とある碧空の暴風族(ストームライダー)
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幻想御手
Trick15_まるで幻想御手(レベルアッパー)みたいね
「意識不明!? あの爆弾魔が?」
「そうですの」
ここはとある病院。
白井は御坂を連れてある病室へと向かっていた。
着いてみると、その病室は集中治療室であり、そこには西折信乃がいた。
「早かったですね」
「信乃さん。お待たせして申し訳ありませんの」
「いえ、今言った通りあまり待ってませんよ」
「信乃にーちゃんも来てたんだ」
「風紀委員支部に連絡があって白井さんと2人で来たんですよ。
御坂さんも彼の逮捕に協力したし一応教えておこうと思って・・」
信乃はそう言いながらガラスの向こう側の集中治療室を見た。
そこには先日のグラビトン事件の犯人の男が眠っていた。
警備員が取り調べの最中に突然、眠るように倒れた。
病院の医者の話では体のどこにも異常がないにもかかわらず、意識が戻らないらしい。
「原因不明で手の打ちようがないらしいですの。
そこで外部から外脳生理学の専門家をお呼びするらしいですの」
「私達も話を聞こうと思ってここに来ました。もうすぐ到着する予定みたいですよ」
「その話、私も参加させて!」
「「そう言うと思いました( の)」」
「え?」
「御坂さんを呼んだ理由は爆弾魔のことを教える事と、
もう一つはこの話を聞かせるためです。
あとで私達だけが聞いたら怒られると思ったので」
「お姉様を放っておくと勝手に暴走なさりますから。信乃さんが目の届く範囲に
いた方が安全だとおっしゃったんですの。
さすがは兄妹ですのね」
「信乃にーちゃん・・」
御坂が信乃を睨む。
しかし信乃は御坂には気付かずに患者の、爆弾魔の男を見ていた。
「心配ですの?」
「はい・・でも、それ以上に気になることがあるんです」
「? 何が気になるの?」
「グラビトン事件で最初に容疑者として上げられた女性、覚えていますか」
「あ~、確か大能力者(レベル4)で量子変速の・・
名前は"釧路 帷子"(くしろ かたびら)さんですの」
白井は自分の記憶を探りながら答えた。
「そしてその人はなぜ容疑者から外れたんでしょう?」
「それは事件が発生する前に“原因不明の昏睡状態”になったからでしょ」
今度は信乃の問に御坂が答えた。
「それがどうかし・・・まさか!?」
「はい、“その人も”原因不明の昏睡状態にある。
しかも、昏睡になる前の計測ではレベル5に近い数値が出たそうなんですが、
直後にその状態になったみたいで、計測結果よりも病状が注目されていたんです。
そして最近では書庫に登録されているレベルと、実際のレベルに違いが
ある人が増えて、そして同じように昏睡状態になっている人たちがいる。
もしかしたらですけど、同じ理由で昏睡状態にあるかもしれないと考えてたんです」
「それでしたら今から来る学者さんに風紀委員の資料を準備した方がいいですの」
白井はテレポートをするために演算を始めたのだが
「待ってください白井さん。資料の場所は私が知ってますし、他にも渡したい
ものがあります。私が取りに行きますから2人で話を聞いていてもらえませんか?」
「わかりました。お願いしますの」
「話はバッチシ聞いておくから任せて!」
信乃は2人の返答に頷いて走り去っり、階段を下りて行った。
そしてすれ違うようにしてエレベーターが開き、一人の女性がこちらに歩いてきた。
「それにしても、急にレベルが上がるなんて、
まるで幻想御手みたいね」
「それはなんですのお姉様?」
「この前に佐天さんが話した都市伝説。それがあれば簡単にレベルが上がるんだって」
「本当にありますの? そんなもの」
「でもまあ、『火のない所に煙は立たない』って言うし一応専門家に聞いてもらおう」
「そうですわね」
話がちょうど終わったときに、エレベーターから出てきた女性がこちらで立ち止まった。
「お待たせしました。院長から招聘を受けました
木山春生です」
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「やばい・・間に合うかな」
時刻は夕方。信乃は資料の入った紙袋を持って走っていた。
風紀委員でまとめていた置いていた資料はすぐに見つかったのだが、
信乃の個人的な知り合いに調査をお願いして手に入れたもう一つの資料、
それが入った“音楽プレーヤー”が見つからずに探していたら
この時間になってしまった。
ちなみに固法が勝手に置き場所を変えたせいだった。
白井に連絡を取って喫茶店の場所に今向かっている。
今はA・T(エア・トレック)の使用許可はないので自分の足で信乃は走っている。
もうすぐ目的の喫茶店に着きそうになったときに、道路の反対側に一人の少女が
歩いているのが見えた。
(あれ? 佐天さん?)
