BLUE SPRING
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早朝ランニング
五月、新入生が部活にも入り、練習が本格化してくるころ
県立園原高校テニス部に入った僕は、朝のランニングを始めた。
新人部員である俺は、基本的に雑用が多く、あまり、コートを使用した練習が出来ていなかった為、今出来ることが何か考えた結果だった。
まだ、日の昇らない時間に起き、走り出す。
何時も通っている道、しかし、時間が時間の為か、ポツポツと所々明かりが付いている所しかなく、新鮮に感じる。
時々会う、自分と同じように走る人や、ペットの散歩をしている人に挨拶をしながら走っていると、一軒の店を見つけた。
そこは、走り出した時にも電気は付いていたので覚えていた。
『A GREETING』と書かれた看板のかかっている店からは、おいしそうな香りがしており、ついつい立ち止まってしまっていた。
そうしていると、カランカランと音を鳴らしながら、ドアが開き女性が出てきた。
「ごめんね~。まだ、開店前なのよ」
女性は、すまなそうにしながら、謝る。
「えっ」
その謝罪が、自分に向けてのものだという事には少し、時間がいった
「いや、その……すみません」
すぐに否定しようとしたが、匂いに誘われ、立ち止まった事を考えると、何もいえないことに気が付き、こちらも謝ったのだが、しかし、自分の腹は、空気を読まず……
グゥ~
と鳴ってしまった。
「……」
もう、恥ずかしさで真っ赤になった僕を見て彼女は、一瞬ぽかんとしていたが、状況を把握したのか
「アハハッ」
少し笑ってから、いたずらっぽい笑みをうかべて
「内緒だよ?」
そう言って僕を、開店前の店の中に案内した
店に入ると、外まで香っていた匂いの正体がわかった。
それは、パンだった。アンパン、メロンパン、クロワッサン、サンドイッチなど、さまざまなパンが、並んでいる。
おいしそう、そう思った時また、
グゥ~
腹の虫が鳴る。
「アハハハ、いいよ。もう、開店ってことで、好きなの買っちゃって。あっ、でもお金あるかな」
急な展開についていけていなかったが、どうやら、僕のために早めに開店してくれたらしい、
「えっと……一応、コンビニに寄ろうと思っていたので」
ポケットから取り出し、財布を見せる。
僕の家は、親が共働きの為、母も夜遅くに帰ってくる。その為に、帰りに自分の分の朝食と昼食を、買って帰ろうと思い、財布は持ってきていた。
「うん、ならよろしい」
僕が、お金を持っていることに安堵したのか、彼女は笑みをうかべた店員さんに、了解をもらったので僕は、買うものを探し始めた。
見るパン、見るパンがおいしそうであり、さらに、焼きたてということで、悩んだが、サンドイッチを三種類と、アンパン、チーズパン、それから、今から食べるように、ピザを三種類選んでレジに持っていく、しかし、彼女はなにやら、後ろの方で作業をしているようだった、ここから、見える範囲では良く見えなかったが、わざわざ、早く開店してもらっている側なので、少し待つのも仕方ないかな、なんて思っていると
「やっぱり、たくさん買うね。まあ、あんな大きくお腹の虫もなってたしね」
彼女の方から話しかけてきた
「ち、ちがいます!」
いきなり、そんなことを言われて、小銭を落としてしまう。確かに、お腹は減っていたし、二回も腹の虫が鳴いたのは事実だが
「昼の分もあるんです」
落とした小銭を拾いながら二個位は、間食用なんだけど、なんて思いながら、彼女を少し睨む、そこで、彼女が笑っていることに気が付いた、どうやら、からかわれていたらしい
「ふーん、高校生なんだ。何年生?」
「園原高校の一年です」
「そうなの!私、そこ卒なんだ~、後輩なんだね」
「へえ~、そうなんですか?」
「うん、えっとね、もう、三年前だね」
そういいながら、作業を終え、彼女がレジに立ち、驚いた
「わっ、本当にたくさん食べるね」
「えっ、見えてたんじゃないんですか?」
僕は、彼女の反応に驚いた、さっきその話は、あったはず何だけど
「いや、お腹の音から、お腹減ってるみたいだし、たくさん買うだろうなって、思って言ったら、君が、面白い反応聞かせてくれて……」
笑う彼女を見て理解した。つまり、僕はその何となくに引っかかり、また、恥の上塗りをしてしまったらしい
「ふふ、面白かったよ、君の反応」
僕は、また、恥ずかしくなって、急いでお金を置いて、早歩きで帰ろうとした
「君はさ、いつもこれくらいの時間に走ってるの?」
そう、声をかけられた。質問の意図は分からなかったけれど
「はい、一応このくらいの時間に走る予定ですが……」
「ふ~ん、そうなの」
そう言って彼女は、笑っていた、僕は、少し不思議に思ったが、その場を後にした
後書き
誤字修正しました
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