少年は魔人になるようです
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第20話 魔人達は思惑に嵌ってしまうようです
Side アリカ
「…シュウマの…、事が……………。」
シュウマは、頬を赤く染め、こちらを見ておる。
その瞳は喜びもあったが、困惑や、不安もあって――
「……すまん、何でも無いのじゃ……。忘れろ…。」
シュウマを困らせるくらいならば・・・この想いを、言う事はできぬ・・・。
「え、ア、アリカ……?」
「すまない…。本当に、何でも無いのじゃ。………今日は、助かった。感謝する……。」
そう言って、今度は確りと立ち上がり――――
「え、ああ。……っておい!アリカ?!」
私は、その場から走り去った・・・。
Side out
Side 愁磨
アリカが走り去ってから、約6時間。
俺は何度もアリカに話しかけたが、碌な返事もされずにいた。
そしてナギとエルザさんが帰って来て、兼ねてより疑いのあった執政官と『完全なる世界』の
繋がりの証拠を見つけて来た事により、エルザさんとアリカが帝国皇女と極秘に接触する事になった。
―――――数日後――――――
「……で、何でアリカまで行くんだよ?本来なら、お前は行かなくてもいいのに……。」
「シュ………、主には、関係無いじゃろう。
政治に関しては、義姉君よりも私の方が優れておるのだから、私が行くのは当然じゃ。」
「こんなボロ船で行くんだ、危険なのは分かってんのか?」
「そんな事は元より承知じゃ。……フン、心配でもしてくれておるのか?」
急に、何だってんだよ。そんな態度取られたら・・・・・・・。
「…心配するに、決まってるだろ……?」
「ぅ…、く……フン!!余計な御世話じゃ!!」
こっちから、追っ掛けたくなるだろうが・・・・。
「アリカ、どうしたんだよ?俺が何かしたのか?だったら―――」
「やめろ……!!そうでは、ない。……そうじゃ、ない……。」
アリカは、手に血が滲むほど握り、そう言う。
「お主が、悪いのではない……。」
他人から見たら分かんないだろうけど・・・そんな、泣きそうな顔で言われたら・・・・。
「…執政官の逮捕は、お主たちに任せる。それでは、な……。」
・・・そう言うと、アリカは足早に飛行船に乗って行き、直ぐに飛行船は出発した。
「・・愁磨、アリカ姫と何があったのですか・・・?
あの日以来、貴方達の間が、どうもおかしいと思うのですが・・?」
「……それが分かってりゃ、こんなに苦労はしてねえよ………。」
「・・・貴方には、ノワールさんと言う奥さんと、アリアちゃんと言う娘が居ます・・・・。
それなのに、何故アリカ姫と恋仲になる様な行動を取るのですか・・・?」
確かに、尤もではあるが・・・・・・
「…前にも言ったろ?叶えられるなら叶えてやりたいんだ、ってな。」
「それは、分かっています・・・。
しかし、相手が離れて行くのでしたら、貴方が追う必要はあるのですか?」
「……確かに、追う必要なんてねぇよ。
寧ろ、そっちのが楽だよ……。でもさ、あれだけイベントこなしたら好きにはなっちまうよ。」
「・・・それはつまり、ノワールさんへの愛が―――」
「んな訳、ねぇだろうが…………」
「――――ッ、す、すみません・・・・・・。」
「…ノワールは俺の半身で、全てで、愛する者だ……。……それとは、別なんだよ。
こんなの、不義理な奴だと思う奴も居るだろうさ。
殆どが、そうだろう。倫理的にNGなんだ。でも…、俺に一番心を開いてくれてると思ったら、
勘違いも、したくなるじゃんか……。」
「・・・貴方の場合、それが勘違いで無いのが問題なんですよね・・・・。」
「…余計な御世話だよ。」
「フフ・・、それで、どうするのですか・・・・?」
「どうするったって…。幾らなんでも、無理強いは――」
「そんな事言って…。偶にはシュウから行っても良いんじゃないのかしら?」
何時の間にか『闇』から出て来たノワールが、実に有難い言葉を掛けてくれる。
「……それは一体、どう言う事で御座いましょうか?」
「こっちの受け入れ態勢は万全なのよ?あっちも、入って来るのに抵抗は無いでしょうし。」
「えーと、つまり無理矢理にでも入れちまえ、と?」
「王族なのだから、一夫多妻になんか抵抗は無いでしょう。
それで来ないのは……多分、シュウに迷惑だろうとでも勝手に思ってるんでしょうね。
だったら………。」
「…俺から、『好きだ』って言っちまえって?
