久遠の神話
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第四十六話 また一人その十二
「私も非常に関心があります」
「剣士としてですね」
「勿論です。そうならない筈がありません」
「ですよね。どういう方でしょうか」
「一つ気になることは」
ここでふと言った高代だった。
「私達は全員日本人ですよね」
「はい」
「そのことですが」
「そういえば剣士は」
「人であればいいのです」
どうして剣士になるのか二人はまだわかっていない。もっともこれは他の剣士達にしても同じことであるが。
その剣士達は今のところ日本人だけだ。だが、だというのだ。
「それならば他の国の人でもいいでしょう」
「日本人以外でも」
「アメリカ人や中国人でもいいのです」
「剣士になれてそれで戦えるならですか」
「いい筈です。そして戦場であるこの町に来ることができれば」
「そういえば工藤さんと高橋さんは」
任務で戦いを止めようとするこの二人もだった。
「元々はこの町におられないです」
「しかしそれぞれ剣士になられてですね」
「任務でこの町に来られました」
「なら他の国でも同じです」
「剣士であるならですか」
「はい、日本人でなくともよい筈です」
「じゃあ本当に」
上城は高代の話を聞いて考える顔になった。今二人は向かい合っておらず横に並び金網の向こうの青空、まだ朝で爽やかな空を見ながら話していた。
その中でこう言うのである。
「どの国の人でもですか」
「そして国によっては」
「といいますと」
「世界の盟主になろうという国もありますね」
「若しくは自認している国ですね」
「どういった国々かは言いません」
あえて言うまでもないというのだ。
「しかし実際にそうした国はありますね」
「はい」
「そして独裁国家もあります」
こうした国も問題だった。この場合は。
「野心のある独裁者も」
「北朝鮮とかですか」
「イラクやリビアは案外そこまでいかなかった様ですが」
フセインやカダフィも野心家だったが世界征服までは考えてはいなかった。精々アラブの盟主程までしか考えていなかったと言われている。
「しかし北朝鮮になりますと」
「本当に世界征服まで考えてもおかしくないですね」
「そうした国から出た剣士なら」
「危険ですよね」
「私は世界征服には興味がありません」
高代は理想家だが野心家ではない。理想の学園を築きたいとは思っていても世界征服の野心はないのだ。
それで今もこう言うのだ。
「そうした人間の国の野望が適えば」
「大変なことになりますよね」
「確実に」
「私もそうした剣士が相手なら」
「その時はですか」
「若し上城君が戦っているのなら」
その時はというのだ。
「助太刀させてもらいます」
「僕にですか」
「はい、そうさせてもらいます」
「先生は僕にとっては」
「敵になります」
高代もこのことは自分から言う。
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