佐天は俯いたまま走り去って行ったので信乃には気付かなかった。
その手には音楽プレーヤーが握られていた。
(まさかね、そんなわけないか)
自分がちょうど音楽プレーヤーを持っているせいで少し疑問に思ったが
(それよりも今は資料を持っていかないと)
その疑問をすぐに掃って喫茶店へと向かった。
「ごめんなさい」
「いきなり謝らないでください。でも遅かったですのね」
「資料の他に役に立ちそうなものがあって、それを探すのに時間がかかってしまって
本当にごめんなさい」
「信乃さん、腰が低すぎますよ、あははは・・」
信乃の謝りっぷりに初春は苦笑いした。
信乃は佐天とすれ違ったすぐ後に喫茶店には着いたのだが、外脳生理学の学者は
もう帰ってしまい、間に合わなかった。
「それに大丈夫ですよ。その資料は後で送っても大丈夫だと言ってましたし」
落ち込む信乃を初春がフォローした。
「ありがとうございます。でも、私はこれを渡して直接話を聞きたかったんですよ」
信乃は紙袋から携帯音楽プレーヤーを取りだした。
「なんですの、それ?」
「昨日、私の知り合いの探索者にお願いして、今日の朝に送られて
来たものです。調べてもらった内容は
幻想御手についてです」
「「幻想御手!?」」
「都市伝説となっている幻想御手。
病院で少し話しましたが、書庫と実際の能力値が違う人が多い。
ただの都市伝説として片付けるにはタイミングが良過ぎる、いえ悪すぎる。
そして裏技や反則技にはリスクが付き物。そのリスクが原因不明の昏睡であれば
少し無理矢理な気はしますが、話しに辻褄があう。
それで幻想御手について調べてもらっていたのですが・・・・・
送られてきたのがこの音楽プレーヤーだったんですよ。
しかもそれ以外の説明はなし・・まったく、ちぃくんは・・」
「その人何者ですの!? わたくし達も木山先生に幻想御手について話しましたが
知らないとおっしゃっていましたわ!
と言うよりも昨日頼んで今日までにもう見つけましたの!?」
「『銀河系の中で起こっていることで探れないことはない』との噂があります」
「うわ~・・」
すごすぎる噂に若干引いた白井だった。
「ただ、コミュニケーションがまともに取れないので、これの何が幻想御手なのか
わからないんですよ。答えを見つけて終わり。説明なし。そういう人なんです」
「それで木山先生に見せようとしたのですの?」
「はい。専門家なら何かわかると思って。
でも、もう少し自分で調べて答えを見つけることにします。
その学者さん、木山さんもいきなりこんなのを渡されても困りますしね」
「信乃さん!! その≪ちーくん≫さんを紹介してください!! そんなすごい人に
会ってみたいです!!」
情報収集が得意な初春にとっては尊敬を感じるのだろう。興奮している。
「≪ちーくん≫ではなく≪ちぃくん≫です。残念ながら今刑務所に服役中で会うことも
できないですし、さっき言った通りにまともに話せる人じゃないです」
「そうですか・・・ って犯罪者ですか!?」
「国連のデータベースに侵入しようとして捕まってます。ただ能力が高いので
服役中でも特例でコンピュータを触れる環境にいるんですよ。一部のコネを使えば
連絡が取れるます」
「う~残念です」
((国連にハッキングしたのはスルーか?))
信乃と白井は心の中で同時に突っ込んだ。
初春のあこがれはお嬢様のことも含めて、盲目だと言うことがわかった。
「まあ、とにかく、私達で出来ることをやりましょう」
「そうですわね。まずは帰って資料を洗い直しますの」
「はい!」
つづく
後書き
信乃は『ちぃくん』とお友達♪
作中で不明、疑問などありましたらご連絡ください。
後書き、または補足話の投稿などでお答えします。
皆様の生温かい感想をお待ちしています。
誤字脱字がありましたら教えて頂くと嬉しいです。
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