか?
公園にでもいる様な雰囲気です。
『黒菩薩』、確かノワールと言いましたっけ?ではなく、後ろから魔族が!!
パチンッ
少女が指を鳴らしたかと思うと、魔族が八つ裂きになりました。
これも魔法の一種なんでしょうか?!
「・・・・ママに近づいていいのは、パパだけなの・・・・・・!!」
「そうね。私に迫っていい男はシュウだk――あ、いえ。――コホン。
そろそろ真面目に行きましょう、アリア。『魔合聖纏』≪暗逆併明≫!」
「・・・『天合獣纏』≪翼獣霊王≫」
どの様な技か分かりませんが、ノワール殿は黒と白の天使の姿に変わり、
少女・・いえ、アリア殿は13,4歳程まで成長し、ピンと立った犬耳と尻尾が生え、
獣を模した軽鎧を纏い、蒼い炎で出来た狼を四匹侍らせています。
「さて、さっさと片づけちゃいましょうか。」
「・・・パパの邪魔をするなら・・・、許さない。」
言うやいなや、二人は姿を消し――消えた様な速さで敵を次々屠って行きます。
『皆殺しアーカード』、『黒菩薩』。
魔法世界で知らぬ者のいない犯罪者が、人助けをしています。
『悪』ならば、そんな事はしない筈です。
しかし、この二人(三人?)が犯罪者である以上、『正義』である筈がありません。
ですが彼らは『紅き翼』の一員、『正義』の象徴たる英雄。
『正義』であり『悪』でもある、犯罪者で英雄。
彼らを見ていると、今まで信じて来たものが壊れていく気がします。
誰か、教えてください。『正義』と『悪』って、何でしょうか?
Side out
Side 愁磨
連合軍のフォローをノワールとアリアに任せた俺だったが、ぶっちゃけ心配でならない。
幾らリバースドールに能力ブースト効果を付けてクローナシンボルに復元能力を付加した上で
雑魚悪魔共と戦うと言っても、それでも1/100000000%くらいは掠り傷がつく可能性がある訳で。
「愁磨、流石にそれだけやれば、
お釣りが値段の数倍還って来ますから大丈夫です。それより―――」
うむ、心を読まれたのはスルーしておこう。
「やあ、『紅き翼』の諸君。また会ったね。」
入口から100m程の所には、原作通りフェイト・アーウェルンクス、デュナミス、
仮契約(?)三人衆が待ち構えていた。
「この半年で、僕達は随分数を減らされてしまった。ここで終わりにしよう。」
「ハッハッハ、フェイト君。5対6、しかもあとが無い状況でそんな事を言うとは、
遂に諦めたのかな?」
「……『皆殺し』、我らが主の命だからもう一度だけ聞こう。
こちらに来る気はないかな?」
「残念ながら、方法どころか目的も釈然としない方には行けないんだな~。」
「……そうか…。なら、仕方ないね。」
「『ならば我が直接聞こう。こちらに来い、同胞よ。』」
その声、いや、その存在を認識した瞬間気付いた。
――これは俺と同じだと。大元は違うが、同じなんだと。
「お前はもう少し後に出て来るべきだろ……。『造物主』さんよ。」
Side out
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