それで納得するか?アリカが。そ、それにノワールは―――」
「ああ、私は分かってるから、別に良いわよ?
恋・愛・性・親全数値において、私がダントツだから。」
・・・なんだ、その淫獣式メーターみたいなのは・・・・。
「ああー、もう!!あーったよ、やるよ!!行って言ってやるよ!!」
「フフフ、漸く決めたわね。全く、ヘタレなんだから…。」
「フフ・・、良いじゃないですか。愁磨らしいですよ。」
好き勝手言いやがって・・・・・・。さて、となると。実行場所は何処だ?
「みんな。話している所すまないが、今マクギル議員に連絡した所、
明日、証拠品を持って来てくれ、だとさ。」
「法務官にも、既に来てもらえるよう要請したそうだ。それで、誰が行く?」
考えてる暇もねぇな・・・・・。って、そうか!この後フェイトが出て来るんだったな。
「そうですね・・。ナギ、ガトウ、ジャックで良いでしょう。」
「待て、アル。詠春、悪いがナギ達と一緒に行ってくれ。」
「別に構わないが…。なんでだ、愁磨?」
敵さん出て来るから保険、とは言えないしな・・・。
「…いや、何となく嫌な予感がするだけだ。」
「お前の勘は当たるからな…。分かった、俺も行こう。」
詠春増えた分、あっちも増えそうなんだがな・・・。
Side out
Side ナギ
次の日、俺らはマクギル議員の所に行った。けど―――――
「法務官は……、来られぬ事となった。」
こいつ・・・・・・?
「………ハ……?。」
ガトウが、疑問の声を上げる。
「あれから少し考えたのだが、折角の勝ち戦。態々水を差す事も無いだろう、と思ってね……。」
「ハ、ハァ…。」
「いや、私の意見では無いのだ。そう考える者も多く、時期が悪い。
無念だろうが、君達も手を引いて「待ちな。」…?」
「あんた、やっぱりマクギル議員じゃねぇな。何もんだ?!」
ボォォォォン!!!
「ゴゥア?!」
俺が無詠唱でぶっ放した『紅き焔』が、マクギル(?)の頭に直撃する。
「ナギ?!おま、いきなり何を?!」
「愁磨が言ってたんだよ。『ちょっとでも怪しいと思ったら躊躇うな』って。」
「え、ハァ?!あいつお前に何を吹き込んで―――」
「…良く分かったね、千の呪文の男。君に見破られるとは…。改良が必要だね。」
議員の居た所に、白髪の男が無傷で立って居やがる。
「ケッ、愁磨の言った通りにしたら案の定、ってだけだぜ!!
あと、俺の勘だ!!」
「やれやれ、あの『皆殺し』が、何故そちらに付いているかも疑問だよ……。」
「んなこたぁどうでも良いんだよ!!
本物の議員はどうした?!」
「ああ。マクギル元老議員なら、既にメガロ湾の底だよ。」
「てっめぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
俺は白髪に殴りかかりに行くが―――
フォッ ヒュッ ザンッ
「くらえ」「通しませんよ」「あばよ」
ド ン ! ! ! ! !
何処からともなく三人の男が出て来て、
炎と水と雷が俺を襲う。
「ナギ!!大丈夫か?!」
「チッ!気をつけろ、奴ら強ぇぞ!!」
「ハッハ!!だけど、生身のガチ勝負だ!!頭使わねぇで済む分、万倍、戦いやっすいぜ!!」
「フッ、本当は『皆殺し』に来て欲しかったけれどね……。
わ、わしだ、マクギルだ!!うむ、反逆者だ!!
『紅き翼』、奴等は帝国のスパイだった!!…ああ、確かだ、殺されかけたっ!
今も命を狙われている。は、早く救援を頼む!軍にも、連絡をッ!!」
チッ!やられたぜ!!
「おぉぉぉおおおッッ!!!」
「君達は、少しやり過ぎだ…。退場して貰おう!!」
ドッガァァァァァァ!!!
奴の石の棘柱で、建物が崩壊する。
「クソッ?!ナギ、一旦退却だ!!」
「チィィィィ!!」
ザブン!
