DQ3 そして現実へ… (リュカ伝その2)
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俺の話を聞け!
<リムルダール>
「すげー!!」
既に注文した料理が殆ど揃っている円卓を囲み、リュカの話に聞き入っていた一同の輪に、無理矢理入ってきて大声で感激する男が一人…
意識を取り戻し、リュカを追ってきたナールである…
「俺様を簡単に倒したと思ったが、そんな戦術を用意して戦っていたなんて…俺、感動しちまったぜ!アンタ強いだけでなく、頭も良いんだな…よし、俺はアンタに弟子入りするよ。俺を強くしてくれよ!」
「「「「……………」」」」
「バギ…バギ…バギ…バギ…バギ…………バギマ……」
(ドカ!)(ドゴ!)(ゴス!)………
急に現れ一方的な物言いのナールに、無表情で風だけのバギを唱え続けるリュカ…
「ぐはっ…ちょ…うぎゃ!…ちょ、やめ…ぎゃ!…マジ、やめて…うぎゅ!………」
「ちょ、やめたげて…死んじゃうからやめたげて!もしくは一思いに殺してあげた方が…」
相変わらずのツッコミニスト・ティミーがリュカの行動にツッコミを入れ止めようと試みる…が、後半はツッコミと言うより、本音になっていたのはナールという男の魅力だろう。
「いや…もうコイツには色々言いたい事があったんだけど、言いたい事が多すぎて何から言えばいいのか分からなくなっちゃって…だから取り敢えず行動で示したんだよ。ほら…なんて言うの…むかつく?…呆れる?…まぁそんな…ねぇ……………バギマ!」
「ぎゃー!」
どうにもナールの事を言い表せられないリュカ…何故だか最後にバギマを付け足す。
「いや…分かるよ。分かるけど…人間だから彼も。馬鹿だけど人間だから…人間だからね、彼も…馬鹿だけどさぁ…」
優しいティミーは『馬鹿』を強調しながらだが、ナールの側に駆け寄り引き起こしてあげる。
「いてててて………ふん!そうやって先輩面してられるのも今の内だけだからな!俺様が弟子入りしたからには、お前なんか直ぐに追い抜いてナンバー1になってやる!その時まで精々先輩面してろ!」
ナールはティミーの手を払い除け、床に血を吐きながら言い捨てる。
「………ライデイン」
「ぎゃぁーーーーーー!!!」
「ちょ、ちょっとティミー君!死んじゃうわよ…ライデインは流石に死んじゃうわよ!!」
父親と同じように無表情のままライデインを唱えるティミー…
それには流石に驚き、ルビスがティミーを止めに入る。
「はっ!す、すいません…つい…その…腹が立ったと言うか…驚愕したと言うか…」
「分かる!分かるなぁ~…僕も全く同じ気持ちだよ」
ルビスのツッコミに我を取り戻したティミーが、申し訳なさそうに言い訳をする。
そんな言い訳に大きく同意し『気にするな!』とフォローするのは父親だ…他の連中(食堂にいるその他の町民等)も、ティミーの行いを咎めるどころか、大きく頷き行動に同意する始末。
「ぐっ…くっそー…魔法無しだったら俺様の方が強いのに…」
そんな誰一人彼の事を心配していない状況の中、ドリ○のコントの様にアフロのみたいな髪型になった(ライデインの所為ね)ナールが、身体から煙を出しながらヨロヨロと立ち上がり、ティミーに向けて文句を言う。(何だこの驚異的な打たれ強さは!?)