詠春の叫びに全員が反応し、下の海に皆飛びこんだ。
「英雄呼ばわりが、一夜にして反逆者、か…。」
「ヌッフッフ、良いじゃねぇか詠春。人生、波乱万丈じゃねェとな♪」
「タカミチ君達は、脱出できたかな……。」
「愁磨が居るから大丈夫だろ。…それより、エルザ達がやべぇな……。」
『ナギ、聞こえますか?』
いいタイミングで、アルから通信が入った。
これは愁磨の特製で、絶対に感知され無いなんちゃら。。。って言ってた。
「アルか!!皆無事か?!」
『ええ。今拾いに行きますので、少々お待ち下さい。』
アルが言った瞬間、何かが俺らの下から上がって来た。
「うお?!なんだ、これ!潜水艦か?」
『愁磨が貸してくれた飛行艇です。・・・何でも、マッハ70で飛べるとか・・・。』
「良く分かんねぇけど、姫様達の所まで直ぐって事だろ?」
『ジャック、貴方は本当に残念な頭ですね・・・。でも、その通りですよ。』
なら、グズグズしてらんねぇだろ!!
「アル!!場所は分かってるのか?!」
『ええ。会談の場所に、そのまま閉じ込められています。』
「アル、愁磨はどうしたんだ?居ない様だが?」
『ああ、もう先に行っていますよ。』
「「「「ハァァァァアア?!」」」」
Side out
Side 愁磨
アリカ達が出発してから16時間。もう『夜の迷宮』に着いて、話し合いしてる―――
「愁磨。どうしたのですか・・・?」
「お前は本当に、地の文を邪魔する奴だな…。」
「フフ・・、それは申し訳ありません・・・。」
全くこいつは本当に意地がわr―――
「愁磨、アル!!大変じゃぞ!!」
「おまえもか、ゼクトォォォォ!!!」
「な、何をいきなり?!ではのうて!!
奴らの幹部がマクギル議員を殺して、入れ代わっていたのじゃ!!直ぐに逃げるのじゃ!」
ああ、そういや―――ッッ!!しまった!!
「アル、ゼクト!!!俺の飛行艇貸すから、タカミチとクルトを連れてあいつ等迎えに行け!!」
「って・・・貴方はどうするのですか、愁磨?」
あそこのシーンは、感動的なだけだから安全だと思っていたが――
「俺は先に行ってアリカを助ける!!!」
―――簡単な話だ。
元のアリカは大切な人質だったから無事だったが、ここでのアリカは違う。
王国の第一王女と第二王女、二人があの場に居て、王女の人質なんて一人で十分。
そして、どっちが人質として魅力的か・・・。
「愁磨!どうするつもりですか?!貴方が一人で行っても――――」
「俺の力量考えろ!!悪いが、待っている暇はねぇんだ!!!」
そして、人質として価値の無い方の王女がどうなるか・・・。
辿る未来なんて、一つしかねェ!!!
「愁磨!!」
アルの声を無視して、俺は飛びだした。・・・飛行艇はちゃんと出してから。
Side out
Side アリカ
会談が始まり、二時間ほどで話しは終わった。
あとは、各々国に帰るだけであったのじゃが、奴らの構成員だと思われる者達が、
飛行船を陣取っていた。
「初めまして、王女様方並びに第三皇女様。自己紹介は必要かな?」
リーダーと思しき男が出て来た。
「そのようなもの必要無い。さっさと去ね、下衆が!!」
「第二王女様………。威勢の良いのは結構だが、自分の立場を弁えたまえ。」
・・・・確かに、この状況は絶望的じゃ。兵士共だけならなんとでもなるが、この男・・・・。
恐らく、実力はナギ達に相当するであろう。
「…さて、話していても時間の無駄だ。第一王女様と第三皇女様は、上階牢に閉じ込めておけ。」
「ハッ!!第二王女はどうしますか?」
「……いざという時の為の捕虜だ。地下牢に閉じ込めておけ。
抵抗された時に、もう片方がどうされるか分かるだろう……。」
「了解しました。こっちへ来い!!」
「触るな、下郎が!!!」
「アリカーーーーーーーー!!!」
「放さぬか!!この無礼者めが!!」
見ると、義姉君と第三皇女・テオドラ殿が両脇を持たれ、連れていかれていた。
「大丈夫じゃ、義姉君。その内奴等が来る。」
確信はないが、そう思った。・・・・義姉君と、皇女殿は大丈夫じゃろう。
私は、分からんが・・・。
「おら!!こっちに来い!!」
兵士に付いて行き、しばらく歩くと、思ったよりも綺麗で明るい地下牢に出た。
「ここに入ってろ。食事もちゃんと出してやるよ。
ククク。その内、お前を使いたいって奴も出て来るだろうさ。
ま、ボスが使わねぇ限り許可出ねぇから安心しな!!」
「…………。」
「…チッ!!愛想のねェお姫様だな。」
・・今は、私よりも、義姉君が心配じゃ・・・・。
せめて、あの二人は、助けてやって欲しい・・・・。
――――――――――――――――――――――――――――
sub Side 愁磨
「どけえええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!」
真っ直ぐに戦場をつっ切ろうとした俺だったが、途中で転移すればいい事に気付く。
が、何故か転移出来ず、しかも魔物の群れに阻まれ、三分の一も進んでいなかった。
ただの魔物共なら良かったんだが――――
ブゥン ブゥン ブゥン ブゥン ブゥン ブゥン ブゥン
と、また魔法陣が展開される。
まさか、ここでもう出て来るとは思ってもみなかった・・・!
「『造物主の掟』…!!」
原作じゃ、旧世界の人間には効果&攻撃力皆無に見えたが、
ここに居る悪魔共の持っているのは、俺に対しても十分徹る攻撃力を持っていやがる。
「これは使いたく無かったんだがな……!!」
いきなり出て来たから、碌な戦闘準備も出来なかった上、何故か俺の『創造』した物を
弱体化させる効果がある。―――だからこそ、これが使える。
「≪code.0000 認証.Pandora chaos/calling
解除解除解除|開け、『禁箱』≫!!」
待ってろ、アリカ!!今助けに行く!!!
「出でよ、『貫く者』『轟く者』『初源』『終焉』!!」
side out
――――――――――――――――――――――――――――――
あれから、数時間もたったじゃろうか・・・?
リーダーの男が来た。
「やぁ、お姫様。気分はどうですか?ハハハハハ!!!」
「ボス!随分と早いですね。」
「いいや、言いつけ守らないで先走ろうとした新人を数人、達磨にして来た所だ。
お姫様だってんで、全員興奮してな。」
「ハハハ、そりゃ大変ですねぇ。せっつかれて来た訳ですか!」
「全く、お前以外、碌に番も出来ないんだからな。困ったものだよ。」
「良いって事です。それじゃ、俺は外に行ってますよ。
あ、鍵はこれっす。ククク。じゃあな、お姫様。最初で壊れるなよ。」
・・・・私を見張っていた男が上に上がって行き、リーダーの男が、下卑た笑みを浮かべながら
近づいて来る。
「さぁて、実の所、俺も我慢出来なかったのでね。大人しくして貰おう。
『魔法の射手・雷の3矢』」
男が魔法の射手で私を痺れさせようとするが――
「無駄じゃ、愚か者が。王家の魔力を使える者に、魔法など効かぬ。」
届く前に、無効化する。
「ああ~、そう言えばそうでしたね。全く面倒な。…やはり、これを使うしかないですね。
言っておきますが、これ、高いのですからね?」
そう言うと男は、懐から木の様な物を取り出し、火を付ける。
すると、奇妙なほど大量の煙が出て来る。
「魔法は打ち消せても、これの効果は打ち消せませんよ?なんせ、唯の煙ですからねぇ。」
何を言っているのかと思ったが、直ぐに効果が現れる―――――。
ドサッ
「…な、何じゃ…、これ、は………。体に、全く力が入らぬ………。」
「これは闇でのみ取引される、とある木の枝でね。
これの煙を吸うと、不思議な事に女は筋肉が弛緩し、動けなくなるんですよ。」
カチャッ、と鍵を外し、男が牢の中に入って来る。
「ククク、さて、楽しませて貰いますよ、お姫様。」
・・・こんな事ならば、せめて自分の気持ちを伝えておきたかった・・・・。
フフフ・・・、いつも後悔してばかりじゃな・・・。
もしも・・・、今度、生きて会えたならば、今度は言えると、良いな・・・・。
「…………シュウマ………………。」
そして、目を瞑る――――
ガンッ!!
「?!なんn」
――――キンッ ボッ!!
空気を斬る音と、何かが燃える音がして―――
ギュッ・・・・
あの、暖かいものに包まれる。
「……間に、合った…………。」
その声に目を開けると、涙で酷い顔になっている、シュウマがおった。
Side out
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