「アイツまだあんな事言ってる…お兄ちゃんに勝てる訳無いのに…ルビスちゃんも実力の差も判らない馬鹿を庇う事無いのに」
ここに居る全員(ルビスも含む)の苛つきは増すばかり。
「何だと、生意気なガキだな!兄妹揃って腹立つ性格だ!親の顔を見てみたいぜ…さぞかしムカつく奴なんだろうな!」
真性KYのナールは、やられっぱなしじゃシャクにさわるらしく、止せばいいのに余計な一言を吐き出し、自己の精神安定を図る。
そんなナールの言葉に怒るでもなく、ティミーとマリーは手の平を上にした状態でスッと両親の事を指し示す。
「………え!?」
「どうも…兄妹揃って腹立つ性格な子の親です」「予想通りムカつく奴な実の両親です」
ビアンカの肩を抱き寄せ、二人揃ってピースサインで挨拶する夫婦。
「あ………あ、あはははは……なるほど~!うんうん…だから強いんだな。性格と強さは比例するんだ!」
リュカ・ビアンカの夫婦を見て一瞬だけ戸惑ったが、直ぐに勝手な納得で頷く失礼極まりない男。
「あ゙…そう言う納得の仕方、普通しないから!何なのお前…弟子入りしたいとか言いながら、全然敬おうとはしないじゃん!」
「え?敬う…何で?だって俺は強くなりたいだけなんだよ!?修業だけ就けてくれれば良いんだから、敬う必要なんて無いじゃんか!」
「え~!?コイツ師弟関係を何だと思ってるの!?絶対コイツ、町の人々に嫌われてるよね!だからオルテガも………あ、そうだ!お前オルテガの一番弟子じゃないのかよ!そんな奴が他に弟子入りできるわけないだろ!何よりお前なんか弟子にしたくないよバ~カ!近付くんじゃねーよ馬鹿!」
ともかく腹が立ってるリュカは、目の前に並ぶ料理の中からパセリを取り選び、ナールに向けて投げ付ける。
「そんな事言うなよ!俺は強くなりたいんだから…それが俺の望みなんだから!」
しかしナールは気にすることなく、一方的な理論でリュカに詰め寄ってくる。
「ふざけんな馬鹿!何で僕がお前の望みを叶えなければならないんだ!?そんな義務は無いだろうが…僕はお前の事が大嫌いなんだ。お前の為になる事など、絶対にしたく無いね!」
近付いてきたナールの頭に冷たい水をぶっかけるリュカ…
簡易アフロが水分で萎んで行く。
「んだよ!俺が強くなる事に協力しないってどういう事だよ!?」
「何なのこの馬鹿?貴族だってこんな馬鹿は居ないよ…コイツ自分の事しか考えてないじゃん…話が咬み合わないじゃん!」
「そんな事ねーよ。俺が強くなればみんなも嬉しいだろ!?みんなの為にも俺は強くなりたいんだ!」
リュカを始め、食堂にいる誰もがナールの言葉に驚愕する…彼が強くなる事を誰一人望んでいないのに…
「だ、駄目だ…こんな馬鹿の相手をして体力を消費したくない…今夜のビアンカの為に取っておきたい…」
「そんな事より、俺に修業を就けてくれよ!」
グッタリと項垂れるリュカを気にすることなく、ナールは身勝手な事を言いながら修業を望む。
「………そんなに…そんなに僕の弟子になりたいか?」
項垂れていたリュカだったが、不意に力強い言葉と共に顔を上げ、鋭い眼光でナールを睨み付ける。
「お、おう!どうしても強くなりたいんだ!」
リュカの眼光に少しだけ怯んだナール…それでも弟子入り(強くなる事)は諦めない。
「弟子にしてやらんでも無いが…次の事が守ってもらう!」
「次の事?」
「1つ…師弟関係なのだから師匠に対しては敬語を使え!」
「お、おう!」
「『おう!』じゃ無い!『はい分かりました』だ!」
「わ、分かりました!!」
「うん。次に…2つ目。世界に散らばる6色のオーブを集めろ!」
「オ、オーブ…?」
リュカの意外な提案に、アルル一行は皆が驚き怪訝な顔をする。
「オーブを6個集め、世界の何処かにある祠に奉れば、不死鳥が復活する。その不死鳥を連れて、僕の下に戻ってきたら、弟子として迎え修業を就けてやる!」
「そ、そのオーブって何処にあるんだ?」
「敬語を使ってない!減点1!……オーブの在処も、祠の場所も、自分で見つけ出す事がこの修業の目的だ!本当に強くなりたいのなら、人に聞かずに自分で探し出せ!そして今すぐ行け!何時までも僕の周りをウロチョロしてると、弟子になんぞしてやらんからな!」
「は、はい!!」
リュカの迫力ある物言いに気圧され、飛び跳ねる様にオーブを探しに行くナール。
「リュ、リュカさん………絶対不可能じゃ無いですか!?」
「おやおや…ハツキさんは優しいなぁ………あの馬鹿の事など放っておけば良いじゃん!それに不可能かどうかは、やってみないと分からないよ。もしかしたらもう一組オーブと不死鳥が居るかもしれないだろ?」
リュカはナールが出て行ったのを確認すると、一際爽やかな笑顔で食事を開始した…
他の者も今一釈然としてなかったが、あの馬鹿が居なくなった事への喜びの方が大きく、直ぐに爽やかな気持ちに切り替わり食事をし始めるのである。
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